2回
2025/02 訪問
山海の幸に舌鼓、妥協なき杜のキュイジーヌ
2022年、勾当台公園側にオープンしたモダンフレンチ。
シェフの渡邊政也氏は、仙台を代表するレストラン「nacree」でセカンドを務めるなど確かなキャリアの持ち主です。
私が宮城で最も尊信するレストランであり、郷土の食材を用いた華やかながらナチュラルな表現は唯一無二。
今宵のコースは最上級の「menu ark」。
お酒が飲めるなら絶対にフルペアリングをつけましょう。
まずは凝りに凝ったアミューズ3種。
ホタルイカと黒米のタルトは、スモーキーなホタルイカにプチプチとした黒米の食感が合わさった最強のトップバッター。
真っ黒な物体は竹炭で色付けされた白子のフリット。当然ながら中はトロトロの熱々でありアミューズの域を超えています。
驚いたのは赤い花のような何か。スリランカ出身のスーシェフが手がけたものであり、母国の伝統菓子「コキス」をアレンジしたものだとか。
下部にはサワークリームっぽいソースが仕込まれており、サヨリの食感とも調和して面白い。
前菜その1、車海老と蕪、フロマージュブランで構成された可愛らしい一皿です。
バターでレアに火入れされた車海老を昆布締めの蕪でロール、それにヴァンジョーヌを合わせるのですからたまらない。
前菜その2、じっくりとグリルされた菊芋。
トロリと濃縮された菊芋を、セリなどを主体とした日本の香草たち、ブルーチーズが香る濃厚なソースと絡めていただきます。
ワインはローリー・ガスマンの甘口リースリング。冬に嬉しいこっくりした味わいが良いですね。
前菜その3、数段階の工程を経て最後は薪釜で仕上げたというカリフラワー。ソースはオランデーズ、甲殻類の泡。
香ばしさと酸の塩梅が絶妙。ワインもバター感と柑橘感が入り混じったニュージーランドのシャルドネを合わせます。
どのお皿もソースが素晴らしく、パンで拭うとこれまで裏方に徹していた食材の風味が際立ち二度美味しい。
魚料理その1は閖上産のカサゴ。蕗の薹ソースに鱗状の島にんじんが美しく、ナッツのソースが全体をまとめています。
付け合わせの菜の花は心地よい苦味があり、春の訪れを感じます。ペアリングはシャブリでした。
魚料理その2、鮑にちぢみほうれん草。茶と緑のコントラストにうっとり。
朝から仕込んだ鮑はモニモニと柔らかな弾力があり、バシッと塩が効いてシンプルに美味しい。
ちぢみほうれん草はじっくり焼き上げたもの、凍結粉砕した牡蠣と合わせてソースにしたもの、アサリとマッシュしたものという圧巻の3種構成。
鮑を食ってしまうほどほうれん草の可能性に惹かれた一皿でした。ペアリングはスペインのゴデーリョ。
メインは寒風に晒して皮をパリパリに仕上げた尾長鴨。
シェフが渾身というだけあって、程よくしまった皮目からは噛み締めるたびに鴨独特の旨みが滲み出てきます。
ペアリングはカレーのようなスパイス感のあるマス・デ・ブルース。野手溢れる肉の味わいとよく合います。
デザートその1、オレンジとフロマージュブランのさっぱり系。
器は絹に蜜蝋を染み込ませた作品であり、しっとりオイリーで不思議な質感です。
デザートその2、栗のブリュレとサブレのこっくり系。
栗以外にもポルチーニやパルミジャーノ、フランボワーズが組み込まれており、器も相まって里山の恵みがイメージされます。
ミニャルディーズ3種とハーブティーで締めくくり。
とちおとめに練乳ソースを充填したもの、キウイやパイナップルの冷たいひと匙、安納芋のひと匙と最後まで手が混んでいます。
三大珍味や超高級食材を多用した料理とは違うベクトルのご馳走の数々、本当に素晴らしいディナーでした。
全体的にはっきりとした味付けなので、お酒と合わせることを前提とした方がいいかもしれません。
とにかくオススメです!
2025/02/18 更新
仙台・勾当台公園エリアにある隠れ家フレンチ。
私が最も心酔するレストランの一つであり、仙台を訪れることが決まったなら何より先に予約をするようにしています。
素晴らしい料理を生み出す渡邊政也シェフを筆頭に個性豊かなスタッフさんたちが醸し出す温かな雰囲気が素敵。
一般的な4人掛けテーブルのほか、U字テーブル、個室があり様々なシーンで利用可能。
近代的な室に木や石、動植物といった自然を思わせるアイテムが配置され、メゾンというより山小屋といった雰囲気です。
今回も推奨コース「menu ark」にアルコールペアリングをお願いしました。
東京との比較になりますが、税サ込みで27,940円という価格設定は全体のクオリティに対してあまりにリーズナブルです。
ドリンクの前に体を温めるごぼうのフラン、上には天然の茸でとったコンソメが張られ、アーシーで深い香りが吹き抜ける。
続けて毎度お楽しみのアミューズ3種、オレガノなどが効いた真っ黒な鱈白子フリット、ちぢみほうれん草とミモレットのタルト。
驚いたのは炙った鯨の尾身にサワークリームとビーツを合わせた串で、柔らかく濃い鉄分感を湛えた身質はメイン級の味わいです。
最初の前菜は、生湯葉を細切りにしたアオリイカで巻き、パッションフルーツのソースとキャビアと食べる斬新な一品。
付け合わせは聖護院大根でなんとなく京都感。スペイン・リオハの白と合わせると一体感が増幅されてより美味に感じます。
前菜2品目は菊芋。長時間じっくりローストしたあと大量の発酵バター、ゴルゴンゾーラのソースでこってりと仕上げます。
付け合わせのマッシュポテト、スプラウト系の生野菜と合わさるとグラタン寄りのホットサラダのようで率直に美味しい。
ペアリングはソアーヴェのガルガーネガ100%、じっとりした甘さとキレの良さが濃厚な料理とマッチして贅沢な気分に浸れます。
前菜3品目。蓮根のガレットにワタリガニと菊、茗荷などのサラダを乗せて、周りにごぼうのポタージュを張ったもの。
根菜の香ばしさと出汁的な旨さ、そこにギリシャのアシリィティコの複雑な爽やかさをペアリングするのは実に良き。
魚は甘鯛、にんじんのグラッセに着想を得たソースでいただきます。付け合わせはカリフラワー、パプリカとかんずりのムースです。
ワインはポルトガル、フランスに固着せず欧州全域から料理に合うものがセレクトされています。
メインはシェフ自ら猟に同行したという子鹿。鮮烈な赤色、ぷにぷにした身質に生命を感じ感謝しかない。
これがたまげるほど美味い。フレッシュでコクのある味わい、付け合わせの里芋やマッシュルームと山の恵みを体現した一皿。
コートロティ、ドメーヌピシャとの組み合わせも鉄板で、この日一番印象に残りました。これこそメインディッシュである。
デザートは3段階で硬さが異なるクレームダンジュ、さらには松ぼっくりと松葉のチュイルを添えたチョコアイスです。
ミニャルディーズ代わりのフルーツは、それぞれジュースにつけるなど一手間加えた品々。とことんこだわりを感じます。
やはり間違いない、大満足のディナーとなりました。
唯一無二の独創的でスローなフレンチ、3時間ほど豊かな時間を過ごさせていただきました。
文句なしにオススメ、このために仙台に来る価値があるレストランです。