2回
2017/02 訪問
女と夜と酒とプレイバックPart 2
日本料理 浜清を出た私は、駅へと踵を返した。
雨は冷たく肌に刺さり続けた。
あれから6年もの年月が流れたとは、とても思えなかった。
再び菊名駅に戻ってきた私は、坂道を目指した。
女がその店にときどき訪れているらしいという情報をマイクが教えてくれたのだ。
「リンドバーグ」は坂道の途中にあった。
チャールズ・リンドバーグは、ニューヨーク・パリ間を飛び、大西洋単独無着陸飛行に初めて成功したアメリカの飛行家。
店の名が彼の名前に由来しているかどうかは、私は知らないし、興味もない。私が知りたいのは、女の行方、ただそれだけだ。
ジャズが流れていた。
バーカウンターの周りには腕掛け用の真鍮製のパイプが取り付けられている。
カウンターは12席ほど、他に4人掛けのテーブル席が5脚あった。
壁にかけられたテレビにはベースボール・ゲームが映し出されていた。
「ジン・トニック」と、私はバーテンダーに注文した。
私は女の特徴を伝え、その女が顔を出す日を探ってみた。
3杯目のジン・トニックを飲み終えたあと、4杯目はマティーニに切り替えた。
18時から21時までハッビーアワーだという。
酔いがまわった私は、26年間もここでシェーカーを振り続けているバーテンダーにきいた。
「いったい、ここはどこなんだ?」
リボルバーの銃口を私に向けながら、バーテンダーは答えた。
「そんなこと、おれにきくな」
2017/03/28 更新
リンドバーグは菊名のおしゃれなバーである。
店の雰囲気がとてもよい。
ここが菊名とは思えないほどだ。
BGMはジャズ。
ジントニック
俺は10年ぶりにこの街に帰ってきた。
あいつを追っているのだ。
理由はきくな。
そうここは菊名だった。
ジンとトニックでジントニック。
ジントトニックではない。
ジントニックだ。
ジントニックにはライムが必要だ。
それはジャズにフォービートが必要なようなものだ。
ミックスナッツを頼んだ。
ピスタチオナッツが入ってる。
ジャイアントコーンも入ってる。
ジャイアント馬場やカルロス・コーンは入ってない。
そんなことはどうでもいい。
俺は奴を追っている。
レイナを取り戻さなければならない。
ハーラン・ポッターの遺産を奪われないためにも。
バーテンダーにギムレットを頼んだ。
あいつが好んでいた酒だ。
本当のギムレットはジンとライムジュースを半分ずつ、他には何も入れないんだ。
これを数杯飲むと、頭がクラクラし、いつの間にか外は暗くなった。
I suppose it’s a bit too early for a gimlet.