3回
2024/08 訪問
すしログ:長崎が誇る、全国から伺うべきレストラン!
この度、3年ぶりにお伺いしたところ、やはり秀逸な御料理で「全国区レベルの名店」だと確信しました。
食材の活かし方、味覚の構成が極めて素晴らしいです!
季節を変えて訪問するのが心から楽しみです。
雲仙「villa del nido(ヴィッラ デル ニード)」の魅力とは?
「villa del nido(ヴィッラ デル ニード)」さんの魅力については、全ての御料理が完全にどこにもない味わいで、しかもハイレベルである点です。
オリジナリティの高い料理をイノベーティブと呼ぶならば、イノベーティブ系のレストランの中で日本トップクラスです。
こちらの為だけにフライトを予約して訪問する価値があります。
使用される食材は地物に絞り込んでいて、上質な味わい。
予期せぬ食材の取り合わせを行いつつ元の味わいを活かしながら化学変化をもたらす点にシェフの非凡なセンスを感じます。
オーナーシェフの吉田 貴文さんは長崎県雲仙市生まれの方。
東京の大学で国際文化を学ぶ研究者でしたが、料理人を志して26歳でイタリアに渡ります。
イタリア北西部のピエモンテ州でキャリアを積み、2015年に「ヴィッラ デル ニード」を開業されました。
自身が訪問したのは開業から6年が経過した後でしたが、既に独自のスタイルは明確に定められていて、今回再訪して更に洗練されている事を実感しました。
冒頭に書いた通り味覚調整が巧みで、香りの用い方や起伏の付け方も秀逸。
東京では過剰な味や食材を付加して印象を高めようとするお店が増えているところ、吉田シェフは料理の根幹である味覚と香りに向き合って自らの料理の印象を高めます。
様々な調理技術を駆使される中で、とりわけ発酵と自家製調味料作りをされている点が筆者の琴線に触れます。
「villa del nido(ヴィッラ デル ニード)」のコースの詳細
それでは、「villa del nido(ヴィッラ デル ニード)」さんで頂いた御料理の詳細を紹介します。
ドリンクについては、運転手だったのでノンアルコールドリンクを頂きました。
自家製梅干しシロップのスパークリング
香り良く酸味が爽やか。プラムのような味わい…!
雲仙アイスグリーンティー
瑞穂町の玉緑茶のアイスティー。
この度頂いたコースの内容
玉葱
湧水パン
魚
モリ突き海中神経締め
湧水パン
青香
素麵
川
粉物
肉
デザート
玉葱
マスタード代わりの自家製調味料から素晴らしい。すなわち、蒸して発酵レモンと合わせた高菜の種である。玉葱は自家製のフレッシュチーズ、茴香と、地元名産のたいらガネ=ワタリガニを合わせている。最初に酸味が広がり、蟹の甘味とチーズのコクが圧倒する。香りも良く、高菜のプチプチ食感とピリッとした辛味が上品なアクセントとなる。一口で多様な味わいを感じさせて頂き感動!一品目からストーリーに引き込まれる傑作である。
湧水パン1
フォカッチャ。カリッカリ、もっちりで、美味しい。酸味がある点が面白い。
魚
キジハタ、味噌マリネ、レモングラス、レモン味噌の泡、醤油ジュレ、ボラ節。キジハタは皮目のみ軽く炙っている。ボラ節の香りがスモーキーで食欲をそそり、キジハタの旨味と脂がどんどん広がり、レモングラスの爽やかな香りや少量のみじん切り生姜の香りと食感が爽やかにまとめていく。全体的に香りが非常に魅力的だ。
このような魚料理を頂くと鮨だけ食べていても世界は広がらない事を実感する。酸味の使い方や香りの加え方などなど日本料理がインスピレーションを得る余地は多数ある。
モリ突き海中神経締め
スジアラとジャガイモ発酵ペーストのフリット、クミンとヴィネガーを用いた黒田五寸人参のピュレ。きめ細かい衣でカリッカリ。サクッと弾けて、スジアラの香りが広がる。そして、大きなポーションながら繊細な繊維がホロリとほどけて、旨味が広がる。衣の中で完全に蒸し焼きになっているため、非常にジューシィかつ旨い。そして、ピュアな味わいだ。これについては、海中神経〆だけでなく放血も海中で行っているとの談で納得。
ピュレは単体だと酸味が強めだが、共に食べると味を支え、香りを加える。良きバランスの調味料使いである!
モリ突き海中神経締め
ポーションが大きい点も嬉しい!加熱系の魚料理はポーションが大きくなくては。
湧水パン2
塩漬けにしたアオサ入りのパン。ゼッポリーニと言うか海苔餅のような印象!
青香
在来種のキュウリ、槍烏賊のマリネ、烏賊のフレイバーオイルと地物の鶏を蒸して2年熟成させたもののピュレ、キュウリの外側のオイル。旨味と香りが強烈!ディルを思わせるキュウリの香りがふんわりと広がる…これはオイル由来かな。キュウリのマリネはシャッキシャキ。
キュウリと向き合って主役まで引き上げる工夫ある料理で深い感銘を覚える。
素麵
吉岡製麺さんの極細島原素麺、玉ねぎの周りの部分と湧水のスープ、有明海のコウカイ(標準和名テングニシ)。玉ねぎの旨味と甘味がたっぷりで存在感のあるスープ。そこに、貝の旨味、甘味、軽い苦味、コリコリ食感が実に良い調和とコントラストを生み出す。玉葱は茹でて粉砕して裏ごししているのか、とろりとしたテクスチャー。素麺はプチプチ食感の素麺で快感。輪切りの発酵青唐辛子?が良いアクセント。
川
近所の河川の天然鰻に、羊肉を一年発酵させたエキスを塗って焼いたもの。イリコ、唐津産サフラン、朝日米。鰻は皮をむっちりと表現していて、タフな香りと旨味が印象的。イリコの香りと鰻の香りが独特のバランスを生み出している。サフランの香りもエキゾチックなアクセントに。
粉物
猪、空芯菜、発酵生姜と大葉、ラヴィオリ。プルプルして軽くもっちりしている皮、猪はざっくりした粗挽きで叩いているかのよう。猪肉のコクを楽しんでいると、生姜、大葉の香りがふんわりと上品に広がる。
肉
島原産サフォークのホゲットのもも肉を炭火焼きに。ソースはサルサ・アル・ヴィーノ。旨味たっぷりで香りが優雅に漂う羊。優しい甘味と酸味があり、軽やかな赤ワインソースが良い塩梅。蓮根は焼き込んで味わいを凝縮させている。ダビデの星はトロトロ。
デザート1
イチゴと橙の葉のソルベ、唐辛子の香りを移したビネガーミルク。唐辛子の香りがしっかりと広がり攻めているデザート!酸味でスッキリな口直し。
デザート2
在来種の黒米を使ったクレープ生地、ホワイトチョコと貴腐ワイン、鶏の卵のソース。生地にはグラッパを染み込ませている。気品のある香りのドルチェだ!甘味も丁度良い。
小菓子
トマトの皮を乾燥させて昆布出汁で戻してハゼの蜂蜜漬け、イチジクとキャラメリゼした落花生、ケーキに自家製黄粉をまぶしたもの。トマトの皮は酸味と旨味を感じる面白いスイーツ。小菓子も全て非凡なのが嬉しい。
庭のミントティー
爽快にフィニッシュ。
2024/10/13 更新
2021/03 訪問
島原で訪問必須のレストラン!
長らくお伺いしたかった島原のイタリア料理店です。
コロナの間隙を縫って訪問したところ、期待を遥かに超える満足度でした。
技術、郷土性、プレゼンテーション、雰囲気の全てが素晴らしく、県内外の遠方から伺う価値のある名店です。
ご当地に眠る上質な食材の魅力を料理で引き出すシェフ。
そのようなシェフは自治体から授賞と補助金を出すべきだと、食原理主義者の自分は痛感します(笑)
美味しさに加えて、シェフとマダムの想いを感じる素敵なレストランです。
この度頂いたもの
・湧水パン
・烏賊 香
・生魚 麹
・魚 自家製海老醤
・牡蠣
・極細素麺
・在来米
・ラビオリ
・肉
・チーズ又はデザート
・寺門さん焙煎珈琲
湧水パン
国見の白ごまと湧き水を使用したフォカッチャ。
ゴマがしっかりと香り、軽い酸味があり、食感はカリカリもちもち。
美味しいフォカッチャ。
烏賊 香
烏賊はコウイカ(墨烏賊)。
原木椎茸をギリギリまで乾かしてからフリットにしている。
香りは国産ポルチーニのペーストとフェンネル。
イカと椎茸の二重の食感が実に気持ち良い。
そして、香ばしく味わい深い。
塩気も絶妙。
生魚 麹
真鯛、在来種の源助大根、、一年間麹で発酵させたジャガイモのソース。
あしらいは人参の葉、ネギ油。
大根はマリネして酸味をしっかりと浸透させているので、鯛の旨味とソースのまろやかな味がピッタリ調和する。
見た目を裏切らない爽快感のある一皿!
新しいのにどことなく懐かしい味がするのは何故だろうか。
初手の2品で心を掴まれた。
魚 自家製海老醤
真鯛と長崎唐人菜に網脂を巻いてフリットにしている。
鯛の香り風味に唐人菜のホロ苦さが加わり、鯛の魅力を高めている。
揚げ加減はもったりしておらず、サックサク。
伝統保存食の塩漬け秋茄子とクミン、新生姜のピュレも独創的で美味しい。
冬野菜の葉のパウダーの軽い苦味も魅力。
自家製海老醤は意外にも上品な風味で、繊細さを感じた。
牡蠣
牡蠣のヒモと里芋のポタージュ。
在来黒米のパンと牡蠣のブルスケッタを添えて。
ブルスケッタはレモンの皮入りで爽やか。
牡蠣の磯の風味をたっぷりと楽しめるポタージュ。
極細素麺
吉岡製麺のプレミアム素麺を使用。
パスタでない点に意表を突かれるが、味が良いので問題無し!
ニンニクオイルと梅肉で和えて和テイストとイタリアンテイストを調和。
蟹は「平良がね」を使用。
上に乗っている粒は雲仙コブタカナの種のマスタードと、蕪のマリネ。
素麺は歯応えが抜群で、蟹の旨味と香りには誰もが魅了される。
酸味や香りが効果的にバランスを取る。
ニンニクオイルは極めて上品な使用量。
在来米
お米は朝日米と言う在来種。
リゾットではなく、シラエビの雑炊仕立て。
レモングラスの風味とミルクが調和していて驚き!
実に爽やかなレモングラス香で、シラエビの香りも魅力的。
お米はぱらりとしている。
ラビオリ
猪肉のアニョロッティ・デル・プリンと自家製鶏節。
歯応えの強いパスタで、ローズマリーがしっかりと香る。
そして、猪肉はホロホロと食べ易い食感で、猪の香りも楽しめる。
鶏節のスモーキーフレーバーも堪らない。
自家製バターのコクが利いている。
口直し
ご友人のかたわらイチゴの農園から朝摘んできたもの。
巨大でみっちりした食感。
そして、甘みが強く、香りも豊満。
肉
鳥居さんの黒毛和牛のサガリ、白菜芯、自家製発酵ミルク。
炭火焼きなのでスモーキーフレーバーが良い。
お肉はむっちりで、繊維がもぎゅもぎゅと食感良好。
その上、旨味が強く、穏やかな酸味が上品に利いている。
火入れも良い。
また、ソースがシンプルな点も魅力だ。
デザート
紫芋のムース、ハゼの蜂蜜ヨーグルト、ソースアングレーズ。
濃密な香りと口当たりにヨーグルトの軽い酸味が素敵な相性。
寺門さん焙煎珈琲
雲南省の無農薬珈琲豆を使用。
プーアル茶と同じ製法で発酵させているそうで、発酵の香りが面白い珈琲。
添えてある地元の黒糖も美味。
2021/04/14 更新
まさかの1年で2回の訪問!
2024年11月に頂いた内容です。
初冬
湧水パン
魚
モリ突き海中神経締め
滋味
アオサのパン
素麺
香
脂
肉
デザート1
デザート2
小菓子
珈琲
初冬
長崎唐人菜、羊の発酵ブイヨン、発酵レモン、白エビ、有明海苔、在来種高菜の種。初手から構成要素がユニークなのがお店の魅力だ。サプライズとともに、複雑な香りと多様な食感を楽しめる一皿となっている。高菜の種はプチプチ弾けて辛くて香りが良い!発酵レモンによる酸味を感じつつ、エビの甘味と特徴的な海苔の風味が食欲を刺激しながら広がり、唐人菜の食感も楽しい。
湧水パン
自家製フォカッチャ。カリッカリかつもっちもちで酸味があるのが魅力!
魚
キジハタとハヤトウリをミルフィーユ状に重ね合わせている。調味料は、自家製味噌、ハイビスカスと麹の泡と自家製醤油のジュレ、羊節。酸味の奥からキジハタの旨味が広がり、食欲をそそる香りも加わる!羊節の羊香も面白い!嫌み無く羊香を添えるところが独創的だ。ハヤトウリのシャキシャキ食感が楽しくさせて、底にある生姜の香りや辛味がアクセントになる。
モリ突き海中神経締め
魚は珍しいエリアカコショウダイで、ジャガイモの発酵ペーストのフリット。大根の葉とサヤのペースト、クミン ビネガー。今回は力強い味わいの魚種で、香りも脂も乗っている。海中神経〆ながら軽く血のニュアンスもある。血合いの部分から上品にかすかに感じる(のが良い)。
滋味
出始めの里芋で、上が赤里芋、下が白里芋のピュレとのこと。蒸したミズイカ、ディルオイルとともに。ミズイカのとろとろテクスチャーと甘味が里芋の香りと甘味と一体化して、多層的な甘味を楽しめる!
アオサのパン
香りが良く、実に美味しいパンだ。
素麺
ハヤトウリの端っこの部分とたいらがね(地物のワタリガニ)の出汁、唐辛子ピクルス。カニの香りと甘味をまろやかに楽しむ素麺だ。麺は極細でプチプチした食感。素麺料理として非常に美味しい。
香
もち米の玄米を練って揚げたもの、いりこ出汁のスープと鯛の田麩、唐津サフランオイルとともに。鯛の旨味と香りがたっぷり楽しめて、いりこの出汁は非常に上品。もち米の香ばしさが引き立つ。
脂
穴熊、間引き春菊、ウコン、柚子、手打ちのタリオリーニ。穴熊の脂が甘く、余韻が長い。コクと香りも長く楽しめる。そして、ウコンの苦味がアクセントとして用いられている点が面白い。メニューに表示された名前通り脂を楽しむ料理ながら軽やかな後味だ。
肉
10ヶ月のサフォークのロースで、カボチャ醤油を塗りながら焼いたもの。付け合せの野菜は、間引き人参と赤蕪。
肉質は柔らかく、香り良く旨い羊である!人参の葉も香りが良くて魅力的だが、本体が小さいのに味わい濃いのが衝撃!軽やかな味わいで香りを楽しませる赤ワインソース。赤蕪も強い苦味の中から甘味も込み上げてきて、味わいが濃い。肉も野菜も嬉しさのある味わい。
デザート1
発酵唐辛子の ビネガーミルク、緑茶、いちじくの発酵シロップ、いちごと橙の葉のシャーベット。スッキリ!前回も意表を突かれたが、再び頂いてもやはり面白い発酵唐辛子を用いたデザート。
デザート2
在来種の黒米を使ったクレープ生地、ホワイトチョコと貴腐ワイン、鶏の卵のソース。上には栗の渋皮煮。これまた相変わらず美味しいデザートだ。生地のみちっとした独特の食感とコクが魅力!
小菓子
トマトと麹梅はぜの蜂蜜を混ぜたものはオリーブの葉をスプーン代わりにして頂く。トマトの酸味と旨味で蜂蜜が魅力的なデザートに変わる。キャラメリゼした落花生、自家製きなこをまぶしたスポンジも美味。
珈琲
浅煎りのコスタリカ、地元の黒糖とともに。