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夜の点数:3.5
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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豚山、ニンニク抜きの静寂
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2025/12/21 更新
14回目。
アプリの画面にはそう表示されていた。それは単なる回数の蓄積ではなく、僕がこの場所で積み上げてきた試行錯誤の歴史のようなものだ。
僕はいつものように「小らーめん」の食券を買い、カウンターで静かにその時を待つ。
そして、店員からの問いかけに、僕は明確な意思を持って答える。
「ニンニク抜き、やさい、アブラ、アレ、しょうが」
これが僕にとっての最適解。
誤解しないでほしいのだが、「ニンニク抜き」というのは妥協ではない。それは僕にとって、より純粋な音を聞くための「静寂」のようなものだ。
今日の僕は、一杯の丼の中で、明確に異なる二つの時間を過ごそうと決めていた。
丼が目の前に置かれる。
雪のように降り積もった「アブラ」。そして丼の縁には、今日の「アレ」である柚子胡椒と、追加した「しょうが」が、出番を待つ役者のように静かに控えている。
僕はまず、それらの薬味には一切触れず、レンゲを深く沈めて茶色く輝く液体だけを口へと運ぶ。
最初の一口。
それは、一言で表現するなら「至極」だった。
その瞬間、世界が少しだけ静止したように感じられた。
ニンニクというノイズがない分、何時間も煮込まれた豚の骨髄から滲み出した純粋なエッセンスが、ダイレクトに脳髄を揺さぶってくる。
僕はしばらくの間、この純粋無垢な豚と醤油の世界に浸る。
そして、僕はこの丼のもう一つの主役、「豚(チャーシュー)」に向き合う。
箸で持ち上げようとした瞬間、僕は息を呑んだ。
その肉塊は、自らの重みに耐えきれないかのように、ほろほろと優しく崩れ始めたのだ。
口の中に放り込む。
噛む必要などほとんどなかった。舌の上で繊維の一本一本が、まるで古い約束が果たされた時のように、静かに、そして確実にほどけていく。
それは単なる豚肉の塊ではない。長い時間をかけて煮込まれたという「時間の集積」そのものを味わっているような、圧倒的な柔らかさと旨味だった。
この豚の仕上がりは、過去14回の中でも白眉(はくび)と言っていい。完璧だ。
しかし、物語には展開が必要だ。
至極のスープと、ほろほろと崩れる豚の余韻に浸った後、僕は「転調」を試みる。
丼の端に待機させていた柚子胡椒と「しょうが」を、濃厚なスープの海へと解き放つのだ。
劇的な変化が訪れる。
柚子胡椒の鋭い香りと辛味が、重厚なアブラの海を鮮やかに切り裂いていく。
それはまるで、静まり返った湖に一陣の風が吹き抜け、水面がキラキラと輝き出したかのような光景だ。
さらに、スープに溶け出した生姜の清涼感が、全体をきりりと引き締める。
先ほどまでの「静寂」と「純粋」の世界は、突如として複雑で色彩豊かな「祝祭」へと姿を変える。
アブラの甘み、崩れ落ちた豚の旨味、柚子胡椒の酸味、そして生姜のキレ。
それらが口の中で混ざり合い、新しいハーモニーを奏で始める。
「そのまま」を愛し、「豚」の柔らかさに陶酔し、その後に「変化」を受け入れる。
その一連の流れこそが、ニンニク抜きの豚山における正しい振る舞いなのかもしれない。
完食し、冷たい水を飲む。
二つの楽章を聞き終えた後のような、心地よい疲労感と充実感がそこにあった。
14回目にして、僕はまた一つ、自分だけの楽しみ方を見つけたような気がする。
やれやれ、と僕は心の中で呟く。
一杯のラーメンでこれほど豊かな旅ができるのだから、人生も捨てたものじゃない。