15回
2024/09 訪問
四角くエスニックなダルバートを混ぜながら食べる
テレビのワイドショーを眺めていたら、興味深いテーマが議論されていた。"口内丼"にまつわる話である。私たち日本人は例えば、鯖の煮つけやほうれん草のおひたしを口に入れ、何回か咀嚼してから白米を口に入れる。換言すれば、口の中で丼を完成させているようなものである。無意識の行為だが、外国人の中には白米を入れるタイミングで咀嚼中の食べ物が見える等の理由で、マナー違反だと考える人もいるらしい。
スタジオでは「海外で食事をするときに注意しないといけない」や「"KONAIDON"という単語でそのうち受け入れられるようになるのでは」などの意見が交わされていた。私が思ったのは、米が主食の日本食であれば、口内丼という作法で食べるのは自然だろうということである。では逆にどうやって食べればよいというのか?
その翌日、私は名古屋駅西のカトマンズキッチンにやってきていた。
★ネパーリタリセット(野菜)850円
+100円で食後にホットチャイを追加
いつものダルバートがやってきた。長方形の銀色プレートに、ダル(豆のスープ)、タルカリ(野菜カレー)、アル(ジャガイモ)、アチャール(漬物)、パパド(豆せんべい)、生野菜(きゅうり)、ライス(日本米)が盛りつけられているネパール定食である。いつもは平らにならされているライスが、今回はドーム型である。
ここのダルバートは四角い見た目だけでなく、エスニック感がオラオラと前に出ている。全体的に香辛料が強めである。黄色くさらっとしているダルはニンニクや生姜が思いっきり効いていて辛味もついている。タルカリもアルもアチャールも味の存在感をありありと感じる。ライスが多くても、それを食べてしまえるほどのたくましさが各々のおかずに具わっているのである。日本での日常的な食事では感じられない味がここにある。
さて食べ始めよう、という時に、私は冒頭の話題についてふと思い出した。そして気づいた。ダルバートは口内丼になりえない。なぜなら、混ぜながら食べるからだ。ここのネパール人お兄さんも私の知人が初めてダルバートに挑戦した際、「混ぜながら食べてね」とにこやかにおっしゃった。スプーンでライスの上にダルをかけ、軽く混ぜて口に運ぶ。タルカリやアルも一緒に混ぜて口に運ぶ。アチャールも混ぜてみる。どのおかずを混ぜるかによって、味も異なってくる。
これを日本食で例えれば、白米に味噌汁をぶっかけて煮物を乗せて混ぜて、口にかきこむようなものである。自分の子供がそのような食べ方を家庭でしでかしたら、大抵の親ははしたない食べ方をするなと注意するだろう。しかし、ネパールではそれが普通の食べ方であり、反対にタルカリを口に入れて数回噛み、その後ライスを口に入れ、その後ダルをすする、なんて食べ方は奇異な視線を向けられそうである。食文化の違いというのは実に面白い。
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店員のお兄さんが「ネパールでもダルをいっぱい食べてね」とダルを追加してくださった。ホットチャイとは別に食事中用のマンゴーラッシーをサービスしてくださった際は、さすがに私は笑ってしまった。別のテーブルのネパール人のお客さんもダルバートを食べているようだった。スプーンがプレートとぶつかる「カンッ」という音やプレート上をすべる「カーッ」という音が聞こえ、彼もスプーンで混ぜながら食べているようだった。
食後のホットチャイにはミルクと砂糖がたっぷり入っていて、濃厚な甘さに私はうっとりとした。店内にはいろんな人々が来ていた。日本人男女のお客さん、家族連れ、飲みにきた年配男性たち、欧米系のお客さん。隣のテーブルに座ったネパール人男性があと数日で帰国するというので、私はホットチャイを飲みながら、日本とネパールの文化の相違点について彼と歓談した(口内丼の話を出してみればよかったと後になって思った)。店員のお兄さんが「また友達が増えたね」と私に言った。
こういう雰囲気の中にいると、もはやカトマンズキッチンというネパール食堂がダルバートのようだと感じてくる。様々なバックグランドのお客さんが集い、個々人の考えや感性が他の人のそれらと混ざる。時に相互作用によって新たな悦楽が生まれる。スピッツの『渚』風に言えば、"カトマンズキッチン(あるいはダルバート)は我々の夢を混ぜ合わせる"のである。
もっと極言すれば、"人生はダルバートだ"という、より大きなメタファーも成立するのかもしれない。私たちは外的要素を自身の心に混ぜ合わせながら自己の変容を見つめ、人生の種々雑多な局面を味わっていくのである。すなわち、ダルバートを食すというのはある意味で純文学的な営みであり.....思考が混沌としてきて訳が分からなくなってきたが、とりあえず四角くエスニックなダルバートは今日も美味しかった。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/09/26 更新
2024/08 訪問
ネパール料理で辛活汗活、野菜トゥクパとコテモモ
ストレス社会の洗礼を受け、私は朝からお腹を壊していた。こういう時は辛いものなど刺激物を控え、胃に優しい食事をするのが正解である。しかしストレス発散のために辛いものを食べるのだ、と私は正当化する。
8月に入り、足繁く通っている名駅西の"カトマンズキッチン"を外から覗いたら、なぜか中がよく見えない状態になっていた。ドアを開け奥に進むと、カーテンを閉めているためだと判明した。なるほど、これなら適正なエアコンの温度設定で涼しくなる。エコフレンドリー。
メニューを開く。"ネパール料理だ、ネパール料理だ、ネパール料理だー!" 私はアニマル浜口のように心の中でそう吠えて、単品でネパール料理を2品注文した。
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★野菜のトゥクパ 660円
トゥクパはネパール風うどんやネパール風ラーメンと称されることが多い。チベット系の料理だと聞いている。
中辛でお願いしたのだが、スープが赤く、見るからに辛そうである。で、実際になかなか辛かった。喉がヒリッとし、舌がピリッとした。額や首から早速汗が出始めた。
麺は一般的な中華麺かなと思うが、非常に柔らかく消化に良さそうである。野菜はキャベツやピーマン、玉ねぎにほうれん草が入っている。辛くさえなければ寝込んでいるときの栄養食にもなりそうだと思う。
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★コテーモモ 770円
剣道で"面・胴"に対して"小手"がわかりにくいように、モモに対して"コテーモモ"がどういったものなのか名称だけではよくわからない。店員のネパール人お兄さんに尋ねたところ、蒸しただけのものがモモ(スチームモモ)、蒸してからフライパンで焼いたものがコテーモモとの説明だった。確かに、団体旅行でワイキキビーチに行って日焼けしてきたのかのような、茶色い焼き目が8個のモモについている。オレンジ色のスパイスソースであるチャトニがついてくる。
こう聞くとひと手間かけた餃子みたいなイメージだが、このコテーモモが美味かった。スチームモモの皮のモッチリ感に、焦げた皮の部分のパリッと感があり、それらを口の中で感じるや否や、鶏ひき肉餡の肉汁が溢れ出す。ここのモモは皮がかっちり作られているため破れず、肉汁が皮の外に漏れることなく閉じ込められている。二口で食べようとモモをかじったら、肉汁がこぼれ落ちた。
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入店前に汗は十分体外へ放出されていたのだが、トゥクパとコテーモモを食べているうちに、額の汗が再度出てきて鼻まで伝ってきた。鼻水も出るわで、テーブル上の紙ナプキンを大量に積み上げてしまい申し訳なかった。辛いネパール料理を食べて汗をかく。夏こそ辛活汗活。
お客さんは日本人の方もネパール人の方もいらっしゃった。クレジットカードで会計を済ませると、常連の私に対して厨房からネパール人お兄さんたちが手をふって「ダンネバード(ありがとうございました)」とおっしゃった。私もありったけでぎこちない笑顔で手をふり、「ダンネバード」と言った。私が感じていたストレスは汗と一緒に蒸発していたようだった。腹痛のことなど忘れていた。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/08/13 更新
2024/07 訪問
夏は冷やしスープモモの季節で、"モモバート"と叫びたくなる
7月初旬だが、この日の名古屋の最高気温は38度という予報だった。私の白いシャツの襟は汗でびしょ濡れになっていた。そんな季節にぴったりのネパール料理を私の口は求めていた。
私にとってはお馴染みの名駅西のカトマンズキッチンを訪れた。昨年の夏も似たような酷暑の中、私はここで冷やしスープモモを食べたのだ。
店内のテレビには多数の手を持つヒンドゥー教の神様が映し出され、そういう映像に合致したネパール音楽が流れていた。壁際のテーブル席には10人ほど学生が食事をしており、若々しいエネルギーに満ちているように見えた。一方で窓から外に目を向ければ、道ゆく人は日傘を差したり小型扇風機を使ったりしながら、皆険しい表情をしていた。四方八方にぼんやりと目線をやりながら、私は料理が時間をかけてできるのを待った。
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★スープモモ(冷)610円
★ライス 300円
★ミックスアチャール(メニューにはないが注文)
モモはネパール風蒸し餃子と言われ、それがスープに浸っているのがスープモモである。スープは通常温かいが、カトマンズキッチンでは冷たいものも提供している。
冷やしスープモモは温かいスープモモの温度を単に下げただけではない。スープそのものが異なる。ここの冷やしスープモモのスープは明るい黄金色をしており、ピリリとした辛味だけでなく、ごまの風味と酸味が加わっている。パクチーがパラパラと入っており、エスニックな風味を感じる。(ちなみに冷やしといっても、ジュースのように冷たいわけではない。あくまで、ぬるま湯くらいの温度である。)
モモは8個入っている。皮が分厚めで、破れないようカッチリ作られている。中の餡は鶏ひき肉からできており、餃子の餡に似ている。上からはオレンジ色のチャトニ(スパイスソース)がかけられており、少し違った種類の辛酸っぱさが足されている。
そんなスープモモをおかずにライスを食べる。モモをスープとともに口に入れ、ライスも口に入れる。あるいは、ライスにスープをかけたり、ミックスアチャール(漬物)もライスに乗せたりして食べる。私の好きな食べ方である。
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ネパール料理といえば"ダルバート"という定食メニューを思い浮かべる。"ダル"は豆のスープを、"バート"はライスを意味し、野菜のおかずも併せてついてくる。同様の考え方により、モモとライス、そしてアチャールを一度に食べることを、私は"モモバート"と呼んでいる。店員のネパール人お兄さんに「モモバートです」と冗談で言ってみてもいささか返答に困っているようだったので、私が勝手にそう呼んでいるだけかもしれない。
冷たいスープモモだとしても、ネパール料理であることに変わりはない。私の顔面を、首を、そして身体を、汗が垂直に伝っていった。代謝を促進するような心地よい汗だった。お兄さんがサービスしてくださったマンゴーラッシーを、私は拝むように飲んだ。
お兄さんはミックスアチャールの代金をサービスしてくださった。いつもいつもありがとうございます、と私は丁寧に礼を述べた。店の外に出ると、地球全体が蒸し器と化したかのような唖然とする暑さに迎えられた。夏空へと顔を斜め上に向け、「モモバート!!」と叫びたくなった。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/07/13 更新
2024/05 訪問
お昼のネパール食堂、貪欲にスクティセット
一人暮らしをしていると精神衛生を保つ術を見つけ出さなくてはならない。私にとっては顔を知ったネパール人店員さんと話すのが、一つの方法である。それゆえか、最近の私は新規活動よりも既存のネパール料理屋を訪れることのほうが多くなっている気がする。
「ナマステ〜」と両手を合わせて、いつものように入店する。ネパール人男性店員さんたちが親しげに迎えてくださる。ネパールに関する私の今後の活動予定を報告する。そうしてあれこれ話していれば、いつの間にか私も笑みを見せているのである。
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★スクティセット 1090円
スクティはマトンの干し肉炒めである。食べやすい小さめのサイズに切られ、正方形プレートの3分の1ほどのスペースを埋めている。
スクティを食べたことがある方はご存知だろうが、これは硬い料理である。このスクティもカチカチに硬い。しかしこの硬さが美味さを生み出す。クリスピーでカリッとしており、味つけも本場のようにスパイシーである。ニンニクなどの香辛料で肉の臭みもない。
その右にはアルサデコ(ジャガイモのスパイス和え)が盛られている。私は野菜で何が好きかと問われれば迷わずジャガイモと応えるので(ジャガイモが野菜に分類されればの話だが)、パクチーと唐辛子が効いたこの店のアルサデコが好きである。食感は柔らかくホクホクしている。
アチャール(漬物)は2種類。大根やきゅうりのミックスアチャールに加えて、ペースト状のアチャールが添えられている。緑色のアチャールはもの珍しく映る。塩味と酸味と辛味を備えた味だった。
これらのおかずを受けとめる主食がブジャ(米ハゼ)である。上にはバトマスサデコ(大豆の和え物)が少しばかり乗っている(これも硬い)。料理の味つけがどれもスパイシーで濃いめなので、ブジャを貪るようにボリボリ食べてしまう。
ブジャが瞬く間に消費されていったので、私はおかわりをお願いした(+150円)。「少し」と言ったが予想通り、落とし穴の中の緩衝材のような見た目で、深くたっぷりやってきた。それでも私は獰猛な肉食動物の如く、スプーンを止めずに貪欲にムシャムシャと噛み続けた。いくらでも食べられてしまいそうである。辛さでピリピリする唇と舌を、サービスのマンゴーラッシーで和らげた。
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日本人の女性2人が楽しそうにおしゃべりに花咲かせている。奥のほうでネパール人女性2人がスープモモをすくっている。私の後ろではネパール人男性3人がダルバートを食べながら真剣な声色で話をしている。壁の向こうではご年配の常連客らしき日本人男性がチョウミンを注文している。
インドネパール料理屋の中には、ネパール建築を反映していたりおしゃれな灯りを照らしていたりするような落ち着いたところもある。カトマンズキッチンはそういったところというよりは、大衆的なネパール食堂である。ネパール料理やネパールの雰囲気を通じて、日本人もネパール人も、一人でも複数人でも、様々なお客さんが集まり、ここにしかない雰囲気を生む。この雰囲気の中に自分が含まれているという感覚は、なんとも不思議であり、なんとも表現しがたい面白味がある。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/05/25 更新
2024/04 訪問
ライスはヒマラヤ盛り、四角くエスニックなダルバート
レストランで良い気分になると、食事中及び店を出てから、するすると流れるように言葉が出てくる。こうして、もともと書くつもりがなかったが、"カトマンズキッチン"の10回目のレビューを書くことにした。
12時45分頃に入り、厨房のネパール人お兄さんたちに「ナマステ~」と両手を合わせて挨拶をする。店の中央のテーブル席に腰かける。今日は日本人客とネパール人客が丁度半々くらいである。日本語とネパール語が混じった声々が、前からも背後からも聞こえてくる。
グラスの水をもってきてくださったお兄さんに「チキンカナ」と、ネパール人風に注文をしてみる(カナ=食事=ダルバート)。「ドリンクは?」と尋ねられ、「いらないです。でもサービスならもらいますよ」と笑いながら冗談を言ってみる。今こう振り返ると、私はどうやら常連客気取りで、うぬぼれてしまっているようである。
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★ネパーリタリセット(チキン)950円
これを食べながら待っていてね、とサラダをサービスしていただけた。上の細い人参の乗り方が、髪が伸びたときの自分の髪の流し方に似ているような気がした。
メインの料理がやってきた。ダルバート、すなわちワンプレートのネパール定食である。
ライスがまず絶対目に留まる。どっさり山盛りで言葉を失う。お茶碗3杯分くらいあるだろうか。日本米が白く輝いている。雪をかぶっている美しいヒマラヤ山脈にさえ見えてくる。まさにヒマラヤ盛りといえる。
しかしこんなことで私は動じない。確かに私は周囲から少食だとみなされている。ラーメンとチャーハンを同時注文するような胃は持っていない。だがネパール料理は別だ。覚悟を持って毎回入店している。このレベルの量が来ることもある程度予測している。闘いに来ているのだ。
私は気を引き締めると同時にベルトを少し緩めた。そして、ダル(豆のスープ)をライスにかけて食べるところから始めた。黄色いダルにはパクチーやニンニクがたんまり入っていて、食欲をそそる。
次はダルとタルカリ(野菜カレー)をライスにかけて食べる。タルカリは大きめの豆やジャガイモやしめじをカレーペーストで和えたような仕上がりになっている。
続いてチキンカレーをライスにかけて食べる。大きな鶏むね肉がいくつも赤いスープに浸っている。こちらにもパクチーが入っている。
アチャール(漬物)も加えながら食べる。細切りにされた大根・人参・きゅうりが、塩味と酸味をまとっている。コリコリという食感が良い。
いろいろ混ぜながら食べていく。突如口の中にバターのような芳醇な香りを感じる。ギー(インネパバターオイル)が入れてあるのではないだろうか。でもどの料理に入れてあるのかはわからない。いずれにせよ、長方形の銀色プレート上で、ネパール独特の味が繰り広げられている。前回同様の表現を使うなら、"四角くエスニックなダルバート"なのである。
考えを巡らしているうちに、ライスは減ってきている。最後にひと踏ん張りし、ライスをすべて胃に押し込む。美味しかったと、満腹感を味わう。
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お店のお兄さんの親切心で、私は別のテーブル席のネパールのお客さんたち3人とお話をした。私はネパール料理が好きで、その中でも一番はダルバート、二番はモモだと述べた。「でも、皆さんはナンとカレーを食べていらっしゃるんですね」と、私は3人のテーブルに目を向けた。ダルバートは自分で作って毎日家で食べる、外ではこうしてナン・カレーを食べるんだよ、と彼らは応えた。それもそうだ。私たちにとってのネパール料理と、ネパール人にとってのネパール料理は、意味するものが異なる。
余談だが、「ネパールでは身体の調子が悪いときにククリラム(ネパールのラム酒)を飲むと聞きました。それは本当ですか?」と、私は冗談半分で訊いてみた。お店のお兄さんも含めて4人とも「うん、特に喉が痛いときに飲む」と口をそろえたので、私はヒマラヤ並みのライスを見た際よりも唖然とした。私たちにとってのお酒と、ネパール人にとってのお酒は、意味するものが異なるようである。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/05/10 更新
2024/03 訪問
四角くエスニックなダルバート
雨が降りしきる土曜日、名駅西のカトマンズキッチンを定期訪問した。ドアを開けて「ナマステ~」とネパール人お兄さんに挨拶をし、奥の隅の席に腰かけた。メニューブックを一瞥して閉じて、水を運んできたお兄さんに注文する。いつも通り。
★ネパーリタリセット(野菜)850円
ダルバートと言われるワンプレートネパール定食である。店員さんが今日も親切で、サラダをサービスしてくださった。いつも通り、になりかけている。
この店のダルバートはくぼみと仕切りを持った銀色の四角いプレートでやってくる。この写真を見て、「給食みたい」と言った方がいた。確かに、高級感というよりも、日常的に食べる定食に見える。
私はこの黄色いダル(豆のスープ)が時々恋しくなる。ニンニクや生姜、辛味に加えて、緑のパクチーがたんまり入っていて、エスニックな風味が漂う。豆は形がかろうじて残っているくらい細かく、ざらっとした舌触りがする。
これを丁度良い硬さの日本米にかけて食べる。豆とジャガイモのタルカリ(野菜カレー)やアルサデコ(ジャガイモの香辛料和え)、アチャール(漬け物)も一緒に混ぜて食べていく。どのおかずも香辛料により、日本食とは違うネパールの味を楽しめる。
ライスとダルはおかわりできる。ダルをおかわりした。深めの器で見れば、このダルはスープ状だと一目瞭然である。ライスは量が多く、肉なしでも十分満腹になり、食後はお腹をさすった。
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ダルバート探求初期の私は、ダルバートやネパールタリという言葉だけに惹かれて、その内実はそれほど気にしていなかった。ネットでメニューを見て、”ダルバートっぽい”料理がありそうなら、とりあえず訪れて食べてみて満足した。当時の私にとっては、ワンプレートにダルとライスとおかずがありさえすればよかった。
しかしこうやって様々なインネパ料理店を練り歩いていくと、ダルバートはその店ごとの特徴があるものだとわかる。本格派のネパールダルバートもあれば、インドカレー式ダルバートもあり、お店独自のアレンジを加えたダルバートもある。高級感のあるダルバートもあれば、食堂的なダルバートもある。
ネパール料理店が増えて、ダルバートも多様になりつつあるようである。その一つ一つを〇〇ダルバートと命名できてしまう。ここは”四角くエスニックなダルバート”としておこう。
料理のネパール感、そしてネパール人店員さんたちの気さくさに惹かれて、私は今後もカトマンズキッチンに顔を出すことになるだろう。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/04/08 更新
2024/01 訪問
ネパール料理屋に長居、スナック感覚でチャットパットとチリモモ
名古屋駅から西へ徒歩5分のエリアにあるネパール料理店"カトマンズキッチン"に2024年もやってきた。何度も来ているうちにネパール人(ネパリ)店員さんたちと親しくなり、常連になっていた。
11時20分頃に入店した。厨房からネパリ男性の方々4人。「ナマステ〜」いつもと変わらない顔ぶれ。
ガッツリ食べるお腹の余裕はなかったので、ネパール料理を2品注文した。
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★チャナチャットパット 400円
ネパールの屋台スナック"チャトパテ"。米ハゼの"ブジャ"と砕いたインスタントヌードル"チョウチョウ"を中心に、豆、きゅうり、ジャガイモ、玉ねぎが混ぜられている。上にはパラリとパクチー。
香辛料と酸味が効いていて、少しピリリと少し酸っぱい。ボリボリと食べていける。ポテトチップスをついつい次々とつまんでしまう感覚に似ている。そして屋台よりも安心して食べられる。
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★チリモモ 790円
ネパール風蒸し餃子"モモ"をチリソースでからめたもの。なのだが、ここのチリモモは少し違った。
モモがまんまるでゴルフボールみたいだなぁと思いつつフォークを刺すと"サクッ"という音。おぉ、フライモモなんだ。油で揚げたモモなんだ。チリソースもドライスタイルで、要はフライモモがピリ辛チリ味に仕上げてある。
よくあるチリモモのモモはどろっとしたチリソースによってぷよぷよみたいに柔らかくなっていることがあるが、このモモはカリッと食べられる。玉ねぎやピーマン、ニンニクの破片と一緒に口にポンポン放り込める。こちらもスナック感覚に近い。
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その他パスタのネパール風和え、マンゴーラッシーをサービスしていただけた。飲み終えた後、「チャイ飲む?」と訊かれたので、断るのも悪いと思い(それに実際飲みたかったので)、「飲みます」と応えた。ホットチャイを飲みながら、ネパリお兄さんと日本とネパールの家族観の違いについて意見を交わし、テレビから流してくださったネパリソングに耳を傾けた。
学生時代、金曜5限が終わる度に大学前のインド料理屋に友人と通いつめたのを思い出す。食後のラッシーを飲みながら、教授のモノマネから真面目な教育論まで語り合って時間を忘れ、チャイまで続けてサービスされた際はさすがに帰れということかと私たちは苦笑した。
こうやってネパール料理屋に長居できるのは本当に楽しいことで、その空間を作り出してくれているレストラン、そして気さくな店員さんたちに感謝しなければならないと思った。チャイを飲み終わる頃には入店後2時間が経っていた。一番乗りの客だったのに、最後に店を出ることになった。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/01/28 更新
2023/12 訪問
チョイラセット再び、チキン生姜ニンニク三昧
名駅西のネパール料理店"カトマンズキッチン"。ネパール人男性店員さんたちと親しくなり、ネパール料理をネパール人向けの味に仕上げてくださるので、足繁く通っている。
さて、今日は何を食べようか。モモ、トゥクパ、チキンチリ、チョウミン.....いろいろなネパール料理の名前と写真が私の脳内で錯綜する。前回食べたポークチョイラは文句なしに美味かった。チョイラセットを再び注文した。今回は50円安いチキンにした。
★チョイラセット(チキン) 850円
「食後にホットチャイをお願いします」と伝えた。メニューをぱらぱら眺めながら待っていたが、他のお客さんたちのテーブルに料理が先に置かれていく。私より後に注文してもナンカレーのセットのほうが早く出てくるのは当然だ。平然と待っていると、店員さんが「サラダとマンゴーラッシーをどうぞ」と私の前に置いた。
「えっ、ホットチャイ注文しましたよ」それに対する回答は、マンゴーラッシーは食前用という論理だった。軽く笑ってしまった。「マンゴーラッシーいらない?」と聞かれ、「いただきます」と受け取ることにした。「ホットチャイはなくていいですよ」と、私は一言付け加えた。
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運ばれてきたチキンチョイラを一目見て、私は再度軽く吹き出さずにはいられなかった。チキンは大きめで量がどっさり。こんもり丘のように盛られている。そして何より、大量の細切り生姜とニンニクの破片。「これは生姜とニンニクです」と誰もが目視で正解できる大きさと量の生姜とニンニク。チキンと一緒にゴロゴロと転がっている。上にはネギがパラリと乗っている。
食べれば当然、生姜とニンニクの香りと刺激がすごい(こういう時"すごい"という単語ほど便利な語彙はない)。チキン生姜ニンニク三昧である。香辛料の辛さも合わさって口内はピリリとする。目も頭も覚めてくる。心も身体もエネルギーが湧いてくる。ネパール人のように踊り出しそうになる。
前回と同じく、パクチーや唐辛子が効いたジャガイモの和え物"アルサデコ"、きゅうりや人参の漬物"アチャール"、大豆の和え物"バトマスサデコ"(硬めの食感)、オレンジ色の酸っぱくて辛いスパイスソース"チャトニ"、大きめのひよこ豆や甘めの豆が入った"ダルスープ"(これがついてくるのが嬉しい)、そして主食は米ハゼの"ブジャ"、これらが一つのセットでやってくる。850円で豪華である。チキンチョイラ同様、どれも香辛料が存分に使われていた。
おかずがたっぷりあったので、ブジャをおかわりで追加していただいた。ボリボリボリボリとブジャを食べていると、なぜか自分が強欲な人間のように思えてくる。
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食べ終わった後マンゴーラッシーをゆっくり飲んだ。ネパールの方々は、生姜とニンニクをびっくりするくらい料理に入れるのだろうか。マンゴーラッシーの甘さでも口内のニンニク臭は取れないだろうなと思い、店を出るとき隙間なくマスクをつけた。
変人に思われることを覚悟して言えば、ネパール料理を食べた後にマスクの中を支配する匂いが、私は好きでたまらない。香辛料を摂取したなぁ、エスニックを食べたなぁと実感し、満ち足りた気分になる。ただ、喉が渇いてしかたなかった。夜になってコーヒーを飲みたい欲求と必死に闘った。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2024/01/05 更新
2023/11 訪問
ポークチョイラセット美味い、ネパールと日本の距離
私は"カレー好き"と言われることを好ましく感じていない。不愉快とまでは言わないが、いささかの違和感を抱いてしまう。厳密にいえば、"インドネパール料理好き"だからだ。
だから会話でそうさりげなく訂正する。すると今度は"ナン"という単語が飛び出てくる。だから私はより正確に"ネパール料理好き"だと言う。しかしその言葉で、相手の脳内に明確なネパール料理のイメージが浮かんでいるかというと、そうではないケースが大半だと思われる。あるいは、ナン・カレーのイメージを変わりなく維持しているかもしれない。
私はナン・カレーを決して非難しない。そんなことをする資格などない。ただ、日本人がネパール料理に対して持つイメージと実際との相違、あるいは不和が気になるだけである。
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私にとってはおなじみの名駅西のネパール料理店"カトマンズキッチン"にやってきた。ここはネパール人の舌に合わせた本格的なネパール料理を提供している。
★ポークチョイラセット 900円
チョイラはゆで肉を香辛料で和えた料理である。ネパール料理の中でもネワール族の料理に位置づけられる。豚肉のチョイラは少し珍しいかもしれない。ネパールでは一日2回のメインの食事の間に"カジャ"(軽食)としてこのような料理を食べる。
ポークチョイラ美味い。とりあえず美味い。硬めでクリスピーで、噛めば噛むほど肉のうまみを味わえる。香辛料は特にニンニクと生姜が効いている。食欲をそそる味である。ネパールは鶏肉や水牛肉のイメージが強いが、ネパール料理屋で食べる豚肉料理も例外なく美味い。
もちろんセットのため、これだけではない。きゅうりと人参、ジャガイモのアチャール(漬物)はポリポリと心地よい食感を味わえる。アルサデコ(ジャガイモのスパイス和え)はホクホクしている。ダルスープはダルバートのダルよりも、大きな数種類の豆が使われている。オレンジ色のチャトニ(スパイスソース)は酸味が強めな味に作ってある。バトマスサデコ(大豆の和え物)はボリボリと節分豆のような音を出す。
この店ではパクチーが積極的にふりかけられる。辛味も容赦なく加えられる。それぞれの料理がエスニックな風味と個性を存分に発揮している。これらをおかずにブジャ(米ハゼ、ポン菓子)を食べた。ブジャをもっと欲しいとさえ感じた。
店員のネパール人お兄さんはドリンクとしてラッシーをサービスしてくださった。これが常習化してしまっていて、少し申し訳ない気持ちになった。900円でこのセット内容なら申し分ない。
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私はラッシーにストローを差し、それをちびちびとすすり始めた。店内にはカトマンズ盆地の世界遺産"バクタプル"の絵画が飾られている。私はその綿密に描かれた絵画に目をやり、そういえばバクタプル観光時に食べた料理もチョイラなどのおかずを含んだ似たような(ただ今回より豪華な)セットだったなぁと想起した。
そんなのが真のネパール料理の一つである。日本人がすぐ頭に浮かべる"カレー"ばかりがネパール料理ではない(おまけにナンはネパールの主食ではない)。ネパール人が考えるネパール料理と、日本人が考えるネパール料理の間には、8時間の直行便でもたどり着けないくらいの距離があるように感じる(RADWIMPSのような言い回しだが)。
メディアを通してネパール料理も徐々に日本に浸透しつつある。それでもベトナム料理のフォーやバインミーほど、あるいはタイ料理のトムヤムクンやガパオライスほど、本物のネパール料理は市民権を得られていない。ネパール料理の代表格ダルバートやモモを即座にイメージできる日本人は、何%くらいいるのだろう。ナン・カレーをイメージする日本人は、何%くらいいるのだろう。
友人をこの店に連れてきた時のことを思い出した。彼は初めてモモを食べ、ブタンやスクティを食べ、アチャールを食べた。そして美味しいと言ってくれた。一つのオセロの駒を黒から白へとひっくり返したような僅かな嬉しさを私はその時感じたのだった。
私の印象では、カトマンズキッチンには日本人のお客さんとネパール人のお客さんが半々くらいの割合で来ている。ナン・カレーを食べている日本人が「本場の人は何を食べているのだろう、挑戦してみようかな」と思う契機を生み出してくれそうである。ネパール料理の誤ったイメージを払拭してくれるかもしれない。大げさな言い方かもしれないが、ネパールと日本の距離を縮めてくれる存在になってほしいとさえ期待したくなる。ちなみにお店のお兄さんはメニューのネパール料理について尋ねられた時に備えて、日々日本語の語彙を増やすよう努めていらっしゃるようである。
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昼食後の地下鉄で私はたいてい睡眠世界へと運ばれてしまうのだが、この日は思考に拍車がかかり目がさえきっていた。こうして脳内でこぼれ落ちた思索が文章になり、私のレビューを冗長にするのだろうと思った。気づけば一駅乗り過ごしてしまっていた。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2023/11/21 更新
2023/10 訪問
お待ちかねのサービス精神、野菜づくしのベジダルバート
繰り返しインドネパール料理屋に通って店員さんと仲良くなることで、サービスしてもらえる可能性が高くなる。
名駅西エリアのネパール料理店"カトマンズキッチン"。この日もドアを開くと、いつものネパール人お兄さんが期待通りいらっしゃった。「ナマステ~」と両手を合わせながら挨拶した。
今日は店内がいつもより静かめで落ち着いて食事ができそうだと思った。何を食べるかは決めていたので、席に着くや否やお兄さんに伝えた。「ネパーリタリセット、ベジ。」
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★ネパーリタリセット(野菜)850円
すぐに出してもらえた。ネパールの国民食"ダルバート"である。私はよく注文する。ここでは日本人のお客さんからもネパール人のお客さんからもよく注文される。
銀色の長方形プレートを時計回りに見ていくと、ライス、ダル(豆カレー)、しめじ・豆・青菜のドライカレー、アルサデコ(ジャガイモの和え物)、アチャール(人参・きゅうり・ジャガイモの漬物)が盛られている。小さな小さな器にチャトニ(オレンジ色のスパイスソース)もくださった。
食べ始めようとしたら、お兄さんが小皿にサーグを乗せてやってきた。細かく切られたほうれん草の炒め物である。これでネパーリタリとして全部そろったね、とお兄さん。確かに、豪華なダルバートになった。
よし、いただきますとスプーンを持つと、今度はマンゴーラッシーがとんっ、と前に置かれた。なんか、すみません。。。でも本音を言ってしまえば、「よっ、待ってました!」と私は心の中で合いの手を入れていた。チャトニの時点で、サービス旺盛精神が始まったなと、密かにニヤリとしていた。サービスを待ち構えているようなオーラが私のほうから出てしまっていたかもしれない。
ここのダルバートのダルは特徴的である。パクチーが効いていて辛味も加えてある。辛味といえば、中辛でお願いしたが、全体的にそれ以上のスパイシーなネパールの味で提供された。料理の中から唐辛子も見つけた。汗が額ににじみ出てくる。鼻水も出てくる。
おかずが多くてどれも美味しい。野菜づくしになった。最近野菜摂取不足だからありがたい。どれも日本で手に入る野菜だが、味つけはエスニックなものに仕上がっている。日本米ライスも大盛なので、肉がなくても満腹になる。
ライスとダルはおかわりできる。少し迷ってダルを「少し」追加してくださいと伝えた。予想通り器いっぱいでお兄さんが持ってきた。こういう深い器で見ると、ここのダルはスープ状なのだとよくわかる。ライスをダル浸しにして食べた。すべて食べ終え身体を椅子にもたれさせながら、マンゴーラッシーをゆっくりストローですすった。
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いつも通りお客さんは日本人の方もネパールの方もいらっしゃった。誰に対してもお兄さんはフレンドリーに接客している。私はLINEへの通知が公式アカウント以外からはほとんど来ないような人脈薄弱な人間である。少数の友好的な関係は貴重である。大切にしなければならないし、感謝しなければならない。レジでお兄さんに「ダンネバード(ありがとうございました。)」とちゃんと両手を合わせて伝えた。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2023/11/03 更新
2023/08 訪問
夏は冷たいスープモモ、バターライスと食べればもう最高
この日の名古屋は最高気温が39度という予報だった。暑いと連呼せずにはいられない。ネパール風餃子"モモ"のように蒸しあがってしまう。名古屋駅から"カトマンズキッチン"への徒歩10分でさえ、苦難の道のりに感じた。
いつものネパール人お兄さんは店の奥でオーダーをとっていらっしゃった。私に気づいてくれたので、彼に"ナマステ~"といつも通り挨拶した。
スープモモの冷たいバージョンって提供しているのかなぁ。お兄さんに尋ねてみたら、あるとの返答。飯物と一緒に注文した。
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★スープモモ(冷) 610円
★バターライス 350円
お兄さん曰く、ネパール人もこうやってモモを食べるよ、という冷やしスープモモ。ごまベースの冷たいスープは少し酸味と辛味があり、暑い季節でも飲みやすい。そこにモモが8個浸っており、上にはオレンジ色のチャトニ(スパイスソース)がかけられ、緑のパクチーもパラっと乗せられている。
ここのモモは美味しい。皮にしっかりした硬さがあり、鶏ひき肉の餡は肉肉しい。お兄さんは途中でスープを追加してくださった。一段階スープが冷たくなった。
バターライスはターメリックを加えてあるのか黄色い。日本米だが、ニンニクやクローブ、カルダモンといった香辛料の芳香がする。
このスープモモとバターライスの組み合わせが抜群だった。スープモモをレンゲですくって口に入れ、ライスもスープをかけて食べた。最終的にはライスをすべてスープに投入して雑炊のように完食した。「これ最高ですね!」と思わずお兄さんに伝えた。
お兄さんはいつものサービス精神を発揮し、アチャールどうぞ、と大根のスパイス漬物をくださった。塩味と酸味が効いており、ポリッという音が心地よい。梅干しのような熱中症対策効果がありそうである。マンゴーラッシーもサービスしてくださり、単品注文がセットのようになった。日本人らしく「すみません。」と私は言った。
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18時30分くらいになると、ネパール人(ネパリ)のお客さんが10人くらいまでいらっしゃった。その中で冷たいスープモモというワードが幾度も聞こえた。ネパリたちも夏は冷やしスープモモがお好きのようである。日本人が"夏はポケモン!"と叫ぶ感覚で、ネパリは"夏は冷たいスープモモ!"と叫ぶのかもしれない。
"スープモモ ウィズ ライス、ベスト!"と私の昂揚感をネパリたちに熱弁したくなったが、この暑さでは嫌がられるかもしれないと思い、私は静かにお会計へと席を立った。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2023/08/19 更新
2023/07 訪問
お兄さんのサービスが止まらない、ジブロフライ・アルサデコ・ブジャ・マンゴーラッシー・アチャール
名古屋駅西のインドネパール料理屋"カトマンズキッチン"。この店のネパール人(ネパリ)お兄さんは、気さくで親切である。その人懐っこさで、私も彼と気軽に談笑できる関係性になった。
およそ1ヶ月ぶりに彼と話したい気持ちもあり、ランチタイムに訪れた。「ナマステ~」と挨拶して入店した。平日の12時台は恐ろしいくらい会社員が押し寄せるが、休日なので落ち着いて過ごせそうだと思った。
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これまでの4度の訪問では、たいていダルバート(ネパール定食)を注文していたが、この日はそんなに空腹でなかったので、グランドメニューから単品ネパール料理を選ぶことに。"ジブロフライ"が気になる。"ジブロ"はネパール語で舌のこと。どうしても気になるがこれだけではなぁと思いネパリお兄さんさんに相談したところ、これに"ブジャ"をつけるよと言ってくださった。
★ジブロフライ 850円
★アルサデコ 350円
ジブロは炒めるのと茹でるのを選べたので、炒めるほうでお願いした。しばらく待ってお兄さんが料理を運んできてくださった。
・ジブロフライは珍しめのネパール料理。マトンの舌。玉ねぎやピーマンとともにトマトベースという、チキンチリのようなチリ風味に仕上がっていた。
舌なので独特の匂いが少しした。弾力と噛み応えがあった。お酒のつまみによさそうで、美味しかった。
・アルサデコは香辛料で和えたジャガイモ。ホクホクのジャガイモがコロコロといっぱい。パクチーの風味と唐辛子の辛味がついていた。
・ブジャは米ハゼやポン菓子と言えばよいか。ジブロフライと一緒にボリボリ食べた。上には少し煎り大豆。
熱いからとお兄さんがマンゴーラッシーを持ってきてくださった。暑さと香辛料でドリンクが欲しくなるので、非常にありがたかった。
これだけで終わらなかった。お兄さんはサービスで、アチャール(ネパール風漬物)まで私のテーブルに置いた。しかもどっさりと。大根、人参、ジャガイモ、きゅうりがごまと香辛料をまとっており、味は酸味があった。ポリポリと美味しい。
ジブロフライ・アルサデコ・ブジャ・マンゴーラッシー・アチャールのうち、3品は無料である。「ブジャもっといる?」とまで聞かれ、お兄さんのサービス精神は止まらなかった。
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ジブロフライとアルサデコを注文しただけなのに、量の多いカジャセットのようになった。なんだか申し訳なささえ感じたので、食べログクーポンは使わずに支払いをした。
インネパ料理屋では顔を覚えてもらえると、店員さんがサービスしてくださることがある。カトマンズキッチンは値上がりがあったので、ネパール料理の安さという魅力が失われてしまったのではないかと危惧していたが、お兄さんの明るい接客とサービス精神により、お店の価値は健在だと思った。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2023/07/27 更新
2023/06 訪問
名古屋最安値ダルバートの喪失、ネパールおつまみと旧友と新友
ダルバート(ネパール定食)が値上げしたという店員さんからの知らせは、私を動揺させた。ここ名駅西のカトマンズキッチンでは、元々食べログクーポンも併用して600円台で野菜やチキンのダルバートを食べることができていたのである。おそらく名古屋最安値のダルバートだった。
そして、その値段で十分な内容でランチに便利だという主旨の投稿を私はするつもりでいたのである。1週間で野菜のダルバートは800円台、チキンのダルバートは900円台に変わっていた(税別から税込の表記にも変わっていたが。)。投稿のタイミングを逃したのは、正解だったのか不正解だったのかわからない。
ただ、これまで追加料金が必要だったライスとダルのおかわりが無料でできるようになったと説明を受けた。ここのダルバートの味はエスニック感やスパイシーさが特徴的で、ライスをモリモリ食べたくなるから、それはそれでよいのかもしれないと自分を納得させた。
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この日私は久々に会った学生時代の友人と訪れていた。彼にナンとカレーは食べさせんぞという圧力をかけ、ネパール料理を複数注文した。彼は金麦の生ビールの入ったジョッキを、私はラッシーの入ったグラスを片手にして、互いに久闊を叙した。
ビールとネパールおつまみのセットは、チョイラ、ブタン、スクティ、アルサデコ、アチャール、チャトニ、大豆、ブジャを一度に一つのプレートで味わえるのが魅力的。他の店と違って、ブタンとチョイラが比較的柔らかかった。
スチームモモ(8個)は愛おしい見た目を持ちつつも、中の餡は肉肉しくて、とても美味しかった。チョウチョウサデコは酸味と辛味が効いていて、ボリボリと口の中でいろいろな味を感じられた。
ドリンクに合うなぁ。辛口で注文したら舌がピリリとするほどだった。友人は香辛料が変なところに入ったのかむせていたが、美味しいと口にしてくれたので、私も得意げになってしまった。ランチでもディナーでも5%OFFの食べログクーポンは使用できた。
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お客さんのネパール人率の高さはなかなかである。気さくなネパール人男性店員さんがつながりを作ってくださり、ネパール人の新しい友人を作ることも可能である。もちろん日本人でも安心して利用できる。ちなみに、日本人でもダルバートを注文する人が多いらしい。
それだけの本格度や美味しさはあると思うし、ネパール体験や交流という意義もある。ダルバートの値段改定がいささか残念であるが、今後も名駅付近で誰かを連れていく際の候補地にしていきたいと思った。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2023/06/10 更新
2022/07 訪問
お値打ちにお気軽にダルバート @カトマンズキッチン
今日もたまたま名古屋に用事。
ならばダルバート。
「カトマンズキッチン」。
カトマンズ(ネパールの首都)という名前からして、間違いなくネパール推し。
汗だくの中、ランチを済ませるために遅めの時間に一人で入店。
インネパ料理屋らしいというよりも、ネパールらしい店内。
レストランらしいというよりも、庶民的な食堂らしい雰囲気。
ネパールの国旗、写真、天井の色とりどりの装飾、ネパール人のお客さん、飛び交うネパール語。
レジの横の棚には、ネパールの食材が売られているようである。
狙い通り注文したのは
★ネパールタリセット(チキン)
10分くらいですぐ到着。
よくある円形のプレートではなく、長方形。
時計回りに見ていく。
・ダルはとろみ強め。
豆が刻まれているのか細かい。
刺激的なスパイスの香りが、岡崎のザトラという店で体験したものと類似している。
それがなんというか、喉から胃にかけて刺激を与えるような独特な風味で、食欲をそそる。
・タルカリ(と呼んでよいのかわからないが)は、ひよこ豆やキノコが入っており、いわゆるカレー状。
・チキンカレーは完全ジョールタイプ。スープ状。ごはんによく合う。
チキンは骨つき。弾力があり噛めば噛むほどうまい。ごろごろ入っている。
・大根やじゃがいものアチャール、生野菜、チャトニ。ダルやカレーとともに混ぜて食べる。
・ご飯は日本米。
パサパサもべちゃべちゃもしておらず、食べやすい。
量も十分。
大辛で注文したのもあるかもしれないが、全体としてスパイスが強く、エスニック料理食べてんなぁ~~と実感できる。
辛い。暑さと辛さで汗と鼻水に歯止めがきかない。
でも、夏にこういう辛い物を食べて汗をかくのが、爽快なんだよなぁ。
このダルバートの値段が、食べログクーポン10%OFFも使って、650円。安い。
他のネパール人のお客さんもダルバートを食べており、ダルバートの注文量も多いだろうから、提供時間も早そうである。
財布の心配をせずに、さっと立ち寄って、ちゃちゃっと食事を済ませるのにもってこいである。
ダンネバード。ごちそうさまでした。
2022/07/20 更新
名駅西の"カトマンズキッチン"にやってきた。月1で定期訪問させていただいているネパール食堂である。ビニール傘を閉じて傘立てに挿す。雨。雨といえば.....
入店し、店員のネパール人お兄さんたちと10秒だけ立ち話をした。「洪水」。それだ、その話題。ネパールでは大雨による洪水や土砂災害で200人程度が亡くなっているというニュースが私の耳に入っていたのだ。私がネパールに渡航する頃は大丈夫だろうか。こういう不安をお兄さんたちに共有し意見を訊く。情報交換の場としてネパール食堂を利用するのである。
平日のお昼時は大抵賑やかなのだが、この日はお客さんが少なく静かだった。バラバラと雨の打ちつける音が店を包んでいた。お兄さんたちもいつもより一人少ない人員で回しており、天候を鑑みて客の入りを予測していたのだろうかと思った。
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★スープモモ(冷)610円
★ライス 300円
★ミックスアチャール
※ミックスアチャールはメニューにはないが、欲しいことを伝えると安価(+20円)でサービスしていただけた。サラダもサービス。
ネパール風蒸し餃子"モモ"をスープに浸したスープモモ、漬物"アチャール"をおかずにライスを食べる。ネパール人がこういう食べ方をするかはわからないが、私はこの組み合わせが好きである。ネパール定食"ダルバート"ならぬ"モモバート"を勝手に作ってみるわけである("バート"はネパール語でお米を意味する)。
モモを蒸してそれをスープ、しかも今回は"冷"に投入するので、二重三重に厨房に負担を与える。時間がかかるのは当然である。後から来た隣のお客さんのナン・カレーが先にやってきていたが、そういうものである。
冷やしスープモモは("ぬるめ"スープモモと言ったほうが実質的な温度とは合致しているかもしれない)薄いオレンジ色のスープである。温かいスープモモとは材料が根本的に違うのだと思われ、冷やしのほうはごまベースでまろやかである。辛味よりも胡椒のような刺激を感じ、喉のウイルスも死滅してくれるだろう。
モモは8個浸っている。鶏ひき肉が餡のチキンモモである。皮がカッチリ作られていて形状が崩れない。オレンジ色のチャトニが上からかけられており、ピリ辛を足してある。
ミックスアチャールはネパーリタリセットを注文するとついてくる漬物である。細切りの大根やきゅうり、人参、ジャガイモが、胡麻と香辛料で和えてある。コリコリという食感と塩味がはっきりとついている。
ライスはどっさりと出される。「今年も豊作でした」とアピールするかのように、日本米が大盛りである。胃を鍛えられる。これくらいは食べないと、ネパール相手に太刀打ちできない。
ダルバートを食べるのと似た要領で、スープをレンゲでライスにかけ漬物を乗せて食べたりしていった。スープは最後まできれいに飲み干した。モモバートとしてメニューに正式に認定されないだろうかと私は思った。今度お兄さんたちに提案してみよう。
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私は食事を終えると、先に出ていった隣のテーブルをなんとなく見つめてみた。空になった食器やグラスが街のミニチュアのように並んでいた。へぇ、ランチタイムでもカレーの容器のサイズがディナーと変わらないくらい大きいようである。視野を広げると、日本人のお一人のお客さんもいらっしゃったし、ネパール人の男女のお客さんもいらっしゃったし、日本人とネパール人で来ていたお客さんもいらっしゃった。
ダンネバード。ごちそうさまでした。