恵ありてこそさんが投稿した冨久屋（富山/上本町）の口コミ詳細

クチコミ件数12件ながら、高得点3.84の富山のお店です。

結論から申し上げますと、私には全国的に名が轟いて、
お客様で満員というよりもお店よりも、こじんまりして、ひっそりしていて、
しかし、すごく気を配っていて、丁寧で、優しくて、店主様が純粋に「お料理が好き」という
お店が私には合うと感じています。そういうお店でした。以前にThree stars「Y」様に行き、
周りのお客様は美味しいと言っていましたが、お料理がしつらえや雰囲気に完全に
負けていたと感じたので、そこには行かず、富山最初の晩のお店に選んで、本当に良かったです。
赤い本は全然考慮に入れていません(ちなみに当店は一つ星だと後から知りました。
なんで、こんなに星の数に逆転の現象が起こるんでしょうかね。食べログ様のように項目別の
評価を公表すべきです)が、全国的に名前が轟いていても、
それほどでもと思うことが本当に多々あるので、
(全国)ランキングにも疑問を強く抱くようになってきました。
厳しい人にはよくありがちなダブルスタンダードで私はお店を評価はしていないつもりです。
常にほぼ一定の基準で評価しているつもりです。
当店へは関東から毎月、車を飛ばしていらっしゃる方もいるそうです。
その気持ちは十二分にわかりました。
コースは6000円、10000円、12000円のコースがあるようです。
私は10000円のコースか12000円のコースか忘れてしまいましたが、
実際のお代は13000円を超えたくらいですので、多分、12000円だと思います。

(0) ジンジャエール

市販品ですが、かなり刺激があります。辛いですが、美味しいです。
一杯250円というお値段にとても驚きました。とても良心的です。普段、倍以上
支払いしているのがバカバカしく感じるようになりましたので、当店以外では、
お茶、水のみでこれからは行きます。

(1) 先付け

本ズワイガニの身の上に加減酢のジュレとシソの花があります。
東京「津の守坂小柴」様でコメントしましたように、シソの花はなくても良いです。
ズワイガニは普通に美味しい程度で、旨みが火が通っていた「吉寿」様のそれよりも
相当落ちます。ジュレはカニの甲羅の出汁から取ったジュレです。全体的に
まずまずですが、同じ品の金沢の「あいじ」様より、味の強さが劣るので、
まずまずにしか感じませんでした。

(2) ハマグリと大根の汁物

大根の香りがまずします。ハマグリが小さく切られたものが4切れあるだけです。
大根の短冊切りが大量にあります。バランスが全然取れていません。
また、短冊切りの太さにばらつきがあります。したがって、硬さにもムラがあります。
こういうことは料理を実際にしている人は絶対に見過ごしません。
スープにはハマグリの出汁が出ていますが、ハマグリ自体は味が薄いです。
吉寿様ではこういうことはしません。大根は出汁の味が染み込んでいるというよりは
水が染み込んでいて、水っぽいです。あまりにも大根短冊切りが多いので
飽きてしまいました。ハマグリ一つを幾つかに切り分け、
大根の塊いくつかで改善できると思います。もし、予算的にハマグリを少量に
せざろうえないのでしたら、大根の料理を少量にすれば良いだけだと思いました。
(2)の段階で、このお店ダメかもしれないと不安になりました。

(3) 真牡蠣(赤穂市産)

(最近、魚介の産地に興味が出てきました。理由はその土地が日本のどこに
あるか調べるきっかけができ、魚介と地名が紐付けできるので、
地理の勉強になるからです。学生時代、地名が覚えられず、地理がとても苦手でした。
他の教科も含めて先生も魅力的ではなかったです。今だったら、超辛口評価してしまいます。
興味がわくように学問を生き物として捉え、生き生きとした授業をしてくださいと。
大学に入り、その分野でトップの人に会い、指導教官とさせていただいたので、大学時代は
よかったです。)

もみじおろしでいただきます。生牡蠣は肝炎が怖くて、生理的に食べたくありませんが、
苦手な食材にあげてなかったので、いただきました。つるんとした食感で、やや甘いです。
むちゃくちゃフレッシュと感じました。表面はつるんとした食感ですが、全体的には
クリーミーとも言える品質の非常に高いものでした。赤穂市の牡蠣はグレードが
高いことを知りました。


(4) たけのこの唐揚げ

私にはたけのこの天ぷらと感じました。もう、こんな季節なのですかね。
(今年は家の空豆と絹さやインゲンが咲くのが一週間は早いです。
他人様の場所の一日中日が当るところでの絹さやインゲンは3月中旬くらいの勢いです。)
素晴らしいの一言です。衣が付いているけど、付いていないように感じました。
東京根津の天ぷら福太郎様のものより薄く感じました。筍の旨味がダイレクトに
口に押し寄せてきましたので、「うおっ！？」と思いました。この一品で
ランチのダメな天ぷらが消し去られ、私もエンジンがかかり、
ようやく調子が出てきました。本当、私はスピリチュアルな影響を受けます。

(5) ホンモロコ(琵琶湖産)

木の芽酢でいただきます。一昨年、「赤坂詠月」様でドイツのお偉い様と
ほぼ、同じ時期に同じものをいただきました(木の芽酢があったかどうか失念)が、
それより全然美味しかったです。当店のホンモロコは上質、旨味も強いです。
川魚特有の苦味も旨味と混ざり、心地よいです。身も柔らか。
木の芽酢も香り、酢の加減、ホンモロコにドンピシャ合います。
これも素晴らしいの一言です。「お〜」、期待していた以上に
すごくいいぞと感じてきました。


(6) ネギ(南砺市産)

汁物です。フグの出汁の汁に白ネギを合わしているだけです。白ネギは甘く、
出汁も美味しいのですが、白ネギだけでメインになるほどのインパクトはありません。
一つ、一つ、ネギを剥がしてしまっているのが、よくありません。これでは単純すぎる
一品です。もし、ネギだけで行くのなら、相当レベルのネギを斜め切りで
切ったものふた切れくらいで勝負すべきと考えます。
けれど、そのレベルのネギは半端ないネギでないとダメと思います。
私なら、この季節提供できます。関東北部のネギはとても上質です。

(7) 和え物

これは当店のスペシャリテと感じました。アイデアと味双方において、素晴らしいです。
しかも、からすみ、白えびさえ手に入れれば、簡単に真似できます。白えびには事情があって、
旬はないので、イカさえ季節に応じて換えれば、いつでも提供できますね。
外側の三枚のからすみはからすみ特有の塩味の効いた旨味が申し分ないです。
食感もしなやかです。京都「吉寿」様でいたただいた
ハイクオリティーなものとほぼ同じレベルです。「吉寿」様の方が若干食感がしなやかで、味は
表現しづらいのですが、’’オレンジの味’’が強かったです。中央にあるのは白えびとヤリイカの和え物で
白えびだけだと味がないところをヤリイカを合わせて、味を出し、ぬめっとした食感も出しています。
それでもこの一品の中央部は味が弱いので、上にシソの花を置いて、その味もアクセントして
感じさせる完璧な構成となっています。ヤリイカの旬(12月~3月)とシソの花(穂紫蘇)の季節(9月)が
違いますが、まあ、そこまで考えてはいないのでしょうね。単純に味と彩りのみ
追求した一品なのでしょうね。

(9) 椀物

真鱈の白子のお吸い物でした。最近、白子は表面を炙ったものばかり、いただいていたので、
それとは違う印象で、卵白っぽい味と感じました。お吸い物の昆布は利尻昆布でしたが、
利尻にしては随分と甘い味でした。クリアな感じは利尻そのものでした。
このクラスになると当たり前ですが、ちゃんと下処理をして、白子は全く臭みなしで、
スッとした味でした。

(10) お造り

お刺身はクエ(新湊産)、マグロ(氷見産、神経締め)、バフンウニ(兵庫県産!)です。

(a) バフンウニ

バフンウニがバフンウニとしては素晴らしかったです。実は初めて書きますが、
私、バフンウニを美味しいとは全然思いません。どんなに上質であっても、
バフンウニ特有の味が「臭い味」に感じてしまい、美味しいとは思いません。
しかし、このバフンウニは違いました。正直に申して、とても美味しいと初めて
思いました。やさいし旨味で、壊れてしまうように繊細な味でバフンウニ独特の
「どよ〜ん」とした味ではありませんでした。もう一回味わって、
もっと正確な表現をしたいです。味が繊細なので、醤油も何も漬けずに
味わってくださいと指示されました。兵庫県産のバフンウニはなかなか手に入らないそうで、
入った時はすぐ提供するそうです。とてもラッキーでした。

(b) マグロ

マグロは背中の部分で見た目、「馬刺し」にも見えました。マグロのシワの模様に沿って、
その味がするような感じで、繊維ではないですが、皺のような味で一般的な赤身とは
かなり違いました。

(c) クエ

食感が割とコリコリしています。二日寝かしています。
クエとしては旨みの強い方だと思いました。上質なものと感じました。

(11) 熊鍋

これも素晴らしかったです。終盤の攻めがすごいです。京都の「吉寿」様のイノシシとは
全然違いました。熊は全く臭みなしというか、甘いです。冬眠前の熊だそうです。オメガ3
たっぷりの脂でその脂が汁に滲み出ていて、汁が甘いです。ネギの甘さではない脂の甘さです。
ネギ、熊、塩、醤油のみの素材です。本当に食べやすいです。熊が冬眠前に木の実を
たらふく食べているので良い脂になるそうです。大将様が嬉々として説明なされます。
熊のお肉の雰囲気は豚バラっぽいですが、良い意味で結構淡白で、自然に体に馴染む感じです。
ネギは甘みの脂でコーティングされていて、その脂で茹でられた感じでこれまた、
素晴らしいものに仕上がっています。

「体が温まり、超おいしー!!!」

とメモには書いてあります。
ちなみに冬眠前は脂たっぷりで一番美味しいそうで、冬眠後は筋肉、脂とも落ちてしまうそうです。
また、この熊は罠で取っており、締め方も苦しまないようにしているそうです。ちょっと、
生々しくてすいません。そうしているので、肉質が良いそうです。

(12) 揚げ物

菊芋の天ぷらです。天ぷらのせいか、菊芋の旨みが最大限引き出されている
印象です。煮物より全然美味しいです。表面が香ばしいですが、言葉で表現するのは
難しいのですが、香ばしさをすごい意識した揚げ方、絶対に表面を香ばしくという
意図を感じました。この印象が強いです。
天つゆは煮干しの出汁、煮詰めた日本酒、昆布、カツオ
あと、説明はなかったですが、醤油です。砂糖、みりんは全然
使いません。砂糖、みりんを使うと味が重くなるので。
日本酒を煮詰め、自然な甘みを出すこだわりです。
この大将様は外見はおおらかそうに見えますが、
徹底的に料理をします。これもとても美味しかったです。

(13) 焼き物

真魚鰹(ギンダイ；旬12月〜2月)の塩焼きです。旬ですから、素晴らしいです。
脂ノリノリというよりも余計な脂を落として焼いている印象です。程よい脂です。
皮目は超薄く、身はとろけます。リーゾナブルなコースでこの品数で高級魚を
いただけるのは本当にありがたいです。しかもクオリティーがすごく高かったです。

(14) 野ぜり

直近でレビューしました千葉県流山の京料理「かねき」様と違い、作り置きではなく、
直前に湯がいていただけます。そのため、味がすごく濃く、香りも立っています。
野性味すら感じます。ゴマは程よいアクセントというよりは、私にとっては
野ぜり自体を味わうのに、余計な味と感じ、なくて良いです。
単品で出たので、何かコースの順番としては違和感を感じました。
もし、単品で提供するなら、コースの最初の方に出すべきと感じました。

(15) 食事

御新香はきゅうり、大根、人参です。まず、おにぎりが提供されます。
お米はコシヒカリ(南砺市産)です。南部鉄器で炊き、おひつで水分調整いたします。
大きいおにぎりの中には具はありません。お米の甘み、旨みと
海苔だけで味わいます。海苔は極上品「佐賀のはしり」です。もはや、あらゆるところに
こだわりを感じますので、恐れ入ります。おにぎりは具はないのですが、
最後まで飽きずに美味しくいただけます。お味噌汁も具はなしです。もちろん、
ちゃんと出汁を取っています。
ご飯はお代わりも出来ます。今度は茶碗に盛っていただき、
ご飯のお供として、マスと木の芽の和え物がいただけます。
シャケとは違って塩味が薄く、マスの味も柔らかでまずまずでした。

(16) 甘味

本わらび餅です。食感がゆるい感じで若干水っぽく感じましたが、上質だとは
思いました。緑茶は普通に感じました。


これだけの品をいただいても、お腹が苦しくなく、自然に私の体に同化しました。
大将様ももういっぱい、いっぱいとなるような印象を持たれないように料理を
作っているとおっしゃっていました。
最初の方は「あれ〜、このお店大丈夫かあ？」と感じる部分がありましたが、中盤から、
特に終盤、ギアが変わった感じで「う〜ん、とても素晴らしい」の一言に尽きます。
最初、全体的印象では評点は4,5くらいかと感じていましたが、
レビューを書いて、一品、一品、お料理を振り返ると、この「お店、実はものすごいぞ」と
感じ、結局現在の評点に落ち着きました。超オススメのお店です。

お二人で料理をし、若いお方お一人の三人体制です。
大将様は穏やかな感じですが、塩分濃度をその場で測り、ご自身の舌でもチェックし、
データ重視で常に試行錯誤していて、上を目指しています。舌だけだでもほぼずれないのですが、
体調によっては、わずかにずれる(0.1%塩分濃度が)そうです。それを機械で補正しているそうです。
私もいずれ、糖度計と塩分濃度計を買うでしょう。大変貴重な経験でした。

それほど多くは期待していたわけではなかったのですが、富山滞在の一晩目の食事が想像以上に
良かったので、とても幸せを感じました。富山に来た時は必ず訪問させていただきます。
次の日に行ったお寿司やさんからはここよりも良い日本料理店が富山にはあるとお聞きし、
これから富山訪問が楽しみでたまりません。もう訪問する2件のお店は決まりました。
(ちなみにY様ではありません。)三日後、銀座の「しのはら」様で
食事をしましたが、しのはら様より良かったです。件数が著しく少ないのに、
高得点なのも納得いたしました。このお店はまだまだ伸びます。
ただ、席数はたくさんありますので、混雑でごった返すことなく、適切な人数で
一人一人のお客様皆様にご丁寧なお店であり続けていただけたらありがたいと
思っております。

富山に行った際は必ず再訪しますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます!