辣油は飲み物さんが投稿した浜作 新本店(京都/烏丸御池)の口コミ詳細

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浜作 新本店烏丸、四条(京都市営)、烏丸御池/日本料理

1

  • 夜の点数:4.8

    • ¥60,000~¥79,999 / 1人
      • 料理・味 4.8
      • |サービス 4.3
      • |雰囲気 4.5
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2023/03 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味4.8
    • | サービス4.3
    • | 雰囲気4.5
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥60,000~¥79,999
    / 1人

すしログ:板前割烹の元祖であり至高!京都が誇る名店「ぎをん浜作」

お客の目の前で調理を行い、当意即妙に高品質な料理を提供するスタイル、「板前割烹」。
料亭、会席料理とは異なる進歩を遂げた、実に京都らしいスタイルです。
今回ご紹介する「ぎをん浜作」さんは、その元祖とされるお店です。


京都「ぎをん浜作」とは?
「ぎをん浜作」さんは1927年(昭和2年)に創業され、現在は3代目の森川裕之さんが暖簾を守っておられます。
森川裕之さんは京料理界最年少で「現代の名工」を受賞された方。
2022年6月24日の「プロフェッショナル仕事の流儀」で紹介されたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
僕は前々から店名は存じておりましたが、自身が通っている「鮨みずかみ」の水上親方が料理教室に通われた事、森川大将が『和食の教科書ぎをん献立帖』を上梓された事を受けて、関心が非常に高まりました。

なお、「割烹」とは、割く、烹るから構成され、文字通り包丁方と煮方がタッグを組むスタイルの日本料理です。
そして、「ぎをん浜作」初代は包丁方であったそう。
3代目の森川裕之さんも卓越した包丁使いを誇り、一見するとざっくばらんなのに、実際には食材の味を引き立てる包丁技術です。
これは素人ながら包丁を握る自分としても、体感して良かったと心底実感します。
 
元来、「板前割烹」の妙味は当意即妙にあり、お客の好みに合わせて瞬時に対応する即応性から生まれる高技術こそが真骨頂であると言えます。
速く、美味しく、精確にお客の好みに合わせる方こそ、腕利きの板前。
「ぎをん浜作」さんも元々はアラカルトが主体のお店ですが、森川裕之さんが体調を崩された事もあり、現在はコース仕立てが主体となっている模様です。
 
お客の到着に合わせて出汁を引かれ、そこからコースが始まります。
鰹出汁の香りが実に魅力的で、食欲を刺激されるとともに、穏やかな心境に導いてくれる出汁の香りです。
コースは見事なまでに流麗に進行し、終始ワクワクし続けます。
 
各御料理については、見た目の面では派手さが無く、御幣を恐れずに言うと「普通」に見えます。
しかし、いざ頂いてみると驚嘆を覚えます。
他店と同じ御料理でも、他店よりも数段上の美味しさなので。
蛤と若芽の椀、鯛の刺身、筍の木ノ芽味噌和え…いつかどこかで頂いた事のある御料理でも、次元が異なる味に昇華されている点が「浜作」さんの凄味です。
 
ざっくりと行われる切りつけにしても、一見すると豪胆に見える調味にしても、高度なバランスで構築されています。
そして、御料理を支えているのが徹底的な基礎技術の修練である事が分かり、基礎を繰り返す過程で修正されてきた積み重ねが美味として結実している事を実感します。
このような堂に入った御料理を頂くと、料理の真の面白さが分かります。
そして、自身の経験値が一気に上がります。
人は一流に触れずして一流にはなれないものだと勉強になりました。
 
なお、完全に余談となりますが、静岡の鰻店「瞬」の岡田健一さんが修行に入られていて驚きました。
「瞬」は既に定評を得たお店なのに、日本料理の修業に入り直されるとは、並大抵の人間には出来ない試みです。
修業を終えられた暁には、御料理を頂きに上がりたい、と感じました。
技術だけでなく、「浜作」の森川さんの哲学も学ばれる事になるでしょうから。
料理は技術だけでなく、心ですね。
 

「ぎをん浜作」の御料理の詳細
「浜作」さんのコースは55,000円(時価による変動あり)で、別途サービス料が10%掛かります。
そして、日本酒2杯を飲んで73,810円でした。
価格としては高級中の高級ですが、頂いた御料理の味と御料理から得られるインスピレーションを考えると体験価値は非常に高く、腑に落ちる御料理と空間、接客です。
京都の格式が高い日本料理店においては自身の食の経験と知識が問われ、それらが無ければ価値を判断出来ないもの。
日々、食と向き合い、精進を続けてきて良かった…と実感しました。
予約困難店や新規店、ミシュラン店や某100名店を巡っているだけでは、食文化への深淵には到達出来ません。
もちろん自分はまだまだなので、今後ともブレずに食と向き合っていこう、と心から感じました。
 
頂いた御料理
先付:汲み上げ湯葉、ワラビ、海胆
稚鮎の酢炊き
椀:若竹、若芽、蛤
刺身:鯛
筍の木ノ芽味噌和え
筍じきかつお
油もの:油目
白魚と赤貝の酢味噌和え
お食事:土鍋炊きご飯、留め椀、香の物、出汁巻き玉子
水菓子

この度頂いた日本酒
月桂冠・超特撰鳳麟純米大吟醸
南酒造場・南特別純米無濾過生原酒

先付
汲み上げ湯葉、ワラビ、海胆。

頂いて印象深かったのが、出汁である。
繊細な湯葉に調和する出汁で、持ち味の甘味に寄り添う。
そして、ワラビを頂き、湯葉との食感の差分が面白く、味覚のみならず食感的にも流石だと実感。
また、なめらかで優しい食感から始める点に、構成的にもささやかな気配りを感じた次第。
湯葉は恐らく1716年創業の「湯波半老舗」のもの。

稚鮎の酢炊き
稚鮎は琵琶湖産との事なので、現地の名で言う氷魚だ。
(訪問が17時半のところ)17時に届いたものを炊いたばかりとの事で、儚い食感の中にホロ苦さが心地良く、お酢の塩梅が素敵だ。
木ノ芽の香りも良い。
お酢は村山造酢の「千鳥酢」との談。

椀:若竹、若芽、蛤
鰹がキリッと効きながら、実に丸い吸い地だ。
キリッとしつつ、まろやか。
塩気も効いていないようで決まっている。
絶妙なバランス。
そして、筍の甘さも凄く、薄切りでも食感が豊か。
これは産地の京都で採れたてのピンを使うからこその味わいだ。
蛤は食感がありつつ、あくまでも柔らかで、ネガティブな要素はゼロ。
食材の取り合わせとしては一般的だが、一般的な美味しさが凡庸に思える程の技術を感じ、驚嘆を覚える。

刺身:鯛
脂が乗っていて、香り良く甘い鯛。
これはとにかく旨く、ボリューミーなのにもっと食べたくなる鯛は凄い。
椀、刺身で一気にテンションを上げる点が名料理店である証左。
付け合わせはウドの甘酢漬けと、実に魅力的だ。

筍の木ノ芽味噌和え
大鍋に月桂冠の特選(本醸造酒)をガバガバとワイルドに注ぐ事から始まる!
筍も「えっ、本当にこの人数分!?」と思うほど使用される。
調理風景を拝見出来るのも板前割烹ならではだ。
待ちかねた【筍の木ノ芽味噌和え】は温かい状態で提供され、これは意外だ。
やおら口に運ぶと、なんと口の圧力で押しつぶせるほどの柔らかさ。
驚異的。
木ノ芽味噌は香りが良く、ビリッと痺れ、白味噌の甘味も調和する。
感動に酔いしれていると、感動に包まれたまま、さらなる筍料理が眼前に現れる。

筍じきかつお
大ぶりな筍を豪快に用いる「浜作」さんを代表する御料理の一つ。
一見すると「豪快」そのものな見た目だが、実際には味覚のバランス、香りのバランスが計算されていて、隠し包丁や火入れなどに繊細な気配りがある。
大きな筍をほおばると、筍の芯から味が多層的に次々と広がる。
筍は非常に柔らかくて、甘味が強く、香りが良い。
まずは筍の豊潤な味わいを堪能させたところで、調味の甘味や粉鰹の旨味などが筍の味を引き立てる。
 
酸化していない筍を仕入れ、一回も冷まさず卓上に出す事を主眼としているそうだ。
これは京都でしか頂けない絶品中の逸品だ。
なお、筍のアク抜きに米糠は使用せず、繰り返し時間をかけて煮てアクを抜く手法を採る。

油もの:油目
巧みな骨切りが奏功し、未体験の食感を楽しませてくれる。
表面はカリカリ、サクサクした食感で煎餅的な香ばしさを纏っている。
身はホロッとほどける。
皮はもっちりした食感だ。
実に面白い!!!
キレのある味わいのツユも美味い。
アブラメの骨切りは鱧とは異なる幅で行われている。
そして、アブラメは年間3週間ほどしか出さないそうなので、僥倖。

白魚と赤貝の酢味噌和え
白魚はネガティブな要素が皆無で、甘みが強い。
赤貝は旨味、酢味噌は上品な塩梅なので素材を殺さず、実にバランスの良い酢のもの。
甘味、酸味、魚の味の活かし方のバランスに妙がある。

お食事:土鍋炊きご飯、留め椀、香の物
上質な料理店では白米こそが御馳走であり、白米だけで出すお店ほど店主の矜持を感じさせてくれる。
まして筍の時期。
ついつい筍ご飯にしてしまう料理人も多いが、それまでの料理で十分に筍を満喫させるとともに、それらの方が筍を活かす料理として上であると認識し自負を持っておられる為の選択であろう。
 
また、留め椀、香の物も抜かり無い。

出汁巻き玉子そして、お食事と同時に供されて驚嘆したのが、出汁巻き玉子である。

調理されているところを見れば、料理の心得が多少でもある人間ならば卵液の粘性の低さに驚くはずだ。
卵よりも出汁の比率が高いため箸が通らない。
故に強火で一気に焼き上げる。
日本人ならば誰もが食べた事のある【出汁巻き玉子】を感動レヴェルの逸品へと昇華させていて、このような一つの料理の掘り下げこそが日本料理の魅力であると再認識する。

水菓子:オレンジのゼリー
甘味と酸味が自然で、スッキリと爽やかにお食事を終える。
 

「ぎをん浜作」の立地と外観
かつては「京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル下河原町498」にあったそうですが、現在は六角町に移転されています。
訪問前から期待を高めてくれる素敵な意匠の暖簾は、民藝運動で高名なバーナード=リーチの手によります。

お店に入ると予想を裏切られ、開放感を感じる設計です。
カウンターのみならず視界の広さに驚くはずの内装です。

奥には中庭があり、奥に長いところも実に京都らしいです。

2023/04/15 更新

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