2回
2025/09 訪問
秋の香りを揚げる — 松茸で季節を感じる一夜
季節が少しずつ秋へ向かう9月に再訪。
天ぷら あらたみかわは、
変わるものと、変わらず守られているもののバランスが心地よく、
訪れるたびに“今日の表情”を確かめたくなるお店です。
この日の主役は松茸。
揚げた瞬間の香りが立ち、薄衣をまとったまま噛みしめると、
秋らしい旨みが静かに広がっていきます。
油が前に出ず、あくまで素材が真ん中に据えられているところがこの店らしい。
海老や白身、野菜、穴子などの定番は、
過剰にならない火入れで食感がきちんと残され、
“安心して身を任せられる定番”としてコースを支えてくれます。
天ぷらという料理は、写真だけでは魅力が伝わりにくく、
衣の軽さや揚げたての温度、立ち上がる香りこそが醍醐味。
だからこそレビューは難しいのですが、
一口ごとに、丁寧な積み重ねを感じる時間でした。
〆はかき揚げで天丼または天茶。
お腹も気持ちも、きれいに着地させてくれる締めです。
この日の印象は、
「季節に寄り添いながらも、軸はぶらさない」。
——その感覚が、後の再訪でさらに強くなることになります。
2026/01/03 更新
年末にまた訪問。
同じ店でも、季節が進むと表情が少しずつ変わり、
秋とは違う“冬の輪郭”が感じられるコースでした。
まず印象的だったのが白子。
外側は薄く張りつくような衣、
中はとろりとほどける食感で、重たさがなくスッと喉を通ります。
冬の濃い旨みを、軽やかにまとめ上げる揚げ方が見事でした。
海老を口にすると、
この店に戻ってきたことを自然に実感させてくれる安定感があります。
派手ではないのに、噛むほどに香りと甘みが立ち上がり、
“これで始まるコース” という安心感が心地よい。
穴子はふわっとほどける食感で、
江戸前らしい香ばしさが控えめに背中を押すよう。
強さに頼らず、きちんと余韻で魅せてくれる一本でした。
一品一品の温度管理や、
出すタイミングのリズムが緻密で、
揚げたてを「焦らず、でも遅れすぎず」食べさせてくれる。
そのおかげで、最後までだれることなくコースが続きます。
締めのかき揚げは、
サクッとした軽さの中にしっかりとした満足感があり、
天丼でも天茶でもきれいに着地。
食後の余韻まで整えてくれる締め方でした。