3回
2025/03 訪問
連続百名店小説『みちのく酒びたり』第7陣③【バー百名店 再】
*食べログ口コミにおいては核心部分のみの掲載となります。全文を読みたい方は以下にあるブログへのリンクをコピペし検索してお読みください。
https://todaihoteisiki-sue.com/連続百名店小説『みちのく酒びたり』第7陣秋田川/
*「使った金額」は劇中におけるタテルの使用金額を反映させております。
1980の階段を降りて右に進み、突き当たりを左に進む。2分程で次の店「レディ」に到着した。
「アメリカの田舎町にありそうな感じだよね。左手のボックス席に座ったら青春気分だよ」
ただここはバーの鉄則通りカウンター席に並んで座る。この日は店主(記憶が曖昧ではあるが、初代店主のお弟子さんだとか。高齢のため一線を退いた初代も、偶に顔を出すらしい)と男性助手の2人で回していた。
「これこれ、このメニューブック。オリジナルカクテルが沢山載ってて、見るだけで楽しいやつ」
「楽しいですね〜。青いお酒飲みたい」
「良いところに目をつけたカコニちゃん。ヒプノティックを使ったものは珍しいからお勧めよ」
「初めて聞きました。この川反トワイライトとか美味しそうですね」
「俺は映画カクテルから、ジャックスパロウでお願いします」
カクテルの前にお通しを。チーズ2種、サラミ、そして前回印象に残ったハムサンドも健在。今回はしっかり酔っていたためあまり深くテイスティングできていないが、酔い止めがてら追加発注してまで夢中でハムサンドを頬張る。
ジャックスパロウはダークラム・アマレット(杏仁リキュール)・アクアヴィット(じゃがいもの蒸留酒)を混ぜ合わせたカクテル。口当たりは円やかでアマレットの甘みが際立つが、度数は高いため酔いのメーターが一段と上がる。
続いてタテルはウイスキーに目をつける。
「おっ、厚岸や遊佐がある」
「厚岸は北海道。遊佐は…山形でしたっけ?」
「そう。秋田寄りの山形。東京駅で飲んだらショットで3,000円はいく高級品だぞ」
「ほぼ半額じゃないですか。飲みましょう」
メニューには2024がラインナップされていたが、extra edition 2025も取り扱いがあったためそちらを選択。林檎(?)のような綺麗なフルーティさは流石ジャパニーズウイスキーの為せる業である。
引き続きジャパニーズウイスキーを攻めるタテル。同じく希少な厚岸を選択すると、メニューには小雪が載っていたが実際に出てきたのは小暑。アイラ島のウイスキーのようにピートが効いているが、ジャパニーズウイスキーらしい清らかな甘みがある。
「厚岸は色々種類ありますよね。二十四節気の名前がついていて」
「お客様、ラストオーダーの時間です」
「え、もう?」
「日付越えましたね」
「明日は朝から青森行くし、丁度良いタイミングだね」
最後にタテルが選んだのはピスコサワー。2年前に飲んで印象に残っていたカクテルであるが、何度も述べるように酔いが回っており味わうことができないのである。
遊佐や厚岸を攻めたこともあってか、3人の会計は25,000円を超えてしまった。旅番組の趣旨など、どうやら忘れてしまった模様である。
NEXT→牛玄亭
https://s.tabelog.com/smartphone/reviewer/014810282/review/detail/B505028384/
2025/04/18 更新
2023/03 訪問
妄想連続百名店小説『人生は勉強だ!』6時間目:Jupiter【バー百名店 3/100】
東大卒芸人・グルメタレントのTATERU(25)は、以前も共に東北を旅した綱の手引き坂46・カゲ(21)に首ったけであった。そのカゲは先日、グループからの卒業を発表。卒業記念に2人は再び東北旅に出ることにした。盛岡・秋田の至極の名店を巡るグルメツーリズム。その中で、カゲのアイドルとして輝く最後の姿を堪能する。
純粋にレビューを楽しみたい方は【】で囲まれた部分を飛ばしてお読みください。
これまでのあゆみ
1.焼肉せがわ
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2.盛楼閣
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3.giueme
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4.鳥好
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5.ル・ヴェール
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【一台のタクシーが路地に入ってきた。
「カゲ!」
「タテルさん!」
「ほんとゴメンよ、傷えぐるようなこと言っちゃって…タクシー代出すよ」
「いいですって。私こそ、タテルさんに寂しい思いをさせてしまったから…」
「じゃあバーに入るか」】
高級感あふれるルヴェールとは対照的な、80年代90年代の青春を彩る雰囲気のバー。今どきのバーでは珍しいボックス席もあるが、2人はカウンターに座りマスターの手捌きを見ることにした。妙齢のマスターに加え、若い女性のバーテンもいた。メニューを見ると、ざっと100種類以上のカクテルがラインナップされており、オリジナルカクテルも豊富だ。
「うわ!ヒプノティックがある!」タテルは黄色い声をあげた。
「ヒプノティック?何ですかそれ?」
「家電量販店の酒売り場で水色がキラキラしていることってあるじゃん?その正体があれ」
そう言ってタテルはズラッと並ぶボトルを指さす。
「きれいな水色。映えそうですね」
「おっ、『川反トワイライト』なんて面白そうだね。ヒプノティックも入ってるしこれにしようか」
「はい!」
【カクテルができるまでの間、カゲは心を許したタテルに、聴覚過敏に関して悩みを打ち明ける。
「私の行為って、矛盾しているんですかね?」
ライヴの音がダメなのに、サッカースタジアムの歓声はいいのか。この前も耳元でカビカビにムムッとかクゥーとかされていたが、あれはいいのか、なんて主張するアンチがいるのだ。
「矛盾してるように見えはする。表面上はね」
「…」
「でもライヴ裏の轟音は怪獣のようにゴォーっと押し寄せてくる一方でスタジアムは最初こそ尖っているけど基本はヴェールに包むタイプの音。全然違う音だよね」
「そうですね」
「同じ聴覚過敏でも人によって平気な音苦手な音がある。その辺の事情よく知らん奴ほど、浅はかな被害妄想の自説をひけらかすんだ。カゲはそんな悪意のあることしないと信じてるから」
真剣に諭すタテルの瞳を見つめ頷くカゲ。
「憶測で語る奴は愚かだ。でもネットでそれを指摘すると逆ギレされる。俺らはそんなディストピアに関わっちゃダメだ。俺らのアタマは財産だ。くだらない戯言に付き合う由は無い」
この日既に6杯も飲んでいるタテルの語りにはところどころ大言壮語があった。】
2人のもとへ、川反トワイライトが供される。
「うわぁ美しい!」感嘆するカゲ。
「やっぱ素顔は普通の女の子だね。よし、飲もう飲もう」
「初めてのカクテル…うん、美味しい!」
一方のタテルは味がぼやけているように感じた。それでも10秒に1回のペースでグラスを傾けつつ、カゲのカクテルを嗜む横顔を眺めては恍惚の表情を浮かべる。
「カゲって横顔もホント綺麗。大人の女性って感じあるね」
「嬉しいですそう言ってもらえて。お酒って面白いですね。深入りしちゃいます」
感心したタテルは、チーズ・サラミ・ハムサンドの載ったおつまみセットに手を伸ばす。
「カゲ、ハムサンド食べてみて。めちゃくちゃ美味いから!」
「ホントだめっちゃ美味しい!芥子がはっきり効いていますね」
「正解。芥子の良さが分かれば立派な大人の仲間入りさ。マスター、紫陽花ください」
日本酒とパルフェタムール(すみれのリキュール)・ブルーベリーリキュールを混ぜた1杯。こちらはタテルもご満悦の様子。
【「すみれリキュール好きなんだよね。オカンにお笑いサークルの代表を紹介した時一緒に飲んだな」
「どんなシチュエーションですか?」
「俺も喋ってて訳わからなくなってきた」
「タテルさん飲み過ぎじゃないですか?」
「いや、まだまだ。他悩みある?」
「ワールドカップやクイズ番組で自分が表に立って、綱の手引き坂のことを知ってもらおうとしたけど結果が現れないんですよ」
「それはもどかしいよな。結局カゲだけが売れて。でもそれは運営の問題では?明らかに人手不足でグループの活動を回せていない。カゲが創ってくれたチャンスを活かすツールがないんだもん。だのになぜカゲを批判する?そういう想像力のない単細胞生物にはなりたくない、なってはいけない」
タテルは深呼吸をした。
「なんか俺愚痴ばっか喋りすぎだな。重くしちゃった」
「いえいえ、タテルさんって本当に私達のこと思ってくれてるんだな、って伝わってきます」
「ありがとう。次何飲む?」】
「モヒートにします。さっきからずっとマスターのモヒート作ってる様子見て気になっちゃいました」
「モヒートいいね。俺は映画カクテル行こうかな」
「映画カクテル?」
「このページにあるやつさ。でも俺全然洋画わからん。カゲ的にはどれがおすすめ?」
「うーん、『フィールドオブドリームス』はどうですか?野球の映画です」
「カゲの口から野球が出てくるとは」
「私野球も好きですよ。朝野球とかやってましたし、バッティングも得意です」
「よし、それで行こう。カゲが選ぶカクテル、楽しみだ」
ウイスキーをベースにバナナリキュールとミントリキュール、レモンジュース。タテルは3連続でドレンチェリーの添えられたカクテルに当たった。
「ウイスキーが効いている。そこにバナナ。美しいカクテルだ。さすがカゲ、選球眼がある」
「お役に立てて嬉しいです」
【「俺ひとりだとカクテルの組成と睨めっこして、さっきと被らないようにとか、色々考えちゃうんだよね」
「わかります。私も頭が回り過ぎて色々分析しちゃいます」
天才は得てして孤独だ。頭が良いことは一見プラスのようだが、実際は日常生活に支障を来たすケースが多い。相手の動向を深読み過ぎてコミュニケーションに難儀することが多いし(タテルもその一員である)、頭が回り過ぎて疲れることもしばしばだ。世間はそれを理解してくれるどころかビョーキだと受け取り色眼鏡をかけて見てくる。頭が良すぎて困る、みたいなことなど口が裂けても言えないのである。
「でもやっとわかってくれる人に出会えた」感慨深げなカゲ。
「俺も。こんな頭良くて愛嬌ある人は初めてだよ。俺らやっぱ運命なんだ。よっしゃ、まだまだ飲むぞ!」】
多彩なカクテルに魅了され上機嫌のタテルは続いて、ペルーの酒場で大人気のピスコサワーを選択した。地中海性気候の南米太平洋側で名産の葡萄を蒸留酒にしたピスコ。レーズンのような熟れた味わいがクセになる。
【タテルとカゲは隣にいた夫婦とお喋りを始めた。盛岡から来たという常連さんで、ハムサンドもお気に入りらしくたくさん頼んでいた。
「お2人は恋人同士ですか?」常連夫婦が問う。
「いえそんなことは…ないです」
「でも深い胸の奥でつながってます」タテルは歌詞みたいなことを述べた。カゲは2人に興味津々で、色々質問を投げ掛けては屈託のない笑顔を見せる。
「カゲのしわっしわの笑顔はこの国の宝。彼女は賢い人だけど根は無邪気。ありのままが愛されるべき人なんです」
熱語りを始めたタテルは号泣した。
「だから俺は守りたい、カゲのことを。悪く言う奴は許さん」
「タテルさん…」
「カゲはひとりじゃない。自分を信じてほしい。カゲは最強の人間でありながら、俺らに愛と勇気をくれる心優しい人だ。変わらないでほしい、このままでいてほしい」
タテルの想いに、カゲも涙した。
「じゃあ私達はおいとましますね。マスター、最後に一緒に写真撮りましょう」
隣の夫婦が写真を撮るのに便乗して、タテルとカゲもマスター・若いバーテンと共に撮ってもらった。
「今晩のことは永遠に忘れないで、もちろん俺も忘れない。道を踏み外しそうになった時はこれ見て思い返して。マスター、もう1杯お願いします」
「はい…でも大丈夫ですか?かなり酔われている様子ですけど」
「次が今日の11杯目です」
「それくらいにしておいた方がいいですよ」
「タテルさんそんな飲んでたんですか…次で終わり」カゲは半分呆れていた。
「寂しかったからね…でも俺は何一つ戯言を述べていない」】
最後に飲んだカクテルが何だったか、タテルは覚えていなかった。約束通りここで打ち止め、5杯飲んで6800円はルヴェールの3杯よりも安上がりだ。【タテルは酩酊状態であったが、2人とも無事ホテルまで歩いて戻った。
翌朝、タテルは起きるとすぐにカゲの部屋をノックした。
「入っても大丈夫?」
「いいですけど…どうしました?」
「一緒に朝ごはん食べたいな、って」
そうして2人はイチゴジャムパンを一緒に頬張った。】
NEXT→道の駅岩城(百名店ではない)
https://tabelog.com/rvwr/014810282/rvwdtl/B463276962/?cid=tw_u_rstrvwdtl_app_i_rnk
2024/01/17 更新
*食べログ口コミにおいては核心部分のみの掲載となります。全文を読みたい方は以下にあるブログへのリンクをコピペし検索してお読みください。
https://todaihoteisiki-sue.com/『続・独立戦争-下』内包ストーリー『秋田フェ-11/
無心で歩くタテル。心の整理をしながら向かった場所は、川反にあるいつものバー「レディ」であった。今回の秋田滞在でも、フェス前日・初日の夜を除いて欠かさず訪れていたが、この日は混む虞があったため席を予約していた。
最初はやはり秋田のクラフトジンを飲んでおきたいということで、ナイトトラベラーのジントニックを選択。山本酒造が手がけるこちらのジン、日本酒醸造の際に出る酒粕を使用。日本酒らしいコクや香りを感じられる唯一無二のジンである。勿論ボタニカルもたっぷり使用されているため、ジンらしい複雑味も確とある。
チャームはいつものハムサンド・チーズ。何の変哲も無く見えるものほど美味いものである。ある程度酒を飲み干したところで、タテルはカウンター席の右端に座る翁に挨拶する。毎日のようにこのバーに通う好好爺であり、タテルが来店した際も必ず対面している。
この日はボックス席が埋まるほど客入りが激しく、マスターも忙しく動いていた。少しタイムラグを挟んで、オリジナルカクテルの千秋神楽。スーパーニッカをベースに、プルシア(プラムリキュール)、アマレット(アーモンドリキュール)、ブルーキュラソー。プラムの爽やかな甘みが主体であり、その他素材が作品全体を円やかにする。
各々乾杯用のカクテルを注文。カコニは紫色の紫陽花、エリカは薄い青色のイジアン、そしてタテルは赤褐色のトスカーナの休日。こちらはブランデーベースにクランベリージュースと巨峰リキュール。軽い口当たりですいすいと飲めてしまう。
夜が深まり客が続々と退散すると、漸くマスターも息つけるようになった。タテルはウイスキーを攻めることにする。秋田の地でありながらイチローズモルトが充実しており、その中から秩父On the way 2024を選択。リーフシリーズにあるような個性を詰め合わせ、一体感も演出している印象。
「やっぱりジントニックが多く出ますかね?」
「そうですね。秋田杉ジン美味しかったからもう一回飲みたい、という人が多くて。地の物が出るのは嬉しいですね」
続いては、長濱蒸溜所とあの布袋寅泰がコラボした。BEAT EMOTION triangle。長濱のミズナラ樽、スコットランドのモルト、群馬の水のトライアングル。ピートの奥にバナナやらの優しく濃いフルーティな味わいがあり心に響く。
前回も飲んだ遊佐を再び。遊佐蒸溜所のサイトを調べてみても出てこないものであったため訊ねてみると、これは北東北3県限定のプライベートボトルであるとのこと。スパイシーなイメージが強い遊佐だが、こちらはバランスのとれた円やかなコクが印象的である。
閉店時間も迫っていたため最後の1杯とする。マスターにアイラのお勧めを訊ねてみたところ、キルホーマン13年を提案された。キルホーマンで年数がつくのはとても珍しいものである。カルヴァドス樽原酒を使用しており、ピートが効きつつ林檎などの爽やかな果実味を覚える。素晴らしいウイスキーの連続に、タテルは数時間前まで虚しさに囚われていたとは思えない満悦顔を見せていた。
タテルのここでの会計は1.1万円。これだけ飲んでこの支払い金額なら、毎日のように通ってしまうのも頷ける。
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