6回
2024/08 訪問
【名門】新時代を迎えてもやはり変わらぬ味と姿勢
創業75年目になるという。個人的なことだけど、この店と共に歩んできた気がする。
そんな春木屋が、キャッシュレス決済のみになっていて、衝撃を受けた。
些細なことだけど、これ、実はラーメン業界の経営方針に一石を投じるくらいの影響あるんじゃないのか。
『荻窪ラーメン』のブランドを形作ってきた旗手が、現金握り閉めて列に並ぶ泥臭さを捨てて、『脱・昭和のラーメン屋』に舵を切ったことは、多くの老舗にも決断を急がせることになるのでは。
ラーメン屋のイメージと最も遠いスマートチェックが、着々と強制される時代になったのだ。
荻窪と吉祥寺の両店舗から、日本人らしいスタッフの姿が余り見かけられなくなって久しいけど、春木屋は依然として春木屋のままだった。
化粧油が輝くスープ、一口目からな上品な魚介の芳香、伝統の硬め麺、どれをとっても時代に媚びることなく、春木屋を守ってきた。
そして、今日もそれは変わらなかった。
猛暑だけど、春木屋の香りが鼻をついた途端に食欲が頭をもたげてきたのは言うまでもない。
気づいたら1年以上来店したなかったみたいで、その詫びでもないけど奮発してチャーシュー麺(1,450円)。決済はもちろんカードで。
春木屋で、支払に戸惑ってる所を、中国出身の親切な大将に丁寧に説明されるに及び、まさかこんな時代が来るとは、と不思議な感慨が込み上げて止まないのであった。
春木屋は、今後も80年、90年そして100年の節目を迎えるのだろうけど、変わりながらも変わって欲しくない、そんな思いである。
2024/08/22 更新
2023/07 訪問
猛暑とか関係ない
日本を離れ、数週間全く日本食を口にしていない状況で、自分の場合、何を食べたくなるか?
答えは寿司でも天ぷらでもなく、魚介鶏ガラの東京風醤油ラーメン。それも、魚介強めで有ればあるほど禁断症状に近い渇望が湧いてくる。
3週間ほど日本不在にしていた今回、春木屋の中華そばのスープの風味が何度脳裏を過ったことか、数知れない。
このままだと、今際の際に走馬燈のように春木屋の丼が目の前を横切るんじゃないのか、と不安になるくらい。
帰国翌日に、今回来ました。
東京は37℃の酷暑だったが、構わず阿佐ヶ谷から強い陽射しの下、陸橋を渡り目指しました。
通常ならば、この時点でのぼせてラーメンを食べる気力と食欲が失せそうなもの。
好きということ、惚れるということは、人をアホにするのか、猛暑の中、つけ麺でもない熱熱の大盛り+煮卵を見事に平らげました。これまで春木屋への賛辞を惜しみなく書いてきたつもりだが、今回は実行動で愛を表現した感じ。
2023/07/17 更新
2023/05 訪問
最高のスープに伝統の叉焼を浸して
定期的に来訪しないと気が済まない。
個人的に、東京いや日本で最高のラーメンだと信じて疑わないので、春木屋詣での為だけに中央線に乗ってる自分がいる。わざわざ来る以上、デフォルトの中華そばでは物足りなくて、ワンタンかチャーシューの二択を迫られることになる。
そして、毎回入店時に、魚介系の芳香を吸い込み、ここに戻ってこれた事に感謝する。
春木屋の、昔懐かし脂身少ないキトキトの肩ロース(多分)チャーシューが、適度に脂の浮いたスープに沈み、温められたのを戴くのが至高の瞬間。
春木屋ならではの醍醐味を堪能して、今日も家路についたのであった。
2023/05/24 更新
2023/04 訪問
いつ訪問しても最高峰
安定の春木屋荻窪本店、夜は久しぶり。
そして、長く食べていなかったワンタン麺を選んだ。
春木屋はいつだってレベルを落とさない、そのクオリティーを維持し続けている。
従業員に外国出身の方が多数を占めているが、サービスの質、敬語の正確さに至るまで、徹底してきめ細やかな教育がされているように思う。
店の清潔さや、効率的な客捌きも相変わらずだ。
最後に春木屋のワンタンを口にしたのがいつかは忘れたが、つるんと滑らかな皮が喉元を流れていく感覚に、記憶が一瞬にして蘇る。『良き伝統は変わってない…』感動すら覚える瞬間。
餡にはほのかなニンニクの香り、隠し味のベールを少し捲る辺りの匙加減が小憎らしい。
上質な個性を長期に亘って守り続けてくれている姿勢には感謝の念しか浮かんでこない。
2023/04/07 更新
2023/03 訪問
ラーメン界に燦然と君臨する一杯
これまで何度も食べてきたが、敢えて一度もレビューを書いたことがなかった。
その必要も感じなかったし、人生のソウルフードとなった一杯を讃える表現を思いつかなかった。
一年ぶりにこの味に触れて、最早、春木屋の味は日本の無形文化遺産だな、とまで真剣に感じてしまった。
『荻窪ラーメン』という食文化&ブランドを、たった一店舗で確立した、その偉業を、一ラーメンファンがどう評しようと金字塔の安定感に影響が無かろう。
僕らに出来ることは、美味いモノの語り部として、後世に伝えることくらいだろうか。
単なる食べ歩き趣味人の無力さすら感じさせる圧巻の一杯である。
2023/03/11 更新
個人的に『THE ラーメン』を一つだけブランドを選んでくれ、と言われたら、迷わずこのお店だ。
東京ラーメンという文化を形成した偉大な店舗と言って良い。春木屋の前に春木屋は無いのだ。
お店に入った途端に鼻をつく魚介の芳香。
スープを蓮華で一口啜ったとき、まるで心の故郷に戻ってこれたかのような安堵感を覚える。
たとえ世界が明日終わっても、今日春木屋に居る幸せ…
大袈裟もここまでハッキリ言うと、突き抜けて気持ち良い。程よい脂が浮いたスープの表面、ガッツリ魚出汁の効いたそのスープを絡めてくれる微縮れ麺、キトキトしながらもふんわりとスープを吸ってボリューム満点のチャーシュー、全てが追憶と一致して永遠の記憶に再度刻み込まれる。
分量的には中華そばで十分なはずだが、どうしてもこの伝統的なチャーシューを味わいたくて、チャーシュー麺(1,450円)の贅沢をしてしまう。
荻窪本店と吉祥寺店、その両方の大将が中国やネパールの方となって久しいが、どうやらその次の世代が店に入っているようだ。国籍は不明だけど、夜の営業をそれぞれお国が違いそうな3人がカタコトの日本語で連携しながらお店を回している。
春木屋を卒業した人たちは、母国でこの味を広めてくれるのだろうか。
いつの日か、HARUKI-YAが我々の知らない世界のどこかで着々と継承されていることを知る旅に出てみたい気がする。