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昼の点数:3.8
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¥2,000~¥2,999 / 1人
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料理・味 3.9
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|サービス 3.7
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|雰囲気 3.9
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|CP 3.7
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|酒・ドリンク 3.9
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[ 料理・味3.9
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| サービス3.7
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| CP3.7
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| 酒・ドリンク3.9 ]
[西荻窪] 中央線の“通”が通う。店主の蕎麦愛が結実した路地裏の名店へ
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かき揚げ天ざる
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瑞々しい細打ち蕎麦
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かき揚げ
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長野県産「入野谷(いりのや)在来」
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蕎麦商の看板
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蕎麦カネイ 外観
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2026/02/06 更新
中央線沿線のなかでも、独自の文化が色濃く息づく街、西荻窪。
アンティークショップや古本屋が点在し、
路地裏にはこだわりの個人店がひっそりと佇む。
この街を歩くと、流行を追うのではなく、
「自分の好きなものを、自分の手で守る」という、
静かな自立心を感じる。
そんな西荻窪の“隠れ家文化”を象徴するような一軒が、
「蕎麦カネイ」だ。
西荻窪駅から徒歩3分ほど。
店は住宅街の細い路地にあり、
初見では通り過ぎてしまいそうなほど控えめな佇まいだ。
看板を頼りに進んだ先にある、その「入りにくさ」こそが、
西荻らしい隠れ家感を演出している。
*
店に着いたのは、午後1時過ぎ。
外からは店内の様子がまったく見えず、
一瞬、足を止めてしまう。
「ごめんください」
「いらっしゃいませ」
女将さんらしき方が、穏やかに迎えてくれた。
「靴を脱いで、おあがりください」
窓際の、日当たりの良い席に案内され腰を下ろす。
木の温もりを生かしたシンプルな内装。
大きめのテーブルで、ゆったりと蕎麦をいただける、
“贅沢な余白”が心地よいモダンな空間だ。
オーダーしたのは、
「かき揚げ天ざる」1,850円。
そして一日10食限定の、
長野県産「入野谷(いりのや)在来」1,050円。
10分ほどで、かき揚げ天ざるが運ばれてくる。
思わず目を奪われるのは、その“高さ”だ。
三つ葉と海老を贅沢に使ったかき揚げは、
驚くほど分厚く、それでいて衣は透き通るように軽い。
箸を入れると、乾いた「サクッ」という音。
その奥から、プリプリの海老が姿を現す。
そして、細打ちの蕎麦。
空気をまとってふわりと盛られ、艶やかで美しい。
まずは何もつけず、そのまま手繰る。
石臼挽きの香りが鼻に抜け、喉越しは軽やか。
細打ちながら、しっかりとした腰も感じられる。
この細さで、この弾力。
粉の挽き方、水の回し方、
そして一気に畳み掛けるような延し。
すべてが高い精度で噛み合っているからこそ生まれる蕎麦だ。
この繊細な蕎麦を、辛口のつゆにさっと浸し、
江戸っ子のように小気味よく啜る。
その刹那に広がる香りと喉越しは、
まさに店主の「蕎麦への執念」が結実した瞬間の味わい。
そして、長野県産「入野谷在来」。
一時は絶滅したと考えられていた、幻の蕎麦だ。
店主の並々ならぬこだわりが詰まった一枚は、
見た目からして力強い。
エッジの立った蕎麦を、まずは塩だけで一口。
噛みしめるたびに、ナッツのような濃厚な香りと、
大地を思わせる甘みがじんわりと広がる。
滑らかな喉越しの奥に、
「蕎麦という植物の生命力を伝えたい」という、
店主の想いが透けて見えるようだ。
最後の一本を啜り終え、
ポタージュのように濃厚な蕎麦湯でつゆを割る。
その温かさが喉を通り過ぎる頃、ふと思う。
なぜこの店は、西荻窪にあるのだろうか。
効率や回転率を追い求める時代に、
あえて靴を脱がせ、手間をかけ、
希少な在来種を慈しむように提供する。
そんな“不器用なほどの誠実さ”こそが、
西荻窪という街が、静かに守り続けてきた良心なのかもしれない。
「入りにくい」扉の向こう側には、
一度知ってしまえば二度と忘れられない、
芳醇な蕎麦の世界が待っている。
次回は、
季節の酒肴でゆっくりと、「蕎麦前」から始めてみたい。