かりずまてぃっくさんが投稿した渋谷 鮨 まつもと（東京/渋谷）の口コミ詳細

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かりずまてぃっくの１日１発見

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かりずまてぃっく (50代後半・女性・東京都) 認証済

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渋谷 鮨 まつもと渋谷、神泉/寿司、海鮮、日本料理

1回

  • 夜の点数：4.0

    • ￥20,000～￥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.0
      • |サービス 3.8
      • |雰囲気 3.8
      • |CP 3.8
      • |酒・ドリンク 3.9
1回目

2021/11 訪問

  • 夜の点数：4.0

    • ［ 料理・味4.0
    • | サービス3.8
    • | 雰囲気3.8
    • | CP3.8
    • | 酒・ドリンク3.9 ］
    ￥20,000～￥29,999
    / 1人

おまかせコースは、まさに大将との“心の対話”そのもの。料理を味わうことは人を味わうことだと再認識。

渋谷マークシティ裏の坂から、
ちょっと入った雑居ビルの３F。
JR渋谷駅からも2,3分と
駅近なので立ち寄りやすいですね。

店内は、カウンター10席程度と、
可動式仕切りのある個室が３つ。
私たちはカウンターに着席。
大将の手技が見えると特等席に、
テンションが上がります。

最初は汁物、“しじみの一番出汁”からです。
夕刻、仕事から解放され、
外気の冷たさからも逃れ、
いよいよ食事の時間が始まるというところで、
熱過ぎず、ほどよく温かな滋味深いこのお汁は、
心と体の緊張感を
イイ感じで解きほぐしてくれます。
さあ、いよいよスタートですね。

トップを飾るのは“本マグロの中トロの握り”
本日はカナダ産。
見た目、美しいピンク色が艶やかです。
ちなみに赤酢のシャリは、
しっかりめの握り具合。
口中で滑らかに崩れ行く中トロの甘さと、
シャリのしっかりした歯ごたえで、
味覚が覚醒していきます。
口中を薄っすら覆う、
脂の甘味の余韻が心地よいです。

握りが続くのかと思ったら、
お次は“スマガツオのお造り”
with 酒盗から作ったというソース。
酒盗はクセがあるものと思い込んでましたが、
このソースは臭みや塩辛さはなくクリーミー。
脂が乗ってまろやかなカツオに、
コクのあるソースが映えます。
洋の華やかさと香りです。

お次は、大皿の上に
カラフルに盛り合わされた小鉢たち。
鱧の南蛮漬け、ごま豆腐、タコの柔らか煮、
トマトの水煮、金時草おひたし、
菊花とカニの身の煮凝りなど。
“タコの柔らか煮”の上には、
大根の塩麹漬けと刻みわさび。
大根のシャキシャキ歯ごたえと、
わさびの鼻に抜ける軽い刺激で
立ち上がりはトッピングのインパクトが強いながら、
後からじんわりタコの風味が
立ち上がってくるのが面白いです。

再び握りに戻って“ヒラメの握り”。
透き通るような美しい身は、
塩とかぼすでいただきます。
ヒラメの淡い甘さも引き立ち、
その美しい身の白さを汚さないまま
いただけてしまいます。

続いて“汐っ子の握り”からの、
“アジの握り”。
汐っ子は、カンパチの幼魚とのこと。
きめ細かい白身が美しいです。
そして、先ほど手際よく、
板場で皮をはがされていたアジの身。
鮮やかな白と赤のコントラストの上に、
小さな緑色の玉がポツリ。
大将が悪戯っぽく
「正体はネギと玉ねぎと生姜なんですけど・・・」
と説明下さるのを聞きながら口に運んでみると、
あれ？ほんとだ、ニンニクの風味がする！
「でしょ？本物のニンニクと違って、
後に臭いが残らないからいいんですよ」
なんと気の利いたギミックでしょうか。
まんまと騙される人間の味覚の他愛のなさと、
大将の遊び心がマッチした逸品です。

お次は岩手のムール貝を
ワインとビネガーソースで。
紫蘇の香りがふんわりと広がります。
大ぶりではないですが、
プリモッチリとしたムール貝の食感も楽しく、
洋に和が香ったひと品です。

ここで、個性豊かな生野菜の盛り合わせ。
赤や緑とカラフルなのは紅心大根他、大根各種。
苦味辛味がなくて、ほんのり甘いくらい。
パパイヤみたいに鮮やかに黄色いのはバターナッツ。
生で食べられるんですね。
そして多肉植物のようなグラパラリーフ。
美味しそうとは言い難いビジュアルですが、
食べてみると、ぶどうのような上品で甘い香りがして、
驚くほどジューシー。
とても個人では手を出すチャンスに巡り合いそうもない
個性派ぞろいの野菜たちをいただくのが
わさび入り金山寺味噌。
濃厚な甘さと突き抜ける刺激が
どの野菜にもよく合います。

そして、いよいよ“ウニの食べ比べ”へ。
今年は、ニュースにも取り上げられたように、
国産のウニは不漁となっていて、
海外ものも多いようですが、
「今日は久しぶりに国産が揃いました」と、
誰よりもうれしそうな大将が、
目の前に並べてくださいました。
左から、根室のバフンウニ、
青森のムラサキウニ、函館の塩水ムラサキウニ。
それぞれ照明を力強く跳ね返す、
鮮やかな黄色が誇らしげ。
房の形状も美しく整っています。

味はクッタリと濃厚に甘く、
得も言われぬ美味しさです。
濃厚さの点では、バフンウニに
軍配が上がると常々は思っていますが、
この青森のムラサキウニが、
まったくひけをとらないほど濃厚で、
ちょっとうれしい驚きです。
3種類のウニの間を行ったり来たり。
至福・至高の時です。

お次は“金目鯛の握り”。
炙っている側の方だけ漬けにしているとのこと。
細かい技がそこここに光ります。
最初と最後に炙った香りが濃厚に感じられるのは、
そのおかげでしょうか。

炙りつながりで“カマスの炙り握り”。
とっても身が厚く、
炙られて表面で焦げる脂と
身の中にしっかりとホールドされた脂、
２種類の脂の贅沢なブレンドです。

そして“本マグロの赤身”は柚子胡椒で。
丁寧な包丁仕事で、
シャリを覆いつくすように、
美しくカーブする赤身の、
工芸品のような美しさに惚れ惚れします。

お次はさわらの焼き物。
焼き上がった表面の内側で、
ふっくらと旨味を抱え込んだ白身の
ホクホクと美味しいこと。
生でいただく美味しさのほかに、
火が入ってこその魚の旨味まで、
多面的に味わせて下さいます。

次の瞬間は「ハイ、手を出してください」と言われて、
え？とおずおず差し出した手の平、
敷かれた海苔の上に、
ポテリと中落のような素材が置かれます
これがトロタクならぬ“トロ奈良漬け”
奈良漬けは私にとって、
アルコール臭が気になるクセあり食材ですが、
今回、トロの中に刻まれた奈良漬けが入ると、
芳醇な甘さとコリっとした歯ごたえが
トロのクタッリした感じによく合って
とっても美味しいです。
素材勝負、包丁さばき勝負に加えての、
アイデア・発想力・創造力・・・。
美味しさのジャンルが格段に広がっていきます。

ここで一息入れるお漬物盛り合わせ。
山芋、玉ねぎ、ゴボウです。
玉ねぎは紅色のグラデ―ションも美しく、
らっきょうのアッパー版のような風味です。

その後は、柚子が利いた“こはだの握り”に
“松茸の茶碗蒸し”と続き、
そして、もういくつ目かわからない真打が登場。
“大トロの握り”です。
植物の葉脈のように、
まんべんなく細やかに入った
サシの美しいこと・・・。
見とれることしばし。
十分目で堪能した後、口に運べば、
見た目からの期待通り・・・。
秒で口中を、特有な甘い脂で覆うのと引き換えに、
自身は解けるように消えて行ってしまう大トロ・・・。
消えた後の余韻を名残惜しげに楽しむのが、
これまたまた溜まりません
迫り来るフィナーレに向かって、
ふさわしい逸品です。

この当たりから、そろそろちょっとクールダウン。
でも、決して手が抜かれることはありません。
親しみのある鮨、身厚な“アナゴの握り”が登場です。
甘ダレの豊潤さと濃厚さで、ずしっと来る一貫。
本日の美味しい旅の着地点目指して、
ゆっくりと降下している気分です。
そして、再び大将が掌に載せてくれる、
“かんぴょうの手巻き寿司”。
脇役枠からは大きくはみ出るのは、
サイズだけではなく、その旨味と存在感です。

最後に“お替り”リクエストで、
青森のムラサキウニをアオリイカで巻いてもらい、
“きなこのプリン”でフィニッシュです。

日本酒も、大将の故郷でらっしゃるという、
群馬県のお酒を中心に多数。
“尾瀬の雪どけ”はフルーティで素直、軽い飲み心地。
ブワっと広がりすぎず、自分の幅を持っているので、
和食によく合いそうです。
“水芭蕉 秋酒”は、季節限定のお酒とのこと。
こちらは“尾瀬の雪どけ”よりは芳醇な風味、
主張がある印象です。
“Tsuchida99”は攻めたところのあるお酒。
大将の提案で食後にいただきました。
なるほど、お酒だけで存在感十分、個性十分なので、
食事と一緒に・・・は難しいかも。
そして、お鮨と一緒に飲むために開発された？という、
その名も“沙利”はまさに狙い通り。
魚介の風味を自らが塗りつぶしてしまうことなく、
穏やかに共存、あるいは引き立ててくれさえするようで、
自然とお料理の間に差し込んで、杯が進んでしまいます。

全体を通して、
お料理が美味しかったことは言うまでもなく、
これはどれだけ私が美味しいと言っても
伝えきれるものではないと思いますが、
何より特筆したいのは、
大将との“対話”が楽しかったということ。
単に“会話が楽しい”ということではなく、
選びぬかれた素材や、繊細な包丁さばき、
タレやソース等ひと工夫が加わった調味、
出されるメニューの順番や編成、
添えられる日本酒・・・
それぞれが大将からのメッセージで、
それらを、驚きや感嘆をもって受け止めていく、
知らなかった新しい世界へと誘ってもらえる、
そんな３時間の小さな旅のような体験が、
とても新鮮でプレシャスで心地よかったです。

お料理を楽しむとは、人を楽しむということ・・・
素材の希少性や、テクニックの最先端性ではなく、
作り手の“人”そのものを、味わせてもらうことだという、
大切なことを再認識させてくださったお店さんでした。

  • 渋谷 鮨 まつもと -
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2021/12/08 更新

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