『「月9万円の年金でどうやって生活しろと」年収320万円の59歳非正規男性、老後に絶望も…年金事務所職員が教えてくれた「月21万円」まで増やせる“年金受給テクニック”【CFPが伝授】』でかちび調査隊さんの日記

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1/25(木) 11:02配信

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(※写真はイメージです/PIXTA)

毎年誕生月に届くねんきん定期便では、自分が将来受け取ることのできる年金受給見込額を確認することができます。ただし、その額に満足できる人は、ほんのひと握りでしょう。そこで今回、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の井内義典CFPが、将来の年金受給額を大幅に増やす“テクニック”について、具体的な事例をもとに伝授します。

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月9万円!?…「年金受給見込額」に絶望したAさん
Aさん(男性・59歳)は非正規雇用で勤務しており、厚生年金に加入中です。同居していた母親が亡くなったことをきっかけに、Aさんは自身の老後について考えるようになりました。

Aさんはこれまで合計20年ほど厚生年金に加入し、国民年金保険料の未納も数年ありましたが、59歳の誕生月に届いた「ねんきん定期便」を見ると、65歳からの公的年金は年額108万円の見込と表示されています。月額にするとわずか9万円です。

Aさんは、両親の遺産は多少あるものの、貯金はほとんどできていません。加えて、非正規雇用の期間が長かったため、企業年金もほとんどない状況です。

「蓄えも少ないのに、月9万円の年金でどうやって生活しろというんだ……」Aさんはこれからの老後に絶望していました。

そしてふと「みんなの年金額はいったいどれくらいなんだろう」と疑問に思ったAさんは、年金額の平均について調べてみることに。

いまの時代、「年金だけの暮らし」は厳しい

65歳以上の老齢年金の受給額平均は164万円(月約13万6,000円)となっており、性別をAさんと同じ男性だけに絞ると平均210万6,000円(月約17万5,000円)となっています※。

※ 厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」より。

平均額の人でも公的年金だけでやりくりすることは難しいなか、平均額よりも少ないAさんの年金額は、非常に心許ないといえます。Aさんは60歳以降も勤務する予定ですが、「このまま一生働くしかないのか」とうなだれていました。

「ねんきん定期便」は“60歳までの加入条件”が前提
たしかに、月9万円の年金だけでは生活できないでしょう。しかし、諦めるのはまだ早いです。Aさんはいまからでも、年金を増やすことができます。

Aさんは59歳になったときに届いた「ねんきん定期便」を見て、65歳からの老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計が年額108万円であることをその目で確認しました。

しかし、その59歳時点のねんきん定期便に表示されていた見込額はあくまで60歳までいまの加入条件が続いたことを前提とした額であり、60歳以降の年金の加入期間については加味されていません。

厚生年金自体は最大70歳になるまで加入できますので、Aさんは60歳から70歳まで10年間働けば年金額を増やせるということです。つまり、現在59歳のAさんが年金を増やすチャンスはまだまだあるといえます。

ねんきん定期便より「月3万円」年金が増やせることが判明
Aさんは将来の年金額について本当に月9万円だけしかないのか気になり、「もう少し増やす方法はないのか」と思い、年金事務所に相談に行きました。そこで職員から、年金制度の説明を受けながら、年金額についても改めて試算。すると、「ねんきん定期便」とは異なる金額が示されました。

Aさんの年収は320万円です。月給では27万円弱ですが、年金の計算上用いる給与・標準報酬月額は26万円となります。では仮に、60歳以降も65歳まで現在と同じように働いたとすると、どうなるでしょうか。

「ねんきん定期便」に記載されていた額は年額108万円でしたが、60歳以降も65歳まで5年間厚生年金に加入すると、65歳時点での年金額は年額で18万円増え、年額126万円となります。月額では9万円から1万5,000円増え、10万5,000円です。60歳からの厚生年金の加入により、老齢厚生年金(報酬比例部分と経過的加算額)が増えることになっています。

さらに、65歳から70歳まで5年間引き続き同じ条件で勤務すると、70歳以降の年金は65歳時よりさらに年額18万円増え、年額144万円(月額12万円)となります。

公的年金は終身で受給できるため、60歳以降も70歳まで働けば、70歳以降死ぬまで月12万円を受け取れるということになります。もともとAさんが認識していたのは月9万円でしたから、月3万円増えるとなると、精神面のゆとりはだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

老後にゆとりを持たせるなら「繰下げ受給」も視野に
年金が月3万円増えると知り、ひとまず安堵した様子のAさんですが、それでも、「仕事を辞めて年金暮らしとなると、月12万円でもまだキツいな」と感じます。「これだと、一生働き続けないといけないかも……」Aさんは再び不安に駆られてしまいました。

すると年金事務所の職員が「もし70歳まで働けるのであれば、『年金の繰下げ受給』を検討するのもひとつの手です。繰下げ受給とは、年金の受給開始を遅らせることで年金を増額させる方法のことをいいます」と教えてくれました。

Aさんのもとに届いた「ねんきん定期便」には、年金を繰下げ受給した場合の見込額についても記載されています。

年金の受給開始を本来の65歳から5年繰下げ(=遅らせ)70歳からとした場合年金は約153万円(42%増額)に、10年繰下げ75歳からとした場合は年間約199万円(84%増額)となっています。

しかし、これもあくまで現時点での見込額。繰下げによる加算額は65歳までの年金額をもとに計算されますから、Aさんが60歳以降も働くのであれば、ねんきん定期便に記載された金額よりさらに増えることとなります。

70歳まで働く+10年繰下げで年金額は「月21万円」に
Aさんがいまの条件で70歳まで厚生年金に加入し続け、年金受給を5年繰下げるとどうなるでしょう。

65歳時点での年額126万円に対して42%ですから、

126万円×0.42=約53万円

約53万円の増額です。さらに65歳から70歳まで厚生年金加入で年額18万円増えますので、その結果、126万円+53万円+18万円で最終的な年金受給額は197万円、月額に直すと16万円以上になるでしょう。

また、10年繰下げて年金受給開始を75歳にすると84%の増額ですから、

126万円×0.84=106万円

106万円が増額され、65歳から70歳までの厚生年金加入分18万円を加えて

126万円+106万円+18万円=250万円

となります。これは月額に直すと約21万円です。

「月21万円あれば、なんとかなりそうだ!」と安心したAさん。体調や状況などにより何歳まで繰下げできるかは左右されますが、1度選択すれば増額した金額で一生涯年金をもらえることになります。Aさんのように「年金を増やしたい」「老後にゆとりを持たせたい」と考えている人は、繰下げ受給も視野に入れておくといいでしょう。

年金事務所で、繰下げ受給制度の具体的な話について聞いたAさんは「引き続き働かなければいけないな」と気を引き締める一方、「いまのところ健康だし、こうなったら受け取れる年金を増やせるだけ増やそう」と、今後の生活について少し前向きになれました。

「相談していなかったら、ずっと『月9万円』という数字が頭から離れなかっただろうと思います」と話し、年金事務所を後にしました。

企業年金の代わりに「iDeCo」の検討も

今回見てきたように、59歳の誕生日に届く「ねんきん定期便」に記載の額はあくまで59歳時点での見込額で、年金が増える余地はまだあるのです。

なお、もし60歳以降65歳前に退職し、厚生年金に加入しなくなった場合は、65歳までであれば国民年金に任意加入できます。こうして国民年金保険料と付加保険料を納めることで、老齢基礎年金と付加年金を増やすことが可能です。

厚生年金と比べると年金増額の効果は弱いですが、健康上の理由などにより早めに退職する場合で、将来の年金受給額を少しでも増やしたいのであれば、加入するといいでしょう。

また、これといった企業年金などもないAさん。65歳まで、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することもできます。加入できる期間は短いかもしれませんが、給与などから少しでも掛金を拠出できるのであれば、こちらも検討する価値があるでしょう。

井内 義典

株式会社よこはまライフプランニング代表取締役

特定社会保険労務士/CFPⓇ認定者

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