2回
2014/05 訪問
茨城の山奥の孤高のそば職人
【2014/04/25】 慈久庵
粗挽きそばを食べる為に茨城の山奥までやってきました。10年ほど前から訪れたいと思っていた所です。
横浜から車で高速を使って約3時間掛かります。何しろ営業時間が午前11時半から午後2時半までしかなので渋滞を予想して午前9時に家を出ます。それにこの日の午前はアメリカ大統領が羽田から離日するので高速道路が規制される恐れがあったため、9時台には東京を抜けたいと思って急ぎました。
場所は茨城県常陸太田市、竜神大吊橋に向かう手前です。この辺りは常磐秋そばの産地です。荻窪「本むら庵」で修業の後独立され阿佐ヶ谷で評判の蕎麦屋なりましたが、突然のように常陸太田市に移転され、その後この地に移転して来ました。どうやら店主小川氏の故郷らしいのです。広い駐車場に車を入れて車外に出ると北茨城の里山が一望できます。空気が美味しいです。沢山植わっている桜がもう終って残念です。山道にあるような階段を昇ってお店の前に行きます。大きな中華風の雰囲気がする建物です。幸いな事に営業中の立て看板が出ていました。
靴を脱いでスリッパに履き替えて入店すると先客は一組。売切れの心配はありません。
テーブル席と広い座敷席があります。窓から里山が見える奥の方の重厚な木製の机と椅子のテーブル席に座りました。
しばらく待つとご主人がメニューを持って来てくれます。独特の書体で「お品書」と書かれたメニューを開き食べる物を選びます。
「冷たいそば」から、
大盛りせいろ
山いもぶっかけ
それに、「山里料理」の中から
岩魚の一夜干し
野草のてんぷら
を頼みます。
子供が頼んだ“山いもぶっかけ”には生卵が付くが大丈夫ですかと聞いてくれました。
コースもあったのですが初回なのでシンプルにせいろにしました。
これから少し待つだろうと言う事で店の中を見て歩き、テラスにも出てみて里山を眺めました。
お店の案内が置かれていてそれに次のように書かれていました。
「蕎麦の原料となる玄蕎麦は、焼畑農法で自家栽培し手刈り天日乾燥したもの
を石臼で粗挽きに自家製粉しております。この品質の良い粗い粉が、独特の
透明感を生み、口あたりが優しく腰がある香り高い蕎麦を作ってくれます。
お茶は慈久庵謹製中国窯炒り緑茶・天然高山野茶でございます。
お茶とお蕎麦で、里山の景色をお楽しみ下さい。」
お茶に関する事以外は事前に得ていた事と一致します。それにこのお店を一人でやっていらっしゃる事も。なので蕎麦を注文してから出来上がるまで時間が掛かると言う事も。(恐らく土日なんかは凄く待つ事になるのだろうなぁ。)
やがて蕎麦が盆に乗せられて出来上がってきました。
まず蕎麦を見ると綺麗です。透明のような白い蕎麦に蕎麦殻の粒子が黒く星のように見えます。
野草のてんぷらを食べる為の塩と天ぷら、晒し葱と山葵の薬味、それにせいろと箸がビシッと盆に置かれています。どうやら箸の形まで拘っているようです。
山野草の天ぷらについての説明がありました。すかんぽ(=イタドリ)、のびる、いしびし。塩は南米産の塩だそうです。その中で海岸で自生する‘はまびし(浜菱)’と言うのは知っていましたが‘いしびし’と言うのが知らない名前でした。
そばに何も付けず食べ、山葵だけを付けて、汁に浸けて、汁に薬味を足して、と順に食べて行きます。薬味の葱、山葵まで旨い。何事と思う位に喉越しも良い美味しい蕎麦でした。9割5分の粗挽き粉のそばとは思えないほど滑らかで腰があります。
目の前で普段はあまりそばを好んで食べない子供が美味しいと山掛けを食べています。そして岩魚の頭が一番旨いと言いました。干した岩魚は滋味深く美味しい物でした。
二人共にあっという間に食べてしまいました。何時間も掛けてここまで来て食べる時間は僅かな時間です。しかしここに來る時間が勿体なかったとは全く思いませんでした。むしろこれから何度も来たいと思いました。
お支払の時にご主人と少しお話をしました。すべてをお一人でなさっているのでどんな頑固者かと思っていましたがそんな事は全くなく筋の通った優しい人柄にお見受けしました。この辺りの櫻は東京での開花から一週間ほど遅いとの事でした。
店を出てすぐには車に乗り込まずに店の廻りの山里を歩き廻りました。気持ちがいい自然豊かな山里です。竜神大吊橋に向かう途中に何軒も蕎麦屋さんがありました。次回は蕎麦屋さん巡りをしてみたい思います。但しスマホが圏外になる事が多いので注意です。
入口
大盛りせいろと野草のてんぷら
山いもぶっかけと岩魚の一夜干し
畑と建物と里山
道路側から
せいろ
山いもぶっかけ
全景
テーブル席
野草のてんぷら
岩魚の一夜干し
角の窓
座敷席とストーブ
大盛りせいろと野草のてんぷら
表紙
テラス
すぐ近くにある竜神大吊橋
2014/06/18 更新
【2024/10/25】 慈久庵
やっとお店に到着したのは朝の10時45分頃。
開店時間は11時半だから少し早く着いたのかも知れないが、駐車場に止まっていた車の中に一組、
お店の前のベンチに一組の先客があった。聞く所によるとは今では平日でも開店時間に10組を超えるお客さんが詰めかけるとか。
前回お邪魔したのは10年前の桜が終わった5月の節句の時だった。
それから随分ご無沙汰した事になる。
広い駐車場とお店の周りを歩いてみる。
少し荒れた感じはするもののが今も風格ある建物が山の中腹に建っている。
玄関の前に置かれた黒板に「本日は手伝いの者おります。ご承知下さい。」と書かれていた。
珍しい事もあるんだな。いつもはワンオペでお客の回転が悪いとお聞きしていたのに。
その理由は後で知る事になる。
玄関横のベンチに座っていると、
ご主人が通常の開店時間より30分程早い10:57にお店を開けてくれた。
店頭で並んでいた順に入口に近いテーブルに座って行く。
私は3つ目のテーブルに座った。
店内には既にストーブが炊かれていた。
ここはバンジージャンプで有名な竜神大吊橋の近くで茨城県常陸太田市の山の中だ。
外の気温は優に20℃を切っていると思われる。
注文は、
鴨せいろ
暖かい鴨汁せいろ
コースを頼むべきか迷ったが、
大盛りにもせず(ミス)普通に頼んでしまった。
気になったのは〝昔ながらの郷土料理 古式けんちんそば”だった。
〝けんちんそば”は10年前にはなかったメニューだ。
確かに表に掛けてあった茶色の暖簾に「古式健珎蕎麦(こしきけんちんそば)」とも書かれていた。
お蕎麦が出来上がるまでの間、店内のあちこちと歩き回った。
鴨せいろが出来上がって来た。
見た目に蕎麦の星が少し多くなった気がする。
最初は何も付けずに、次に鴨汁に少々漬けて。
鴨せいろにすると山葵が付いてこないのが残念だ。
蕎麦を山葵だけで頂くのが好きだから。
それでも十割の蕎麦は繊細で食べ易く美味しい。
鴨汁の汁は澄んでいて味は多少甘い。
自家製だと思われる葱と薄く切った鴨肉が何枚か入っていて、ツミレは入っていない。
鴨汁は荻窪「本むら庵」の作り方と同じに思えるが、向こうの方が鴨の脂が多い気がする。
蕎麦湯を鴨汁の残りに入れて全て飲み尽くした。
やっぱり遠くともこのお店に来て良かった。
手伝いの方の件と30分程早く開店した理由は、夜に支店の「慈久庵鯨荘 塩町館」でお弟子さんに教えて頂いた。
この日は団体のお客があり、弟さんご夫婦がお手伝いをされたようだ。
それでも12時半位には早仕舞したそうだ。
清算時に麦麴味噌を一瓶買って帰った。
お店を出ると3組の方々が待っていらっしゃった。
今日明日と茨城を楽しんでみよう。