あさくさぴとさんが投稿した金湯館(群馬/長野原町その他)の口コミ詳細

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金湯館長野原町その他/旅館・民宿

1

  • 夜の点数:4.8

      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/06 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-

山の呼吸とともに

山奥の宿に、電波は届かない。
届くのは木々のざわめきと、遠くで鳴く鹿の声だけだ。

金湯館──ここは、時間がほどける場所だった。

私が足を踏み入れたのは、暮色が差し込む木造の回廊。床板は微かに軋み、その音さえ愛おしい。宿の主は静かに微笑み、まるで「おかえり」と言わんばかりだった。

湯殿に向かえば、そこにはほのかな硫黄の香りと、薄い湯気。源泉かけ流しの湯は、山の恵みそのものだった。ぬるりと肌を撫で、やがて無数の気泡が身体を包む。熱くない。だが、それがいい。気がつけば私は湯の中で小一時間も、ただ深呼吸を繰り返していた。

食事は山菜の天ぷら、ヤマメの塩焼き、土鍋で炊かれた艶やかな米。箸を進めるたび、山の季節が舌の上で解けていく。気づけば、湯で緩んだ心と体がこの味に癒され、胃まで微笑んでいた。

夜、障子の向こうから冷たい山風が吹き込む。私は布団にくるまり、耳を澄ます。静寂とは、かくも豊かなものなのか。

ここには豪奢も虚飾もない。
だが、疲れた魂に必要なすべてがあった。

2025/07/06 更新

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