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2025/10 訪問
牡蠣の濃密な旨味が奏でる一皿——海とスパイスの対話を味わう（カレーTOKYO百名店2024）
2025/11/21 更新
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【注文したメニューと味の感想】
注文したのは「ろかプレート」。この日は限定カレーとして提供されていた〈瀬戸内産牡蠣のポタージュカレー〉をセレクトしました。カレーと魯肉飯のあいがけに、玉ねぎのアチャール、マスタードオイル高菜、サラダ、副菜が添えられた一皿は、見た目からして芸術的。黒い皿の上に黄金色のソースが広がり、半熟卵の橙がアクセントを添えています。
ひと口目から牡蠣の香りがガツンと押し寄せ、濃厚な旨味が口中を満たします。そのあとを追うように、カルダモンやクミンなどのスパイスが静かに立ち上がり、香りの輪郭を描いていきます。ポタージュ仕立てのなめらかな口当たりが実に繊細で、海のミネラル感とスパイスの熱が絶妙な均衡を保っています。
牡蠣のコクはありながらも重くならず、スパイスがそれを軽やかに包み込む構成。素材そのものの深みで味を成立させているあたり、調理の緻密さが伺えます。魯肉飯と合わせると印象が一変。八角の香りと豚肉の甘辛い旨味が牡蠣の風味と交わり、濃淡のコントラストが見事に調和します。まるで異国の料理が日本的な感性で再構築されたような、知的な美味しさでした。
アチャールの酸味や高菜の辛味も計算されたアクセント。途中で口に含むことで味覚の流れがリセットされ、最後の一口まで飽きることなく食べ進められます。半熟卵の黄身が、スパイスと牡蠣の旨味が一層まろやかに。食後のラッシーは濃厚かつ柔らかい酸味で余韻を穏やかに締めくくってくれました。
限定カレーゆえに一期一会の味わいですが、ここまで素材とスパイスが高次元で融合する一皿にはなかなか出会えません。
【お店の雰囲気】
昼の部に訪問。私の前に並ばれていた8名で20名以上が記帳していました。流石、人気店です。
店内はカウンターのみのオープンキッチンで、調理の音とスパイスの香りが一体となり、期待感を煽る舞台のよう。狭さを感じさせない一体感があり、食への集中を促す空気が漂っていました。
【店員のサービス】
えりつぃんさんの接客は非常にきめ細やかで、常連客には軽やかな会話を、一見の客には丁寧な案内を添えていました。提供時には料理の特徴を簡潔に伝える姿勢にもプロ意識が感じられます。限られた席数でも焦らせることなく、適度な距離感を保ったサービスが印象的でした。
【店舗情報】
JR中央線・大久保駅南口から徒歩3分。
鮮やかな黄色の看板が目印のスパイスカレー専門店です。「完全予約制」代表者による記帳制で、本日の記帳は予定より早めの9時10分開始。希望時間を取りたい場合は早めの並びが必須。人気ゆえの行列ですが、その先にある満足度は格別です。
【総括】
瀬戸内の牡蠣を主役に据えながら、スパイスで味の輪郭を描き出す技術に感服しました。食材の個性を尊重しつつ、異なる文化の旨味を一皿に昇華させた構成力はまさに職人芸。限定メニューとはいえ、店の本質を象徴する完成度でした。