森宮さんさんが投稿したNOGI(東京/乃木坂)の口コミ詳細

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森宮さんの食べ道楽

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NOGI乃木坂、六本木、表参道/中華料理

1

  • 夜の点数:4.6

      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.5
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/11 訪問

  • 夜の点数:4.6

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.5
    • | 雰囲気4.5
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク-

素材と火入れが語る、絶品ばかりの小皿中華の物語。

11月の半ば、乃木坂の夜は季節を急かすように冷え込んでいた。薄手のコートはすでに役目を果たせず、風が袖口から容赦なく入り込む。行き交う人々も歩幅を速め、店先の灯りだけが温度を持っている。街路樹の枝が揺れるたび、冬の気配が音もなく忍び寄る。歩きながら、ようやく自分も年の終わりへ向かっていることを思い知らされる。

NOGI(ノギ)は、西麻布の細い路地にそっと姿を潜めている。扉を開けると、照明の陰影が静かにゆらぎ、カウンター越しに炎の律動と包丁の軌跡が見える。ここでは小皿中華が主役だが、そこに宿る思想は“朴素好菜”。飾り立てず、素材の声を最大限に引き出すことに重きが置かれている。
料理長・木村和明氏が長年の経験で磨いた火加減と調味は、一皿ごとに輪郭の異なる物語を描き出す。九品構成の「禾-NOGI-コース」や、北京ダックとフカヒレを組み合わせた重厚なコースも用意され、ワインとの巡り合わせがさらに味の世界を広げてくれるという。
ここには、料理が語り手となる静かな舞台がある。

本日は以下のコース料理をいただいた。

●禾-NOGI-コース

◇前菜
・梨の桂花陳酒漬け
・よだれ鶏
・双色大根
・黄金皮蛋
・蕪餅

前菜は、静かな序章のようでいて一皿ごとに明確な個性を放つ。梨の桂花陳酒漬けは、金木犀の香りが果肉に染み込み、秋の午後をそのまま閉じ込めたような艶やかさ。よだれ鶏は痺れと旨味が綾を成し、舌に小さな衝撃を残す。花弁のように整えられた双色大根は、歯ざわりで季節を語り、黄金皮蛋は短熟成ゆえの澄んだコクが豆腐の滑らかさに寄り添う。蕪餅は味噌の香ばしさがふっと広がり、序盤にして早くも物語の深みを予感させる。

◇白菜と干し貝柱の蒸しスープ
静かにして圧倒的だった。湯気に乗って立ち上がる香りは、海と畑が密やかに握手を交わしたよう。白菜は芯まで甘く、干し貝柱はほどける瞬間に深い旨味を放ち、碗の底から静かな余熱のように広がっていく。派手さはないのに、一口で舌の記憶に深く刻まれる。

◇大根と金華ハムの春巻き
大根と金華ハムの春巻きは、一口で発想の妙に膝を打つ。薄衣が軽やかに砕けると、瑞々しい大根がほとばしり、後追いで金華ハムの深い塩香が静かに主張する。素材同士がぶつかるのではなく、まるで長年の相棒のように呼吸を合わせ、シンプルな形に上品な余波を宿している。

◇上海蟹小籠包
上海蟹の小籠包は、蒸気の向こうに密やかな贅沢を忍ばせている。薄い皮をそっと破ると、濃厚な蟹の香りが一気に立ちのぼり、上にあしらわれた蟹味噌が追い打ちのように旨味を重ねる。スープは円やかで深く、それでいて重さを感じさせない。小さな器に、季節の富が過不足なく封じ込められている。

◇北京ダック
火と油が長い対話を重ねた末に生まれた、職人技の結晶だ。中華鍋の中で何度も油を浴びたアヒルは、皮目に緊張感のある光沢をまとい、箸を入れた瞬間に小気味よい音を返す。続く肉は驚くほどしっとりとして、脂が静かに舌へ滲む。そこへ甘口のソースが柔らかなコクを添え、ネギの清涼が一閃のように走る。
重厚さと軽やかさが同居する、その絶妙な均衡に心を掴まれる一皿。

◇青菜と干し海老の炒め
一見すると素朴な皿でありながら、その奥で香りが複雑に重なり合う。油にふわりと立った干し海老の香ばしさが最初の狼煙となり、続いて青菜の瑞々しい苦味と甘みが鮮やかに広がる。火入れは寸分の迷いもなく、茎は歯ごたえを残し、葉はしっとりと旨味を抱え込む。噛むたびに潮風のような余香が立ち、料理人の技術が静かに主張する一品

◇鶏とカシューナッツの甘辛炒め
舌の上でリズムを刻むような一皿。鶏肉は火入れが絶妙で柔らかく、甘辛いソースが皮一枚ごとに絡み、香ばしいカシューナッツが歯触りにアクセントを加える。甘みと旨味が重なったソースは重たさを感じさせず、最後の一口まで飽きさせない。噛むたびに鶏とナッツ、そして濃密な味わいが交互に躍動し、軽やかに食欲を刺激する。

◇上海蟹のあんかけ炒飯
上海蟹のあんかけ炒飯は、香りの第一撃から心を掴む。蟹の甘みと旨味がふんだんに溶け出したあんが、熱々の炒飯を艶やかに包み込み、一粒一粒に深い味の層を与える。炒飯自体は軽やかで、焦げ香と米の粒感があんの濃厚さと絶妙に調和する。口に運ぶたび、蟹の季節感と火入れの技が交差し、豊かさと軽快さを同時に味わわせる、計算された贅沢感に満ちた一皿。

◇黒胡麻団子入り甘酒
香ばしさと甘みの微妙な綾を楽しむ一杯だ。とろりとした甘酒が口中で温かく広がると、モチモチとした黒胡麻団子の中から、濃厚な胡麻の香りが後から追いかける。甘酒の素朴な甘さと団子の深いコクが静かに交わり、飲むたびに心がほどけるような、季節の穏やかな贅沢を味わえる一品。

店を出ると、夜風が肌をさらりと撫でた。満ち足りた余韻が胸に残り、甘く香ばしい記憶が静かに脳裏を巡る。街灯に映る影は長く、歩くたびに舗道のひんやりとした感触が足裏に伝わる。料理の一皿一皿が静かに物語を紡ぎ、夜の乃木坂はその余韻を受け止める舞台のようだ。何気ない路地の奥に、また来る理由をそっと置いていく、そんな夜の帰路だった。
是非また伺わせていただきます。
ご馳走様でした。

2025/12/10 更新

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