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夜の点数:4.0
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¥10,000~¥14,999 / 1人
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料理・味 4.0
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.5
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|酒・ドリンク 4.0
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[ 料理・味4.0
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| サービス4.0
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| 雰囲気4.0
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| CP4.5
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| 酒・ドリンク4.0 ]
“天の調べ”として味わう一膳――くすのき流バラ天丼
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2025/10/11 更新
ひとたび足を踏み入れれば、東京・四ツ谷の隠れ家、くすのき 本店。完全予約制、わずか6席ほどの極めて親密な揚げ場空間である。
この夜、奇跡的に空き枠を見つけ、通常はコース主体の店であるが、若手の職人手がける「バラ天丼」の枠に巡り合えた。その名の通り、丼の向こうに天ぷらの宇宙を感じさせる一碗となった。
眼前に現れたバラ天丼は、皿というより“小宇宙”。帆立、アオリイカ、海老、インゲン、舞茸、なす――そして中心には一本海老天が凛と鎮座。薄くパリッとした黄金の衣が、淡い琥珀色のタレをほんのり纏って、余白を残しつつ静かに主張する。そこに、大葉と海苔という緑のアクセントが彩りと香りの層を添える。
口に含むと、最初の瞬間は衣の軽やかな歯触り。衣は薄く、油の主張を抑えつつ、素材の旨味を包み込む役割に徹している。帆立の瑞々しさがふわり、イカの伸びやかな甘みが酸味を伴って広がる。海老はプリッと甘く、噛み進めるごとに海の風味が増してゆく。インゲンの青みと舞茸のきのこの風味が挿し色となり、なすの柔らかな甘さが余韻を引き締める。
全体を統べるのは、くすのきのエッセンスとも言える“抑制の美”。タレが丼全体を支配せず、具材それぞれに揚げ加減と風味の余地を残す。素材の形を崩さず、味を混然とさせず、それでいて一体感を醸す。大葉や海苔の香気が、後半には全体の印象を洗い流すように調和を与える。
この丼に寄り添うワインとして、ブルゴーニュの名手、コントラフォンがマコネで手がけるワイン、レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォン(村名マコン)。樽の柔らかなバニラ香とシャルドネのふくよかな果実味が、天ぷらの油の余韻と見事に呼応した。軽やかな衣と素材の旨味に、ワインの広がりが寄り添うように溶けていく。
最後に振り返れば、このバラ天丼は、くすのきの技と理念をぎゅっと濃縮したような一膳であった。もとより予約困難な店ゆえ、普段はコース天ぷらを楽しみたいが、この一夜のバラ天丼は、料理人の意志と才能を最もストレートに味わえる体験だった。次回はぜひ、天ぷらのコースを存分に味わいたいと、心に刻む。
ごちそうさまでした。