2回
2014/02 訪問
『オマエヲ コレカラ ジヤツク スル』
Winter 吉日
46になった日。
年中、「現地仕様、現地仕様」と繰り返し、疎まれ、適当にあしらわれているとも露知らず、悦に入り、また一年が過ぎた。早いものである。
わが家から「カラチの空」まで直線で5キロ。家人に連れられ、河を超え、橋を渡り、徒歩で向かう。キックボードに乗った南アジア少年とすれちがい、「パキスタンに近づいている」気分が高まってくるも、なんだか遠い気もする。
街道から見渡せる位置にあって、黄色の外壁に緑色のペイントで、「カラチノソラ」。ビジュアルからしてインパクト大で、活気のある大箱の定食屋である。
一見してオーナーと分かる、髭にイスラム服のジャベイド氏は、キビキビと動き、ニコニコ笑顔で、そつも隙も見当たらず、敏腕オーラを放っている曲者である。親族も母国とマレーシアでレストラン事業を展開する「パ橋」一族である。
先々のオーナーが「カラチの空」としてオープンし、その後、店名をそのまま使い、厨房4人体制で現地色を前面に出した戦略に移行して営業している。カラチといいながら中身はラフォールの陣営だ。
人数分オーダーが当然のような顔を向けられるが、ゆっくりと味わうため、最近では、料理は一品ずつ、粉ものは一枚ずつオーダーしている。
本日のスペシャルはニハリ、ハリーム、チキンビリヤニ。辛さを聞かれないのがまた頼もしい限り、「まな板の上の鯉」である。どんと鯉。
どの料理も10分前後で提供。
ハリーム きざみグリーンチリ・フライドオニオン・レモン1/4・主食付き ¥900
牛肉とチャナダル、ムングダルのエース級パキスタニシチュー。
糸状の肉繊維だけが固形分として残るのみ、クリーミーなソースは圧倒的な肉の旨みを放ち、バックアップする塩・油・大蒜分も、それに見合って強く重い。
深いコクはどこに出しても恥ずかしくないメインディッシュの堂々たる風格を有している♪
マトンコルマ 主食付き ¥800
骨付き山羊肉を味わうための獣々しく雄々しいスープ状カレー。
山羊ときちんと認識して食べるのは初。雑味が除かれ、良い意味で乳くさく、するりと身が外れ柔らかい。カライの底にはホールのクミンとクローブが惜しげもなく、きざみグリーンチリでミディアムホットの辛さだ。
コルマコルマしていない分、山羊のコクとスパイス感を前面にだして、こちらもハリームに遜色無いメインであり、粉ものがいくらでもいける錯覚に陥る♪。
ロティ
無発酵、円型で焼き上がりは固めでほろ苦く、カレー類と合わせるためにある最優秀助演賞粉もの♪
ナン
フカフカとはいかないまでも、ベイキングパウダー・卵・砂糖をそれなりに入れ、それなりに発酵させたナミダ型のよく見るナン。久しぶりにいただいたが、焼き加減は上手い。
この店にあっては超変化球である。ジャベイド氏に「ラフォールでもこういうナンなの?」と聞けば、ニヤニヤしながら「はい。」だって…ふふふ、このプリテンダーがっ、あしらっている…そうすると、現地人はロティばかりをオーダーしていることになる!
シークカバブ グリーンライタ付き ¥800 (テイクアウト)
赤みがかった15センチくらいのものが4ピース。
弾力があり竹輪のような食感で塩気は強め、上等のタンドールではあるが、シークカバブはシークカバブであった♪
ごはんのおかずとして、玉子焼きのとなりが良く似合う。
チキンビリヤニ ライタ・サラダ付き ¥900 (テイクアウト)
全体に赤みがかり、短めのバスマティライスにドラムがドンと1本入った、姿は地味、味はド派手な炊き込み式ビリヤニ(ポーションは2人分)。
みっちりと漬け込んだドラムも米も、水気が飛んでギュっと味がひき締まり、ホールのクミン・クローブ・グリーンカルダモンもザクザクと、きざみグリーンチリも相当にホットに利いて、塩気も強いがオイリーさは無い。
この味で、日本人を考慮に入れているはずもない。雑と豪快は全く違うことを身体で教えるビリヤニだ♪
感じるのは、
「勝組」ということ。
地域のパキスタニコミニティの需要を後ろ盾に、携帯ビジネスと食材販売も弊業、機動力を駆使して安価な品揃えを実現した強豪総合店である。
それもこれも、接客・商談にと暇が無いジャベイド氏の商魂逞しい敏腕マネージメントによるものだ。うかうかしていたら、おいしいところは根こそぎ持っていかれてしまいそうな勢いである。
このイスラム商人、一会の価値ありである♪
料理を擬人化して言えば…「190cm、135kg、ラフォール大学卒、都会に居を構える富裕階層、チョンマゲではないマサラ顔の空気のよめる男」であり、
擬麺化して言えば…「料亭で出される二郎!」である。
一日経っても、二日寝ても、…、
すし詰めの車内で目を閉じる時、家業の合間に数瞬目を閉じる時、…、
スクリーンの中を左から右へ、ハリームやマトンコルマがツーっと流れていく。
「もっと強く!」と「この手錠を外してくれ!」、二つの感情が交錯していて、自由が無ーい。
『フウドコウトハマハ アズカツタ トウブン カエサナイ by カラチノソラ』
2016/11/12 更新
イヴだから…トリまみれになりたーい!そんな欲求をみたすべく、他に候補に挙がったバングラキッチン西千葉、和印道木場、サルシーナ・ハラルフーズ、ミスター・ジュリオンを蹴って要予約メニューのチキンカラヒを予約。激辛指定しようとしたら、ジャベイドさんから「イメージカワッチャウナー!」とのアドバイスで却下。なんとまぁ、10年ぶりの来店♪
チキンカラヒ、トマトベースのセミドライ。説得力のある1kgのポーション。あ~、今日来てよかった!とため息が出た。今加熱されたばかりのチキンが濃口のマサラにのっかって腹わたにしみていく。それをしっかり受けとめる吸いつくようなロティ。想像以上だ。さすがはカラチの空、「○○もアルシ○○モアルシ、○○モデキル!」っていう社長のヤンヤヤンヤの営業トークもダテじゃない。ただし、成分は肉と油なので、冷めるにしたがってズーンと重くなっていく。