2回
2025/07 訪問
“肉のエンタメ”を極めた創作割烹─麻布十番『麻布 kumasan』で五感の饗宴
麻布十番に店を構える「麻布 kumasan」。
肉料理を軸にフレンチと和の技法を巧みに融合させたコースを提供するまさに“肉の創作割烹”の真髄を味わえる名店。
オーナーシェフは研鑽を積み、2023年にこの店を開いたとのこと。店舗は隠れ家的な立地ながらも予約困難店の一つとして知られ、上質な料理と心地よいサービスで話題を集めている。
1品目:和牛タルタル キャビア添え
コースの口火を切るのは名物のタルタル。艶やかな和牛の赤身にキャビアをたっぷりとあしらい、別皿には10種以上の薬味が用意される。
薬味にはキウイ、ミョウガ、白ワインジュレ、山葵、マスタードシード、プチトマト、ナッツ、ピクルス、塩、ネギなど自身でブレンドする楽しさも一興。
卵黄を割り、全体を和えたのちクラッカーにのせて頬張ると、口の中に芳醇な旨味と滑らかな舌触りが広がる。味も見た目も自由に“組み立てる”という体験が新鮮であり、最初から完成度が非常に高い。
2品目:赤ワインとコンソメの茶碗蒸し
濃厚な赤ワインソースと和出汁のコンソメが二層構造で流し込まれた茶碗蒸し。中にはとろけるような和牛の煮込みやキノコ類が入っており、スプーンを入れるごとに異なる味わいが楽しめる。
ほんのり香るトリュフオイルが香りのアクセントとなり、温かさと濃厚さが身体に染み渡る。
3品目:和牛ローストビーフとブッラータクリーム
赤くジューシーに仕上げられたローストビーフの上には、ふわっと軽いフォーム状のチーズソース。そして添えられるのは香草オイルとナッツ入りのクリーミーなブッラータ風のクリーム。
お花をかたどった食用花がビジュアルを引き立て、まるでモダンフレンチの一皿のような華やかさ。
4品目:白アスパラと和牛の炊き合わせ
ホワイトアスパラと葉物野菜のあしらいと共に供されるのは、低温調理された和牛。澄んだ出汁で炊かれ、肉の旨味が際立つ一皿。素材の持ち味を引き出す技術に脱帽。
5品目:特製ミニバーガー
艶やかなバンズに、厚みのあるパティ。ソースはバルサミコを効かせた濃厚なもの。ひとくちで食べられるサイズ感ながら、旨味の凝縮度は高く、遊び心と本気の味が共存している。パンの香ばしさ、パティの肉汁、ソースの酸味が絶妙なバランス。
6品目:炭火焼ステーキと3種の薬味
メインの肉料理として登場したのは、絶妙な火入れが施された和牛ステーキ。表面はカリッと香ばしく、中は美しいロゼ色。付け合わせは、ガーリックチップ、塩、肉味噌という王道。ひとくちごとに異なる楽しみ方ができ、シンプルにして至高の構成。
7品目:ストウブで燻製されたラタトゥイユ風ライス
テーブルで蓋を開けると、もくもくと香る燻製の煙。中にはパプリカと香草が美しく敷き詰められた煮込み料理が現れる。香りと色彩、素材の甘みが織りなす深い味わい。視覚と嗅覚の演出が印象的。
8品目:お口直しの氷菓
小さな器に盛られたのは、シャリシャリとした食感が楽しい氷菓。ほんのりシナモンや柑橘の風味が漂い、次の甘味への橋渡しとして機能している。
9品目:ガーリックライスと黒カレー
締めには、赤ピーマンと玉ねぎをたっぷり使ったガーリックライスに、濃厚な黒カレーを注いでリゾット風に。ご飯の香ばしさとカレーの複雑なスパイス感が相まって、満足感の高い〆。
10品目:くまさん最中と濃厚プリン
デザートの最中は、見た目も愛らしい“くまさん”の形。中にはアイスクリームや餡が入り、かわいらしさと美味しさを兼ね備える。
加えて供されるプリンは非常になめらかで、カラメルのビターさと甘さが絶妙。木製のスプーンには店のロゴが刻印されており、細部まで心が行き届いている。
「麻布 kumasan」は、和牛をテーマにしながらも、料理の幅・構成力・演出すべてが高水準に整えられた一軒。
和の繊細さとフレンチの華やかさ、そして“遊び心”が三位一体となり、単なる「美味しい店」を越えた“記憶に残る体験”を提供してくれる。再訪確実、次回はどんな驚きがあるかと期待が膨らむ。
2025/07/10 更新
麻布十番に佇む「麻布 kumasan」に二回目の訪店。
和牛を主役に据えた独自の世界観で知られる名店である。店名の「くまさん」は親しみやすい響きを持ちながら、提供される料理は一品ごとに洗練され、遊び心と高級感が絶妙に共存している。
コースの始まりは、和牛タルタルにキャビアを添え、彩り豊かな薬味を自由に組み合わせて楽しむ趣向。オリーブオイルやバルサミコ、トマトやキウイといった意外な食材が、肉の旨味をより鮮明に引き立てている。
続くコース料理も滋味深い椀物や、低温で火入れされた柔らかなローストビーフ、酸味と旨味が溶け合うトマトと共演する和牛の一皿など、肉料理でありながら軽やかさを失わない構成は見事。
炭火で香ばしく焼かれたステーキは、口に入れた瞬間に肉汁が広がり、和牛本来の甘みを存分に堪能できる。
名物ともいえる和牛バーガーは、遊び心あふれる一品で、凝縮した旨味とバンズの香ばしさが相まって思わず笑みがこぼれる。
締めには、すだちを添えた冷製の稲庭うどんが供され、爽やかな余韻を残す。デザートも秀逸であった。
「麻布 kumasan」は、単に和牛を味わう場ではなく、その可能性を引き出し、食の楽しさを再発見させてくれる空間である。和牛の奥深さを知りたい者にとって、まさに訪れる価値のある一軒といえる。