2/19(水) 8:17配信
プレジデントオンライン
初心者でも確実にお金を貯められる投資はあるのか。効果的な投資方法をYouTubeで発信している「かつを」さんは「使い方に大きな差が出るのが、新NISAの成長投資枠だ。年間240万円、最大1200万円の範囲で日米の個別株にも自由に投資できる」という――。
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※本稿は、かつを『買って寝るだけ! ゼロから5年で月5万円もらえる高配当株』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■日本人の現預金はインフレで目減り中
日本人は高利回りというフレーズが大好きですが、その一方、元本が目減りする可能性がある投資は怖いし不安だし大嫌いという人が多いと思います。日本銀行の「資金循環の日米欧比較」(2024年8月30日発表)によると、日米欧の家計の金融資産の構成比率は以下の通りです。
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日本 現預金50.9% 株式14.2% 投資信託5.4%
米国 現預金11.7% 株式40.5% 投資信託12.8%
欧州 現預金34.1% 株式21.5% 投資信託10.6%
(残りは保険・年金・定型保証、債務証券、その他)
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米国では現預金を1割しか持たないで、株式や投資信託などリスク資産に5割以上投資して成功した多くの人が陽気でウハウハな生活を満喫しています。
一方、日本人は金融資産の5割を現預金で抱え、リスク資産への投資は20%弱。少子高齢化による低成長とこれまで長く続いたデフレ(物価下落)時代に備えた資産配分になっています。
しかし、2020年以降の新型コロナウィルス感染症の蔓延や2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発、「世界の激安工場」として世界的な低金利時代を支えた中国と西側諸国の新・冷戦時代突入もあり、日本にもインフレの波が押し寄せてきました。
■新NISAは投資に慎重な日本人向き
インフレになると、現預金の価値が下がります。例えば年率10%の物価上昇が起こると、1年前には1000円で食べられた豚骨ラーメンが1100円出さないと食べられなくなります。
その豚骨ラーメンが味も量もまったく同じ豚骨ラーメンだとすると、お金の価値は1000円÷1100円=0.909090…で約91%に減り、約9%目減りしてしまいます。
銀行に預金しておけば元本保証で安心と思っていても、物価が上昇した分だけお金の価値が減っていくのです。だからこそ、企業という「モノ」=株式に投資することでインフレから資産を守る必要があるのです。
預金だけをしていると知らず知らずに損をしてしまう以上、インフレ時代に突入した日本でも株式などリスク資産への投資が必要な時代になっています。
今後、新NISAは日本人が資産形成して幸せな人生を送るためになくてはならない投資のインフラになるでしょう。最大1800万円の非課税投資枠を使って、どれだけ資産を増やせるかが勝負の分かれ目になります。
中でも使い方に大きな差が出るのが、新NISAの成長投資枠(年間240万円/最大1200万円)。
つみたて投資枠(年間120万円/最大1800万円)では、長期・つみたて・分散という観点で資産形成に適した金融庁選定の投資信託やETF(上場投資信託)にしか投資できません。
一方、成長投資枠は投資信託以外にも日米の個別株に自由に投資可能です。
■月数万円程度から始めたい人は?
じゃあ一体、成長投資枠で何に投資すればいいのか?
「自由すぎて逆に迷う」と考え込んでしまう人も多いでしょう。
その使い方を決めるうえでは次の2つの価値観が影響します。
①とにかく資産を安定して大きく増やしたい
②毎年、非課税で定期収入を得て生活費に役立てたい
新NISAに投資できる資金的な余裕にも差があるでしょう。
A:まとまった貯金がなく、投資できるのは毎月数万円程度
B:ある程度まとまった貯金があって数百万円はすぐに投資できる
「①かつA」、つまり、まだ貯金が少なく資産形成をするために新NISAを使いたい人は、つみたて投資枠も成長投資枠もすべて使って、全世界株式や米国株式S&P500に連動するインデックス型投資信託にコツコツつみたて投資するのが最もポピュラーでオーソドックスな定番投資法です。
世界全体も世界一の経済大国・米国も長い目で見れば右肩上がりに経済成長していくはずです。また、お金の価値が目減りしてモノの価値が上がるインフレが続けば、企業という「モノ」についた価格=株価も自然と上昇していきます。
経済成長とインフレと時間を味方につけて着実に資産形成したい人は長期インデックス投資が最適解です。
ただし、運用で得られた利益を再投資に回すことが複利効果で資産を大きく増やす原動力になるので、運用期間中は投資で得た利益を受け取らないで再投資することが基本戦略になります。
■高配当株投資の3つのメリットとは?
一方、「②かつB」の人、つまり、すでにある程度まとまった資金があり、毎年、株主配当という定期収入を非課税で受け取って生活費+αに役立てたい人におすすめしたいのがここで解説する高配当株投資なのです。
今はまとまった資金がないものの、これからコツコツ将来の収入増を目指す「②かつA」の人にも高配当株投資は有効なのでぜひ参考にしてください。
王道の長期インデックス投資ではなく、成長投資枠1200万円を高配当株に投資するメリットをまとめると、以下に見ていく3点になります。
①高配当株投資は定期的にキャッシュが入るので生活費+αに使える。
値動きが読めない株価と違い、今期の予想配当額を事前に公表している企業が多いので消費の計画も立てやすい
この話をすると「インデックス型投資信託でも、例えば運用資産の4%分を毎年定期的に売却する」といった取り崩しルールを決めれば同じだという人もいます。ただ定率で売却する場合は投資信託の基準価額の上下動で受け取り額が変わってきます。毎年決まった金額を現金化する定額方式の場合は基準価額の下落などで運用資産が減っているときも同じ金額を取り崩すため、資産の減り方が不規則になり管理しにくくなります。
この①こそが新NISAの成長投資枠で高配当株に投資する最も大きなメリットになります。
■昨年夏は史上最悪の大暴落もあったが…
②株価が暴落しても配当金さえ減らなければインカムに変化はないので心穏やかに株式市場を眺めていられる
インデックス投資の基本は、利益も再投資に回して複利効果で資産を大きく増やすことです。複利効果は「雪だるま」といわれるように時間が経てば経つほど、その効果が発揮されます。逆にいうと頻繁に利益を確定したり、分配金を受け取ったりすると十分な複利効果が得られません。
つまり、資産運用中は運用資産に手をつけず、長期投資という名の「禁欲生活」に徹する必要があります。
暴落が来て運用資産が急減しても、その恐怖や不安にひたすら耐えないといけません。
2024年8月5日、日経平均株価が前日比4451円安という史上最悪の下落幅を記録したときには恐怖や不安にかられて、インデックス型投資信託ですら解約する人が出た、といった記事も見かけました。
まだ新NISAが始まって1年足らず。つみたてた資産が最大でも360万円にしか達していない状況でも暴落が来たら大騒ぎになります。
努力に努力を重ねて新NISAの非課税投資枠1800万円を埋め切った直後に2008年9月のリーマンショックのような株価暴落に見舞われたら、どれほどの騒ぎになってしまうのでしょう。
リーマンショックをはさんだ2007年6月〜2009年2月、米国株価指数S&P500は直近高値から60.7%下落し、元に戻るまでに4年9カ月の月日がかかりました。
■オルカンかS&P500、結局どっちがいい?
さすがにリーマンショックレベルの金融危機が来たら、高配当株の株主配当も業績悪化で減配の憂き目に遭うと思います。それでも株主配当がまったくのゼロになることはないでしょう。投資元本についてはあまり気にせず、定期的に株主配当を受け取ることで、家計に少しは余裕を持たせることができます。優良高配当株に投資していれば株主配当を受け取りながら株価の回復をじっくり待つこともできます。
③高配当株に限らず個別株投資はマクロの経済環境から業界動向、個別企業の業績や財務などを調べる必要があるのでとても勉強になる
私も最初は面倒くさそうだなぁと思っていましたが、必要に迫られて学ぶうちにどんどん興味が湧いて銘柄分析が趣味になりました。今ではYouTube動画を通じた視聴者の皆さんとの交流が生きがいになっているほど。
インデックス投資だと結局「全世界株式かS&P500に連動したインデックス型投資信託」の一択になります。全世界株式かS&P500のどちらがいいのかといった些末な論争がSNS上で繰り広げられていますが「どっちでも大きな違いはない、好きなほうに投資すればいい」というのが結論です。
すなわち、インデックス投資はすでに最適解=答えが出ているのであらためて知識をつけたり、技術を磨いたりする余地はありません。
その点、個別株投資でいい銘柄を探すのはお宝探しみたいなもの。株式投資がとても楽しくなることは保証します。
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かつを(かつを)
投資家
現役サラリーマンの個人投資家。登録者4万人超の投資系YouTuber。株やFXの情報発信を続け、元証券マンで証券一種外務員、金融先物取引業務外務員資格も取得し現物だけでなくデリバティブ取引の知識も持つ。FP2級にも合格し「関わってくれる全ての人と投資を通して成長し豊かな生活を目指す」ために発信中。CBCラジオ「北野誠のズバリ」レギュラー、ダイヤモンド・ザイなどメディア出演多数。