2回
2023/10 訪問
細く長く美しい蕎麦を店主のこだわりと共にいただく!
福山市でもかなり外れの方にあるお蕎麦屋さん。
まだレビューが少なく未知なところもありましたがこの度訪問。
土曜日の11:05、開店間もない時間ですが既に3グループ、8名ほど入店されています。
メニューを見ると十割と二八があります。
はじめてのお店なので基本の二八で天ざるを注文。
10分ほど待ってお蕎麦とご対面、頂きます。
蕎麦を見た瞬間勝利を確信。『絶対うまい』気配をビシビシ感じます。
タイトルにもあるように細く、長く、そして切れていない。なんて綺麗なお蕎麦でしょう。
冷水でキュッと締められたそれを何も付けずそのまま口に含むと柔らかな甘みと控えめでいながらも芳醇な香りを感じ、「あ、これはつゆ無しでイケちゃう系だ」と既に感動。
器の底に3cm程の深さで張られたつゆは甘く、しかし砂糖によるわかりやすい嫌味なクドさはなく、それでいて濃厚で豊か。
甘さに続いてはカドの取れた塩味が鮮やかに後味を彩りスッと余韻を引いていく。こりゃあ美味しい。
しかし、あくまでちょこっと付けがオススメ。
次に薬味。
お決まりのネギは特筆することはありませんが、通常の薬味に大根おろしがあるってけっこういいですね。辛みが効いてて少し乗せて食べるのが楽しい。
そして嬉しいのがワサビです。擦りたての生の本ワサビです。関東のそれなりに有名なお蕎麦屋さんでもここまでこだわるお店ってあんまり無いですよ。
本物のワサビは甘く香りよく、それだけでも美味しいと感じさせるポテンシャルがあります。
しかし他の方のレビューにはそのような言及が見受けられない・・・。
私の嬉しいポイントがズレているのか。
天ぷらは実に潔く、車エビとアスパラのみ。
天然の車エビはそのものが美味しいのですが、こちらはふっくら、プリっとした火入れでジューシーに揚げられており、なお美味しい。
けっこういいお値段と思いましたが、味で納得。
アスパラは細いものではありますが鮮度が良いので香りよく、熱に解された繊維を奥歯で噛み締めると中から熱々のジュースが飛び出してきます。これもいいな。
衣は田舎のお蕎麦屋さんに多いパターンの『厚く、カリカリに、ボリューミーに』とは正反対の薄衣で、しっとりさくりと、口溶けの良いもの。
天ぷら屋さんで頂くそれに近いものを感じます。
衣でお腹を満たしたいわけではない、天ぷらはあくまでお蕎麦のお供、という考えの私にはこの上なくマッチ。嬉しい。
お蕎麦を平らげたらもちろん蕎麦湯。しっかり白みのある、程よいとろみの蕎麦湯。
これが無いんじゃ蕎麦を食ったとは言えねぇぜ。
素材に腕に妥協なし。素晴らしいお店です。
しかしながら、これだけのお店ならカッコつけずに蕎麦は十割にすればよかったと激しく後悔。
再訪確定です。
広島県での麺類においては蕎麦は全くメジャーな食べ物ではなく、外食の選択肢に蕎麦が普通に入るご家庭は実はけっこう少ない。
それにラーメンはもちろん、うどんやパスタと比べてもお店が少ない印象があります。
店数という分母が少ないせいか、レベルも低いのでは、と邪推する姿勢があったかもしれませんがとんだ勘違いで、私自身が知らないだけだったようです。
お店はご高齢のご夫婦で営まれており、お客さんの入り、タイミングによっては注文を取りに来て頂くのに時間がかかることもあると思います。ちなみにこの時、私は10分ほど待って注文し、そこから更に15分待ってお蕎麦にありつけました。
開店すぐでこれくらいなので、お昼のピーク時ならもっと時間がかかるでしょう。ご留意を。
しかし、久しぶりにとても気持ちの良い食事ができました。
多少待つこともありましたが、最後にありがとうと言われた時の笑顔の素敵なこと。
人として、見習わなければなりません。
こにらこそ、美味しいお蕎麦をありがとうございました。お身体に気をつけてくださいね。
ごちそうさまでした。
2023/10/22 更新
蕎麦の味が良い。
シンプルにそれだけがこちらのお店に足を運ばせます。
蕎麦粉は北海道、長野、茨城のものをブレンド。
つゆは濃く、辛く。本枯節の風味が実に豊かでいながら重さを感じさせないカドのとれたもの。
キリリと締められた蕎麦は細く長く、ギュッとした歯触りでいて清らかな喉越し。
いくら保存方法が改善されているとて、蕎麦が最も美味しくないと言われるのは夏。
それなのに風味は豊かに軽やかに、ほのかな優しい甘さが舌をくすぐります。
薬味はおろしたての本わさび。
香りよく、自然なわさびの甘さを感じたあとにスキッとした鮮烈な刺激が脳天を突き上げる。
偽物は使わない。本物の蕎麦には本物を添える。
大根おろしも素晴らしく合う。
つゆに溶かないよう気をつけながら蕎麦にちょこんと乗せて空気とともに啜る。
辛みと香りが口いっぱいに広がり、なんとも涼やかだ。
今回の天ぷらは車海老とアスパラ。
良い素材に余計なことはしない。
薄く、ストッキングのように纏わせた衣は余分な水分を抜きつつふんわりと揚げられている。
もちろん、中身の海老は絶品。
天ぷらは蕎麦のお供として楽しむものであり、単純に腹を膨らませるためのものではない。
裏も表もなく花を咲かせるなどといって分厚く衣をつけてしまっては口の中が油まみれになって繊細な蕎麦の風味を壊してしまう。
もちろん、ガツっとした天ぷらが良い場面はあるが蕎麦屋においてはその限りではない。
どれだけ豪華なネタであっても主役は蕎麦。
そこを履き違えているお店が残念ながらかなり多い。
生房さんは、本物の蕎麦屋さん。
これから暑い日が続きます。
お身体に気をつけてこれからも美味しいお蕎麦を食べさせてください。
ごちそうさまでした。