桑畑三十郎さんが投稿した銀座 ハプスブルク・ファイルヒェン(東京/銀座)の口コミ詳細

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桑畑三十郎の旨い店・怪しい店

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銀座 ハプスブルク・ファイルヒェン銀座、東銀座、新橋/ヨーロッパ料理

1

  • 昼の点数:5.0

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.8
      • |雰囲気 5.0
      • |CP 3.0
      • |酒・ドリンク 5.0
1回目

2013/11 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.8
    • | 雰囲気5.0
    • | CP3.0
    • | 酒・ドリンク5.0
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

最後の昼酒

「もし明日死ぬとして、生涯最後の日に何処で何を食べ、呑みたいか」

叶うのならば、当店のカフェタイムでの昼酒を選びたい。
以下妄想。

………………………………………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ランチのマダム客があらかた帰った14時過ぎ、窓際の席を選ぼう。向かいのビルの窓には、午後の日差しが柔らかに差し込んでいるだろう。
一人でもいいけれど、できれば向かいの席に、気の合う友人が1人か2人いればもっと良い。

天井からはいくつものシャンデリア、銀の燭台。さほど広い店ではないが、天井が高く壁面に鏡が使われているため、前身のK.U.Kよりもゆったりと時間が過ぎる。
壁にはグスタフ・クリムトの「女友達」と「アッター湖畔のカンマ―城」
アッター湖は、クリムトが恋人のエミーリエ・フレーゲと毎年、夏を過ごした場所だ。クリムトは生涯独身を通し、多くの愛人がいたが、最後にその名を呼んだ相手はエミーリエ・フレーゲだった。

すっ、と立った白鷺のようなワイングラスで、まずはゼクトを1杯もらおう。

さて、料理。
なにしろ最後の昼酒だから、そんなに多くの熱量を摂る必要はない。美味しいものを、ほんのぽっちりずつ楽しみたい。

給仕さんと相談して、夜のメニューの前菜をひとくちずつ出してもらおう。アスピック、スモウクサーモン、テリーヌ、魚のマリネ。

ワインは白にかえよう。
K.U.Kの頃から、いつも銘柄はお任せだけれど、ここの白ワインはいつも美味しいナアとため息が出る。

お次はお楽しみ、梅山豚のバインシンケン(ハム)だ。アタシが知っている中で一番おいしいハム。いや、豚肉料理の中で一番かもしれない。
こんなにしっとりと官能的な色合いのお肉は他にないだろう。
甘いマスタードソースをちょいちょいと載せながらワインを舐めよう。

さて、ワインをもう1杯。

お腹に余裕があれば、デザートとコーヒーを楽しむところだけれど、生憎アタシは甘いものが苦手だから、デザートワインとチーズをもらおう。
小さな壜の、トロッケンベーレンアウスレーゼを1杯。

もうひとつ、当店で忘れてはいけない名物がある。
ケーゼ・クラッハー(貴腐ワイン入りの青カビチーズ)に、蜂蜜とブリオッシュ。
本当はチーズも蜂蜜もそんなに好きじゃないし、そもそも蜂蜜に甘いワインを合わせること自体滅多にないのだけれど、この組み合わせは何故か自分の官能に突き刺さるものがあり、この組み合わせなしで当店を出ることなど考えられない。
甘いもの好きのひとは、甘いものを口に入れることで多幸感が得られるというけれど、それに似た感覚を味わっているのかもしれない。

逆三角錐の先に残った甘いワインを、噛みしめるように飲み干して、優雅な昼酒の時間はおひらきとなる。
はい、もう満足です。後悔はありません。素晴らしい昼酒人生でした。


………………………………………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


勿論、スープも肉料理も魚料理もデザートも美味しいことは知っている。
また、本来なら、ウィーンのカフェのように、アインシュペナーとアプフェルシュトルーデルを楽しむ使い方が正しいのだろう。
しかし当店のティータイムは、「じゃりじゃりのザッハトルテももモカも苦手」というアタシにも、気ままにグラスワインやアラカルトの料理を楽しみながら、ゆったりと午後の時間を過ごす機会を与えてくれる。

決して廉価な店ではない。というか、こういう使い方だとカフェタイムで1万円を超えるのだから、全くの「趣味の喫食」の世界である。
しかし、ランチのオバサマがたに会話を邪魔されることもなく、静かに、とびきりおいしい酒と料理「だけ」を選んで、日々の面倒事をつかの間忘れさせてくれる店は他にない。他になければ高い廉いの比べようもない。
唯一無二なんて安っぽい褒め言葉は使いたくないが、つまりはそういうことなのだ。

  • バインシンケン

  • アスピック的な

  • 前菜盛り合わせ

  • ワイン

  • ケーゼクラッハー

2014/02/04 更新

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