4回
2025/10 訪問
混ぜた瞬間、世界が変わる
この一杯の前では、言葉なんて無力だ。
レンゲと箸を手にして、黄身を割る。その瞬間、濃厚な卵の海がスパイスと辛揚げ、にんにく、黒油と混ざり合って、一気に世界が色づく。具材が整然と並んでいたはずなのに、数秒後にはカオスの中に完璧なバランスが生まれる。
辛揚げのザクザク、ネギのシャキシャキ、そして卵黄のまろやかさが、太麺のもちもちと絡むたびに脳内麻薬が分泌される。にんにくのパンチは容赦がないのに、不思議と全体がまとまっていて、暴力的な旨さと優しさが共存しているのだ。
“至福”という言葉がぴったりすぎる。途中で卓上の酢をひと回しすれば、味が軽やかに跳ね、終盤まで飽きさせない構成。まぜそばというジャンルを、ただのB級グルメと侮るなかれ。ここは中毒者を量産する沼だ。
現金のみ
禁煙
2025/10/15 更新
2025/09 訪問
唯一無二の渾然一体
市ヶ谷の「用心棒」でまぜそばを注文。トッピングはニンニク(刻みニンニク)たっぷりに、黒油(焦がしニンニク)、そして辛揚げ。これだけ盛り込んで“重そう”に見えるのに、箸を入れた瞬間からワクワクが止まらない。
卵黄を割ってぐるりと混ぜると、濃厚なタレと具材が一気に一体化する。ニンニクの鋭さが前に出たかと思えば、焦がしニンニクの香ばしさが後ろから追いかけてくる。辛揚げはザクザクとした食感でアクセントになり、刻み玉ねぎがしっかりリセットをしてくれる。重厚なのに最後まで食べきれる不思議さがある。
「まぜそば」というジャンルは数あれど、ここまでバランスと勢いを両立させた一杯はそうそうない。まさに唯一無二。丼を空にした時の満足感は、ジャンクでありながらどこか芸術的ですらあった。
現金のみ
禁煙
2025/09/14 更新
理性は最初から置いてきた。
この店のカウンターに座る時点で、それはもう必要ないものだとわかっている。
丼の中は、最初から完成形ではない。
野菜、ニンニク、黒脂、辛揚げ、卵黄。
それぞれが「まだ他人です」という顔をして、距離を保っている。
だが箸を入れた瞬間、その関係は一気に崩壊する。
混ぜる。
黄身が割れ、黒脂が溶け、にんにくが主張を始め、辛揚げが騒ぎ出す。
整然としていた世界が、音を立てて崩れていく。
でも不思議と、崩壊の先には必ず秩序がある。
用心棒のまぜそばは、混沌の中にだけ存在するバランスを知っている。
一口目で確信する。
ああ、やっぱり別格だ、と。
背徳感はある。むしろ強い。
だがそれは罪悪感ではなく、選び取った快楽だ。
黒脂のコク、にんにくの暴力性、卵黄の包容力。
すべてが太麺に絡みつき、逃げ場をなくす。
途中、呼吸を整えるために箸を止めようとする。
だが止まらない。
脳が「まだ行ける」と判断を下す前に、体が次の一口を運んでいる。
ここでは意志より反射が速い。
前回も思ったが、やはりここは“うまい”で片付けてはいけない。
これは料理というより、儀式だ。
終わったあとに残るのは満腹感ではなく、静かな納得。
今日もちゃんと、理性を置いてきて正解だった。
現金のみ
禁煙