森宮さんさんが投稿したかに伍寅(東京/池袋)の口コミ詳細

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森宮さんの食べ道楽

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かに伍寅池袋、要町/かに、しゃぶしゃぶ、鍋

1

  • 夜の点数:4.5

      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.5
      • |雰囲気 4.1
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/10 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.5
    • | 雰囲気4.1
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク-

蟹、蟹、蟹。すべての皿に、海の贅が息づく!

十月の風は、ようやく夏の執念を手放したようだった。ビルの谷間に浮かぶ月は、輪郭を滲ませながら池袋の街を見下ろしている。人波のざわめきの奥で、誰かの笑い声がやけに遠く聞こえた。薄い上着の襟を立て、歩きながら思う。季節が変わる瞬間というのは、こうして音の密度が変わるものなのかもしれない。

池袋駅西口から数分、夜の喧騒を抜けた先に「かに伍寅-GOTORA」は静かに息づいている。雑居ビルの地下へと続く階段は、まるで別世界への入口のようだ。黒と金を基調とした意匠が、灯りの反射でわずかに揺らぎ、和の気配に現代の洗練が重なる。
ここでは蟹が主役。本ずわい、特大たらば。素材の力を引き出すため、「焼き」「蒸し」「茹で」「生」と姿を変える。その一皿ごとに、職人の呼吸と季節の温度が確かに宿っている。

本日は以下のコース料理をいただいた。
●かにすき鍋 上コース

【先付】本ずわい蟹のかに酢
瑞々しく茹で上げた本ずわい蟹が、ほどよい酸味のかに酢で一層その甘みを際立たせる。殻を割るたび、湯気の奥から海の香がふっと立ちのぼる。添えられた蟹味噌は、濃厚でいて嫌味がなく、舌の上でゆるやかに溶けていく。最初の一皿にして、この店の誇りと節度が静かに伝わる。

【逸品】餡掛け茶碗蒸し
柔らかな茶碗蒸しの上に、ほぐした蟹とイクラが宝石のように輝く。ひと口すくえば、出汁の旨みが舌を包み、蟹の繊細な甘みがその奥から静かに顔を出す。イクラの塩味が程よいアクセントとなり、和の滋味が一碗の中で見事に調和している

【刺身】本ずわい蟹のお刺身
透き通るような身質の本ずわい蟹は、口に運ぶたびに上品な甘みを放つ。かに酢で引き締めれば凛とした輪郭が立ち、わさび醤油では旨みの余白が広がる。途中でレモンをひと搾りすれば、海の香りが一瞬で目を覚まし、味覚が再び恋に落ちる。

【焼物】本ずわい蟹のバター焼き
香ばしいバターの香りに誘われ、口に入れた瞬間、蟹の甘みが湧き上がる。熱でとろけた身が舌に触れるたび、海と乳脂の旨みが静かに溶け合う。余計な言葉を挟む隙もなく、ただ黙って味わいたくなる。火入れと香りの加減に、料理人の研ぎ澄まされた感性が滲む一皿だ。

【蒸物】本ずわい蟹と房総ポークの焼売
蒸気の向こうから現れる焼売は、蟹と房総ポークの幸福な出会いを象徴している。口にすれば、肉の旨みがふくよかに広がり、その隙間を蟹の甘みがすっと通り抜ける。ひと粒に宿る温度と香りが、和と洋の境界をやさしく曖昧にしていく。

【メイン】 かにすき鍋
鍋の中で朱と白が織りなす光景は、まるで冬の祝祭の序章のようだ。殻をまとった立派な蟹が湯気のなかで艶めき、透き通る出汁の中で静かに身をほどいていく。昆布と蟹の旨みが重なり合い、そこに椎茸の滋香、長ねぎの甘み、豆腐のやわらかさが寄り添う。火が進むごとに香りは膨らみ、食材たちはそれぞれの声を奏でながら、一つの調和へと溶け合っていく。箸を入れた瞬間、繊細な身がほろりと崩れ、舌の上で海の余韻を残して消える。そのあとに残るのは、出汁に染み出た蟹の甘みと野菜の優しさ。見た目の豪快さの裏に、職人の緻密な計算が息づく。寒い夜、誰かと静かに鍋を囲みたくなる、そんな一品だ。

【 〆 】雑炊
鍋の終わりに現れる雑炊は、まるで宴の余白をそっと包み込むようだ。蟹の旨みをたっぷり含んだ出汁にご飯が溶け込み、そこへ加えたほぐし身がふわりと漂う。卵を割り入れると、黄金のヴェールが全体を優しく覆い、香りが一気に立ち上る。ひと口すくえば、濃厚でいながらもどこか儚い——海の記憶が、静かに舌の上でほどけていく。

【甘味】本日のアイスクリーム
締めくくりは、静かな余白のような一皿。濃厚なバニラが舌にやすらぎを残し、柚子シャーベットがその後を爽やかに洗い流す。甘さと香りが、夜の余韻を静かに整えていく。

店を出ると、夜の池袋はすでに深い蒼をまとっていた。かに伍寅で味わった温かな余熱が、まだ体の奥に残っている。街のざわめきの中を歩きながら、ふと見上げたビルの隙間に月が浮かんでいた。都会の光にかき消されながらも、確かにそこにある。その月を見ていると、今日という一日の輪郭が、静かに確かなものへと結ばれていく気がした。
是非また伺わせていただきます。
ご馳走様でした。

2025/11/15 更新

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