Geric Planktonさんが投稿した鮨処 凜(北海道/さっぽろ)の口コミ詳細

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Seeking the Last Meal of My Life

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鮨処 凜さっぽろ(札幌市営)、札幌(JR)、大通/寿司、海鮮

1

  • 夜の点数:4.5

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 4.5
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク 4.5
1回目

2024/12 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.5
    • | 雰囲気4.5
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク4.5
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

【人生最期の食事を求めて】赤酢の配合とネタの吟味と想いが導く自己解放。

年末が迫り来るにつれて、時の疾走感がいや増すものの、私の精神は少しも昂揚することがない。
それどころか、無味乾燥な倦怠感が胸の奥深くに沈殿するようだった。

街を埋め尽くす人々の騒めきが醸し出す昂揚感に、私の精神が逆説的に反発しているのか、それとも時の流れが容赦なく過ぎ去る無常観によるものかは定かではない。
いずれにせよ、遣る瀬ない気分が私の心を支配していた。

しかも、12月の寒さといったらどうだろう。
まるで冬そのものが私に対し、外出を拒むように冷たく突き刺さってくる。
しかし、私はその冷気に抗うようにコートを着込み、外へと歩み出た。

街を彩るイルミネーションの光は、どの都市でもこの季節になると一層過剰で人工的になる。
その光の眩しさは、中途半端な装飾であればあるほど、しみったれた俗悪な印象を与える。
それならば、いっそ装飾などせず、陰翳の美を楽しむべきではないか——そんな思いが、この季節になると私の心に頻りに浮かぶのである。

いずれにせよ、2024年も終わりが近い。
その締め括りとして、私の凍える足は札幌駅方面へと向かった。

ホテルのロビーに足を踏み入れると、建物内の暖房が私の体を包み込むように温めた。
しかしその直後、今年発症した寒暖差アレルギーが私を苦しめ始め、鼻水が止めどなく垂れ落ちてきた。
それと格闘しているうちに、時計の針は既に18時を指そうとしていた。

私は地下へと続くエスカレーターを降りた。
その先には、紺青の暖簾を掲げた店が控えており、落ち着いた雰囲気の客たちが次々と吸い込まれていった。

カウンター中央には、鮮烈な赤身が層をなす美しい鮪が鎮座しており、それはまるで美術館の静謐な空間に展示された一つのオブジェのようであった。
寒暖差アレルギーも次第に和らぎ、私はまずその鮪を愛でつつ、生ビールを注文した。
泡のきめ細やかさが喉を滑り落ちると、若き大将が鮮やかな手つきで鮪の赤身を静かに切りさばき始めた。

最初に供された“自家製甘海老塩辛”が、私のビールをたちまち空にした。
その味付けは絶妙で、甘海老本来の旨味を引き立てていた。
その後、「真鱈白子自家製ポン酢」が運ばれると、私はためらうことなくそれを口に運んだ。
この白子の滑らかさとポン酢の香りは、この1年間痛風に悩まされた私への褒美のようであった。

続いて、「煮蝦夷鮑 肝ソース」が現れ、安曇野本わさびと紅蓼がそれに寄り添っていた。
私はその繊細な味わいに打たれ、2杯目のビールを失うのに時間はかからなかった。

若き大将は沈着冷静な声音で一品ごとに説明を加え、カウンターの客たちはその声に耳を傾けながら静かに食を進めていた。

寿司が握られ始めた。
先握り三貫として、まずは「松川がれい」が置かれた。
赤酢の効いたシャリがかれいの身に絡まりながら口の中でほどけていく。
その完成度に日本酒を求めずにはいられなかった。
福岡の「ブラックジャック」を注文し、続く「アオリイカ」や「本鮪赤身」に再び魅了された。

赤酢の使用が寿司のポテンシャルを最大限に引き出していることは明らかで、この店の赤酢は私にとって比類なき調合であった。

途中、「真フグ天ぷら 出汁あんかけ」が運ばれ、私は寿司に逸る心を落ち着くことができた。

その後、山形の日本酒「スネークアイ純米大吟醸無濾過生原酒」を試し、それが「銀宝焼物燻製らっきょ添え 梅肉ソースと和がらし」と「釣真鯵柑橘〆 土佐酢ジュレ」によって鮮やかに消えていった。

いよいよ後握り六貫に進んだ。
淡いピンク色を帯びた「寒鰤 富山氷見」は私が想像していた鰤とは異なり、ネタの特性と技を駆使によって寒鰤の域を越えていると言っても過言ではない。 「本鮪中とろ 岩手山田」は当然にして想定を越えた熟成ぶりを放ち、「北寄貝 厚岸」においては臭みは一切ない。

締めくくりとして希少なジャパニーズウィスキー「山崎」のハイボールを注文した。

「小肌 佐賀」という銀色のきらめき、「本鮪大トロ 岩手山田」という華麗な輝きに、思わ思わず私は目と閉じながら噛み砕いた。 その感動の余韻の間に間に、若き大将が私に向かって手を差し伸べてきて、思わずそれを受け取った。 「北紫雲丹 北方四島」だった。
その豊かな香りに私は思わず声を漏らすと、大将のマスク越しの笑顔に心が和らいだ。

最後に供された「ミルクジェラート」は、濃厚な香りの中に素材への敬意が込められているかのようだった。
そして「増毛甘海老出汁赤出汁」を啜りながら、私はこの札幌駅周辺という寿司の不毛地帯に、こんなにも卓越した店が現れたことに満足し、心の底から年末の幸せを噛み締めていた。

そして何よりも、痛風から解放され、この至高の寿司を堪能できた自らの健全さに、私は新たな年への希望を見出すのだった。……

2024/12/22 更新

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