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大切な案件を無事に終え、束の間の安堵の息を吐きつつ電車に乗り込んだ。
人生において、満員電車に押し込められるほどの苦痛はあるまい。
そんな者にとって、電車内に少しでも空隙があることほど些細ながらも幸せなことはないだろう。
月曜日の午前中の下り電車は珍しく閑散としていて、心地良さを満たしていった。
車窓を流れる風景には、晩秋というには幾分か猛々しい夏の名残りの陽光が降り注いでいても。
桜木町駅で降り、しばし歩くことにした。
人影の疎らな馬車道を抜け、関内に差し掛かる頃には昼の食事を求める会社員たちが目に付く。妙に刺激を受けた私は自らも空腹を覚えるのを感じた。
ここまで来たからには中華街へ足を向けるのも道理だろう。
とはいえ、昼時の混雑は容易に予想できる。
しかし、心の奥底では既に足が中華街に向かうことを決してしまっていたのである。
案の定、中華街は人波に呑まれんばかりであった。
若者や観光客たちの一群が路地を塞ぎ、その狭間を縫うように歩を進めた。
さらに路地裏へと迷い込んで、辺りを彷徨うように歩き回った末、私は威容を誇る異色の建物の前に辿り着いた。
入口にはロープパーテーションが置かれ、お土産のコーナーと食事の入口が分けられている。
幾度も訪れたはずの中華街で見慣れたはずの光景であるにもかかわらず、この店の放つ格調の高さに一瞬気圧される自分自身を自覚するも空腹には勝てず、意を決して足を踏み入れた。
黒服のスタッフが私に近寄り、
「お食事でいらっしゃいますか?」
と低い声で尋ねた。
私は頷くと、彼は続けて、
「現在、50名の団体客がお食事中でして、お料理の提供にお時間をいただくかもしれませんが、よろしいでしょうか?」
と説明する。
それも頷くと、
「お席をお取りしますので少々お待ちください」
と告げて、彼はインカムで空席状況を確認し始めた。
すぐにエレベーターの扉が開き、私は2階へと案内された。
待ち受けていた女性スタッフが私を窓際の席へと導く。
「メニューが決まりましたら、お呼びください」
と丁寧に一礼をする。
私はメニューを眺めつつ、店内の様子や穏やかに食事を楽しむ客たちを一瞥した。
大衆店の賑わいとは程遠く、客たちの物静かな振る舞いがいっそう店内に凛とした空気を与えていた。
やがて私は手を挙げ、「国産大豆豆腐の麻辣マーボー(小)」(1,540円)、「五目チャーハン」(1,400円)、「具だくさん春巻(2個)(640円)を注文した。
隣のテーブルからは和装の女性たちの会話が漏れ聞こえ、何やらシンガポールに留学し、世界屈指の金融会社に勤務していた娘が帰国して、国内大手企業に転職したことを誇らしげに話していた。
上流階級ならではの華やかさが感じられる一方で、不思議と嫌味な権威や不遜は漂って来なかった。
まず春巻が運ばれてきた。
「熱いのでお気をつけてお召し上がりください」
との一言を添えられることに細やかな気遣いを感じさせる。
次に現れたのは湯気が立ち昇る土鍋の麻辣マーボーである。
女性スタッフが蓋を開き湯気の帷幕が一瞬周囲を覆い尽くす。
彼女がかき混ぜてくれた後、静かに席を離れるその仕草は、この店が纏う品格そのものだった。
だが、蓮華も小鉢もないことに気づき、仕方なく取り皿に麻辣マーボーをよそおう。
すると、すぐに別のスタッフが「大変申し訳ございません」と蓮華と小鉢を置き、丁寧に謝罪した。
その迅速かつ礼儀正しい応対だけで、私は満足を覚えた。
最後に、銀色に輝く大きな丼がテーブルに運ばれてきた。
五目チャーハンの登場である。
まずは麻辣マーボーを一口含んだ。
外貌から想像が膨れ上がる迸るような激辛感はないどころか、豆腐独自の甘みのような風合いを相まって、辛味の抑制した深い香りの麻辣ソースが全体を貫き、後になって香辛料が追随してくるという具合だった。
辛さを追求している者にとってはきっと物足りないと思うであろう。
しかし、この店の格別感を慮ればそれぞれの素材の味覚を損なうことをしていないのだ。
麻辣マーボーの余韻の残る口内に五目チャーハンを含んでみた。
強火で炒めた香ばしいご飯が口中をばらつき、鮮度の高さを物語る海老が踊り出し、卵や豚肉といったさりげない素材がしっかりと脇を固め、淡々としながらも王道を外すことはない。
これこそが横浜中華街を代表する広東料理の老舗としての矜持である。
スタッフのきめ細かい対応、鮮度の高い素材、そして洗練された内装とそれに導かれる客層。
私は完食までの間を何もかもを広東料理に委ね、いつになく優雅な昼食のひとときに没入していくのだった。……