3回
2022/12 訪問
中国の文化・風景・歴史を四川料理に宿す魂の全14品!壮大なサーガを1人で生み出す鬼才変態シェフ
日本の四川料理の第一人者「飄香」グループの総料理長である井桁良樹さんがこれまで培った経験と技術の全てを昇華させた新たなお店。オープンは2022年。
場所は広尾駅より徒歩5分ほど。
14品からなるシェフのおまかせコースは24,200円。こちらに15,000円のベアリングコースをつけて。
店名に「香」とある様にどの料理も香りが印象的だ。四川料理は辛いものばかりかと思われるが実は八割が家庭で食べられる素朴な郷土料理である。所々に多種多様なスパイスを効かせ、あくまでコースに緩急をつける役割だ。
伝統的な四川料理がベースだが現代的なアプローチで仕上げる無化調料理はかなり独創性に満ちている。
シェフの仕事は緻密で食感、香り、味わいを巧みに散らし最後まで飽させない手腕とそのバランスが秀逸だ。
一皿一皿にストーリー性があり、時には料理を竹、弦楽器、キノコに見立てたパンまでもまるでアート作品のようである。これが美しくて見事としか言いようがない。
ペアリングはシャンパン、ワイン、紹興酒などでこれがまぁまぁな種類出てくる。
こんなに凄いのに何故かまだあまり知られていないようだ。
以下、いただいた料理。
1.芙蓉(ふよう)
成都市の花である「芙蓉」をイメージした料理。上は豆乳のムース、下が白花豆と自家製干し肉などが。軽やかなムースに濃厚な旨味の白花豆アイス、そして揚げ菓子のサンズと温度や食感のバランスに優れたアミューズ。
2.竹韻
「竹の節」に見立てた中国パイ。間にフォアグラを挟み、笹に見立てた「らっきょうのピクルス」は食感と味わいもアクセントとなる。甜麵醬と唐辛子ジャムで味付け。上は竹葉青のパウダーを。
3.琵琶
弦楽器「琵琶」に見立てた一品。弦に見立てたのはハーブのロックチャイブでにんにくっぽい香りを。
泡菜という乳酸発酵の漬物液で一日以上マリネすることで味わい、濃縮感、ねっとりとした食感をもたせて海老の甘味を引き立たせる。下には刻んだ野菜のピクルス、もち麦。
上の白いシートは乳化させたソースを固めたもの。海老の旨味甘味と乳酸菌による優しい酸味が特徴。
4.飄雪
茅台酒で漬けた高麗人参で作った泡、シトロンキャビア(フィンガーライム)、モウカザメのフカヒレ、自然薯、葱と山椒の椒麻ソース。
5.柳緑
紹興酒でマリネした青森県産の馬刺しはねっとりと。上は赤身、下はサシが入った部位でそれぞれ味わいが異なる。
オクラとレモンバームを乾燥させたパウダーが馬刺しの水分に吸着し、最後のレモンバームの香りが爽やかだ。刻んだピスタチオ、下の辣油や香ばしい唐辛子の香りも食べながらにして食欲を沸かせる。
6.文明
世界四大文明の一つである中国文明にかかわっていたとされる少数民族「イ族」。いまも標高の高い所で生活をしているが、こちらはそんな彼らが食べている韃靼そば粉をクレープ生地にした料理。
燻製にした鴨の干し肉、安納芋に黒砂糖をまぶしキャラメリゼ、生姜のピクルス、果物のジャム。
クレープに包まれる一体感と口内調理を楽しむ。相変わらず味わい、食感、香りのバランスが秀逸だ。
7.孔明
もちろんタイトルは諸葛孔明から。蕪の様な野菜を色んな場所に植えさせて食糧の糧としていたことからその蕪を京都の聖護院蕪に見立てて作ったツバメの巣仕立てのスープ料理。
鼈と冠地どりの清湯スープと茶わん蒸し。旨味の層が厚い出汁がいい。
8.貴妃
シルクロードを通じてワインを飲んでいたという説がある楊貴妃。おそらくワイン発祥のオレンジワインを飲んでいたであろうというシェフの考察のもと、オレンジワインで煮込んだ鮑の料理。
鶏、豚、鴨、金華ハムなどに鮫の軟骨を加えてコラーゲンを出したソースの煮込み。グリーンのパウダーはカラシナという葉物。
ジャスミンライスを投入するとまた香りが広がります。
9.祥雲
蓮根の間に帆立のすり身と白子を挟んで薄い衣でサクッと揚げた料理。上は鱈で作ったでんぶ。
焦がし唐辛子が香る甘酢ソースと上のでんぷと合わせば色んな複雑な味わいとなる。
10.隨園
随園食単という古い書物並みに古典料理をということで国産海鼠と豚の脛肉の煮込み。
干したムール貝を包むマンガリッツァ豚のミンチ。
ソースは豚肉とムール貝を煮詰めた古典的なソース。この旨味たっぷりなソースに蒸しパンをつけて。
本物の椎茸の中に蒸しパンが隠れています。
原木椎茸をパウダーにして練りこんでるのでちゃんと椎茸の味もする。
11.張飛
「三国志」の張飛の荒々しいイメージを表現した牛肉の一皿。数々の香辛料の複雑な味が加わった上で美味しさが引き立つ牛肉はあえてサシの少ない短角牛のトモサンカクを。
付け合わせには牛のアキレス腱とハチノスをビーツと牛蒡、スパイス、唐辛子、山椒を合わせた刺激的なソース。
甜焼白
豚バラ肉と小豆の餡、もち米を重ね蒸した、甘い豚肉料理。これがのちに姿を変えて出てくる。
12.墨花
烏賊墨の和え麵。烏賊墨、発酵トマト、唐辛子の旨味と酸味と辛味のある和え麺。
13.飄零
あんぽ柿のシャーベット、塩気のある蓮の実のピュレ、白キクラゲ、晩白柚。相当濃厚だけど酸味と中国テイストの蓮の実も。
14.喜筵
さきほどの甜焼白を応用したデザート。まわりはココナッツのパウダー、小豆の餡子、黒胡麻。さらにココナッツ風味のマシュマロを表面に乗せ炙って甜焼白との一体感をはかった。小豆、モチ米、ココナッツと日本人にも馴染み深い味。
約40,000円。
歴史ある四川の名菜をベースに、培ってきた経験や技術、中国の史実や文化にも思いをはせ「今の時代に“新・名菜”を作り出すなら?」という視点から生まれる独創性豊かな料理の数々。
まるで一本の長い映画を観たあとの余韻に浸れる素敵なレストランでした。ごちそうさまでした。
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品川イッコー公式ブログ
2023/01/22 更新
2022/10 訪問
美しくも壮大な物語を四川料理に宿すとんでもない店ができた
麻布十番から広尾に移転した四川料理店「飄香」。
フレンチのOdeの近くです。
18時から入店が可能で18時半一斉スタート。
以前のシェフのスタイルとは変わり14品もの少量多皿を一人でこなす。
メニュー表は漢字二文字で表し食べ手の想像を掻き立てる。
店名に「香」とある様にどの料理も香りが印象的だ。四川料理は辛いものばかりかと思われるが実はほぼ家庭料理。所々に多種多様なスパイスを効かせ、あくまでコースに緩急をつける役割。
伝統的な四川料理がベースだが現代的なアプローチで仕上げる無化調料理はかなり独創性に満ちている。
シェフの仕事は緻密で食感、香り、味わいを巧みに散らし最後まで飽させない手腕とそのバランスが秀逸だ。
一皿一皿にストーリー性があり、時には料理を弦楽器、夜空、満月、キノコに見立てたパンまでもまるでアート作品のようである。これが美しくて見事としか言いようがない。
ペアリングはシャンパン、ワイン、紹興酒などでこれがまぁまぁな種類出てくる。
こんなに凄いのに何故かまだあまり知られていないようだ。よし、私が広めようじゃないか。
2023/01/01 更新
本日は忘年会で久々の訪問。約2年前のこの時期に訪れ、あまりの感動に私は「TERIYAKI BEST RESTAURANT 2023」のシルバーに選出した。その記事はこちらから。
食べログの点数もまだ3点台でそこまで注目されていなかったと思うが、気づけば百名店にも選ばれ、ミシュラン一つ星を獲得し続ける人気店となった。
だが、私は納得いかない。
「なぜこの店が一つ星なのだろうか?」
今回、あえて前回と同じ時期に伺ったが、想像を絶する深化に深く感銘を受けたのと同時にミシュラン評価への憤りを感じた。
ミシュランに関してはもちろん色々と聞いているが、どうか公平な目で評価してほしい。
この店は確実に一つ星以上の価値がある。
そう確信している。
その理由をまた一つづつ解説していこう。
雪花
四川伝統料理「雪花鶏淖」ふわふわな淡雪をイメージ。
蕪泡菜(天然乳酸発酵ピクルス)のムース、泡菜に漬けた牡丹海老、キャビア。
さらにパイティーカップも海老の殻で香り付けって、一品目のフィンガーフードからとんでもない手の凝りよう。
カップのサクサク感、ムースのふわふわ感、海老のねっとり感。
そして味覚は発酵による酸味、蕪の香り、海老の甘味と、全ての構成バランスが素晴らしい。
なかなかフィンガーフード感動することないけどのっけから衝撃。
文明
世界四大文明の一つ『中国文明』に関わっていたとされるイ族の主食韃靼そば。
今回韃靼そば粉のクレープにウナギを合わせた一品。
しかもウナギには醪糟(モチ米を発酵させた発酵調味料)に漬けて、一日干して、スモークして焼いた超超超手が込んでる料理。
椒麻ソース、青葱、山椒、セロリ、水分量のバランスを考えて、イクラを。
最初に椒麻ソースの爽やかな味わい、後半は甜麺醤や唐辛子ジャムの甘やかな感じ、
そしてありとあらゆる旨味、食感が一気に走馬灯の如く駆け抜けるとんでもない一品。
回望
昔を懐かしむ「夫婦肺片(牛モツの麻辣和え)」をイメージした一品。
塩漬けした牛タン、そしてテリーヌにした牛アキレス腱とハチノス滷水と呼ばれる香料でテリーヌに。
野菜はニンジン、セロリ、葉ニンニク。
ようやく四川の味覚です。あえて異なる食感を別々に配置されていて、これらを全部一緒にいただけば様々な食感を楽しめる構成。
香飄
飄香式エッグタルトでまさに「飄々と幸せな香り」がしてきます。
中には大ぶりにカットされたアワビの肝で和えたアワビ、黒トリュフ。まずこの発想よ。
サクッとした焼きたてのパイ生地にアワビの食感と香り、トリュフ、そしてこの温度もごちそう。すべてのバランスが秀逸です。
李白
李白は四川省出身(詩仙)。謳われ酒、月、山を詠む詩人。
生きたワタリガニを紹興酒ベースのタレに漬けて酔っぱらわせて、高麗人参香る貴州省茅台酒をまさかのアイスクリームにしてお酒の二重構造にした一品。
この温度帯の酔っ払い蟹はじめてです。しかもこの紹興酒ベースのタレが抜群に旨い。旨過ぎです。
酔っ払い蟹ってわりと他で食べると酒や甲殻類のエグみが出てることがあるんだけど、流石の漬けるバランスが見事で蟹の旨味を引き出している。
双韵
烏骨鶏の清湯スープを楽しんでからスープ饅頭を割れば中から毛蟹、フカヒレ、蟹味噌のエキスがジュワっと溢れる。
一気に濃厚なWスープとなった。サフランの香りも。旨過ぎるでしょ。
一つのお椀で二度楽しめる贅沢なスープ。
慈禧
昔、西太后は蟹がない時期に「蟹が食べたいの」というワガママを言った。
用意しないと料理人は殺されてしまうので悩んだ挙句、蟹もどきの料理を作った。
それが「賽劈蟹」と言う料理。
今日は真ハタを細切りにし炒めて蟹の身を表現している。一緒に炒めてるのが卵白と発酵させた生姜の香りをつけて。
蟹味噌は金時人参、雲丹、アヒルの塩漬け卵で表現。
これが蟹を超えた料理で、しかも下にはしっかりとしたハタの身が入っててハタの旨味もしっかりと感じさせる。
経典
四川伝統料理「肝油海参」のバージョンアップ版。
レバーの香りを移したナマコ、乾燥させた原木椎茸のパウダーを加えた豚肉獅子頭。添え物はもち麦と春菊を和えたもの。
豚レバーをソースに落とし込んだ香りや貝の旨味が出たソースが絶品です。
貴妃
茨城産「かすみ鴨」。パイナップル、ジョージア産オレンジワイン、唐辛子でピリ辛の味付け。
甘い蜜のような、でもピリッと辛く、胸肉はしっとりと薫香が鼻を抜ける。
里芋蒸しパン
出ました、今回は里芋に似せて作ったパン。
井桁シェフ、どんだけ仕事してるんだ・・・
しかも中に焦がし葱、里芋、干し肉が入っており、ソースにつけていただく面白い一品。
古鎮
完全にサプライズです。
「一体いつになったら井桁シェフの麻婆豆腐が食べられるんだ?」という声にこたえてついに3年ごしのここでしか食べられない麻婆豆腐が登場。
なんと手作り湯葉豆花だ。
湯葉豆腐は究極的にふわふわの舌触り。そして麻婆ソースは岩手の短角和牛100%。
さらに手作り激辛辣油が尋常じゃなく旨い。
香りが一気に広がる。そしてだんだんとお米も甘くなっていく。
養生
冬の薬膳デザートはカステラ的なマーラカオと枸杞の実アイス。
そして最後はイチゴ大福。
これが衝撃的に飲めるほど柔らかい餅。蓮の実餡がなんとも上品です。
お会計は約47,000円。
これだけ食べ歩いてて感動なんてしなくなってるのに、はじめての経験ばかりで興奮冷めません。
一品でも感動できるものがあれば素晴らしい店なのに今日のコースは何品も驚かされてきた。もう驚異的としか言いようがありません。
井桁シェフ、あなたは天才です。
そしてミシュランよ、
もっとちゃんと公平に評価しなさい!
※ブログでは写真付きで他にもたくさんお店を紹介してます。「品川イッコー ブログ」で検索を。
執筆:品川イッコー(IKKO’S FILMS)|公式ブログ:https://ikkos-films.com/ |
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