大岩優輝さんが投稿したすし 弥助(愛知/桜山)の口コミ詳細

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似非通人食日記

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すし 弥助桜山/寿司

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  • 夜の点数:4.8

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2023/01 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

『與兵衛』の系譜を汲む仕事で魅せる名店

 
レビューにはないが、『すし弥助』には約二年ぶり、二回目の訪問となる。いずれも夜だ。前回は何度も通われているT氏のご相伴に預かり伺ったが、気付けばあれからもう二年近くの月日が経過したのだなあと、暫し感傷に浸る。

こちらは桜の名勝である、山崎川に架かる石川橋の袂、八事街道沿いに店を構える。
最寄りは地下鉄桜通線の桜山駅だが、徒歩だと二十分弱と、なかなか不便なロケーション。
同じ名古屋市でも、この辺りは名駅や栄エリアのような喧騒は皆無で、閑静な住宅街が立ち並ぶ。敢えてこのような土地に店を構えられたのは、親方のねらいがあってのことだろう。

さて、その親方は、クラシカルな江戸前鮨店として知られる、東京は西大島の『與兵衛』で修業されたとの由。雲丹や大トロといった高級食材に頼らず、手間暇かけた仕事で魅せてくれる店で、色んな意味で硬派なスタイルだ。ゆえに、或る程度真っ当な鮨店に通い慣れている人にこそお勧めしたい。

名古屋という土地柄に珍しく、店内は撮影禁止。こうした或る意味時代に逆行した試みをするのは、「記録ではなく記憶に残してほしい」という拘りがあるそうだ。いわゆるインスタグラマーには忌避されるだろうが、余計なバイアスや雑念なく、より真剣に鮨と向き合うことができると言えよう。執拗で耳障りなシャッター音が聞かれないのも嬉しい。本来であれば撮影解禁した方がより集客を狙えるだろうに、あくまで信念を貫かれる親方に敬服。

なお、あちらこちらでレビューを見ていると、親方に関し、やれ塩対応だ、やれ無愛想だという声が多いが、実際そんなことは全くない。慥かに店内の雰囲気は、緊張感があり、ややピリッとしているかもしれないが、話してみれば案外と饒舌な親方だ。ご自身の矜持や仕事、最近の鮨業界への考えなど、大変価値のあるお話を聞くことができた。

また、お茶やおしぼりの交換、ガリの追加なども頻回で、間合いも素晴らしい。山葵に関しても、お客が来ると同時におろし始める徹底ぶり。総じて個人的に理想的なスタンスである。
カウンターは美しい耳付きの無垢で、横一列のI字型と潔い。内装も無駄がなくスタイリッシュな印象だ。

では、前置きが長くなったが、以下この日いただいたおまかせコース(¥11,000)の内容とその感想を書き記していく。
 
 
□廣戸川 別撰 純米大吟醸

■つまみ六種
柚子風味の帆立、鮃の縁側(胡麻醤油漬け)、鮃の肝煮、漬け込みの蝦蛄、烏賊の下足、煮牡蠣。いずれもしっかりと仕事が施されており、とても味わい深かった。ワンプレートで少量ずつ供されるのは、與兵衛スタイルと同じようだ。

□七本槍 無有?

ここから握り。酢飯は昨今のトレンドよりはほんの気持ち柔らかめ。温度帯は人肌前後。酸はまろやかで塩味も程良い。特筆すべきは、実に15年も前から、飯尾醸造(京都・宮津)の富士酢を用いているという点だ。
昨年、数年ぶりに世界シャリサミットが開催されたが、富士酢(赤酢プレミアム、富士酢プレミアム、純米富士酢など)の人気は近年かなり高まりつつあり、関西圏はもちろんのこと、東京や北海道の有名店など、全国各地の鮨店が愛用している。親方の先見の明であろう。


■赤身の漬け
深めに漬けたであろう赤身は、ねっとりとして旨味が強く、それでいて赤身らしい鉄の香りと酸味も感じられる。

■墨烏賊
隠し包丁は入れすぎず、墨烏賊らしいサクッとした食感を残している。仄かで上品な甘み。

■鮃
思えらく酢洗いか軽く酢〆をし、一味と小葱を噛ませている。少し寝かせていると思しき口当たり。薬味の香りが良いアクセントになっている。

■鮃
胡麻醤油漬け。続けざまに鮃が出てきたので驚き。こちらは胡麻醤油漬け。ややねっとりとした食感があり、漬けらしい旨味と胡麻の風味が後を引く。仕事の妙を感じられる面白い食べ比べだ。

■縞鯵
三枚付け。あたり葱を噛ませている。修業先からのシグネチャー的な一貫。皮目を炙っており香ばしく、もっちりとした身は旨味が強い。

■煮牡蠣
ややビターな味わいで、程良い炊き加減と柔らかさ。噛んだ瞬間に溢れる牡蠣の滋味深い香りと旨味が堪らない。

■海松貝
殻から取り出すのにほんの少し火入れし、酢洗いを施している。ジャクジャクとした弾力と共に官能的な風味とジューシーなエキスが溢れ出る。

■北寄貝
こちらも酢洗い。むっちりとして蕩けるような食感と、生命力溢れる弾力が同居する。甘みが強く、酢洗いによる酸味が絶妙に調和。

■車海老
才巻〜巻のサイズ。 酢洗いを施し、芝海老のおぼろを噛ませている。風味豊かな甘みと程良い繊維質を感じる。

■鰆
もちもちとした食感で脂の乗りが良く、それでいてキレがありさっぱりとした後味。

■小鰭
しっかり目の〆具合ながらとても柔らかく、旨味と風味が鮮烈。個人的に好みな小鰭。

■針魚
今どき珍しい酢〆。芝海老のおぼろを噛ませている。嫋やかな食感で、甘酸っぱさを感じながら、針魚らしい風味と旨味もあり。

■蛤
漬け込み。ややクラシカルな強めの火入れで、琥珀酸の旨味が凝縮されている。ツメは濃厚で非常に奥深いコクを感じる。

■煮穴子
ふんわりとした食感で比較的あっさりめの味わい。シンプルだからこそ、穴子本来の滋味や香りがダイレクトに伝わってくる。ツメは上記の通り。

■赤出汁

■厚焼玉子
正統派のカステラ系。緻密でしっとりとした食感。芝海老の風味が鼻腔を抜ける。

■煮牡蠣(追加)

■煮烏賊(追加)
槍烏賊。印籠詰めで酢飯には白胡麻が混ぜられており、柚子が塗してある。
大きめで食べ応えがあり、烏賊の旨味を存分に感じることができる。

■干瓢巻き(追加)
濃厚に炊かれており、山葵がやや多めの、かなり好みな干瓢巻き。

以上、追加も含め¥15,000程で驚いた。
これほど手間暇かかる仕事を駆使してこの値は信じ難く、そもそもコース自体、昼も夜も開店当初から全く値上げしていないという。
相次ぐ原材料費や光熱費の高騰に伴い、三月から断腸の思いでやや値上げするそうだが、それでも全く価格が釣り合っていないほどレベルが高い。
親方のお人柄も含め、是非とも今後通っていきたい名店であった。

大変美味しかったです。
ご馳走さまでした。

2023/08/28 更新

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