1回
2026/01 訪問
完全予約制「moto」で味わう、“九州の薫り”を纏ったイノベーティブ中華ランチコース!
阿里山金萱茶(アリサンキンセンチャ)
阿里山金萱茶(アリサンキンセンチャ)
前菜
みつせ鶏のゴマソースがけ
上:紅くるり大根の甘酢漬け/下:糸島産トマトの杏露酒漬けとクラゲの冷菜
シロウオと石鯛のお刺身
つぶ貝のオイスターソース漬け
菊芋と干し貝柱のスープ
菊芋と干し貝柱のスープ
ソフトシェルクラブの姿煮
ソフトシェルクラブの姿煮
糸島豚
糸島豚
お汁そば
お汁そば
お汁そば
デザート2種
晩白柚のジュレと杏仁豆腐
晩白柚のジュレと杏仁豆腐
りんご入りのタルト
メニュー
メニュー
メニュー
メニュー
店内
店内
店内
外観
2026/01/24 更新
福岡市地下鉄空港線「赤坂駅」から徒歩7分ほど、 昭和通りから浜の町公園へ抜ける通りに入った道沿いに、完全予約制の中華料理/イノベーティブレストラン「moto」に伺いました。
コンセプトは「九州の薫り」。糸島野菜を中心とした地元野菜、玄界灘の鮮魚、九州の肉など、土地の力が伝わる食材を独創的な発想で組み立てていくお店です。
オーナーシェフ作元さんは「グランドハイアット福岡」「ホテル日航福岡」の中華部門で研鑽を積み、水上公園の「星期菜」で料理長を務めた実力派。
店名は名字の「元」から取って「moto」としたそうです。
【店舗】
通り沿いに溶け込むように佇みつつ、予約制の店らしい“隠れ家感”もあり、入口に近づくと自然と背筋が伸びる雰囲気。
店前に立つだけで「ここから特別な食事が始まる」という期待が高まります。
店内は温かみのある木を基調に、落ち着いた空気感。
存在感のある幅広カウンターは6席で、調理場と客席が垣根なくつながるつくりです。
奥の厨房ではオーナーが鋭い集中力で腕を振り、火入れや盛り付けの緊張感もそのままカウンターに届きます。
ほかにテーブル8席、個室1部屋(4席)もあり、会食から少人数の記念日利用まで対応できそうです。
【メニュー】
ランチはコースのみで、3,800円と6,050円の2種類。
ドリンクも豊富です。
【オーダー】
★阿里山金萱茶(アリサンキンセンチャ)…¥800
1980年代初頭に台湾で開発された烏龍茶で、「12号烏龍茶」「ミルク烏龍茶」とも呼ばれる一杯。
湯気の立ち上がりからバニラを思わせる甘い香りがふわり。
口当たりは角がなく、ほんのりミルキーな余韻とフローラルな風味が静かに続きます。
食中茶として万能で、料理の味を邪魔せず、油分をすっと流してくれるタイプ。
しかも2回お代わり可能で、コースを通して頼もしい存在です。
★ランチコース…¥3,800
■前菜
・みつせ鶏のゴマソースがけ
佐賀県三瀬村発祥の銘柄鶏「みつせ鶏」は、しっとり柔らかいのに旨みが濃いのが魅力。
ゴマソースは香ばしさが前に出つつ、舌にまとわりつかず上品。
鶏のコクを引き上げながら、後味は軽くまとまり、次の皿への導入として気持ちが整います。
・上:紅くるり大根の甘酢漬け/下:糸島産トマトの杏露酒漬けとクラゲの冷菜
鮮やかな紅くるり大根がまず目を奪います。
甘酢は酸が立ちすぎず、輪郭はキリッとしていながらも角が丸い印象。
大根はシャキッと歯切れがよく、口の中が一気にリセットされます。
下の皿は、糸島トマトの瑞々しさに杏露酒の華やかな香りが重なり、甘やかな余韻がふわっと残ります。クラゲはコリコリを越えて「プチッ」と小気味よい弾み。
香りと食感で遊ばせつつ、全体の温度感は涼やかで、前菜として完成度が高いです。
・シロウオと石鯛のお刺身(山椒ソース)
シロウオの透明感ある口当たりに、石鯛の締まった旨みが並びます。
山椒ソースは、痺れで支配するのではなく、柑橘のような清涼感をまとわせる使い方。
刺身の甘みが引き立ち、後口がすっと消えていくため、魚の鮮度の良さも際立ちます。
・つぶ貝のオイスターソース漬け
つぶ貝は噛むほどに旨みがにじむタイプで、コリッとした歯応えが心地よいです。
オイスターソースのコクが寄り添い、貝の風味を消さないバランス。
お茶とも相性が良い一皿です。
■菊芋と干し貝柱のスープ
見た目以上に「濃厚」という言葉がしっくりくるスープ。
菊芋のやさしい甘みと、干し貝柱の旨みが層になって押し寄せます。
柔らかく煮込まれた「もものすけ(赤カブ)」は、箸を入れるとほろっとほどけ、スープを吸ってとろけるよう。
上に振られた干し貝柱は、最初はややサクッと軽い歯触りで、スープに浸すと一転してとろんと馴染み、香りがふくらみます。
温度と時間で食感が変化するのも楽しいポイントです。
■ソフトシェルクラブの姿煮
脱皮したてのソフトシェルクラブを、箸でいただくスタイル。
表面はカリカリに仕上げられ、噛んだ瞬間は軽やかですが、噛み締めるほどにしっかり「カニ」が立ち上がります。
完熟トマトで作ったスイートチリソースは、甘酸っぱさが軸で、後からほんのりスパイスが追いかける味設計。
辛さで押すのではなく、爽やかさと香りでまとめているため、重たくなりません。
口の中に残るのは、カニの旨みとトマトの余韻。中華の枠に収まらない軽快さがあります。
■糸島豚
糸島豚は柔らかい肉質、脂の甘み、臭みの少なさが魅力。
供されるのは一口サイズのロールが3つ。
表面はカリカリと香ばしく焼き上げられ、艶のある黒酢ソースがきりっと味を締めます。
中には大根が仕込まれており、箸を入れると驚くほどトロトロ。
大根の「煮含めた甘み」と豚の「脂の甘み」が重なるのに、黒酢の酸が全体を引き締め、後口はすっきり。
上のスティックカリフラワーは、シャキッとした歯触りで、濃淡のリズムをつける名脇役でした。
見た目に反して、香ばしさ・酸・とろみ・歯切れが立体的に組み上がっています。
■お汁そば
「星期菜」出身と聞くと担々麺を想像しますが、ここで来るのはまさかの変化球。 糸島豚のばら肉と黄ニラをトッピングした、澄んだおつゆのお汁そばです。
スープは透明感があり、さっぱりしつつも旨みはしっかり。刻みねぎがたっぷり入り、七味がふわっと香りのアクセントになります。
中細麺はつるっとした食感で、喉越しが非常に良く、後半に出てきても箸が止まりません。
コース終盤を軽やかに着地させる、計算された一杯でした。
■デザート
デザートは嬉しい2種類。
・晩白柚のジュレと杏仁豆腐
杏仁豆腐のなめらかな舌触りに、ココナッツミルクがかかってまろやか。
そこへ晩白柚のジュレが「ぷるん」と乗り、食べ進めるほどに柑橘の香りが広がります。
晩白柚は柚子のように良い香りを持ち、甘みと酸味のバランスが良いのが特徴。
ココナッツの丸みが酸をやさしく包み、後味は爽やかに整います。
濃厚な料理のあとでも、口の中がすっと軽くなるデザートです。
・りんご入りのタルト
焼き立てで温かく、表面はカリッと香ばしい焼き上がり。
中はふわふわで、りんごのシャキッとした食感がしっかり残っています。
温度差と食感差が心地よく、最後にしっかり締めてくれる構成が好印象でした。
【あとがき】
さすが「星期菜」で料理長を務めた実力派。
火入れ、香りの組み立て、食感のコントロールまで、随所に経験値が見えました。
九州産の食材が豊富に使われ、独創的でありながら、味の着地点は明快。
口に入れるまで「どんな味」「どんな食感」か想像がつかないのに、食べるときちんと納得できるのが面白いところです。
食後はオーナーと厨房スタッフ2名が外まで出て見送りしてくださり、温かさまで含めて記憶に残ります。
季節が変わった頃に、また別の「九州の薫り」を確かめに行きたくなる一軒でした。
ごちそうさまでした。