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2025/12 訪問
カレーとジェラートが奏でる構築美—下北沢が誇るスパイスのアトリエ
2025/12/15 更新
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【注文したメニューと味の感想】
今回はジェラートセットにカレー4種を加えた構成を選びましたが、こちらでは“スパイス料理の解像度が上がるような味の運び”が楽しめます。
まず、プレートを彩る副菜は ライス上を含めて計7種類。3種が混ざったライスが全体の軸となり、周囲には玉ねぎスライス、彩り豊かなポリヤルなどが丁寧に配置されています。それぞれが単独でも成立する味わいを持ちつつ、カレーと合わせることで構造的な広がりを生む“味の可変性”が印象的でした。
メインのカレー4種は、いずれも方向性が異なりながら、香りの輪郭が明確でした。
最初の「サンバル」は、ツールダールの柔らかな旨味に独自のサンバルパウダーが穏やかに広がり、優しい甘味と酸味が調和していました。豆の自然な甘味が副菜の青菜や玉ねぎと組み合わせることで、静かに膨らむような奥行きが生まれました。
「レモンチキン」は、玉ねぎとトマトがつくる甘味にレモンの酸味が繊細に折り重なり、軽やかさの中にしっかりとした香りの余韻が残ります。レモンの爽やかさは、根菜の副菜やチャツネと掛け合わせると、味のリズムがより鮮明に浮かび上がりました。
「チャイニーズポークキーマ」は、キーマというより“香りの層”で楽しむカレーで、玉ねぎやポリヤルとの相性が良く、軽やかなのに香りはしっかりと残りました。
今回特に心に残ったのは「ポークビンダルー」です。赤ワインビネガーの酸味が肉の旨味を深く引き出し、たっぷり使われたスパイスが鋭すぎず、むしろ香りの立体感をつくっています。酸味・辛味・肉の甘味のバランスが美しく、プレート全体の中心点としての存在感がありました。副菜の甘味や苦味と合わせても破綻せず、味の組み換えが最も楽しい一皿でした。
そして締めくくりとなるジェラートは、今回は 「ブルーチーズ ローストクミンシード」 と 「アニス＆グレープ」 を選択しました。ブルーチーズの塩味と乳の旨味に、ローストクミンの温かみある香りが重なり、スパイス料理の余韻を見事に整える役割を果たしています。一方のアニス＆グレープは華やかで透明感のある甘い香りが主役で、食後の口内をふわりと軽くしてくれる存在でした。甘味と香りが交差することで、食事全体の体験が美しく締まりました。
【お店の雰囲気】
平日15時半の訪問で先客ゼロ。店内はコンクリートの質感と落ち着いた照明が調和し、カウンター中心の静謐な空間でした。調理スペースとの距離も近く、ひとりで味わいに集中したい時にも適した、知的で静かな空間でした。
【スタッフさんのサービス】
入店時に初訪問であることを丁寧に確認してくださり、券売機の操作やメニューの選び方を過不足なく説明していただきました。案内は落ち着いていながら親切で、料理をどう楽しんでほしいかが伝わる接客でした。
【店舗情報】
アクセス：小田急線下北沢駅東口を右に進み徒歩2分（南口商店街側に進みます）
スパイス料理とジェラートという独自のコンセプトを掲げ、コンパクトながら香りと温度の演出にこだわった空間が印象的でした。券売機制で一人でも利用しやすく、散策の中で「少し特別な食の体験」を挟みたい時にぴったりのお店でした。
【総括】
四種カレーと七種の副菜、そして香り高いジェラートまで、皿の上の構成力に知的な美しさがありました。味の組み合わせで表情が変わる“可変性のあるスパイス料理”が魅力で、食べ進めるほど理解が深まる楽しさがあります。香りを軸に食事を組み立てたい方に強くおすすめしたい一店でした。