31回
2025/08 訪問
旅人
桜が咲き誇る季節から移ろい、生命がはぜる夏。待ち望んだラ・ヴァガボンドに再訪できました。店内に入ると、以前あった2つの丸テーブルが四角いテーブルに変わっていることに気づきました。2人組のお客さんが多いことから、スペースを有効に使うために変更したのかもしれません。
ラ・ヴァガボンドのコースの大きな特徴は、多皿のアミューズから始まる点です。現代フレンチの潮流を汲んだスタイルは、初期の頃には見られなかった特徴です。またコース全体を通して、地産地消に限定されず、日本全国や世界中の食材、調理法が使われます。まるで世界中を旅しているかのような想像の翼が広がり、素晴らしいひとときを過ごせました。
この日のメニュー
◆化石の上7品
トウモロコシから始まり、剣先烏賊・鮎の花のブーケ・積丹雲丹の魚介系3品、続いて和牛生ハムとメロン、オクラの花と豚肉、猪の肉系3品
◆ムール貝
隠されたムール貝を覆うナスタチウムなど緑が印象的
◆オマール ヌー ヴォー
身の部分と爪の部分の味わい、香りの違いが面白いです
◆メニュー外 フォアグラとマンゴー
◆クロワゼ鴨
真鴨と合鴨の交配種で野生に近い風味
◆藍苺
ブルーベリー読めませんでした。さっぱりしたシャーベットに乾燥させたヨーグルトのチップ
◆大糖領
山梨の桃のブランド。大糖領の名前のとおり大変甘い桃です
◆茶菓子
シャインマスカット・カヌレ・マカロン この日のカヌレは珍しく冷されさらに金箔があしらわれていました
まだ見ぬ世界を巡る食の旅に、次回の訪問への期待が膨らみます。
2025/08/13 更新
2025/04 訪問
人生を彩るレストラン
名古屋市の鶴舞公園周辺が一年で最も賑わう桜満開の週末、ラ・ヴァガボンドを訪れました。オープン当初から通い続けているこのレストランは、予約の関係で訪問間隔が次第に長くなってきました。しかし、ほぼ週末にしか外食をしない自分にとって、人生で最も多く足を運んだ特別なレストランです。
本日のメニューは【化石の上7品】【毛蟹】【赤座海老】【乳飲み仔羊】【八朔】【紅ほっぺ】【茶菓子】その品数の多さはもちろんのこと、使われている食材、ハーブ、ソース、調理方法などの組み合わせの複雑さと情報量の多さに、初めからメモをとるのを諦め説明に耳を澄ませます。何度聞いても覚えられませんが。
おすすめいただいたワインの口に広がる時の舌触り、複雑な風味、心地よい余韻。ゆっくりと変化していくワインの味わいと共にいただく、洗練を極めた多彩なコースは、まさに至福のひととき。
ラ・ヴァガボンドを訪れるたびに素晴らしさを再認識し、料理の味だけにとどまらず、器や盛り付け、雰囲気、気遣いやサービスなど、自分の価値観の基準はここで培われてきました。他のレストランを訪れた際にもそれぞれのレストランの独自性や素晴らしさが際立ち、より深く楽しめる心の中の羅針盤としてあり続けています。それは、単なるレストランという枠を超えて人生においても。
ホワイトアスパラガスのムース・ジュレ・キャビア・ビオラの花
雲丹
鰯
稚鮎
茸・兎
三河の鰻
アリッサム
毛蟹・ビーツ
赤座海老・サマートリュフ
フォアグラ・王林
乳飲み仔羊・ゆりね「月光」・白ワインソース
八朔
紅ほっぺ
桜のマカロン
カヌレ
エクレア・ショコラ
2025/04/12 更新
2024/11 訪問
放浪者
この日も料理は様々な食材を組み合わせ素材を活かした素晴らしいもので、日常とは別の時間の流れ方かのような夢心地の3時間。
ワインもマリアージュと言われても料理との相性などよく分からない味音痴。いつも通りおすすめの白ワインをボトルでいただきましたが最後まで素晴らしい味わいで料理に見劣りしないものでした。ワインの生産にも温暖化の影響があるそうですが、いつも美味しいワインを提案してくださりありがとうございます。
ヴァガボンドとはフランス語で放浪者を意味する言葉。その名のとおりフレンチの技法を基にしながらも自由な発想で枠にとらわれず、様々な食材を重ね合わせ美しく彩り、手間暇かけて食べる芸術のような一皿の創造。
今までもこれからも夢に向かって旅立つスタッフ。誰しも出会いと別れを繰り返す放浪者ですが、自由な料理で魅了し人生を豊かにしてくれたラ・ヴァガボンドに感謝を込めて。叶うことなら末永く通いたいと思います。
2024/12/08 更新
2024/07 訪問
やっぱり好きなんだ
前回訪問時から4ケ月弱での再訪になります。先ずはいつもと構成を変えて渡り蟹のほぐし身の入ったトマトのガスパチョからスタート。暑い日でしたのでトマトの酸味ですっきり、冷たくて気持ちいいです。
定番の雲丹のフィンガーフードも産地や時期によって印象が変わり、この日の雲丹はねっとり感が凄かった。他のアミューズの品々どれも美味しかったですが、この日は男爵芋が印象に残りました。2年間熟成させた男爵芋は旨味がありじゃがいもの概念を変えられました。
化石の上と言えばこの日はいつもの珪化木の皿ではなく、珊瑚に変わっていました。他の料理のお皿もこの日はフランス製の初めて見る皿も多く、新しい器が加わる頻度が高いので訪問の楽しみのひとつになっています。
前菜一皿目は貝。4種類の貝が楽しめ美味しいです。ただいつもよりオイルソースのオイル感が少し気になりました。
前菜二皿目はオマールヌーヴォー。オマール海老はあまり食べた記憶がないですが、その名のとおりカナダ産の若いオマール海老。濃厚な出汁のソースに合わせてレア感のある身とフリットされた爪の部分の身の食感、味の違いが楽しめます。
メニュー外のフォアグラは下に敷かれたアマニを付けて食べますが、食べ方が下手なのかいつもアマニが残ってしまいます。
肉料理は七谷鴨。サマートリュフの乗った部位も美味しいですが、実山椒の乗ったミンチ状の部位も美味しい。
デザート一品目はデラウェア。大きなデラウェアが入っており見た目も可愛いです。以前は通常サイズのデラウェアが箸休めで良く出ていたことを思い出しながら楽しく頂きました。
デザート二品目は甜瓜(メロン)。お皿も含めて夏に降る雪がイメージされ涼し気な気分に。お茶菓子もカヌレは定番ですが、他は季節に合わせて楽しめます。
味の好みは人それぞれ。言葉や写真から伝わることは限られますが、充実したアミューズ・前菜・デザート、抜群な火入れのメイン、季節毎に変わる手の込んだ美しい料理、居心地のいい空間とサービス。ああ、やっぱり好きなんだと心が囁きます。
三河産渡り蟹
エンドウマメ
北海道産雲丹
岡山県産キス
北海道男爵芋
島根県産イノシシ
トリガイ・赤貝・アサリ・あずき貝
オマールヌーヴォー
フォアグラ
七谷鴨・サマートリュフ
デラウェア
甜瓜(メロン)
杏仁豆腐をイメージしたマカロン
種を抜いたチェリー
カヌレ
2024/07/13 更新
2024/03 訪問
出会わせてくれてありがとう
メニューは【化石の上6品】【蟹】【金目鯛】【乳飲み仔羊】【不知火】【紅ほっぺ】【茶菓子】
最初はスープから。高等ねぎはかなりの細さで香り豊か、フグの白子がとろけてたまりません。
定番の雲丹もいままではなかった焼き海苔との組み合わせで海苔の風味と雲丹の甘味が合わさり、黒毛和牛の生ハムも小さな牡蠣を包んで磯の香りが楽しめ、菜の花の苦味と猪の肉の組み合わせなど最初のアミューズから満足です。
蟹は加能蟹のほぐし身にアボカドの旨味など様々な要素が重層的に重なり、上から下にケーキを切るように合わせて一緒にお食べ下さいと言われましたが、癖でいつものように混ぜて食べてしまいました。
金目鯛は春の筍や生海苔との組み合わせが珍しく、こちらのシェフは時期によって拘りのブームがあるように感じますが、現在は海苔ブーム到来中かな?スパイスかな?
乳飲み仔羊は母乳のみで育った生後35日程度の仔羊の柔らかなお肉で、細い骨付きの背中の方のお肉と腎臓をバラ肉で巻いた手間のかかった一品で違う部位が楽しめます。
またお肉にトリュフ塩はいつも添えられていますが、この日はスパイスも添えられていました。ソーセージにスパイスを付けていただくとフレンチの世界を飛び出してこれだけでビールが一本飲めそうです。ワインと一緒に食べましたが。
微炭酸の効いた柑橘の不知火やドデカイ紅ほっぺや茶菓子の最後まで美味しくいただきました。
定期的に訪問しても、同じ食材でも組合せを変えたり新しい試みによりまた同じものを食べたな飽きたなと感じさせないのは驚異的なことだと思います。
シェフやスタッフにはもちろん、素晴らしいレストランに出会わせてくれた食べログとレビュアーの皆様に感謝を込めて。
2024/05/06 更新
2023/10 訪問
最良のレストラン
料理は自分の乏しい語彙力では表現できませんが、一言で言うと魂は細部に宿る。スタッフ一丸チームヴァガボンドの努力の結晶、まさに食べる芸術品・・・言い過ぎかな(*^-^)
いつものようにワインをボトルでお願いしましたが、涼しくなってきたので少し高めの温度で準備してくださいました。
メニューを拝見したとき個人的な事情ですが最近訪問した他店のフレンチ・イタリアンの食事でメインが鴨で2回続いていたので少しがっかりしました。
ところが鳥インフルエンザワクチン接種の開始により10月1日以降、フランス全土からの生きた家きん、家きん肉等の輸入が停止されたそうです。貴重な機会を喜ぶ単純な自分。
やはり比べても一番自分の好みに近い火入れ具合で熟成された美味しさ。次にビュルゴー家の鴨を食べれるのはいつになるのか。
他にも魅惑的なレストランが溢れ、新規訪問店の方が強い刺激を受けるのに通い続けるのは何故か。それは変わり続けようとし、変わりながらも決して変わらないものを感じる自分にとっての最良のレストランだから。
始まりがあれば終わりがある。いつか必ず行けなくなるか行かなくなるわけですがそれまでは訪問を楽しみたい。
ということでまだまだ行くでぇ~(^0^)/
2023/10/18 更新
2023/06 訪問
一番好きなお店
今回いただいたメニューは【化石の上】【桜海老】【北寄貝 アスパラ】【エルム 鳩】【エルダーフラワー】【紅秀峰】【茶菓子】になります。
肉料理は苦手食材はない旨を伝えてありますので毎回重ならないよう配慮くださり嬉しいです。デザートのエルダーフラワーは儚い花でなかなか市場にも出回らず井深農園さんでも4年目にしてやっとうまくいったそうです。紅秀峰は大粒でさくらんぼのデザートはあまりヴァガボンドさんではいただいた記憶がないです。
器も毎回楽しみにしていますが、今回は北寄貝アスパラ料理のお皿が新作のようで可愛らしいお皿です。
ワインについてもお店でしっかり品質管理をしてくださり安心できます。
今回もどの料理も美味しくいただき幸せな時間を過ごせました。また次回訪問できる日を楽しみにしています。
2023/06/11 更新
2023/01 訪問
一番好きなお店
前回から5ケ月ぶりの訪問です。
こちらのお店には10年以上通っていますが、最近は予約がなかなか取れず残念です。
今回いただいたメニューは【化石の上】【松葉蟹】【白子】【三河牛】【苺大福】【オペラ】【茶菓子】になります。毎回メニューからは詳しくわからずどんな料理か想像するのが非常に楽しく、実際の料理の美しさ美味しさに感動します。
ホールスタッフは他店での調理経験者やこちらのお店で長年キッチンスタッフとして働いてみえた方もみえ、他店によくみられるいかにもメニューを丸暗記させられたような感じはなく料理に対する情熱が感じられながらスマートな接客にいつも感心させられます。シェフの独立しても困らないように色々な経験をさせたいという深いお考えでしょうか。
室内は前回までのランチで伺ったときよりも気のせいかもしれませんが、ブラインドの開け具合の調整や照明を落として暗くされていい雰囲気でした。(おっさん的には明るくても大丈夫ですが)
何度伺ってもその度に新たな感動を味わえこれからも通いつづけたいお店です。
2023/03/07 更新
一年を締めくくるこの季節に再訪。この日のコースは、冬の味覚と洗練されたフランス料理の技術が見事に融合した、極めて満足度の高い構成でした。
【化石の上7品】
いつもの多皿アミューズから、期待高まる食の旅が始まります。
まずは、温かいコンソメスープから。出汁と塩味が効いたスープの中には、とろけるフグの白子が入っており、冷えた体が芯から温まります。続いてフィンガーフードが6品。一口サイズのタルトなど、彩り豊かな品々が登場。キャビアが乗った豚足・豚耳のフリットが、従来の構成の中にも新しさを感じました。
【せいこ蟹】
冬のラ・ヴァガボンドで特に楽しみにしている一品。
ほぐされた蟹の旨味、内子の独特の食感、塩漬けされた外子の適度な塩気、そしてキャロットの甘みや酸味、ソースなど様々な要素が多層的に混ぜ合わさり、その複雑な美味しさは言葉では言い表せません。
【九絵(クエ)】
運ばれた瞬間から、立ち昇るバターの豊かな香りに食欲をそそられます。
主役のクエの身は、この香りに負けない力強さと深い旨味を持ちながらも、くどさを全く感じさせない絶妙な仕立て。確かな技術が光る一皿です。
【 珠鶏(ホロホロ鳥)】
曖昧な記憶ながらラ・ヴァガボンドでは二度目の登場で久しぶりにいただきました。岩手の専門農場産のホロホロ鳥。
火入れが絶妙なローストされたむね肉と、旨味を凝縮させたもも肉は、食感、旨味、脂の違いが明確に楽しめます。赤ワインとマスタードの刺激的なソースにも負けない、力強い味わいの肉質でした。
その他の一品
【フォアグラ】いつもながら安定の美味しさ。定番としてコースに組み込まれています。
デザート
【柘榴】ザクロと柿を使ったデセール。割れた木の巣から生まれた卵のような、遊び心のある器もまた面白いです。
【ベルエレーヌ】食べる前からチョコレートの香りに包まれ幸せな気分に。混ぜていただくと、カリッとした食感のお菓子、洋梨の柔らかな口当たり、そして爽やかさが絶妙なバランスで口の中に広がります。
今回の訪問で気づいたのは、パンの変化です。
普段の自家製丸パンに加え、二つ目のパンとして近くの名店「スーリープー」さんのパンが導入されていました。コースに変化をつける試みだそうですが、流石は名店のパン、小麦の香りが豊かで歯切れも良い。
しかし、お代わりを勧められた際、周りのお客様が皆、自家製丸パンを希望していたのが興味深かったです。主張の強いパンよりも、フレンチのソースを受け止める、食中パンとしてのシンプルな自家製パンが、やはりこのコースには好まれるのかもしれません。
この日のワインは、Domaine Thierry Pinquierのブルゴーニュ・シャルドネ2022をおすすめいただきました。開栓直後から華やかな薫りが鼻をくすぐり、一口目はやや硬さを感じますが、時間とともに角が取れ、蜜のようにまろやかに変化していく、素晴らしい一本でした。
【茶菓子】食後のお茶とともに、コースの余韻をゆっくりと楽しみました。今回も満足なコースで、ホスピタリティも配慮が感じられ高く、おかげで充実した一年を過ごせました。