三國朝陽さんが投稿した鮨処 乾杯(東京/新橋)の口コミ詳細

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三國朝陽のぼっち飯

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鮨処 乾杯汐留、新橋、御成門/寿司、海鮮、居酒屋

1

  • 夜の点数:4.4

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 4.2
      • |サービス 4.4
      • |雰囲気 4.3
      • |CP 4.2
      • |酒・ドリンク 4.2
1回目

2026/01 訪問

  • 夜の点数:4.4

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス4.4
    • | 雰囲気4.3
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.2
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

八寸で見抜かれ、舎利で応えられる夜


ぼっち飯探検隊の三國朝陽です。

今日のぼっち飯は、汐留にある「鮨処 乾杯」さん。
ご縁があり、こちらのお店に足を運びました。

新橋から歩いて数分。背中にまとわりついていた都会の音が、路地に入った瞬間、少しずつ剥がれていく。外観は控えめで、気を抜くと通り過ぎてしまいそうになる。けれど、扉の前に立つと分かる。
ここから先は、食事ではなく、時間を預ける場所だ。

中に入ると、温もりのある木のカウンターが静かに伸びている。檜かどうかは分からない。
ただ、素材は主張せず、間接照明の柔らかな光と重なって、空間に自然な陰影をつくっている。
視線も呼吸も、ゆっくりと落ち着いていく。

最初に差し出されるおしぼりには、香りがない。
無臭。これから口にする鮨の香りを、一切邪魔しないための設えだ。香りは、まだ出さない。

「最初に記憶される匂いは、料理であってほしいんです」

そう語る大将の口調は穏やかで、どこか住職の説法に似ている。教えるでもなく、諭すでもなく、
ただ、昔から決まっていた理を置いていくような話し方だ。

まずはプレモル。泡は細かく、音を立てずにほどける。
一口含むと、体の輪郭がはっきりする。

お任せコースの初めは、ズワイ蟹の茶碗蒸し。
蓋を取ると、湯気とともに立ち上がる蟹の甘い香り。出汁は控えめで、温度は穏やか。

「最初は、胃より先に気持ちを温めたいんですよ」

ちょうど寒波も来ていた夜。冷えた身体と心をほどき、“食べる準備”を整えてくれる一品だった。

ここで供されるのが、八寸。

「八寸って、量の話だと思われがちですけどね」
そう前置きして、大将は続ける。
「本当は、季節をどう要約するか、って話なんです」

八寸とは、本来は器の大きさを指す言葉で、
茶懐石において酒肴を盛り合わせた「季節の要約」。
つまりこの一皿は、
今日の客に向けた、店からの名刺でもある。

真鱈白子ぽん酢。
「寒さが一番深い時期は、輪郭を主張しない方がいい」舌に乗せた瞬間、形は消え、濃度だけが残る。

嶺岡豆腐 明太子。「豆腐って、精進料理の象徴でしょう。だから、ここで少しだけ背徳を入れるんです」豆腐という言葉が、意味を変える。

金柑のコンポート。「甘さは、途中で一回、流れを変える役目」

水蛸の柔らか煮は、「噛まなくていい、って感覚を思い出してもらうため」

数の子チーズの歯触り。「和洋って、分ける意味ないですよね」

穴子の八幡巻きの安堵感。「最後に、安心できる場所を一つ」

蓮根チップスの乾いた音、大根の千枚漬けの澄んだ酸味。「音と酸味は、次の集中力を戻す役目です」

「この八寸で、食べ方が分かるんですよ」

どれから箸を伸ばすか。
酒を含むか、含まないか。
間を置くか、言葉を挟むか。

「だから、ここで舎利の方向を決めます」

この八寸をもとに、
この後の舎利が決まるという。

そして、握りが始まる。

障泥烏賊と柚子。
「イカは、境界線の魚です」
藻塩が、舎利と身の境界を溶かす。

釣り鯵。
「今日は、温度を合わせる日ですね」
身の温度が舎利と重なり合う。

北海道産帆立貝。
「噛むほど甘い、って言いますけど」
「本当は、噛み続ける理由を作ってるだけなんです」

帆立貝のシャリにキャビア。
白い舎利が主役の一品。
掛川のベルモットを合わせると、
甘みと乳脂が一本の線になる。

金目鯛。
小肌は細やかに編み込まれ、白板昆布がそっと寄り添う。
鰤の握りのあと、
鰤の串焼きが目の前で火を入れられる。
脂が落ちる音と香りが、空間の密度を一段上げる。

シャンパン、ANDRE CLOUET。
泡が、口の中を一度まっさらに戻す。

本鮪。
いくらの手巻きは、小さな花束のように手渡される。
黒睦は備長炭で皮目を炙られ、
香ばしさが一瞬で立ち上がる。

「電車で、焦げ臭くならないといいんですけどね」

そんな一言で、場の空気が少しだけ緩む。
語り口は柔らかく、
やはりどこか住職のようだ。

一貫ごとに、寿司の台座を丁寧に拭く。
その所作が、味を完成させている。

煮穴子は、箸ではなく手渡し。
触れた瞬間に、柔らかさが伝わる。

締めのお椀は、蟹の出汁に素麺。
刻み玉葱が、静かに余韻を切り替える。

最後に、あのおしぼりが戻ってくる。
今度は、檜の香りがある。
食後の手拭きとしての檜。
鮨の香りをすべて受け止めた指先を、
ゆっくりと現実へ戻してくれる。

デザートは、ミルクセーキのかき氷。
光を受けてきらめき、
中には甘酒プリン。
濃厚だが、後味は軽い。

これは単なる甘味ではない。
鮨のコースにおける、終わりを告げる「玉」だ。

卵を使い、温度を変え、
口の中を一度まっさらにする。
握りの記憶を消すのではなく、
きちんと畳むための一手。

濃厚だが、後味は軽い。
もう一貫いける気もするが、
それは出されない。
ここで終わる、という合図が静かに置かれる。

実は今でも、ダイエット期間中だ。
だからこそ分かる。
本当に良い鮨は、体を疲れさせない。
満たされているのに、静かだ。

八寸は、
今日の自分を測る物差し。

舎利は、
それに応える答え。

この夜の余韻は、
明日の自分を、少しだけ研いでくれる。

Googleで「三國朝陽」で検索すると、
その他のオススメも出てきます^^

2026/01/27 更新

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