『沖縄 今はなきディープスポット』桑畑三十郎さんの日記

レビュアーのカバー画像

桑畑三十郎の旨い店・怪しい店

メッセージを送る

日記詳細

新垣ぜんざい」のレビューで「政良さしみ店」の事に触れたので
今はなき思い出の店をいくつかご紹介。

きよちゃん食堂
15年ほど前、店名と、「だいたいこのへん」という噂だけを頼りにたどり着いた店。
近くでゆんたく(おしゃべり)しているオバアたちに道を尋ねたところ、それはそれは丁寧に
説明してくれたのだが、悲しいかな当時は沖縄の方言が全く分からなくて、結局店の前まで
オバアたちが導いてくれた。
普通の古い木造家屋で奥まったところにあり、看板も何もない。玄関で今日のメニューを聞いて
注文し、2階に上がると、普通の家の座敷でお客さんがご飯を食べている。
日替わりで2種類の定食があり、私はここの「イカスミ汁定食」が好きだった。
ドンブリ一杯に入った柔らかいシロイカ(アオリイカ)とンジャナバー(苦菜)、豚肉が入った
こくのあるイカスミ汁。以来、沖縄料理店でイカスミ汁を見かけると必ず頼むのだが、当店を
超える味には未だめぐり合えていない。
しばらくまえに沖縄通の友人から閉店したと聞いて、ガッカリした。
4年ほど前までは存在したようで、食べログにもいくつかレビューがある。
http://r.tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47000108/dtlrvwlst/30321/

くみ食堂
那覇にあった、店主のオバアが常に怒っている店。
この店ではオバアが法律であり、初めての客はメニューを選ぶことすら許されない。
8年ほど前に夫婦で訪問したときは、強制的に夫はトンカツ、私はゴーヤチャンプルを注文
させられた。
チャンポン(麺類のソレではなく、沖縄特有の、「野菜炒め卵とじ丼」みたいな料理」)が
人気らしいのだが、男性がそれを頼むと「これは女が食べるもんだ!」と叱られる。
また、沖縄そばを食べるとき、コーレーグースー(唐辛子の調味料)を頼むと、烈火のごとく
怒り出す。「うちのそばは、そんなもんで味をごまかさないんだよ!」と。
安い割に量が多く、当然残すと怒られるので、涙目で全部平らげた思い出がある。
那覇でも有名なオバアだったようで、双葉社の「沖縄オバア列伝」という本でもこのオバアが
紹介されており、店に行くとこの紹介記事を朗読させられる。
こう書くととんでもないオバアなんだが、なんとなく憎めなくて、お客の中で妙な連帯感が
生まれていた。(常連らしき方は「ボク10回ぐらい朗読させられてます」と話していた)
こちらも数年前にオバアが足を悪くしたとかで閉店。
オバアは今も、何かに怒っているのだろうか。

むつみ園
国際通りからむつみ橋通りに曲がる角の3階にあったスナック風居酒屋。
ご主人がブナガヤ(キジムナーともいう。沖縄に伝わる妖精)の研究家だそうで、店内には
ブナガヤが描かれた大きな絵が飾られていた。
15年ほど前に友人と訪問したのだが、お酒の代金だけでおつまみは無料、という心配になるほど
良心的なシステムの店で、おでんをつまみにオリオンビール、泡盛を飲んで1,000円ほどだった。
なにやらオバアだらけのお店で、当時若いムスメだった我々はたいそう歓待され、オバアたちに
ブナガヤの話をたくさん聞かせてもらった。帰りには、おみやげに自費出版したというブナガヤの
本までいただいた。
先日那覇に言った際にふと思い出して行ってみた。消えかけた看板は残っていたが、3階に
上がる階段の灯りは消えており、2階の居酒屋の店員さんに尋ねると「今はもう・・・」との返事。
なんだか不義理をして申し訳ないような気持ちになった。
ページの先頭へ