3回
2025/03 訪問
連続百名店小説『みちのく酒びたり』第6陣①【居酒屋百名店EAST 再】
*食べログ口コミにおいては核心部分のみの掲載となります。全文を読みたい方は以下にあるブログへのリンクをコピペし検索してお読みください。
https://todaihoteisiki-sue.com/連続百名店小説『みちのく酒びたり』第6陣永楽食/
*「使った金額」は劇中におけるタテルの使用金額を反映させております。
開店時間を過ぎていたため永楽に急行する。その次に訪れる居酒屋は18時の予約であったが、駅からかなり遠い場所にあるためバスで移動する。そのため今回の永楽は17:30までの滞在となる。
早速タテルは新政を注文。軽い飲み心地のエクリュ、リッチさが加わってR-type。相変わらず穢れのないフルーティな日本酒である。ちなみに3人の注文を以て、この日のR-typeの在庫は終了した。
「摘みは食べます?」
「食べた方が良いね。空腹だと酔いやすいから」
「でもお通し2品出ますよね。それで十分かもしれません」
「いや、惣菜1品くらい食べておこう。俺は蓮根にする」
「じゃあ私たちは納豆ちくわにします」
タテルが頼んだ蓮根海老しんじょう揚げは、厚みのある蓮根がとにかく美味しい逸品。おろしを浸したつゆにつけると蓮根の甘みが際立つ。中の餡からは葱などの味が目立つ。
タテルは田酒を追加する。秋田の隣青森の酒ではあるが豊富な種類を取り揃えている。その中から山廃と斗壜取を、昔を懐かしむように呷る。
あっという間に田酒を飲み干したタテルは、男鹿の新進気鋭の日本酒「稲とアガベ」を選んだ。EMANONの味わいに衝撃を受ける。日本酒の枠を超越して、白ワインのような複雑性と重さを感じる。さらに稲とリンゴを飲んでみると、日本酒の趣を残しつつ林檎の香りが確と味わえる。日本酒の体裁を保ちつつ革新的な味わいである。
そう言ったそばから新政の個性派ブランドを追加発注するタテル。亜麻猫にはヨーグルトのような爽やかな甘みがあり、陽乃鳥には味噌やフォアグラなどの濃密な料理に合うリッチな甘みがある。
「ダメ押ししますね」
「だって飲んでおきたいじゃん、そこに新政があるなら」
「そこに山があるから、みたいに言わないでください」
「東京だともっと高くつきかねないからね。やっぱここで飲んでおかないと」
会計をしてみると、タテル1人で6,150円も飲み食いしてしまった。前座のつもりがつい飲み過ぎてしまう、それくらいの魅力が永楽にはある。
NEXT→酒盃
https://s.tabelog.com/smartphone/reviewer/014810282/review/detail/B504687702/
2025/04/15 更新
2025/02 訪問
連続百名店小説『みちのく酒びたり』第4陣②【居酒屋百名店EAST 3/100】
*食べログ口コミにおいては核心部分のみの掲載となります。全文を読みたい方は以下にあるブログへのリンクをコピペし検索してお読みください。
https://todaihoteisiki-sue.com/連続百名店小説『みちのく酒びたり』第4陣永楽食/
*実際筆者は1人で訪れ、劇中における「タテル」という人物と同じ内容を飲み食いしました。「使った金額」もそれに準拠しております。
混雑するバスに揺られ、30分弱で秋田駅の少し手前・買物市場(フォンテ裏)に到着した。ここからまた少し南下すると現れるのが、日本酒の聖地こと「永楽」である。タテルとカゲは2年前に共に訪れて以来2度目の訪問となる。
「あれ?前来た時から移転してますね?」
「そうそう。前の店は手狭だったからね、広いところに移転したんだ。あの黒い建物かな」
開店と同時刻の16:30に予約していたが、セリオンに行ったため15分程遅れての到着となった。
「いやあすみません、予約時間遅らせてもらって」
「いえいえ。日本酒、たっぷり飲んでいってください」
移転してからも壁一面にブワァっと貼られた日本酒メニューは健在である。しかし昨今の物価高や日本酒人気のせいか、レア物の価格は上がっていた。
「記憶にあるところだと十四代の七垂二十貫(60ml)、前は1050円だったのに今は2500円か」
「2倍以上ですね」
「でも前が格安すぎたんだと思います。新政も十四代も、当たり前に飲めるものじゃないからね」
「そうなんだよ。東京の高級店で飲んだら定価の何倍になることやら」
ビールなどには目もくれず、早速新政のColorsシリーズ3種類を60mlずつ頼むタテル。
白はエクリュ。果実味があって綺麗な仕上がりだが、背景もきちんとあるのが新政の強みである。
緑はヴィリジアン。エクリュよりもどっしりしていて、食事と合わせると味わいが啓く印象。
ピンクはコスモス。引き締まった味わいが特徴的である。
お通しは2種類。オクラの入った胡麻だれ豚しゃぶと、醤油の効いた出汁で戴くとろろ昆布としらす載せ豆腐である。どちらも確とした味つけで酒が進む。
「あれタテルさん、何ネギ残してるんですか?」
「ホントだ。タテルさんだって嫌いな野菜あるじゃないですか」
「ネギはな、クセが強くて日本酒の味を邪魔するんだ」
「そうですか?私は気にならないですよ」
「舌が敏感なんですよねタテルさん」
引き続き新政を開拓するタテル。県外では滅多にお目にかかれないであろう卯兵衛は、大方の日本酒にあるような重さを感じつつも、綺麗に喉へ流れていくのが面白い。
こちらも希少性の高いNo.6シリーズからX-type。これまでのものとは明らかに違うフローラルな香り。白ワインの趣もある唯一無二の味わいと言える。ちなみにこの日はS-typeとR-typeの取り扱いが無かった。
「永楽でも取り扱いが無いとは意外だ」
「それだけ人気なんですね。すぐ無くなっちゃう」
「前来た時はもうちょっと種類多かったような。紫八咫とか」
「後で調べてみたら、あれ相当レア物だったようですね。出会えたらラッキーですよ」
「貴醸酒で仕込む貴醸酒だもんな。そりゃプレミアがつくよ」
ここで各々頼んでいた摘みが登場する。まずは前回タテルとカゲも注文したイワシポテトフライ。前よりポテトの分量がちょっと多く感じたが、名物たり得る品である。
カキ酢やだだみ(白子)刺を楽しむ女性陣を尻目に、生の魚介類を避けるタテルはメヒカリの唐揚げを食べる。丸々と太っていてふわふわした身が味わい深い。衣の油が身の脂と親和しているようだ。これも日本酒によく合うものである。
タテルが次に選んだのは十四代より2種。槽垂れはラインナップの中では圧倒的安価(60ml500円)であるが、蜜のようにとろっと蕩ける一級品である。
2番目に安い(60ml1700円)中取り大吟醸山田錦。メロンのような旨味で十四代ブランドの貫禄を見せつける。
次は秋田から離れ岡山御前酒の飲み比べ。雄町菩提酛1859は辛口と銘打っているが、円みも感じられる味わい。逆ににごりからは見た目には想像できないキレを感じる。等外雄町50は女性的なお洒落さのある軽やかなものであった。
ここでメインとなるきりたんぽ鍋が登場。1人サイズで出してくれるのはすごく有難いことである。
「カゲさん、上に載ってるの食べてもらって良いですか?」
「芹か。タテルさん好きそうですよね」
「好きだよ。本当は芹サラダも頼みたかったくらい」
「じゃあタテルさんに沢山あげます」
「やった!じゃあ先ずはスープから。おっ、これは濃くて美味しいですわぁ。醤油が効いてる。もしかしてしょっつる?」
「しょっつるって何でしたっけ?」カコニが問う。
「魚醤の一種。ナンプラーみたいなもの」
「なるほど」
「でもタテルさん、しょっつる鍋もありますよね?」
「あるね」
「きりたんぽにしょっつるって入るのかな、と思いまして」
「どうなんだろう?確かにしょっつるの味したけど」
ちなみにきりたんぽ鍋にはしょっつるを入れないのが一般的である。
「お、これははっきりわかる。この黄色みが強い皮は比内地鶏に違いない」
「すごい弾力ですね。美味しい」
「そしてきりたんぽよ。米粒が立っていて、でも蕩ける食感で。出汁が染みてより旨くなってる」
「油揚げ、舞茸に白滝。具材たっぷりで食べ応え満点ですね。これで850円?安い!」
タテルが次に目をつけたのは、1合1200円以下(赤い下線がついているものは対象外)の日本酒を3種類選び60mlずつ飲める利き酒セット。1合でしか提供されない日本酒を少しずつ飲みたい時に重宝するシステムである。少しでも得をしたいタテルはボーダーライン1200円のものから高清水の嘉兆、刈穂の大吟醸、でもやっぱ1200円に縛られるのも嫌だからまんさくの花亀ゴールド1000円を。この辺まで来るとすっかり上機嫌になって、細かなテイスティングをしている余裕は無くなってしまった。
「日本酒たっぷり揃えていて、食べ物まで美味しい。最高ですね」
「でしょ。十四代をガブガブ飲むのは厳しくなったけど、それ以外にも素晴らしい酒が多い。つい飲みすぎちゃうね」
「あまり飲めない人でも食事が充実してるから来やすいよね。ほら、ラーメンとかカレーもある」
「ホントだ。まあ食堂だもんねここ。シンプル晩飯にも使えるのか」
「じゃあ私は稲庭うどんとカレーを」
「まだ食べるの⁈」
「炭水化物で〆ると酔いも回りにくくなるので!」
「よく食うな。おっさんの昼飯じゃん」
タテルの頼んだ最後の食べ物、タラフライが到着。身の締まった個体をフライにしているようで、魚の身をどっしりと噛み締める。味は淡白なため、タルタルソースで適宜補強する。
「カゲとカコニにお知らせです。東京行き最終の新幹線発車まであと30分。時間的にもあと2杯が限度でしょう」
「あっという間ですね。まだまだ飲めるのに」
3人で続いて頼んだ日本酒は新政アッシュ。相変わらず綺麗な飲み口ではあるが、色々飲んできた後だと印象に残りづらい。新政のホームページによると長期の冷蔵保存で本領を発揮するらしいので、飲み頃はもう少し後なのかもしれない。
定価でさえ2万円を超え、ネットでは十何万円で取引されている幻の日本酒・万虹。氷温熟成されたお陰か、ひんやり美しい口当たりから穏やかに溶け出す旨味。夜の大曲の雪原のように美しい1杯で、3000円の重みをぐっと噛み締めた。
最後の会計をスタッフが済ませる。ちなみにタテルの飲食分だけ取り出すと14,000円の会計である。
NEXT→シェムラブルリス
https://s.tabelog.com/smartphone/reviewer/014810282/review/detail/B504430274/
2025/04/06 更新
夕食の店とは反対方向だが、循環バスぐるるに乗り駅前へ向かう。日本酒好きが秋田に来たら外す訳にはいかない店・永楽を訪れるためである。17:30から小一時間、酒を飲もうという計画である。
「2合までだ」
「そんなこと言って、絶対3合飲みますよね」
「後にたかむら控えてるんだ。流石に自制する」
酒量を抑えるため10分弱熟考。先ずは新政エクリュのノーマルと直汲みを飲み比べることとした。後者の方が明るい味わい、と思ったが時間経過で深みを増したように感じて結局よくわからない。
「え、すごい飲みやすい。そしてフルーティで洒落た味ですね」
「あまり無いでしょ、こういう日本酒」
「人気すぎて買えないからね新政は。東京では一流の飲食店でまあまあな金額出さないと飲めない」
「へぇ。じゃあここで飲んでおこう」
続いてコスモスの直汲みを選択。エクリュのお洒落な旨味をもっと屹立させたのがコスモス、とタテルは云う。
摘みもこの店の魅力ではあるが、おでんの試食をした上にこの後たかむらでの食事が控えているため、いつものお通し(豆腐と生しらす)で十分である。
「新政だけ飲むのはミーハーすぎる。おらえ(県内物)から60mlで単品注文できる物は……」
雪の茅舎より花朝月夕を選択。ひんやり凛とした口当たりは十四代万虹を彷彿とさせる。そして米由来の自然な旨みが少しずつ溢れ出す。淡麗辛口の部類には入るそうだが、花蜜のような口当たりが心地良い酒である。
「お兄さん良いもの飲んでるね。花朝月夕は盆や正月の特別な時に飲むさ」
この店の象徴である女将が話しかけてきた。タテルにとって、直接話すのは2年半ぶりである。
「リッチな味わいで、ゆっくりたっぷり飲みたいです」
「そうでしょ。雪の茅舎はブレが少ない。質が安定しているのが素晴らしい酒蔵だよ」
「美酒の設計も美味しかったですしね」
「これ気に入った?」
「はい、大層気に入りました」
すると女将は追加で注いでくれた。
「え、いいんですか⁈」
「ありがとうございます!女将さんと喋れた、嬉しい〜」
一白水成の純米大吟醸も飲んでみたが、花朝月夕の衝撃の下では無力であった。
「あのインパクトに張り合えるのは、新政の他だと十四代しかないかな」
「十四代?」
「いっちばん人気でレアな日本酒だよ。あれ確か秋田じゃなかったですよね」
「山形」
「お隣同士ということで、折角だから飲んでみます」
「ああ、やっぱり綺麗だ」
「水のように流れていきます。フルーティさもあって」
「雄町の方がコクあるかな。まあ山田錦も美味いけど」
ちょっとだけのつもりが、気づけば60mlを8杯も飲んでいたタテルとカコニ。2人の支払い金額は各々6千円となっていた。
NEXT
https://s.tabelog.com/smartphone/reviewer/014810282/review/detail/B513461048/