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夜の点数:4.1
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¥10,000~¥14,999 / 1人
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料理・味 4.0
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.1
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|酒・ドリンク 4.1
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[ 料理・味4.0
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| サービス4.0
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| 雰囲気4.0
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火の音が、別れを急かさない夜
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2025/12/16 更新
名古屋に転勤してからというもの、節目ごとに背中を支えてくれた人がいる。その人が、この街を去る。事実としてはそれだけのことなのに、胸の奥で、静かに波が立った。感謝は言葉にすると軽くなる気がして、せめて形にしようと、食事に誘った。行き先を尋ねると、間を置かずに返ってきたのが「ヒトイキ」。なるほど、と独りごちる。選択に、その人の輪郭がにじんでいた。
私は日本酒、その人はビール。炭火の前に腰を落ち着けると、火の爆ぜる音が、こちらの会話の隙間を埋めていく。宛てを摘みながら、言葉は多くなくても、時間だけはゆっくりと進んだ。鴨好きとして外せない「鴨と葱」は、脂が炭の香りをまとい、葱の甘みが遅れて追いついてくる。急かされることのない味わいだった。「金目鯛の炭火焼」は、皮目の香ばしさが先に立ち、身のふくらみが静かに広がる。酒を呼ぶ、だが飲ませ過ぎない。
やがてその人も日本酒へ移った。十分に飲んだはずなのに、席を立つ頃になっても、火の音は変わらない。そのせいか、次はどこへ行くかという無言の了解が、自然に生まれていた。同じ速度で杯を重ねられる人は、そう多くない。別れを急かさない夜の終わりに、私は胸の中でそっと呟いた——お疲れさまでした。