4回
2025/11 訪問
養生館 はるのひかりで味わう、静寂と滋味のモダン湯治
11月の終わり、突き抜けるような晴天に誘われて箱根湯本へ。
目指したのは、以前からお気に入り「養生館 はるのひかり」。
ここは、従来の湯治場のイメージを軽やかに裏切るモダンな宿だ。館内は隅々まで清潔で、凛とした空気が漂う。特筆すべきは、ここが圧倒的に女性一人客に支持されているということ。逆説的だが、それが男性客にとっては「隠れ家」としての価値を生む。
男性客が少ないため、極上の掛け流し湯は常に「独泉」状態。誰にも気兼ねなく湯に浸かり、窓の外に広がる紅葉を愛でる時間は、何にも代えがたい「眼福のごちそう」だ。
そんな静寂の宿でいただいたのは、派手な演出よりも「実質」を尊ぶ、身体が内側から浄化されるような夕食だった。
身体が目覚める、大地のスターター
食卓の幕開けは「旬のごちそうサラダ」。
もち麦のプチプチとしたリズムに、紅芯大根やルッコラの鮮烈なシャキシャキ感が重なり合う。全体をまとめるのは自家製の胡麻ドレッシング。濃厚な香りが新鮮な野菜を優しく包み込み、一口食べるごとに「いま、体に良いことをしている」という実感が湧き上がる。
続く椀物は「炒め根菜汁」。
晩秋の冷気で縮こまった体に、牛蒡や大根の土の香りと甘みが、じんわりと染み渡っていく。炒めることで引き出されたコクのある出汁は、質素でありながら驚くほど深い味わいだ。
「引き算」の美学を味わう
小鉢に並ぶのは、養生館自慢の胡麻豆腐や風呂吹き大根。
特に大根は、箸がすっと沈むほどの柔らかさ。動物性の脂に一切頼らず、野菜本来の力強さと甘みだけで、ここまで満足感のある一皿ができることに驚かされる。
メインとなる「野菜の衣揚げ」もまた、良い意味での裏切りがある。
「養生食で揚げ物?」と身構えるが、口に運べば驚くほど軽やか。サクッとした薄衣にレモン酢やゆかり塩を添えれば、油っぽさは皆無。ただただ凝縮された野菜の旨味だけが残る。胃もたれとは無縁の、究極の揚げ物といえるだろう。
「噛む」ことは、祈ること
この夕食のハイライトは、間違いなく「微発芽玄米ごはん」にある。
添えられた言葉に従い、『良く噛んで啜る』ことと向き合う。一口につき数十回。無心で噛みしめるうちに玄米の殻が弾け、奥からふくよかな甘みが溢れ出す。
普段、自分がいかに食事を「飲み込んで」しまっていたか。ただ食べるのではなく、食材と対話するような時間は、まさにマインドフルネスな食体験だった。
旅の終わりに
締めくくりは「胡麻と豆乳のさっぱりシャーベット」。乳製品を使わない優しい甘さが、口の中を静かにリセットしてくれる。
ここには、いわゆる旅館料理のような派手な懐石や、サシの入った肉料理はない。
けれど、食後に残るのは圧倒的な「身体の軽さ」と「満たされた感覚」だ。
静かな名湯で独り温まり、窓外の紅葉に癒やされ、大地の恵みをよく噛んで食べる。
それは、現代において最も贅沢な「自分を大切にする時間」だった。
ごちそうさまでした。
2025/11/25 更新
2024/03 訪問
箱根湯本の養生館はるのひかりで過ごす、温泉と読書と玄米菜食の贅沢な静寂➖ゆっくりとした時間の中で自然と食事の喜びを噛みしめる2泊3日
箱根湯本の養生館「はるのひかり」で過ごした2泊は、まるで時間がゆっくりと流れる別世界に迷い込んだような感覚だった。現代の喧騒から切り離されたその場所は、僕にとってまさに癒しの空間だった。ここでは、やるべきことは特に何もない。ただ、温泉に浸かり、少し本を読み、食事をして、また温泉に浸かる。それだけでよかった。
到着した日の午後、まずは温泉に向かった。木の香りが漂う湯船に身を沈めると、箱根の山々が窓の向こうに広がっている。湯は源泉かけ流しで、肌に触れるたびにじんわりと温もりが伝わる。湯の温度は丁度よく、熱すぎず、ぬるすぎず、まるで僕を包み込むようだった。そこにいるだけで、全ての重荷が溶けていく。しばらくの間、湯気の向こうにぼんやりと山の景色を眺めていた。なんだか時間というものが、全く関係ないように感じられた。
温泉から上がった後は、宿の小さな読書室へ。木の椅子に腰を下ろして、持参した一冊を開いた。ページをめくる音だけが響く静かな部屋。外からは風の音と木々が揺れるささやきが聞こえてきて、それが心地よいリズムを刻んでいる。そんな中で読書をしていると、時間がふわっと漂っていくような、不思議な感覚に包まれた。
食事は、宿の名前通り「養生」そのものだった。夕食は玄米を主とした一汁五菜の料理。全てが自家菜園や近隣の農家から届けられた野菜で作られているという。無農薬の野菜が丁寧に調理され、シンプルな味付けながら、食材そのものの力強さを感じさせる。最初のひと口目を噛み締めた瞬間、野菜の甘みが口の中に広がった。ご飯は、炊き立ての雑穀米。粒が立っていて、ほどよい噛みごたえがある。ふわりと香るその香ばしさに、自然と箸が進む。僕は、この食事が体の奥深くにまで染み渡るような気がした。まるで、これまでの食べ過ぎや、濃い味に慣れた身体がリセットされていく感覚。夕食後には、少しだけ紅茶を飲みながら、再び本を読み、また温泉へ。夜が深まっていくのが心地よかった。
二日目も同じような日が続いた。朝食は、湯豆腐と季節の小鉢が数品に、また雑穀米と味噌汁。味噌も自家製で、まろやかな味わいが心に染みた。普段の忙しい日々では感じることのない、食べることそのものの喜びを、ここでは噛みしめることができる。
二泊三日、滞在の最後には、なんだか心が浄化されたような気持ちだった。帰りの道中で、またここに戻りたくなるような、そんな予感がふと胸に宿った。
2024/09/23 更新
2023/12 訪問
箱根湯本に佇む温泉宿。連泊がテーマで、自然と共に身体をリセット
「はるのひかり」、箱根湯本に佇む温泉宿。連泊がテーマで、自然と共に身体をリセット。部屋はおひとりさま向けもあり、ゆったりとした時間を提供。昔ながらの玄関ロビーには、温かいしょうがシロップ湯での歓迎があり、その美味しさは宿オーナーのこだわり。客室は14部屋で、4階にはおひとりさま専用の部屋も。シンプルで快適な環境が広がり、ロッキングチェアでくつろげる。サービスは最小限で、部屋には滞在中に干渉しない方針。空気清浄機が置かれ、全面禁煙。各部屋にWi-Fi完備。お風呂は2つの内湯で、源泉かけ流しの温泉で心身の養生。浴槽は3つに仕切られ、ぬる湯から熱めのお湯まで用意。無色透明のやわらかなお湯に身を委ね、心身が解き放たれる感覚。滞在中、源泉の新鮮な温泉に何度も浸かり、鮮度と贅沢なひとときを味わえる。
2023/12/27 更新
箱根湯本の隠れ家宿「養生館 はるのひかり」。ここの朝食は、食べた瞬間から「身体が整う」のがわかります。
主役はなんといっても雑穀ご飯です。
南足柄産の自然栽培米に、もち麦や古代米をブレンド。噛むたびに「プチッ、モチッ」と弾ける食感が楽しく、穀物本来の香ばしさと甘みが口いっぱいに広がります。
おかずは、丁寧に出汁をとった湯豆腐や、地元の味噌を使った優しいお味噌汁。
「よく噛んで食べる」ことの豊かさを再発見でき、これだけ満足感があって350kcal未満というのは驚きです。
罪悪感ゼロでおかわりができる、自分への最高のご褒美養生がここにあります。