2回
2025/09 訪問
一期一会で巡り合った、自分にとって最良の贅沢時間を心行くまで楽しんだ夜
自分、食事に感動するとセンチメンタル入りますが、笑って許してくださいませ。
タイミングの悪戯なのかもしれませんが、美味しい和食・お寿司と美味しい日本酒に加え、快適な居心地、この日は全てが良かったです。いわゆる記憶に残る夜になりました。
いろいろなことがあって、それらを乗り越えた自分へのご褒美の日。晩御飯は一人寿司と当日朝に決めていました。
ただ、全くといっていいほど鮨屋のレパートリーを持ち合わせていないもので、食べログだけが頼りです。当日18時、お一人様で予約可能な鮨屋という条件で検索、いくつか候補は出ましたが、最終的には、築地のこちらを予約させて頂きました。
秀徳3号店さん。
銀座四丁目の交差点を晴海通りを勝どき方面へ。築地東通りを入ってすぐ。築地駅からは6~7分くらいの場所にあります。
平日のもろもろを終え、予約時間丁度に訪問しました。木の扉を開け、予約している旨を告げます。
あれ、他のお客さん、誰もいません。自分ひとりです。
築地でお寿司となると、インバウンドの客がたくさんいて盛り上がっている様子を勝手に想像していましたが、良い方への裏切り。
開店準備を入念に整えた静謐な佇まいに、こちらも身が引き締まる思いで案内されたカウンターの一隅に腰掛けました。
既に予約で「秀徳 特上コース」11,500円を予約していますので、飲み物だけ注文します。とりあえず生ビール。
このコース価格ですが、築地でお寿司と考えると普通か安いくらいではないでしょうか。上を見るときりがないことだけは分かっていますが、何せ経験値が少ないもので。
前菜から始まります。
こちらは作り置きのようですが、つぶ貝、もずく寄せ、牛蒡しんじょなど。ああ、これはすぐに、今すぐに日本酒に行かねば!と思う味わいです。和食って素敵。
続いてお造り。
調理するところを見ていましたが単に魚を切るだけでなく、小さな器に入れ、それぞれに合う薬味などを載せるなど技が繊細です。鰹は千葉産、ほか鯛、イクラ、帆立など、ここで日本酒に移って写楽一合を注文しました。
椀もののアラと豆腐を炊いたやつですが、下処理が良いのでしょう。魚の臭みが全くなく旨味しかない。それが豆腐に移って豆腐も美味い。ああ、幸せ。
そこからお寿司に移行です。
サヨリ、赤身、サンマ、赤貝、トロ、海老、ウニ、アナゴ。それぞれ写真をよく見て頂ければわかると思いますが、食べやすいよう美味しいよう丁寧に包丁が入っています。それぞれ更に薬味が載せられていたり、魚に合う醤油が塗られていたりと、寿司単体に加え、いろいろと手が入っています。
食べたものは書いた通りなのですが、この日はそういう訳でほとんどの時間、板前さん独り占め。
調理しているところ、包丁さばきなど、海鮮調理のライブを最前列で見学です。それだけでも嬉しいのに、一対一で会話をお付き合い頂けるのです。
寿司として味わうために、新鮮な魚に対しても、あえて行うネタ処理の仕方であるとか、魚の産地だとか(聞きなれない漁港の場合は地図まで見せて頂きました)、このところのお寿司の傾向、車海老の寿司に振り掛けられた魔法の粉の秘密とか。
お寿司屋さんグループの話だとか、世間一般の話もしましたが、興味深い話をいろいろと伺えました。当然、お寿司や魚についての話が多いのですが、現場のプロの話はいちいち参考になる話が多く、本当に勉強になります。
単純に知らなかったことを新たに知るということ自体が快感ですしね。
また、一定クラス以上の寿司店では、お任せやアラカルトではなく、とりあえずコースを予約しておくことが客も店も納得して楽しむための最大ポイント、というのが心に残りました。
超お金持ちは別ですが、時価の世界、客の想定する価格とお店がつける時価の差異はどうしても発生しちゃうので、支払いの際にお客様が憮然となるのは双方避けたい、その原点は、コースをベースにすること。客からみても価格比でお得なネタが提供されることが多く、また追加数品であれば、目玉が飛び出ることはあまりなく、お客様とお店とがWINWINになれますよ、ということでした。
なんとなくこういったお店で事前にコースを頼むのは「粋」ではないのではないか、と漠然と思っていたところもあったのですが、今回の話で吹っ切れました。コース最高!
自分のレビューでの高得点て、こういうお店の人と自分とが、胸襟を開いていろいろお話できる、という時に出しちゃうみたいです。これが採点でいうところの「雰囲気」にあたるのでしょうか。
お酒は、阿部勘から東洋美人へ。
途中から、団体客が来られたので、板前さんは、そちらの調理に入られましたが、数をこなすための段取りや手つきも、立派な「見る肴」で、板前さんの手元などを眺めながらちびちびと飲ませて頂きました。
締めに手巻き、そしてデザート。
お会計は、11,500円+お酒代かっきりの明朗会計。お代に文句をつける隙はありません。
お会計のタイミングやお見送りなどに至るまで、本当に良い時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。
ご馳走様でした。
2025/09/10 更新
今回が二回目の訪問になります。
前回訪問したのは9月の頭で、まだ夏の暑い盛りでした。その時の印象(一連の料理の味わいと工夫、板前さんとの会話、雰囲気、さらにリーズナブルなお値段)が良く、再訪の機会をうかがっていました。
個人的に仕事で一山を超えたので、一人祝杯ということで、予約して訪問しました。
特上コース、11,500円を予約したところまで、前回と同じ。
今回は冬なので、旬の魚が変わっているだろう、という目論見が当然あります。
夜の築地市場場外、商店街はほとんどの店が閉店しており、それこそ鮨屋さんだけ暗い中しっかり営業されている感じです。
晴海通りから築地東通りを少し入ったところに入口があります。
引き戸を開けて中に入ると、目の前にカウンター。男性のおひとり様がいらっしゃる他、複数の個室からもお客様の声が聞こえます。予約を告げ、カウンターの指定された席に着席します。
目の前には、前回訪問時にお話しさせて頂いた板前さんがいらっしゃいます。ちょっと嬉しい。
生ビールから頂きます。
BGMにはシャンソンのような音楽が流れています。悪くないです。
まずは前菜ということで、皿に五種盛りです。
山くらげ、烏賊のしぐれ煮、サーモンの砧巻、牛蒡の真薯、クコの実をあしらった南京煮物
お箸でつまんで少しずつ頂きます。いきなりお酒の肴系でもあって、早々にビールを飲み終えて、日本酒を注文します。
写楽ください。
続いてお造り。
鮪、縞鯵、淡路鯛、烏賊の塩辛?、帆立とイクラ。
鮪は熟成が効いていて美味く、白身もそれぞれ良き。
特に烏賊の塩辛(漬け?)は、まさに酒盗。お酒がきゅいきゅい進む逸品で、烏賊そのものに負けずと劣らぬ美味さ。
帆立は隠し包丁の妙で口の上で溶け、イクラは粒がしっかりしていて味が濃いです。
お造り、美味しい。
続いて茶碗蒸し、縞鯵のアラと葱との煮物。
この煮物が骨はあれども、魚の旨味が臭みなく引き出されていて感心。豆腐と葱にも味が移っていて、全体のバランスが素晴らしい。
これもお酒に合うのよ。
ここから握りに進んで、白烏賊、春子鯛(上におからが載ってます)、鰤、赤貝、トロ、と続きます。
すみません、山和ください。
握りの途中から隣のお客さんが会計になったこともあり、板前さんに味の感想を伝えながら頂くかたちに。
「前回9月にこちら、来てます」
「あ、あの端っこ座られていました?」
思い出して頂けたようです。
こちらの、握りを頂くペースを見ながら、次の料理が出てくる、という調整がされているので、ゆっくりじっくり頂けます。
続いて、車海老。
これは前回も頂きましたが、海老塩をわざわざ作って隠し味となっています。
この結果、車海老の元の美味さに加え、別の海老がもう一匹いるかのような味を幻視させられるような深みがあるのです。旨い。
お酒なくなったので、東洋美人ください。
お酒は一合徳利にしっかり入っていて、お猪口に手酌で頂きます。
続いて根室産という雲丹。
これまた今年は不漁で高価だというのにたっぷり載せて頂きました。素敵。
トロタクの上にいくらを載せた手巻きを寿司の〆で頂きます。これが文句なしに贅沢美味、です。
食べたら消えてなくなる魔法がかかっているのか、手づから受け取ったはずなのに、数十秒後に消滅していました。
〆にお味噌汁を頂き、デザートはラフランスの果実とシャーベットと。
お茶を頂いてほうっとします。
車海老以降の後半については、定番の寿司ネタということもあって、前回とほぼ同じでしたが、いろいろ工夫の中身を伺いながら頂くことで、より味わい深くなったように思います。
一方、前半部については明らかに旬のものが取り入れられていて、鮨屋ならではの季節感を味わわせて頂きました。(夏は鰹とか出てましたね)
あと、この日改めて気付きましたが、板前さんの包丁さばき、見ているだけで本当に飽きません。
刃を当てた瞬間に身にすっと入る包丁の切れ味、様々な方向から切り込むことで食感をコントロールする妙味。工夫が重ねられた調味料。料理としての結果、お味はもちろんですが、この特等席にあっては、素材が料理されてゆくプロセスもまた特上の調味料になっているように思います。
誰とも会話はなくとも、調理場面を見ているだけで、自分のなかで豊かで贅沢な時間を過ごしているという実感。
鮨を頂くという行為と共に、このゆっくりとした時間を過ごさせて頂けること、これが上等時間と呼ぶべき過ごし方です。至福。
お会計は座席で行いますが、料理代+飲んだお酒代のみという明朗会計。前回こちらで教えて頂いた、鮨屋はおまかせが一番お得という鉄則を本日もしっかり感じました。
板前さんと冗談混じりで話をしていましたが、9月、1月ときたので、次は4月くらいですか。
初春のお魚が頂けるようであれば、嬉しいところです。ただ、この日の雑談にも出ましたが、日本の旬の魚が従来と変わってきているというのも本当ですよねぇ。
ご馳走様でした。