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夜の点数:4.4
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¥2,000~¥2,999 / 1人
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料理・味 4.4
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|サービス 3.0
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|雰囲気 3.0
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|CP 3.6
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|酒・ドリンク 3.0
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[ 料理・味4.4
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| サービス3.0
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| 雰囲気3.0
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| CP3.6
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| 酒・ドリンク3.0 ]
印橋ゴッドファーザーの実力
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マッチャ・トルカリ:輸入魚コルワのあら煮 ワイルドでしょ? でも味はやさしい
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マッチャ・バジャ:輸入魚コルワのディープソテー 油と大蒜と唐辛子の妙
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チングリ・チョッチョリ:エビ野菜の含め煮 エビコク濃縮
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アル・バジャ:ジャガイモスパイス炒め あなどれない
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2017/02/09 更新
オリッサ州と聞いて、耳に馴染みのある人は多くないように思う。私もその一人だ。
逆三角形のインド亜大陸の東海岸、
コルカタを州都とする西ベンガル州の南、アーンドラプラデーシュ州の北に位置し、
北、南、東、各インド世界の十字路でもある。
ヒンドゥー4大聖地の一つ、プリーのジャガンナート寺院と、
ユネスコ世界文化遺産、コナーラクの太陽神殿が有名で、
世界最大の爬虫類、イリエワニが生息している。
州都のブバネーシュワルまで、コルカタから南へ約500km、
インドの鉄道で7時間といったところの距離感だ。
国土も人口も、日本の約10倍を有するインド亜大陸は広い。
なので、日本人の感覚においては、インドの州をまたぐということは、
風土や文化、言語にまで及ぶ変化から、国境をまたぐことに匹敵するかもしれない。
私は、西ベンガルの隣州の食文化がどうなっているのかを、
体験できるものならしてみたいと、想いはじめた。
受注以上の日本語を一切解さないホール係、オリッサンのにいちゃんは、
真顔で、交信中のガラケーを私に差し向けてきた。
通話口からは、彼が「boss」と呼んだオーナー、オーキリさんの流暢で、しかし、
かたぎの皆さんにはご迷惑はおかけいたしません的な日本語が聞こえてくる。
「モシモシ、ヨクキテクレマシタ…」
思いがけない展開に身を固くしながら、片道67kmを電車に揺られてきて、
適当にあしらわれるわけにはいかないとばかりに、
私は、オリッサ固有の料理が食べたい旨を切々と説いた。
「オリッサノリョーリデスカ? タベタコトアルンデスカ?」
「食べたことがないから、食べたいんです。」
引出の中身がわからないため、料理のチョイスは、オーナーに委ねた。
ホールの彼はbossの指示にうなずき、ガラケーを閉じ、下がっていった。
オープンキッチンの中には、コックコートに山高帽のいでたちのコックが3人、
内2人がオリッサ、1人がベンガルから来ており、オーナー以下全員ムスリムである。
オリヤー語(オリッサ州の公用語)で喋くりながら、鍋と包丁を動かしはじめた。
身のこなしは鋭く、連係には無駄が無く、鍛えられていることがよくわかる。
これで旨くないものが出てくるはずがない。あとは何がくるかだ。
他のテーブルのオーダーも回しながら、3品とライスが20分で配膳されてきた。
■オリッサの家庭料理(グランドメニュー外)
マッチャ・トルカリ(輸入魚コルワのカレー) \800 medium
骨ごとぶった切ったピンク色の切り身が豪快に茶褐色のスープの中に沈み、
薄切りの大根、玉ねぎもろともダシで食わせる上等なあら煮のような印象があった。
マッチャ・バジャ(輸入魚コルワのディープソテー) \1,000 hot
マスタードオイルで素揚げした筒切りのコルワが4ピース。
キツネ色に艶々しい魚塊は、大蒜、唐辛子、塩もよくきいて、
見た目どおりのギュっとつまった芳ばしさがあった。
まかない用のストックなのだろうか、
汁ものと揚げものとを出してくるあたり、オリッサのスペシャリテなのだろうし、
同じ魚にもかかわらず、このバリエーションは見事だ。
チングリ・チョッチョリ(エビと野菜のドライカレー) \800 mild
小エビと大根、ジャガイモ、ナスを汁気が無くなるまで含め煮しました的な含め煮。
クミン粒が時々プァーっと香り、
塩はマサラが味に変化するのに必要分きっちり投入され、
ちっこいエビでありながら、ものすごく濃厚な旨みが全体に広がっていた。
アル・バジャ(ジャガイモスパイス炒め) \700 medium
食感を残した拍子木切りのジャガイモが大蒜チップで非常に芳ばしく、
ごま粒のような名前のわからんスパイスも奥行を与え、
主菜に負けてない味わいだった。
バスマティ・ライス \400
ほのかな塩気を含んだ極太極長かためのボイル式てんこ盛りバスマティ。
キール(バスマティ・ライスの粥 温製デザート) \600×2
カシューナッツが入り、米は半ごろしで、シナモンパウダーがふりかかり、
甘さはそこまでつよくなく、塩でひとひねりしてある。
ベンガル湾に面する地域らしく名前も味わいもベンガル料理に近しいものがあった。
多様であるだろうオリッサの一経験として大事に憶えておきたい。
地域色はそれとして、このニールガガンの料理のカラーはなんとしたことだろう。
日式のリミッターをあっけらかんに外しながら、具材個々の火入れを変え、
食感を計算し、一品の、そして全体のバランスを組み立てていた。
ここの日本語の全くダメなコックの3人は、
母国の格式のあるところの厨房で育ってきたにちがいない。
器でなく中身のフォーマットが高級レストランなのだ。
どれが一番かと答えられないくらいに、凸凹なくすばらしかった。
満足感に浸りながら、しめのキールを食っていると、
客人をともなって、オーナーのオーキリさんが入ってきた。
てっぺんがうすく、腹が豪快に突出している。
ボックス席に腰をおろし、目は口以上にものを言い、淡々としゃべる。
ホールの兄ちゃんが護衛のように直立不動で後ろに立ち、
コックたちは無駄口をきくのを止めた。
オーキリとは、弁護士を意味するムスリム名で、
文字通りハイカーストの出自を表している。
(インドでは宗教の別無くカーストが当たり前に存在する。)
眼鏡にかなったコックを田舎から連れてき、
余計な装飾を排した内容ありきのレストランを構える。
その光景は厚木にあるちいさな帝国のように見えた。
「タノシカッタデスカ?」
目尻を下げながらオーキリさんが言う。
(あんたは、マーロン・ブランドか?)私は口には出さずにつっこんだ。
BGMにはずーっと、ゴッドファーザー愛のテーマ♪が流れている。