森宮さんさんが投稿したコクボのまゝ(東京/下北沢)の口コミ詳細

レビュアーのカバー画像

森宮グルメ

メッセージを送る

この口コミは、森宮さんさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。 問題のある口コミを報告する

コクボのまゝ東北沢、下北沢、池ノ上/日本料理、海鮮

1

  • 夜の点数:4.5

      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.4
      • |雰囲気 4.4
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/12 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.4
    • | 雰囲気4.4
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク-

出汁が語り、季節が応える。静かな夜に通いたくなる東北沢の名店。

12月半ばの東北沢は、夜になると街の輪郭を研ぎ澄ませるほど冷え込んだ。吐く息は白く、足音だけが静かな住宅街に残る。見上げれば、都会のはずの空に星がはっきりと瞬いている。凍てつく空気のなかを歩きながら、この夜が何かの始まりになる予感を、理由もなく抱いていた。

東北沢の住宅街を進むと、ふと歩調を緩めたくなる一角がある。コクボのまゝは、そんな場所に静かに明かりを灯している。暖簾をくぐれば、背筋が自然と伸びる空気と、料理人の所作を間近に感じられるカウンターが待っていた。
月替わりのコースは、丹念に引かれた出汁の椀から始まり、炭火で火入れされた魚や肉、締めには土鍋で炊き上げる白飯まで九品。器の選び方や盛り付けにも確かな意図が感じられ、皿ごとに季節が語りかけてくるという。
気負わず訪れて、日常の輪郭が少しだけ研ぎ澄まされる。そんな夜を想像させる店である。

本日は、その四季折々の味覚を堪能出来る、月替わりのコースをいただいた。

◇先付
・鱈白子と百合根の茶碗蒸し
冬の静けさを閉じ込めた一碗。とろりとほどける白子の濃密さに、百合根のほのかな甘みが重なり、キクラゲの歯触りがリズムを添える。仕上げの生姜餡が全体を引き締め、温度と香りのコントラストで舌を覚醒させる。先付にして、この店の呼吸が伝わってくる。

◇前菜
師走の前菜盛り合わせ
・鮟肝ポン酢
・お浸し
・林檎の白和え
・薩摩芋レモン煮
・京芋
・茄子田楽
・落花生塩茹で

小さな皿で冬を巡る序章。鮟肝ポン酢の艶やかなコクに始まり、せりと花びら茸のお浸しの清冽さが口中を整える。林檎白和えの甘酸、薩摩芋レモン煮の軽快な余白。出汁を含ませ揚げた京芋の芯、茄子田楽の香ばしさ、塩茹で落花生が食卓の温度を上げる。皿を追うごとに味の陰影が深まり、年の瀬の時間がゆっくりとほどけていく。

◇椀物
・ずわい蟹飛龍頭蟹味噌椀
ずわい蟹飛龍頭の椀は、湯気の向こうから冬の旨みが立ち上がる。蟹と豆腐、山芋を合わせ揚げた生地は、がんもどきのように軽やかで、箸を入れるとふわりとほどける。出汁に溶かした蟹味噌の深いコクが全体を包み、余韻は穏やかに、しかし確かに舌に残る。

◇造り
季節のお造り 自家製昆布醤油
・真鯛(一塩、カボスの果汁)
・メバチマグロ
・ブリ
・赤海老

季節のお造りは、静かな緊張感を湛えた一皿。真鯛は一塩とカボスで輪郭を際立たせ、白身の甘みを研ぎ澄ます。メバチマグロの端正な赤、脂を含んだブリの力強さ、赤海老の艶やかな旨み。自家製昆布醤油がそれぞれの個性を束ね、素材の声を過不足なく引き出していく。

◇炭火焼
・黒毛和牛炭火焼き 季節の薬味を添えて
黒毛和牛ランプの炭火焼は、火と脂の距離感が見事だ。炭の香をまといながら、赤身はしっとりとした張りを保ち、噛むほどに肉の滋味がにじむ。菜の花をソースに仕立て、実山椒を忍ばせれば、ほろ苦さと痺れが春の気配を呼び込む。茄子や菜の花の揚げ浸し、椎茸が脇を固め、一皿で季節の呼吸を味わわせる。

◇油物
・コクボの海老真丈
既存の記憶を軽やかに裏切る一品であった。衣に箸を入れた瞬間、内に抱えた出汁が勢いよく溢れ、海老の甘みと香りが立ち上がる。すり身の密度は軽やかで、油の輪郭は驚くほど澄んでいる。揚げ物でありながら、後味は潔く、椀物の余情すら感じさせる完成度である。お店のスペシャリテのような一品。

◇小鉢
・鯖の南蛮漬け
冷やし小鉢は、温度で語る静かな驚き。鯖の南蛮漬けがもたらす旨みと酸が輪郭を描き、えのきとなめこのとろみが出汁と酢をやさしく抱え込む。冷やすことで味は尖らず、むしろ奥行きを深め、後味は澄んだ清涼感へと収束する。献立の流れを整える、理知的な一皿。

◇食事
・鰤と牛蒡の土鍋ご飯
蓋を開けた瞬間に冬の台所の記憶を呼び起こす。脂を含んだ鰤の旨みが米一粒一粒に行き渡り、土の香を残した牛蒡が味わいに芯を通す。添えられた赤出汁は赤海老の頭から引いた深いコクがあり、食後へ向かう歩調を整える。香の物の歯切れも心地よく、締めにふさわしい温度と余白を残す。

◇甘味
・林檎アイスクリーム
食後の空気をやさしくほどく甘味。ひと匙含めば、果実の清涼な酸味とミルクの丸みが溶け合い、そこへシナモンの香りが静かに寄り添う。添えられた林檎の切り身が食感の対比を生み、甘さは軽やかに着地する。余韻を引き延ばさず、きちんと終わらせる美学がある。

最後の一口を飲み干し、湯のみを静かに置く。温かいお茶が体の奥に行き渡り、張りつめていた感覚がゆっくりほどけていく。席を立つと、店内の灯りは先ほどまでより少しだけ遠く感じられた。暖簾を押し分け外に出れば、夜気が頬を引き締める。東北沢の静かな道を歩きながら、今夜の出来事を胸の内にしまい込む。
是非また伺わせていただきます。
ご馳走様でした。

2026/01/03 更新

エリアから探す

すべて

開く

北海道・東北
北海道 青森 秋田 岩手 山形 宮城 福島
関東
東京 神奈川 千葉 埼玉 群馬 栃木 茨城
中部
愛知 三重 岐阜 静岡 山梨 長野 新潟 石川 福井 富山
関西
大阪 京都 兵庫 滋賀 奈良 和歌山
中国・四国
広島 岡山 山口 島根 鳥取 徳島 香川 愛媛 高知
九州・沖縄
福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
アジア
中国 香港 マカオ 韓国 台湾 シンガポール タイ インドネシア ベトナム マレーシア フィリピン スリランカ
北米
アメリカ
ハワイ
ハワイ
グアム
グアム
オセアニア
オーストラリア
ヨーロッパ
イギリス アイルランド フランス ドイツ イタリア スペイン ポルトガル スイス オーストリア オランダ ベルギー ルクセンブルグ デンマーク スウェーデン
中南米
メキシコ ブラジル ペルー
アフリカ
南アフリカ

閉じる

予算

営業時間

ページの先頭へ