レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2013/07訪問 2013/08/31
【2013/07/12】 鮎司 平野屋
京都で祇園祭が始まる暑い夏に食べる特別なものと言うと鱧と鮎がある。「梅雨の水を飲んで育つ」と言われる淡路島の鱧はこの時期が一番美味しいと言われ、京都では好んで食べられる食材の一つだ。一方、鮎は京都の川では多く獲れ、この時期のものが若鮎の頃で一番美味しいと言われる。今回どちらの食材を食べるかを迷ったのだが、鮎を一番の名物料理にしている「平野屋」で頂くと言う贅沢をしてみる事にした。京都では鮎と言えば「平野屋」と云われる。そう、「鮎よろし」の季節なんです。
JR二条から嵯峨嵐山(トロッコ嵯峨)までJRに乗って、それからタクシーで嵯峨鳥居本にある「平野屋」に行きます。若い時なら嵐山から徒歩で十分行ける距離ですが、さすが37℃を越える気温の中、徒歩で向かう事には無理があります。ほんの10分ばかりで「平野屋」の前まで連れて行ってくれます。流石この辺まで来ると京都の中心部の凄い暑さと違って、風が涼しく幾分過ごし易いと思います。
京都市民は北東の比叡山と北西の愛宕山をいつも望み観て生活をしている。愛宕山には愛宕神社があり火伏せの神様として古来より京都の住民の信仰を集めていた。
創業400年「平野屋」はこれから愛宕山に登る起点となっている愛宕神社「一の鳥居」の茶屋として古くから親しまれている。店の前には朱色に塗られた鳥居が建ち、苔むした茅葺の平屋の建物と緋毛氈が掛けられた縁台は、私の子供の頃のままで時間が止まっている感じがして懐かしさを憶える。
10日程前に予約をしていた時間より少し早い時間に着いてしまったのだが、名前を伝えるともう伺っていて部屋が用意されているとの事だった。若女将に案内されるまま付いて行くと池の前の角部屋に案内された。2方に庭の池を眺める事が出来る。畳の上に座ってしばし休んでいると、裏山の緑が風に吹かれる音と保津川の渓流から引き込まれている池の水のせせらぎの音で心が癒される。部屋には小さな扇風機が置かれているだけで冷房設備はない。というか必要がないのだろう。
やがて愛宕名物“志んこ”とお茶が運ばれてきた。“志んこ”はお米の粉を捏ねた団子をひとひねりねじってニッキ、お茶、白の三色にしたものに黄な粉と黒砂糖を掛けて食べるお菓子だ。この“志んこ”は平野屋の店頭で縁台に座ってこれだけを頂く事も出来る。
注文は予約時に済ませていたのでメニューを見せられる事はない。ただ飲み物だけ別に注文する。ノンアルコールビールを頼んで見る事にした。お昼には昼膳とか湯豆腐もあるのだが、やっぱりこの季節の「平野屋」は“鮎料理”と言う事で天然鮎のフルコース料理を頼んで置いた。
“志んこ”を食べながら庭の池を眺めていると、池の横にある生簀からこれから我々が食べる鮎を網ですくって取り出していた。
やがて飲み物と突き出しの山菜が運ばれて来てお料理が始った。
突き出し
山菜はふきの茎、山芋にモロミ、わらび、ウド、わさびが皿に盛られている。ご飯が欲しい。
鮎の背越し
新鮮な骨の柔らかい若鮎の骨と身を一緒に筒切りにしたもの刺身の事を背越し(せごし)と言う。見るからに清涼感があり美しい。若鮎は10㎝ほどのもので、この“背越し”と言う料理方法はこの季節にしかできないとの事。例年だと6月中のもので7月には普通の「鮎の刺身」なるはずなのだが、今年は例年より成長が遅いのだろうか。以前平野屋に来た時は8月の中旬だったのだが、その時は三枚におろした普通の「鮎の刺身」だった。この背越しの方が数段美味しく思える。生臭さは一切なく、身のこりこりする硬さと軟骨のような硬さの骨が絶妙で繊細。ただ生きているような目が恨めしい。
焼き鮎
殆ど塩をしていない鮎の焼き物。子供に骨抜きの方法を教えようとしていると、見かねた女将がじきじきに子供に骨抜きを教えてくれた。骨をすべて取り除いた鮎を箸でほぐして蓼酢で頂く。蓼酢の事を教えていると女将が奥から蓼の葉っぱを持って来てくれ、直接蓼の葉っぱを揉んでその味を確かめさせ、蓼酢の作り方も教わった。「蓼食う虫も好き好き」とは良く行ったもので、蓼の葉を直接噛むと何とも苦い。子供のもう二匹目の骨抜きは完全で私より上手であった。8月終わりの20㎝位の焼き鮎ではさすがに香魚と言うだけの香りがするが、この時期の鮎はまだ藻の食べ方が少ないのか香りは強くない。
茄子
焼き茄子を胡麻和えにしたもの。箸休めかな。
鮎粥
白粥に山椒の葉が一枚入れてあるだけに見えるが、白粥に箸を入れて見ると椀の底に大きな焼き鮎の身が入っていた。鮎の香りが微かにして極めて美味しい。
鮎田楽
焼き鮎が二匹の味噌田楽。焼き鮎の骨抜きはもう手慣れたものになっているので直ぐに頂ける。単なる焼き鮎とも味が違っていて、甘い味噌と合間って内臓の苦さが強調されるように思える。
天ぷら
鮎は一尾を三枚におろし、更に身は食べ易いように2つに切られている。身は薄い衣の天ぷらで、頭部と骨は多少長い時間を掛けて揚げてあるので衣の色が茶に染まっているが、歯応えが美味しい。部位によってみんな味が違う。野菜はトウモロコシ、蓮、万願寺唐辛子、茄子。トウモロコシがめっちゃ美味しい。
豆腐
突然、「森嘉」のからし豆腐が一個出てきた。女将に「森嘉」の物かと尋ねると、ご近所のものですとのお答え。確かに「森嘉」はご近所と言えばご近所。丸い椀を逆さまにしたような丸い豆腐の上に四万十川産の青のりが振り掛けてある。中は和辛子が入っている。二つに割って和辛子を取出し、醬油を入れて冷奴として食べます。このからし豆腐は「森嘉」の商品の中でも人気があるので朝の早くに買いに行かないと売り切れている事が多い。和辛子に慣れない子が涙を流している。
御飯
すごく美味しい御飯。女将に美味しい旨伝えるとお客の「みんなさんにそう言われる」と言う事。銘柄は教えて貰えなかった。香の物は茄子、たくわん、胡瓜のぬか漬けだった。お吸い物は夏らしく赤だしで 具はウド、ジュンサイ、ゆばとどこかで柚子の香り。御飯が出て来たのでお料理がこれで終わりである事が判る。既にお腹は満腹に近くなっている。
菓子
最後にメロンの切り身と焙じ茶が出てきた。メロンの冷たさが清々しい。
あっと言う間の約3時間だった。池の水のせせらぎと風の音がする自然に極近い空間の中で、最適の間隔でお料理が運ばれ、会話も最小限の中で食事が進んだ。時間の流れが異なる中で、一部屋と庭の池を独占しているようで贅沢の極みに思える。
次回は冬にぼたん鍋を頂きに来たいものだと思った。
帰りに酷暑の中の愛宕街道を逆に歩いて嵐山を目指す。途中に愛宕(おたぎ)念仏寺に寄った。
2位
2回
2022/11訪問 2022/11/26
【2022/11/18】 いづう
子供が京都のお土産を買って来てくれた。
「いづう」の鯖姿寿司の1人前(5貫)のハーフサイズだった。電話で予約して本店に取りに行ったのだそうだ。
京都には鯖姿寿司の美味しいお店が10店舗以上あるが、その中でも「いづう」は240年以上続く老舗中の老舗のお店で、本人を何度か連れて行っているし、そこで食べたりお土産を買ったりもしているので購入の手続きは理解しているはずだった。
所が今年の鯖は小さくていつもなら1人前が6貫だけど今年は5貫になってしまうと言われたとか。購入して翌日に食べると伝えて他の商品と共に予約したらしい。
貰ったのは、
鯖姿寿司の1人前(5貫)
早速食す。
包みを開けると見慣れない何枚の紙が入っていた。
一枚はいつもの「いづう」の歴史が書かれたパンフ。もう一枚は小さな紙で「お昆布を取ってお召し上がり下さい」と書かれた紙。もう一枚は「お召し上がり方」と言う表題の保存方法、お召し上がり方と時間別の味の頂く目安。昔はそのようなガイドはなかったけれどやっぱり京都以外の地域からの観光客の人々が沢山買いに来て、その人達に対しての注意書きのようだ。
値段は6貫の時よりお安くなっていたとの事だ。
味は言わずとも知れたもの。肉厚で脂の乗って本当に美味しい。
滋賀県産の江州米と北海道産の真昆布(昆布は食べない)と甘目の味付け。
そこで一つの問題。私は「いづ重」の鯖姿寿司も好きだけど、どちらが美味しいかと言う問題。
全くの個人の好みだと思うが我が家ではいつも論議になっている。その「いづ重」は今は改装中だったと言う。但し仮店舗で持ち帰りだけは購入できたと言う事だ。
子供から聞いた京都の様子。
本当は私自身が9月から10月に掛けて京都に行く予定にしていたのだが、諸般の理由で先に子供が京都に行ってしまった。
京都には何度も連れて行っているし、様々な観光先と廻る順序などのコツも判っているはずだったのだけど、まだコロナ渦の最中だし、オーバーツーリズムの事もあるので楽しく京都を楽しむには有益な情報だ。
11月中旬の4日間の滞在。
今年の京都の紅葉には一週間程早かったようだ。
それでも八瀬、南禅寺、永観堂と紅葉を楽しんだようだった。
オーバーツーリズムに関しては海外の観光客も多かったようだが、まだ大陸の人達がロックアウトで出国出来ないので京都も静かだったとか。
最近の京都に思う事は、特に住所の記載方法だ。
「いづう」の住所も今は"京都府京都市東山区八坂新地清本町367”と書く。
祇園の事をよく知っているならともかく"八坂新地清本町”なんて書かれてもどこか全く見当がつかない。
我々の世代だと"四条切り通し一筋半上ル”とか"切り通し富永町上ル”とか言われると直ぐに分かるのだが。
京都の住所は非常に合理的で東西の通りの名と上ル下ル西入ル東入ルで表した。いつから今のような表記になったかと言うと、私見だが郵便番号の7桁表記が始まった時からだと思う。タクシーの運転手さんは大変だし、観光客はスマホがあると判るのかなぁ。
【2013/08/23】 いづう
日帰りの京都旅行の最後はお土産を買いに行きます。
下鴨本通北大路の珈琲専門店を出てすぐにタクシーを拾って祇園切通しまで急ぐことにしました。ちょっと体調がすぐれない事と雨が降りそうな雲行きだったので先を急ぐことにしたのです。何しろ最近の雨といったらゲリラ雷雨と呼ばれる猛烈な雨が降るので傘を持たない旅行者には辛い。
今日はお土産を買いに来ました。
鯖姿寿司 一本 4,410円
小鯛雀寿司 一人前 2,835円
一人前は一本の丁度半分ですが、こちらはちゃんと切ってあります。
帰りに「常温で明日まで持ちます」と伝えられたのですが、「恐らく今日中に全部なくなってしまいます」と答えたら、お店の方が笑っていました。
せっかく祇園に来て行きたいお店も沢山あるのにも関わらず、今日はそれらを全部無視する事にして再び「一力」の前でタクシーを拾う。有ろう事か観光客がいっぱい通っている花見小路通を建仁寺手前まで行って宮川町の団栗橋手前で川端通りにでて京都駅に向かった。お蔭で車内では京都の五花街の上七軒、祇園甲部、、祇園東、先斗町、宮川町の話になった。最近は上七軒が良いのですって。だれか紹介してくれないかなぁ。(追記:昔は嶋原を含めて六花街と言った)
【2011/10/02】 あの「いづう」を貸し切り 京都旅行 その1
日曜日午後9時過ぎに伺いました。
今回は子供を連れて行くので祇園で夜9時頃なので、芸妓さんと旦那が客だとちょっと困るなと思っていましたが、京都でこの時間に酒も飲まずに食事だけするのは結構難しく、かつせっかく京都に来たのだからと言う事で祇園切通しの「いづう」にお伺いしました。(たどり着くまでの経緯は日記あります)
このお店も50年来伺っているお店の一つです。京都には懐石料理、おばんざい料理、京うどんなど、数えきれないほどのお料理がありますが、その中でも“さば寿司”は押さえておかなければならない料理の一つです。“さば寿司”といえば当然ながら「いづう」で頂くと言う事になります。
まずはお茶と手拭き、お手元が用意されます。
“さば姿寿司”と“箱寿司”と思っていたのですが、お店に「焼穴子・胡瓜巻 盛合わせ お吸い物付き」の色紙が張れれていました。“鱧寿司”という夏だけの限定品があるのですが、それは8月末で終わっていますので、残念な事と思っていましたが、焼穴子のお寿司があると言うので、それを注文する事にしました。ここのお寿司はボリュームが結構あるので、“さば姿寿司”と“箱寿司”の二人前は量が多くなるのでそちらは Harf and Harf にして貰いました。お吸い物も一人分追加です。
焼穴子・胡瓜巻 盛合わせ
箱巻盛合せ
お吸い物
改めて店内を眺めてみます。お店は以前より明るくなったようです。机も綺麗になっています。
伺うと昨年に内装を塗り替え、木の机も表面を綺麗に削ったそうです。簡素で上品な装飾、落ち着いた照明、BGMは全くなし、他のお客はいないと言う事で、祇園のど真ん中で夜の9時を過ぎた時間に静寂の中にいる事になります。ちょっと奇妙な感覚ですが、考えてみると極めての贅沢である事に気が付きます。「いづう」を貸し切りにしています。料理が出来るまでの間、子供に「いづう」の天明元年(1781)の創業と二百余年の歴史、“さば姿寿司”の材料と鯖街道、作り方、祭り、箱寿司について、鯛寿司、小鯛の雀寿司についてレクチャーをしました。
お料理が運ばれて来ました。取り皿も一緒に持って来てくれました。その気遣いが嬉しい。子供に全ての種類が食べられるように取り分けました。
“さば姿寿司”が非常に気に入ったようです。脂の乗った肉厚の鯖を酢で締め、ビシッと詰まった江洲の米の上に乗せ、分厚い昆布で巻いてあります。酢の塩梅が何とも言えません。当然魚臭さなどは微塵もありません。私の子供の時代から頂いている変わらぬ味で絶品です。と言いたいですが、正直に言うと少し味が落ちた気がします。どこかは指摘する事ができません。”焼穴子”は明石の“焼き穴子”のような焼き方ではなく、鱧の骨切りをして焼く“焼き鱧”の焼き方です。ふっくらとして、薄いタレと穴子の香りが広がります。これも美味です。“胡瓜巻”の胡瓜も包丁を十字に入れてあり、噛み切り易くなっています。これも美味しい。
23時までと思っていたのですが日曜日は22時までだそうです。最近では日曜には祇園も表通りは人が出ますが、祇園の内側には人が入って来なくなったそうです。お茶屋もクラブもお休みだったり、早く閉まったりするようです。
今日は非常に貴重で贅沢な時間を過ごさせて貰いました。これからは京都に来る度に「いづう」にお邪魔する事になるようです。
【2011/10/11】
横浜高島屋で「京の名舗展」という催しがあり、そこに「いづう」も出店していたので、最終日に行って最後の一本の”:さば姿寿司”をゲットしてきました。 写真3枚追加
(京都寿司のれん会)
3位
1回
2013/08訪問 2013/09/13
【2013/08/06】 駒形どぜう
猛暑の為か最近体力が低下気味。かと言って焼く肉とかを食べに行くのはドクターストップが掛かっているので、今回はどぜう(どじょう)を食べに行く事にしました。東京でどじょうを食すと言うと食べログでは何軒もヒットするでしょうけれど、私の場合は4軒しか思い当りません。浅草の「駒形どぜう」、「どぜう飯田屋」、まだ休業中の深川高橋の「伊せ喜」、本所吾妻橋「ひら井」です。この夏は浅草の「駒形どぜう」にしました。渋谷にも支店がありますが、情緒、雰囲気、何を取っても絶対に本店に行くべきです。
創業享和元年(1801)1月と言いますから、創業210年を経過している事になります。店内に飾られた写真を拝見すると何度も建替えられているように見えますが、外観、店内は江戸時代の雰囲気もさもこうであっただろうと思わせる雰囲気が有ります。
店の予約は4人以上でないとできないし、まして一番雰囲気がある一階の入れ込み座敷は予約できません。なので行ってみて並ぶような事があれば並ぼうと思っていましたが、意に反して空いていました。
入れ込み座敷のほぼ中央の廊下側に案内されました。どういう事かいつもこの辺りに案内されます。一枚の長い板を間に対面して‘藤畳(とうたたみ)’の上に胡坐をかいて座ります。ここの籐畳は滋賀県で作っている物を使っているそうです。
”お昼のなべ定食”を2人前とノンアルコールビール2本を注文する事にしました。”お昼のなべ定食”はいつも注文するものですが、どぜうなべ、田楽、どぜう汁、お新香、ご飯とランチには丁度良いぐらいの量になっています。足りなきゃまた頼めばいい訳だし。
お昼のなべ定食 2人前
どぜうなべ、田楽、どぜう汁、お新香、ご飯
ノンアルコールビール 2本
まず田楽とノンアルコールビールが運ばれて来ます。田楽を肴にちょっと喉を潤すと言う事の様です。因みに日本酒は伏見の冷酒が揃っています。
“どぜうなべ”は丸、骨ぬき、柳川の3種類がありますが、「駒形どぜう」の“どぜうなべ”は‘丸’です。持って来られるどぜうには下処理がされています。開かないどじょうを一匹‘丸’のままお酒を掛けて酔っぱらった所に甘味噌仕立の味噌汁に入れて煮込んであります。それを薄い鉄鍋に綺麗に並べて持って来てくれます。一人前です。そのに備え付けの葱箱から一杯の葱を取って、どぜうの上に盛って少し待ってから食べる事になります。一人前の時はどぜうだけを食べて、ご飯などに手を出しません。一人前を食べ終わって鍋の上が空になると鉄鍋にどぜうを並べて持って来てくれ、それを空の鍋に滑り入れます。そう何人前を頼んでも二人で一つの鍋を箸をつつきながら食べるのです。
二人前のどぜうが来た所で、一人前のお櫃に入ったご飯とお新香に食べる事にします。東京の食べ物ですから多少味が濃いので、白ご飯は助かります。それに冷めないうちに“どぜう汁”も頂きます。“どぜう汁”は江戸甘味噌の「ちくま」と言う品種の味噌での味噌汁です。中にはどぜうと牛蒡が入っています。少しの葱を入れて食します。江戸甘味噌の「ちくま」は深川永代橋で創業300余年続くお店の伝統の味噌です。歌舞伎の黙阿弥作「四千両小判梅葉」の中にも、「道理で味がいい 味噌はちくまにかぎるのう」という台詞が出てくるものです。
二枚目のどぜうも食べ終わってもまだお櫃にご飯も残っているし、お腹はもう少し食べられると言っていますので、”柳川鍋”を一人前追加する事にしました。‘柳川’は土鍋の事らしく九州の柳川の人が秀吉の時代に朝鮮で焼き方を学び伝えた鍋の事だそうですが、開いたどぜうとささがき牛蒡が炊きあがった所を卵とじして食べます。普通、どじょう鍋と言うとこの柳川だと私は思っていました。
会計は席でして、払い終わると下足札とくれるシステムになっています。江戸の古いお店では良く見られるシステムですね。
本当に江戸の古くからある店に来るといろいろ勉強できて面白いです。
帰りは当然近くのペリカンに寄ってパンを買って帰ります。
次回の江戸食巡りは”馬刺し”かな。
4位
1回
2013/10訪問 2013/11/10
【2013/10/13】 はなふさ EAST店
聖護院で蕎麦を食した後、そのまま東に向かい天王町までやってくる。目的は勿論「はなふさ EAST店」にサイフォンで淹れた珈琲を飲みに行くためだ。昔あった裏寺の「はなふさ」が私に取ってどのような店であるのかは金閣寺前の「はなふさ NORTH店」のレビューに書いたのでそちらを読んで頂きたい。
看板には「THE FIRST COFFEE SHOP BY SIPHON IN KYOTO」と書かれている。マークも店の中の白いタイルも裏寺にあった「はなふさ」と同じ雰囲気になっている。ただしカウンター席の椅子は当時よりかなり高い椅子で、しかもその後ろには大きな空間があって人が十分に通れるスペースが残っている。NORTH店と較べても遥かに大きい感じがする。
午後14:00ではここ店にはまだお客は少ないようだ。マスターと若い女性のスタッフの二人で店を営業している。かつては白ワイシャツ、蝶ネクタイの男のスタッフが数メートル毎に客と対峙するようにカウンターの向こうに並んでサイフォンで珈琲を淹れてくれた物だが、今はマスター一人で珈琲を淹れているようだ。
コロンビア ストレート
注文すると
・豆の入った缶から一杯分の豆を出してそれをグラインダーで挽き
・フラスコ(下ボール)に一杯分のお湯を足し
・ネルをろ過器にかぶせて紐を括り
・濾過機の下にぶら下がった金属をロートから伸びたガラスの筒の下に引っ掛けた後
・フラスコにロート(上のガラスの筒)をセットし
・濾過機がセットされたロートに珈琲の粉を入れ
・ガスの火を大きくして
・熱せられた湯がロートに上がってくると
・竹べらで珈琲の粉と湯を緩やかに混ぜながら時間を計り
・しばらくしてガスを絞り
・竹べらて2、3回混ぜた後
・圧力に変化が生じ珈琲色に染まった液体が再びフラスコに戻り
・事前に温められた白いカップにフラスコから珈琲の液体を注ぎ入れ
・カップを回転させてからスプーンをソーサーに置き
前に出す。
という一連の作業のタイミングが私の記憶のタイミングで同じに繰り返された。
机には100円ライターと灰皿が据え置かれ、しかも入口に近い店内にはタバコの自動販売機が設置されている。ライターを忘れた時にはよく貸して貰った物だが、今は据え置きになっている。今も変わらず愛煙家と珈琲飲みの為の専門店という感じだ。きっと今でも蝶ネクタイのマスターは煙草を離せないでいるのだろう。
今日はマスターとは一言も言葉を交わさず、コロンビアをブラックで味わってすぐに店を出た。ここの濃い苦いコーヒー色の液体が今でも一番美味しいと思う。
5位
1回
2013/04訪問 2013/05/12
【2013/04/15】 jazz spot YAMATOYA
今でも京都にはJazz喫茶・クラブは沢山あるようですが、今から40年数年前に、毎日どこかのお店に通っていたJazz喫茶の内、荒神口の「Champ Clair(しあんくれーる)」、「52番街」、四条堺町にあった「The Man-Hall」、「impulse」、「down beat」、「BIG BOY」、「蝶類圖鑑」はもう既に店はなくなっています。そんな中、Netで「YAMATOYA」がリニューアルオープンしたと言う事を知り、今回訪れてみる事にしました。場所は平安神宮と熊野神社のすぐ近くの丸太町東大路通りの交差点(聖護院山王町)から一本東の小さな通りをちょっと入った所にあります。
昔の「YAMATOYA」は開店直後から行っていました。今と同じ場所で黒塀の脇の階段を2階に上がった所にありました。噂では質屋が代替わりしてJazz喫茶になったと聞いていました。ちっちゃなお店で当時としては最新にして最強のオーディオ装置が置かれ、おしゃべり厳禁で珈琲一杯で黙ってガンガンのJazzを聞く純Jazz喫茶でした。24,5歳からは一度も伺った事はありませんでした。聞くと平成24年から一旦店を閉じて、この3月1日にリニューアルオープンしたそうですが、それより前に何度か改装をしているようでした。
同じ場所ですが昔と違って1階に真新しいお店です。ずっと使われているのか昔と同じデザインの立て看板が置かれていました。店内は広くお酒が飲めるようになっています。店内のカラーは当時と同じくすんだ緑色。この時はご主人と奥様でお店をされていました。奥にはLPが8,000枚ほど棚に綺麗に置かれていましたが、お聞きすると家にはもっとあるそうです。それにCDも集められているのですごいコレクションです。
Audio System
sp :VITVOX KLIPSCHORN CN-191 Corner Horn
amp :McIntosh MA2275 (ShopCardにはMAZZ75と書かれているように見えます)
turntable: GARRARD 401
tone arm/cartridge: SME,SHUR N97XE
cd player: marantz
ピアノを象ったメニューケースから珈琲と紅茶と本日の小さなケーキの中から一つ選びました
コーヒー
紅茶
本日の小さなケーキ チョコレート(ザッハトルテ)
珈琲はハンドドリップです。水は花背の湧水だとか。Blue Danubeのカップ&ソーサーでした。紅茶の茶葉は判りませんでしたがWEDGWOODのカップとソーサーでした。珈琲は昔飲んでいたものとは比べ物にならないほど美味しいのですが、Jazz喫茶のそれではもうありません。
結論から言うと昔の感性が少し戻って来たのか涙が出そうになりました。子供が前に座っている手前、顔を俯いてJazzを聞いているふりをしていました。40数年前みたいにALTEC A5のSPでガンガン大音量で聞くJazzはもう聞けないのだなと思い年月の隔たりに思いを馳せました。
帰り際に奥様に昔のマッチの柄のショップカードを何枚も頂きました。昔、京都にあったJazz喫茶のマッチは実家にまだ残っていると思います。
6位
1回
2015/11訪問 2015/11/27
【2015/11/11】 京菓匠 鶴屋吉信
裏千家の帰りに近くの「鶴屋吉信」へ。
夜に食べる饅頭を買って帰る。
栗まろ 2個
上用饅頭で栗の焼印が上に押されている。中は栗一個と餡の甘味と量のバランスが丁度いい。
【2013/10/14】 目の前で和菓子をこさえて貰う お休み処・菓遊茶屋
「鶴屋吉信」は享和3年(1803)創業。京観世と柚餅で有名な京都の老舗の和菓子屋さんです。関東に住んでいても和菓子を購入する場合に必ず購入先候補になり、現実に関東の殆どのデパートには販売店があるので、事ある毎に利用させて貰っているお店です。今日は今出川堀川にある本店を尋ねました。この辺りは西陣と呼ばれ、すぐ近くには同じ菓匠会に属する「塩芳軒」もあります。
大棚のお店の横に路地のような通り口があります。そこを通って奥にある入口を入り、エレベータで2階に上がるとそこが本館2階 お休み処・菓遊茶屋です。
‘お休み処’は素晴らしく広く、游心(ゆうしん)と名付けられた茶室や茶庭もあり、40席ほどの席が用意されていて、季節の生菓子とお抹茶、栗ぜんざいや葛風味と呼ぶ葛切りなどを頂く事が出来ます。一方今回私がこの場所に来た目的の‘菓遊茶屋’では、小さな6席のカウンター席で目の前で生菓子が出来上がる様を見る事ができるようになっています。生菓子は2種類から選ぶことが出来ます。勿論、生菓子はその季節によって意匠が変わります。今回は“栗きんとん”を選びました。本来なら4名位で来て、上生菓子が出来る過程を見るのが良いと思いますが、今回は私一人で独占となりました。
生菓子実演 季節の生菓子とお抹茶 \945(税込)
生菓子は一人の職人さんの手でほんの数秒で出来上がってしまいました。その間、鶴屋吉信と絵に関わるお話をさせて貰いながら眺めていました。
出来上がった“栗きんとん”を頂くと、和菓子にも鮮度がある事を改めて認識しました。
7位
1回
2013/05訪問 2013/06/01
【2013/05/08】 吉田山荘 真古館
京都に於いてこの上ない贅沢は幾つもあります。雪が積もった朝の金閣寺。朝早くの一面の苔の三千院庭園(有清園・聚碧園)。人の姿がない紅葉の清水の舞台。季節では間違いなく5月です。桜が散って葵祭まで一週間程の五月が、暑くもなく一番気候もいい爽やかな日々で、京都を歩く観光客も少なく、山は新緑で包まれているのです。
この日は5月晴れの爽やかな平日の午後3時。絶好の「吉田山荘 真古館」に行くタイミングです。本当は「吉田山荘」に行ってご飯でも食べたい所ですが、お昼の時間はとっくに過ぎていましたので、敷地内にある「真古館」でお茶をする事にしました。場所は吉田山の東側、今出川通りから続く神楽岡通りが突然なくなった所よりもう少し南側の後一条天皇陵の横にあります。
「吉田山荘」は昭和天皇の義理の弟君、東伏見宮家の別荘として昭和の初期に建てられた建物で登録有形文化財建築物に認定されています。いまは料理旅館になっていて、今までに2度ばかり数寄屋造りの客室に宿泊しています。また懐石料理だけを食べに来る事も出来ます。
総檜作りの表唐門からまだツツジが咲く道を昇って行き、それまで車庫だったか納屋だったかの建物を改装して2007年に出来た「真古館」に着くと、案の定、先客は一人もおらず、「真古館」の2階客室を独り占めする事ができました。これはもうこの上ない贅沢です。新緑一面の北側の窓からは澄んだ空気のなか比叡山がすっきり見え、東の窓からも真近に大文字山を望む事が出来ます。
木酢スカッシュ
ケーキセット
チョコレートケーキ
運ばれて来た木酢スカッシュ、チョコレートケーキとのお手拭のお盆には藤原良経(ふじわら の よしつね)の歌が書かれた和紙が添えられています。
うちしめり あやめぞかをるほととぎす鳴くや五月の夕暮 藤原良経
まさに今の季節の歌ですが、外でなく鳥は不如帰ではなくまだ鶯のホーホケキョと言う縄張り宣言の声で、まだケキョケキョケキョと巣作りに入る声ではありませんでした。
チョコレートケーキは100%のカカオマスと豆腐を使用したヘルシーなケーキで、卵、乳製品を一切使用していないそうです。木酢スカッシュはあくまで酸っぱく爽やかでした。
真古館の二階で一人でいると、5月の京都の新緑を独り占めしているような感覚になって来ます。音はスピーカーから聞こえるJazzピアノ・トリオの音量を押えた音と木々の微かに風に擦れ合う音と鳥のさえずりしか聞こえません。実に平和な、関東ではありえない空間と静けさです。ほっといてくれるこの上ないサービスです。
一時間ほど経ったときに一人の女性客が階段を昇って来ました。どうやら中国の方のようでした。少しお話をすると京都の大学に留学されているのか日本語が堪能の様でしたのでしたので、窓から見える比叡山、大文字山を説明して、この空間を独り占めする贅沢を彼女に譲る事にしました。
帰りに「吉田山荘」のお庭を拝見させて頂いて帰りました。
備考) 藤原良経の歌の解説
雨に湿って、軒端にふいてあるあやめが一段と香り高く薫っている。不如帰の鳴く五月の、五月雨の夕暮れよ。
8位
2回
2020/12訪問 2020/12/23
【2020/12/05】 祇園石段下 京寿司 いづ重
「いづ重」の鯖鮨。
子供の京都のお土産。
子供は「いづう」の鯖鮨が好きなようだが私は「いづ重」が好み。
元々「いづ重」は「いづう」の暖簾分けなのだが、
「いづう」の鮨はあくまで上品に。「いづ重」はちょっとワイルドな味付け。
また祇園階段下という観光客が多い場所柄、季節毎に美味しい鮨を提供してくれ、店頭で様々な鮨を注文する事も出来る。今の季節だと名物“蒸し寿し”を店内で頂けるがお店に行かないと食べる事は出来ない。
【2013/03/07】 祇園石段下 京寿司 いづ重
今回の京都訪問の一番の目的の一つは祇園石段下の「京寿司 いづ重」に冬の名物“蒸し寿し”を食べに来ることだった。“蒸し寿し”は3月一杯のメニューで、最後の月でもうすぐ終わってしまう為このタイミングを外すと次の冬の季節まで待たなくてはならないと多少焦っていました。
「いづ重」はその名前と看板メニューから「いづう」との関係を類推出来ますが、今から100年前に「いづう」から暖簾分けで生まれた店です。しかし「いづ重」は「いづう」と較べて京寿司の種類は豊富で、ありとあらゆる京都の寿司を食べる事が出来ます。
例に挙げるなら、鯖姿寿司、いなり寿司、鱧の子なれずし、箱寿司、巻寿司、栗麩巻、鱧姿寿司、蒸し寿司、鱧の子なれずし、小鯛笹巻寿司、業平寿司、ぐぢ姿寿司、あじ寿司、ちまき寿司、海藻巻寿司、台所寿司、焼九条葱いり大人のいなり、京ちらし、鱧ちらし、さんま寿司 と季節ごとに違った寿司を味わえるようになっています。
席についてみると今までと違っている所に気が付きました。机の下から温風が出ていて温かいのです。「いず重」は写真にも写した通り、床が石造りで冬は寒いのですが、二年前からこの装置を付けたそうです。まるで掘り炬燵ですね。グッドアイデアです。
蒸し寿し 1,500円
それにお土産に、“鯖の姿寿し(Half Size)”と“いなり”を注文しました。
しばらく待っていると、待望の“蒸し寿し”が運ばれてきました。こちらの“蒸し寿し”は四角い周りが漆塗りのせいろで持って来られます。蓋を開けると凄い高温で蒸した熱々の蒸し寿しが現れます。
糸のように細く切られた錦糸卵を厚い層のように引き詰めた上に、海老、穴子、イカ、グリンピース、 キクラゲの千切りが乗せられています。そして厚さ1㎝ほどに表面を覆った錦糸卵を持ち上げてみると、ご飯が現れます。ご飯は寿司飯に細かく切った焼穴子、焼はも、煮いかが混ぜられています。
他にお客さんがいなかったので一人で「旨い、美味しい、すごい、。。」などと言葉を発しながら食べていると、私より歳がお若いご主人が「柚子胡椒、食べてみます」と。「柚子胡椒なんて京都でも食べるようになったのですか」と聞くと、「自分で作ってみた」と言う事でした。持って来てくれた柚子胡椒は緑も鮮やかな柚子胡椒で、見た目も味も辛さも博多の美味しい柚子胡椒に全く負けてはいませんでした。柚子胡椒をすこし錦糸卵に混ぜてご飯と一緒に頂きます。寿司屋の生姜(所謂ガリ)とはまた違って美味しいものです。こちらのガリは“蒸し寿し”に入れて食べられるように細かく切ってあります。
「いづ重」の“蒸し寿し”は京都では有名ですが、「こんなに美味しいだからもっと宣伝すればいいのに」とご主人に言葉を掛けると、“蒸し寿し”は手間が掛かるのでこれ以上の数は作れないと言う事です。仕込みに3日掛かるのだそうです。ご飯などすべての物を食べる時に一番美味しいように寝かせながら仕込んで行くのだそうです。3日を2日にすれば1.5倍の量の“蒸し寿し”が作れると思うのですが、そうはしないのが京都の老舗の伝統と意地なのでしょう。
お土産は子供用です。“鯖の姿寿し”はペロッとすぐに食べてしまいました。「Full Sizeでも良かったのに」との感想でした。「いづう」の鯖ずしが好きな子供にも「いづ重」の“鯖の姿寿し”は合格でした。
いなり
「いづ重」の“いなり”は寿司飯に麻の実、ごま、柚子が入れられています。中に入れる具は店によって違い、例えば「乙羽」では牛蒡、人参、胡麻が入っています。因みに「乙羽」も“むしずし”は名物ですが、器が丼になっています。
いろいろな京風のお寿司を食べてみたいなら「いづ重」に行くのが一番良いのじゃないかと思います。できれば複数人で行ってみんな違う寿司を頼んで全部味わうのが良いと思います。
(京都寿司のれん会 加盟店)
9位
1回
2013/10訪問 2013/10/22
【2013/10/10】 天ぷら 吉川
晴れの日のお昼は天ぷらが食べたくなる。
富小路御池下ルにある「吉川」に天ぷらを食べに訪れる事にしました。
「吉川」は旅館ですが宿泊せずとも食事だけでも利用できます。会席料理や天ぷらのコースを頂けますが、天ぷら専用のカウンターが用意されていてそこで天ぷらを頂く事もできます。随分久しぶりです。今日は一人で伺いました。
旅館の入口とは別の「天ぷら 吉川」と書かれた専用の入口の暖簾を潜ります。入口の戸を開きお店に招き入れて貰うと先客なくて私が今日の一人目の客でした。コの字型になったカウンター席の奥の席に座ります。目の前には宮島の大きなしゃもじにお多福のお面がこちらを見てます。この狭い空間が何とも秘密っぽくて居心地が宜し。
熱い焙じ茶を飲みながら注文する物を決めます。ランチメニューは2つしかありません。違いは海老の本数と野菜の数だけです。
水薙 みずなぎ 4,000円(外税)
天ぷら(海老3本、魚2品、季節の野菜8品)
御飯、赤出し、香の物
カウンターの中では赤い銅鍋に入った透き通った綺麗な油が熱せられて跳ねる音がします。天ぷらの具の食材は綺麗に下処理をされトレーに並んで揚げられるのを待っています。最初は海老からですが半紙の上に美山の山椒塩を少し置いてくれました。魚はこれで頂く事にします。これに加え天つゆと大根おろし、塩とレモンが用意されます。
板前さんが私が食べるタイミングを計りながら次々と天ぷらを揚げて行ってくれます。
海老2匹、銀杏、栗、茄子、粟麩、インゲン、太刀魚、かぼちゃ、椎茸 と続いて行きます。
海老は甘く、粟麩の天ぷらは初めてでしたが弾力があってあわの香りがして絶妙です。
ここで仲居さんが一旦半紙とお出汁を変えてくれます。後半に移り、ヤングコーン、貝柱、獅子唐、白舞茸と続き、最後に海老が一匹揚げられます。
貝柱の中は半生で塩にレモンを少し掛けて頂くと甘味が引き立ち絶品でした。獅子唐は辛さの香り立ます。
「これで一人前」という板前さんの言葉で終わりますが、もし足りなければかき揚げとかを追加して貰う事も出来ます。
最初は一人でしたが徐々にお客さんが増えて行き、いつの間にかカウンター席は満席になっていました。この後、ご飯、自家製ちりめん山椒、白菜の一夜漬けの細かく切った物、山椒が掛かった豆腐と湯葉の赤だしを出して貰います。素晴らしく美味しいお米でした。
ご飯などは天ぷらを食べながら頂く事も出来ますが、今回は天ぷらの後に出して貰うように先に言って置きました。
この贅沢な天ぷらはやはり一人ではなく誰かと一緒に食べるのが良いと思います。季節毎に違う天ぷらを頂けるので次回は連れだって夜のコースを頂きに訪れたいと思います。
この旅館の紋は結び雁金(むすびかりがね)で、看板、暖簾、メニュー、箸袋などあらゆる所に描かれています。この渡り鳥のガンの紋は確か真田氏も使っていた家紋だったと思います。
一筋東の南北の通りである麩屋町通りには創業が300年を越える京都で最も古い旅館の一つの「俵屋旅館」と同じく創業200有余年・文政年間創業の「柊家」があり、また「吉川」のお向かいは京懐石の「なかむら」があります。従ってこの京都のど真ん中の周辺は京都の超一流の京料理・懐石料理を頂ける場所が揃っていています。京都で本当の贅沢を味わうにはこの辺りに泊まり、この辺りでお食事をされることをお薦めします。
10位
1回
2013/07訪問 2013/08/10
【2013/07/05】 松翁
葦簀と白い綺麗な暖簾の掛かった猿楽町「松翁」を随分久しぶりに訪れてみました。東京で仕事をしていた時にはよく蕎麦を食べに来たものですが、最近はとんと行く機会もなくなっていました。それでも今でも東京では一番好きな蕎麦屋である事は違いありません。
時間は昼の二時近くの頃で既にお昼時は終わり、店の中も空いていました。
天ざる 活海老1尾 活穴子1尾 野菜2種
この注文は出来上がりに時間が掛かるので昼時の混んでいる時はなかなかできない注文です。今日は混んでいない事を良い事に、天ぷらそばを頼みます。ここの天ぷらはそこいらの天ぷら専門店の天ぷらより美味しいのです。汁は“濃口”にして貰いました
注文して於いてから上を見上げると壁の短冊に“鮎天ざる”なんて季節物も書かれていて多少残念でしたが、久しぶりの訪問と言う事で王道の注文で良しとする事にします。また“田舎そば”も美味しいのですが、これは次回に取って置きます。。。。と言い訳ばかりです。久しぶりにお店に来ることが出来たので多少焦っている自分が可笑しい。
それに夏の蕎麦屋に入って「取り敢えずビール」と言えなくなってから久しい。
まずは、海老の頭です。才巻き海老です、下処理をして軽く揚げてありピンクというかオレンジと言うか色がすごく綺麗です。塩で頂きます。言い忘れましたがここの天ぷらは普通の蕎麦屋のように一度に持ってくる訳ではなくて揚がる都度持ってきてくれます。
その後、そばがやってきました。瑞々しい蕎麦です。“田舎そば”のように黒くはなくほんの少し緑がかった色をしています。薬味はたっぷりの小口切りの晒し葱、山葵、大根おろし、胡麻です。まず薬味なしで、その後に山葵だけ乗っけて、そして濃口の汁に多少浸けて、葱を足してと順に食べ方を変えて食べて行きます。つるつるで腰もあり美味しい蕎麦です。
その間に海老の本体、小茄子と獅子唐、最後に穴子の天ぷらが東京の天ぷら屋のように揚がった穴子を菜箸でパチッと半分に割って持って来られます。表面がカリカリに上がって中がしっとりとした香り高い穴子です。
多少いつもつっけんどんな感じはしますが、蕎麦と天ぷらは一級品です。昼時の忙しい時間帯を割けて手間が掛かる江戸前の天ぷらと蕎麦を頼むのが良いと思います。この周辺で天ぷらなら坂を上がった所にある「山の上ホテル 山の上」も美味しいですが、「松翁」で蕎麦と一緒に静かに食すのもいいですよ。
今年はレビュー件数が1,000件を超えました。
多数の読者の方々に読んで頂き、コメントも頂き、感謝しております。
神奈川、東京、京都を中心にレビューをしていますが、まだまだ行ってみたいお店が多数あります。