大岩優輝さんが投稿した右江田(愛知/尾頭橋)の口コミ詳細

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似非通人食日記

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右江田山王、尾頭橋/寿司

1

  • 夜の点数:4.9

    • ¥30,000~¥39,999 / 1人
      • 料理・味 4.9
      • |サービス 4.9
      • |雰囲気 4.9
      • |CP 4.8
      • |酒・ドリンク 4.8
1回目

2025/03 訪問

  • 夜の点数:4.9

    • [ 料理・味4.9
    • | サービス4.9
    • | 雰囲気4.9
    • | CP4.8
    • | 酒・ドリンク4.8
    ¥30,000~¥39,999
    / 1人

【三ツ星】土方親方の御相伴に預かって

東海地方でミシュラン三つ星を獲得しているのは、僅か3店舗しかない。
三重県伊勢市の『こま田』、名古屋市中区の『日本料理 土方』、そしてここ名古屋市中川区の『鮨右江田』だ。
今回は思いがけないご縁から、前述の『日本料理 土方』の土方章司親方と知己を得、おおけなくも『鮨右江田』への御相伴に預かった次第である。

もともとミシュランガイドというものに、さほど価値を感じてはいなかった。
所詮、舌の異なる赤の他人である。
況してや〝星〟を獲得すると、べらぼうな値上げを行ったり、忽ち居丈高に振る舞いだしたり、天狗になる料理人もいるとさえ仄聞していたので、敬遠すらしていた時期もあったくらいだ。

さりとて一度は〝三つ星〟とされる料理を味わってみたいと思うのが、避け難い食い道楽の性だろう。
今般、土方親方のご高説を拝聴し、三つ星を得んがため、日々研鑽と鍛錬に余念がない料理人も多くいることを知った。
三つ星とは一つの目標であり、ミシュランガイドも歴史が深い。

今やスタンプラリーよろしく星付き店や食べログGOLDの店を巡り、食通面している痴れ者が後を絶たないが、吾が国においても、文政7年の『江戸買物独案内』や嘉永元年の『江戸名物酒飯手引草』のようなグルメガイドが、既に幕政期から存在しており、安政6年には『江戸料理茶屋番付表』なる食べログの走りの如きランキングも存在していたという。
むろん、経済力にものを言わせ、贅の限りを尽くし、予約困難枠の取引に狂奔する馬鹿舌な素封家には、虫酸が走る思いではあるけれども、頭ごなしにグルメガイドを否定するのは違うのかも知れない。レビュー自体が参考程度でこそあれ、〝三ツ星〟を一つの目標として倦まず弛まず研鑽と鍛錬を重ねている料理人には、心から敬意を表したい。

今回、土方親方と『鮨右江田』の上田親方の謦咳に触れ、お二方とも〝三つ星〟を獲得してもなお、常に高みを目指されているご姿勢を拝し、敬服を禁じ得なかった。両親方とも質実剛健でありながら古いやり方に拘泥しすぎることなく、まさに巨匠というべきである。

さて、前置きが長くなったけれども、ぼちぼち本題に移らねばならない。しからずんば匆匆たる読者諸賢はそっとアプリを閉じて、YouTubeでも観始めてしまうことだろう…

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この日は土方親方、女将さん、お弟子さん、『日本料理 方』のご常連お二人と6名の貸切であった。
カウンター6席の狭き門。近くて遠い店である。新規の予約は東海地方の鮨屋の中ではトップクラスに難しいようだ。土方親方でさえ、半年ぶりのご訪問だという。

『鮨右江田』は当代の上田直季親方で二代目となる。先代であるお父様の時分は、出前も行っているいわゆる町寿司で、酢飯も、砂糖を含んだ米酢の名古屋らしい、柔らかなものだったそうだ。
それを当代になってから東京のエッセンスを取り入れ、酢飯には赤酢(三ツ判山吹ほか米酢を含め4種類)をブレンドし、砂糖を排され、やや硬めでシャープなものにされた。温度帯にも抜かりなく、最近ではトロの融解と酸との調和を意識して、一貫目から“鮪(しび)中肥(ちゅうあぶ)©卍翁”を出すという攻めの姿勢だ。
先代からの味に慣れ親しんだ御常連の多くが離れていき、並々ならぬ御苦労をされたものと推察し、道は違えど頭の下がる思いである。

それではこの日いただいたものをご紹介しよう。

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・赤貝とうるいの酢の物
初っ端から鮮烈な逸品。木の芽の清涼感溢れる香りが、肉厚な赤貝の独特な風味と苦味に寄り添い、旬の出会いの妙に舌鼓を打つ。
赤貝でうるいを包むと、互いの心地よい食感が同時に味わえ、ひもの風味も格別だった。
酸が全体を巧く引き締めている。

・蒸し蝦夷鮑&肝ソース
3時間蒸したという鮑は驚愕する柔らかさ。何よりも香りが素晴らしい。
しっかりと鮑そのものの奥深い滋味を感じられ、切り立てと思しき酢飯を合わせた肝ソースの味わいもまた、他店で供される同様のそれとは一線を画する美味しさであった。

・ガリ

・中とろ 血合いぎし
前述のように、一貫目に中とろとはモダンな選択だ。以前は烏賊や白身のような淡白なものからであったそうだが、切り立ての酸や温度帯を考慮しての構築に変えられたとの由。
非常にきめ細やかな身質で、脂の甘みが酢飯に上手く溶け込み、鉄の余韻も心地よい。

・中とろ
脂と酸味のバランスが秀逸。とても身厚でありながら酢飯との一体感がある。
旨みが強く赤酢の風味は穏やか、程よく酸は立っているが角のない、こちらの酢飯にピッタリだ。温度帯も抜群。

・大とろ 蛇腹
官能的な脂の甘み。サシがとても細やかで、勿論筋までばっちり脂が回っていて蕩ける。
拗さのない上質な脂で、凡庸な言葉ながら本当に美味しい大とろだった。

・針魚
おろした生姜を噛ませている。サヨリらしい独特な弾力は白眉であったが、生姜の風味と穏やかながらも赤酢の香りがある酢飯で、若干サヨリ本来の味がぼやけてしまっているようにも感じた。

・赤身 漬け
浅めの即漬け。赤身らしい香りが力強く鮮烈で、酸味と漬けの旨みのバランスが完璧。

・墨烏賊
塩と酢橘で。墨烏賊は包丁を入れないバツンとした食感が個人的に好きなので、勿論意図はおありであろうが、好みよりも柔らかく感じた。
味わい自体は酢飯の酸が墨烏賊の甘みを引き立てていて、適度な酢橘の量と塩も上手くタネを支えており美味しかった。

・車海老 昆布乄
見ての通りレアな火入れ。三河一色産の天然物で、ぷりっぷりの弾力に酔いしれる。旨みが強く余韻の広がりに驚いた。

・ばふん雲丹 軍艦巻き
マルキ平川水産のもの。海苔は坂井海苔店の一番摘みの有明海産だろうか。
嫌味のない範囲の大盛りで嬉しい。
味わいは言わずもがな最高で、濃厚な雲丹の味がダイレクトに広がる。
海苔もパリッパリで香り高く素晴らしい。

・鰯 酢〆
あたり葱を噛ませて。しっかり脂の乗った個体で強めの酸と乳化して味わい深い。
滑らかでフレッシュな舌触りで塩味もちょうどいい。

・煮穴子
削った柚子皮と。思えらく敢えてヌルを完全に取りきらない仕事で、旨味と野趣が素晴らしい。
ふっくらというより蕩ける食感で、余韻が長く、柚子の香りも良いアクセントだった。

・葱とろ 手巻き
巻物は細巻き派だがこれは手巻きで食べるべきであろう。
脂の甘味が強いとろに、葱の鼻を抜ける爽やかな風味、旨味と酸味が光る酢飯に、パリッパリで馥郁たる香りの上質な海苔が渾然一体となっていて最高。

・干瓢巻き
程良い濃さで甘辛く炊かれた干瓢。爽やかな山葵の香りが嬉しい。山葵入りは邪道扱いされがちだが、個人的には断然山葵入りの方が好みだ。

・赤出汁
出汁が利いたホッとする赤出汁であった。

・厚焼玉子
見ての通り全く“鬆(す)”がない。緻密でしっとりふっくらとした理想的な厚焼玉子。
海老の風味(芝海老か?車海老か?)が芳しく、鮨屋のデザートらしい甘み。

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『鮨右江田』は純粋に握りを味わうのに最高なお店だった。
同じ名古屋の『あま木』のような、つまみの多いすし匠系のスタイルも酒呑みの僕は好きだが、こちらはアルコールバイアスなしで鮨と向き合える。
とはいえ一品料理もかなりのものだったので、色々味わってみたくもなったが、それを求めるのは野暮というもの。
決して品数は握りを含め多くはなかったが、満足度は非常に高かった。
改めてミシュラン三ツ星の実力を思い知らされた。

ちなみに生ビール1杯、日本酒3杯も飲んだが、アルコール類のお支払いは何と土方親方がして下さり、おまけに生チョコのお土産まで頂戴し、何とも恐懼に堪えない。
最後はお店の正面で両親方とパシャリ。この上ない贅沢で最高な1日となった。
この場をお借りして改めて御礼申し上げたい。

本当に美味しかったです。
ご馳走様でした。

2025/03/29 更新

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