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夜の点数:3.0
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一筋の希望の光、松のや
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2026/01/25 更新
午前0時。飲み会はお開きになった。
タクシーを拾えばいいものを、僕はなぜか「歩いて帰る」という選択をした。アルコールで麻痺した頭が、少しばかりの冒険を求めていたのかもしれない。しかし、それは間違いだった。
永代橋の上で、僕はその過ちに気づく。
隅田川の川面を渡ってくる冬の夜風は、まるで鋭利なナイフのようにコートの隙間から入り込み、僕の体温を容赦なく奪っていく。ライトアップされた橋の輝きさえ、今の僕には冷徹な都会の監視者の目のように見えた。酔いはとっくに醒め、残っているのは圧倒的な孤独と、底なしの空腹感だけだ。
おい、そこで行き倒れるつもりか?
震える足で橋を渡りきったとき、暗闇の中にその看板は浮かんでいた。「松屋」と「松のや」のダブルネーム。それはまるで、遭難した登山家が見つけた山小屋の明かりのように、あるいは遠い昔に別れた恋人の部屋の明かりのように、優しく、そして力強く僕を招いていた。
店内に入ると、暖房の風が凍りついた頬を撫でる。
券売機の前に立つ。左には松屋の牛めし、右には松のやの揚げ物。この併設店ならではの「究極の二択」も、今の僕には迷いがない。今の僕の身体が求めているのは、繊細な出汁の味ではない。圧倒的なカロリーと熱量、つまり「カツ丼」だ。僕はカツ丼に目がない。それはもはや信仰に近い。
ボタンを押す。ロースかつ丼。
深夜の都会で、この温かい食事が僕を待っていてくれること。その事実だけで、僕はもう少しで泣きそうになった。
運ばれてきた丼から立ち上る湯気が、僕の眼鏡を白く曇らせる。
一口食べる。
「生き返る」とは、こういうことを言うのだろう。
サクサク感を残した衣と、半熟卵の甘み。それらが渾然一体となって、僕の細胞の一つ一つを再起動させていく。
そして、味噌汁だ。
松のやではデフォルトで付いてくるこの味噌汁が、今夜ばかりは聖水のように思える。永代橋の風で冷え切った指先まで血が巡っていくのがわかる。追加料金なしで得られるこの温もりは、資本主義の砂漠におけるオアシスだ。
完食して店を出ると、外は相変わらず寒かった。
でも、今の僕には確かな熱源が腹の中に宿っている。川からの風の冷たさが、さっきまでとは違って心地よくすら感じる。
さあ、家までもう少し。
もし君が、飲み会帰りの永代橋で途方に暮れることがあれば、迷わずこの明かりを目指せ。そこには、深夜の放浪者を無条件で受け入れる、熱くて茶色い救いがあるのだから。