3回
2024/03 訪問
あまりにも前回の衝撃的な美味しさが忘れられない。次は必ず夜に伺うと決めて数ヶ月、新潟駅から更に1時間ほど北上して村上市の名店である新多久さんに再訪いたしました。電車の本数がとても少ないので時刻表を確認してから伺うと良いかもしれません。
前回は車の運転がありノンアルビールでしたので今回は心置きなく飲むために電車で伺いました。私は優柔不断なのでお酒はおまかせコース9種でお願いし、ストレスフリーで最高な時間を過ごせました。お食事については以下に代表的なものを少し。
がさ海老真薯
ガサ海老とはクロザコ海老の事らしく、北陸でいうガス海老とかモサ海老。しいてはヒゲ海老なんかも仲間らしく小学生男子が喜びそうなロボット的な見た目の海老です。このガサ海老を真薯にしているわけですが数匹の海老が1匹まるごと綺麗に向きを揃えて優しい真薯になっており、ふわりとした食感、半生に近い海老の火入れによる甘味と香り、どうやって作ったらこうなるのか非常に不思議な逸品。お箸で海老に触れた瞬間、そのまま整列している海老の形状と微妙な加減の火入れに驚くことでしょう。
浅月の茶碗蒸し
お抹茶かと思える見た目のインパクトから始まります。朝月の爽やかな香りを感じつつも嫌な苦味やエグ味は全く残っておりません。茶碗蒸しと言いながらもある種のスープ料理でもあり最後の一口まで浅月がしっかり感じられる印象深い逸品でした。鮑の肝和えの後という事もあり浅月が口の中をリセットしてくれます。今のところ私の人生ベストオブ茶碗蒸しは新多久さんでいただいた浅月の茶碗蒸し、まさにこれです。
全体的に魚が美しく適度に脱水されています。まな板の上で貼り付く音、包丁を入れる際はスーッではなくショリショリという音が聞こえるほど。大根で挟んで金串を打って皮目を炙り、香ばしさとともに皮目の脂が活性化、筋肉質な生身の旨さ、溶け出す脂の旨さ、香ばしい皮目の旨さ。焼き物における食感のメリハリと香り。新多久さんの焼きは本当にずば抜けて素晴らしい。もう美味すぎ罪で逮捕しちゃうぞ。
穴熊と芹のお鍋
直前に提供された猪肉も臭みゼロどころか甘味を感じるものでありナッツとの相性抜群で最高に美味しかったのですが、初めて食べた穴熊は更に上をいく衝撃的な美味しさでした。獣っぽさは皆無、何よりも脂はミルキーさを感じるものであり嫌みのない甘味。芹の苦味が良いアクセントになっており更に穴熊のナッツに似た香りやミルキー感を増幅してくれます。しつこくない脂は旨味の塊であり食べたことのない穴熊の美味しさが衝撃的でした。お腹が膨れてきている後半戦においてこの美味しさ。未知な食材と初めて出会う形容しがたい美味しさでした。
最後にご飯が土鍋で提供され、食べきれない分は塩おむすびにして持帰りが出来ます。しかも最後に来てご飯のお供として数品が提供されるという何とも贅沢な流れ。ほとんどの方はここまで来る頃には間違いなくお腹いっぱいになっている事でしょう。
素晴らしい仕入れと丁寧な調理、慌ただしくない雰囲気、食材と調理に対するまっすぐな姿勢、そして地産地消と生産者価値の向上。どこから見ても本当に素晴らしい。
コースの値段を間違えてないか?と心配になるほど贅沢な食材の数々が提供され、今回も村上に来てこの地ならではのお料理をいただけました。
飛行機や新幹線を乗り継いででも全国から遠征する価値のあるお店である事を再認識いたしました。今回の遠征で最後の食事に新多久さんを選んで本当に良かった。帰りに次回の予約を入れてから飛行機とホテルを押さえて酔い覚ましに村上駅まで歩いて帰宅。
ごちそうさまでした。
また再訪させていただきます。
2024/03/24 更新
2023/08 訪問
火入れの素晴らしさ
たまには割烹を食べようという事で1ヶ月ほど前に予約。新潟空港からレンタカーで北上して新多久さんに伺いました。電車の本数がとても少ないので車が便利だと思います。
ランチ
季節のコース 13,200円
車の運転があるのでノンアルビールを注文。飲みたい衝動を抑えながらのランチとなりました。以下に代表的なものを少し。
マハタ
素晴らしい筋肉質な身、淡いピンク色をまとった見た目にも美しいもの。塩和え的なことにより表面に極々薄いねっとり感が生まれ、噛むほどに甘味と香りが出てきます。そもそもこの魚体が入ってくる仕入れがすごい。すき引き後の別個体を拝見したがとても美人。いやー美味い。美味いしか出てこない。これは本当に美味しかった。
甘鯛
松笠焼き。定番と言えば定番の調理法ですが新多久さんのものは見ただけで違いに気が付くクオリティ。鱗の立ち方、食感、香り。この食感にして油の香りが切れている技術。
意外にも「見た目は松笠、食感も松笠、香りは油」という魚に出会うことも多いですがこれは素晴らしい。
煮こごり
魚の皮が固められており、それもまた魚から出るゼラチン質だけで作られています。ある意味で煮物を作った翌日の鍋の中身であり、不味い要素が見当たりません。皮を使った事でややハードな食感となり咀嚼することで香りが涌き出てきます。
全体的に魚が美しく適度に脱水されています。まな板の上で貼り付く音、包丁を入れる際はスーッではなくショリショリという音が聞こえるほど。金串を打って皮目を炙り、香ばしさとともに皮目の脂が活性化、筋肉質な生身の旨さ、溶け出す脂の旨さ、香ばしい皮目の旨さ。焼き物における食感のメリハリと香り、ここまでくると美味すぎ罪で逮捕される日が近いかもしれません。
そして最後のご飯。
土鍋で提供され、食べきれない分は塩おむすびにして持帰りが出来ます。しかも最後に来てご飯のお供として2品が提供されるという何とも贅沢な流れ。ヌタウナギと黄身タレの刺身。ヌタウナギとは珍しいですね。誤解を恐れずお伝えするなら、焼肉屋の中でもホルモンに定評のあるちょっと良い店でシークレットなマルチョウを食べたような感じ。これ下準備が大変だろうなーって思う食材であり、これはお店でしか食べられませんね。山椒の香りも良く、個人的には大好きな逸品でした。
素晴らしい仕入れと丁寧な調理、慌ただしくない雰囲気、食材と調理に対するまっすぐな姿勢、そして地産地消と生産者価値の向上。本当に素晴らしい。
コースを間違えてないか?と心配になるほど贅沢な食材の数々が提供され、村上に来てこの地ならではのお料理をいただけました。
ごちそうさまでした。
2023/08/20 更新
あまりにも前回の衝撃的な美味しさが忘れられない。前回の訪店時に今回の予約を入れて帰ったものの待ちきれない日々を過ごすこと3ヵ月。新潟空港でレンタカーを借りまして村上市の名店である新多久さんに再訪いたしました。
電車で向かわれる方は本数がとても少ないので時刻表を確認してから伺うと良いかもしれません。駅から風情のある街並みを歩いて伺うのもまた良いものですよ。
相変わらず立派なお屋敷。手入れや清掃が行き届くそれこそが風格を現しております。打ち水された入口から入るだけで別世界に足を踏み入れたかのよう。この凛とした空気感と店内の温かさが時間を忘れさせてくれます。
私は優柔不断なのでお酒はおまかせコース9種でお願いし、ストレスフリーで最高な時間を過ごせました。ノンアルや冷茶などもあるのでお酒を飲まない方でもお食事を楽しめます。お食事については以下に代表的なものを少し。
がさ海老真薯
ガサ海老とはクロザコ海老の事らしく、北陸でいうガス海老とかモサ海老。しいてはヒゲ海老なんかも仲間らしく小学生男子が喜びそうなロボット的な見た目の海老です。このガサ海老を真薯にしているわけですが数匹の海老が1匹まるごと綺麗に向きを揃えて表面を優しく炙った真薯になっており、ふわりとした食感、半生に近い海老の火入れによる甘味と香り、海老味噌の香りとコク、どうやって作ったらこうなるのか非常に不思議な逸品。お箸で海老に触れた瞬間、そのまま整列している海老の形状と微妙な加減の火入れに驚くことでしょう。
葉玉葱の茶碗蒸し
お抹茶かと思える見た目のインパクトから始まります。そして蓋を開けた際の香りに自然と笑みが溢れます。
前回は浅葱でしたが今回は葉玉葱。爽やかな香りを感じつつも嫌な苦味やエグ味は全く残っておりません。茶碗蒸しと言いながらもある種のスープ料理でもあり最後の一口まで葉玉葱がしっかり感じられる印象深い逸品でした。
今のところ私の人生ベストオブ茶碗蒸しは新多久さんでいただいた茶碗蒸し、まさにこれです。前回もそう思ったので期待値のハードルが全開MAXに上がった状態で今回はいただきましたがそれでも圧倒的に新多久さんの茶碗蒸しが1位に変わりはございません。美味しいと知ってて期待しても更に美味しいが上回る。永遠の美味しさ、メーテルのような終わりのない美味しさ。
全体的に魚が美しく適度に脱水されています。まな板の上で貼り付く音、包丁を入れる際はスーッではなくショリショリという音が聞こえるほど。刺身の厚さも素晴らしく、筋肉質な魚って薄く出す所もありますが厚めに提供して筋肉質である食感を存分に感じることができます。
大根で挟んで金串を打って皮目を炙り、香ばしさとともに皮目の脂が活性化、筋肉質な生身の旨さ、溶け出す脂の旨さ、香ばしい皮目の旨さ。焼き物における食感のメリハリと香り。新多久さんの焼きは本当にずば抜けて素晴らしい。いつも思いますが焼いてる姿を見るだけで飲めます。俗にいう「高級焼鳥店の近火の強火理論」ってここから来てるのかな?と素人の料理好きとしては見入ってしまいました。色んなお店で焼き物をいただきますが明らかに技術の差がここにはあり、それを目の前で見ることが出来るアリーナ席。
いのししのお鍋
当たり前ですが獣っぽさや癖は皆無、脂はわずかにミルキーさを感じますがサッパリというかサラリとしており、甘味があるのに豚肉ほどの重さもないという嫌みのない甘味。
オカヒジキのプツッという心地よい食感が良いアクセントになっており彩りと食感と香りという3方向から口内を満足させてくれます。お腹が膨れてきている後半戦においてこの美味しさ。
そしてどうしても忘れられない1品があります。
それはメインではなく箸休めとして提供された枝豆。この枝豆の香りが異常なくらい爽やかに香っており、コーンのような甘味が特徴。冷やされたそれはサッパリ爽やかに口内をリセットしてくれたわけですが、リセット=ゼロではなく飲み込んだあとに鼻から抜ける爽やかな香りを残してくれ、食べ疲れさせない工夫としてまた箸休めとして使命を全うしたニクいやつ。間違いなく誰もが美味しいとしか感じない名脇役でした。
最後にご飯が土鍋で提供され、食べきれない分は塩おむすびにして持帰りが出来ます。しかも最後に来てご飯のお供として数品が提供されるという何とも贅沢な流れ。ほとんどの方はここまで来る頃には間違いなくお腹いっぱいになっている事でしょう。
素晴らしい仕入れと丁寧な調理、慌ただしくない雰囲気、食材と調理に対するまっすぐな姿勢、そして地産地消と生産者価値の向上。どこから見ても本当に素晴らしい。
コースの値段を間違えてないか?と心配になるほど贅沢な食材の数々が提供され、今回も村上に来てこの地ならではのお料理をいただけました。
飛行機や新幹線を乗り継いででも全国から遠征する価値のあるお店である事を再認識いたしました。今回の新潟遠征も最後の食事に新多久さんを選んで本当に良かった。
ごちそうさまでした。
また再訪させていただきます。
※食事に夢中でほとんど撮影せず