人類の長い歴史の中でも後世に渡って記録に残るであろう感染症が広がり、世の中に暗い影を落としている。ここまで長期化することを予想していた人はどれほどいただろうか。飲食店はバタバタと潰れて、航空業界も虫の息であるが、ここにきて今度は変異株が猛威をふるう。政府の対応も後手後手になり、大衆からこれでもかというほど、批判のビンタをくらいながら、せめてオリンピックだけはとばかりに耐え忍んでいる。
緊急事態宣言が発令されて、人々の娯楽の一つともいえる、外食における酒類の提供が禁止された。酒好きの人が逃げるようにして集まっているのが公園などの施設で、東京ではあらゆるところで路上飲みを見かける。コンビニで酒を買って、夜風にあたりながら飲むのはさぞ格別なことだろう。(いまは暑いかもしれないけど)
さて、こんなブームが流行ると、わざわざ高い金を払ってレストランに行くことを考え直す人も出てくるかもしれない。ましてや高級店になればサービス料まで取られる。欧米文化から発祥した「サービス料」は日本では馴染むものなのだろうか。
ずっと昔、こんなこと言って批判された某有名シェフがいた。
「僕の店も“水だけで800円も取られた”と非難されることがある。でも、当たり前だよ! いい水出してるんだもん。1000円や1500円取るお店だってありますよ。そういうお店に行ったことがないから“800円取られた”という感覚になるんです」さらに「年収300万円、400万円の人は“お水にお金がかかるような高級店”には行ったことがないはず」
そう、この発言は、何を隠そう川越達也氏の名言である。これによって多くの批判を浴び、彼はテレビから姿を消した。はじめに断っておくけど、筆者は川越氏を批判したいわけでも、陥れたいわけでもない。サービス料を考える上で重要な材料になるから提示したまでだ。
さてサービス料は幾らなのだろうか。大抵のお店ではトータルの食事料金に対して、10%程度と定めている。つまり、2万円の食事であれば2000円、4万であれば4000円だ。このくらいの額を覚悟して高級料理店には赴かねばならない。さて川越氏のケースであるが、その「いい水」とやらをこのサービス料からお出ししますよ、ということであれば問題なかったはずである。ところがこの「いい水」は客からすれば求めていないにも関わらず、80円(仮に800円だとすると)のサービス料まで店側に払って頼まなければならなかったのが納得いかなかったのかもしれない。
消費税も10%になっている昨今であるが、店側は材料費の高騰を理由に、さらなる値上げをしている。もう馬鹿の一つ覚えみたいに高額なサービス料を顧客から徴収して利益をあげるようなことはやめて、是非とも料理に魂をぶつけてほしい。