レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2015/03訪問 2015/05/24
Wonderful Me/Wonderful You (そして桜の時期の…忘れてはいけないボクの想い出♪)
その日は渋谷駅のいつもの場所で、待ちあわせた。
なんどもここで待ちあわせてるにもかかわらず、ボクらは定刻通りには逢えないでいたね。
でも、この日だけは、何故かドンピシャだったのが意外だったよ。
井の頭線に乗って、まだ見頃にはほど遠い桜を楽しもう。
ボクは、ちょっとばかり緊張していることを、分かっていたかい。
園内では桜、そしてボートを楽しむ人でいっぱいだった。
ボクは初春の空気を、体いっぱいに感じていた。
川沿いの桜を楽しみたいと言う、ボクの提案に乗ってくれたね。
中目黒で電車を降り、池尻大橋方面へと歩いて今年のサクラを楽しんだ。
まだ7分咲だったけど、見事な桜だったね。
…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…
目黒川からは旧山手通りを菅刈公園を通って、坂を登った。
この日、ボクの想い出に残る一日の、スタートだった。
西郷山公園に入り、園内の春の息吹を体いっぱいに感じてみよう。
園内を出て旧山手通りを渡ると、ボクたちの舞台があった。
お店は丘の上に建つ洋館、通りから眺めるその造りは圧巻だった。
建物の入り口を通るボクは、王子さま♪
今日だけは、そうさせてもらおう。
建物入り口の正面では、宝石のようなケーキを販売していた。
店内に入ると、映画俳優然とした男性がボクらを迎えいれてくれた。
促されるがままに、ローソクが灯るテーブルに腰を下ろした。
料理は予め決めていたので、飲み物は赤ワインにした。
彼はソムリエ資格を持っていて、飲み物のアドバイスから、その特徴を丁寧に説明してくれた。
ボクには、よくわからなかった。
~Menu B~
○アミューズギュール
○北海道産毛蟹、オーガニックの完熟トマトとグリーンアスパラガスのクレームグラッセ ジュ・ド・ルージュ
○鴨フォアグラのポワレ 香ばしい国産筍とトリュフのジュで
○玄界灘のマナガツオ、アーモンドのロティサリーチキンと春キャベツ アンチョビの香り プチポワのジュで
○ヤリイカとアサリのリゾットを詰めたヴァンデ産鶉のコンフィをフリットにし生姜と木の芽の香り
○子羊~背肉のロティとメルゲーズ~タイムの香るジュで…
○デザート コーヒー、紅茶
○プティフール
2004年産 シャトーグラヴィエール(赤)
何をどのように、口にしたかは忘れてしまった。
ボクの舌が覚えていたのはただ、料理が物語のように流れ…
どの料理も、感動があったことだった。
合わせる飲み物は、料理と一体となっていた。
そして、忘れてはいけないのが、接客としての完璧なサービスだった。
…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…
きっとこの日、ボクにサクラの精霊が、降りてきたに違いない。
キミにボクの好きな曲の一節を贈ろう。
♪♪Where Is the Wonderful Me / Wonderful You ♪♪
(by Brian Wilson / Song : Song For Children )
そしてボクらは、また別の路へと戻った。
2位
1回
2015/11訪問 2015/12/01
雨の降りしきる長谷の街並み…そして窓を通して、見えない海を探した♪
鎌倉から江ノ電に乗って、長谷駅に向かった。
夕方4時の鎌倉駅周辺は、家に帰る観光客でごった返している。
この日はあいにくの天気で、朝から雨が降っていた。
予約した6時までには、まだ時間がある。
傘をさしながら鎌倉駅周辺を散策を楽しむには、荷物があるから不都合だ。
長谷駅を降りる頃になると、さらに雨は強くなった。
歩道の幅員が極めて狭いから、人とすれ違うときは一旦車道に避けなければならない。
傘をさしていたから、尚更歩きづらかった。
ボクはいつの間にか、長谷寺へと歩を進めていた。
辺りは店舗から漏れる明かりと、対向車からの眩(まばゆ)い灯りが、暗い路を仄(ほの)かに照らしている。
この天気にも関わらず、境内では長谷寺を楽しむ客でいっぱいだった。
拝観時間は5時までだったが、今日はリサイタルがあるようで時間は延長されていた。
この後いつ来れるかも知れないので、ノンビリ、ゆっくりと雨の長谷寺を楽しんだ。
さっききた路を戻り、左手に駅を見ながら線路を渡った。
海側に向かって歩いているのだが、雨とモヤで見える筈の海は残念ながら視界には入ってはこない。
変形T字路を右に折れ、直ぐの建物に入った。
階段を上る途中の踊り場にお店の料理があったので、ボクは今日の料理を品定めしていた。
後ろから、ボクの名前を確認する声がした。
振り返ると、30代の明らかにシェフと分かる出で立ちの、優しそうな男性がいた。
時間は、5時半をチョッとばかり廻った頃だった。
料理の支度が出来たからと、彼は入店を促してくれた。
2階にある店内に入ると、店内はビストロ、あるいはトラットリアを想わせた。
泥臭い、ボクの好きなタイレストランの雰囲気は、そこにはない。
直ぐに40代前半の女性が席を促すと同時に、入店に対する感謝のことばで労(ねぎら)ってくれた。
話す口調が穏やかで、その人の育ちがわかる程に上品さを兼ね備えた、まさに美人だった。
ご主人の奥さまと思ったが、その会話のやり取りを聞いていると違うようだった。
窓から外を臨める、海を一望するには申し分のないテーブルに座った。
残念ながら、大きく取られた窓からは、全くと言っていい程に海はみえなかった。
先ずは赤ワインをボトルで、料理は「鶏モモ肉のナムプラー煮」をワインに組み合わせた。
程よく冷えた赤ワインが、テーブルに乗る。
グラスに注ぎ、窓からよく見えない外の景色に目を凝らしてみた。
まだ最初の料理は提供されてはいなかったが、2品目として「豚挽き肉のタイオムレツ」を追加した。
ワインを楽しみ始めてから10分ほどで、最初の料理が提供された。
次の料理が提供されるまでには、さらに10分ほどの時間を要した。
こじんまりとした店内ではあったが、シェフ一人、ホール一人で回しているのだから、時間がかかるのは仕方がないことだろう。
●鶏モモ肉のナムプラー煮
ナムプラーで身がホロホロになるまで、煮込まれていた。
歯を立てなくても、身は柔らかく、そしてほのかに香る香草の匂いが食欲を進めた。
赤ワインとは、相性が良いのは言うまでもない。
●豚挽き肉のタイオムレツ
ふんわりというより、お好み焼きのように丸くて、身は硬めだった。
これに甘めのチリソースを付けて、食べていく。
食べ心地はやはりお好み焼きのようで、チリソースをつけることでアクセントとして、味にメリハリが付いた。
ボトルワインがまだ残っていたので、もうひと品注文しよう。
●自家製タイ東北地方のソーセージ
シェフ自ら作るソーセージは、スパイスと香草とが交互に楽しめた。
アルコールの種類を選ばない、シッカリとした味わいだった。
食べごたえのある、ソーセージだった。
シェフであるご主人と、ホールの女性との会話が心地よい。
お互いを尊敬し、労(いたわ)る気遣いが、聞いている客に安らぎをもたらしてくれた。
この、雨にも関わらず、テーブル数は少ないとはいえ、全ての席が客で埋まった。
シェフと、ホールの女性に礼を告げ、会計を済ませ、雨の降りしきる外へと出た。
傘を開くと、買ったばかりの傘の骨が折れていることに気づいた。
ボクは直ぐに来た江ノ電に乗って、藤沢を目指す。
江ノ電からは、相変わらず海は見えなかった。
3位
1回
2015/01訪問 2015/03/01
約束の時間の前から、ボクは改札口の人の流れを見ていた。
電車が駅に来る音が聞こえるたびに、改札を注視した。
改札口を通る人が丁度途切れたころ、ボクの肩をトントンと軽やかに触れる感覚があった。
渋谷からは不便になった東横線を、ボクたちはヒカリエ側の入り口から入った。
慣れ親しんだ中目黒の改札を出て、中目黒銀座方面に向かった。
見慣れたいつもの街並みだったが、きょろきょろと、自然に辺りを見渡していた。
昔は町の工場(こうば)しかなかった。
目黒川とともに発展した、この街が大好きだった。
ボクとともに年月をかけて、成長していった街だった。
目黒銀座の入り口手前を、コンビニを目印に左手に入った。
直進するとすぐ右手に、本日の一店があった。
口開けの時間であったが、すでに何組かのお客さんは入店しているようだ。
店内に入り予約の名前を告げると、店内隅の道路側の席を促された。
店舗のテラス席を、ビニールシートで覆っているのがわかる。
ボクは、こんな雰囲気ある席が好きだ。
石油ストーブがこちらを向いているから、この寒さでもなんら問題はない。
季節の料理を頼んだ。
そして、適当にワインをボトルで、キミはアルコールを飲めないからソフトドリンクだった。
しばらくして、前菜からの提供となった。
あっさりめの味わいかと思ったが、意外と重めの料理だった。
グラスに入った料理は、見事なまでに美しく、そして味わい深い。
グラスを下げられて程よいタイミングで、白子をメインにしたスープが到着した。
白子からにじみ出たエキスと、・・・ミルクをつかっているんだろうか?
・・・円やかな味わいが口いっぱいに広がった。
次の一皿が届いた。
旬菜をメインにした料理は、一足早い春の香りがする。
メインの魚がとても福よかな味わい。
なんの魚だろう?
お店の方が料理の説明をしてはくれたが、呪文をきいているようで、耳には届かなかった。
魚が何かは別として、素直に味を楽しんでいた。
最後の鴨肉には、驚いた。
パイ包みの豪快なパイと、鴨肉との調和が見事だった。
味わい深く、脂のくどさを全く感じなかった。
こちらは最初から最後まで、ソムリエーヌであり、シェフの奥さまに接客してもらった。
ワインについての薀蓄(うんちく),そして店に関する世間話などをした。
満席の店内にも関わらず、上手に接客をこなしていた。
すべてが、一球入魂の料理だった。
だからなのか前菜からメインに至る料理が、残念ながらぶつかり合ってしまった。
どれもが一生懸命に作られた料理は、重くボクの胃袋に圧(の)し掛かった。
流麗に流れるコース、とまではいなかった。
会計を済ませると忙しい時間にも関わらず、シェフ、それからソムリエーヌの奥さまは、外に出て笑顔で送ってくれた。
素敵なロケート、素敵な接客、そしておいしい料理。。。
何よりも楽しく、ボクたちの食事を演出してくれたことには違いない。
ボクたちはそんな話を交わしながら、30分かけて目黒川沿いを楽しんだ。
4位
1回
2015/12訪問 2015/12/31
修正したら、誤って更新してしまいました。
スルーくださいね。
人生の修正は出来ないのにね(^_-)-☆
(2015年12月再訪)
暮れもオシ迫った日の、一年の〆に使った。
目黒駅で待ち合わせ、ボクらは久しぶりの再会を喜びあった。
権之助坂を下り、目黒新橋を渡ってすぐを右手に折れた。
すぐ脇には暗がりの目黒川が、薄暗がりの中、幅員の広い姿を見せていた。
そして、どんよりとした川の脇には、冬枯れした桜並木が春先の感動のために、今にも花開きそうな力を蓄えているかのように見えた。
区民センター内を通り、山手通りを横断して田道郵便局を目指した。
その目と鼻の先に、今日の目的地となるお店があった。
ボクらの姿を見つけると、笑顔で女性店員が迎え入れてくれた。
お店自体まだ認知されていないせいか、客は一組とさびしい。
出来て間もない素敵な店内の雰囲気、店内から見える街の様子に、同行者は喜んでくれた。
先ずは思い思いの飲み物で、今年一年のお互いを労いあった。
料理の説明を一通り受け、先ずは生牡蠣から頼んだ。
そして赤ワインを、ボトルにスィッチした。
先ずはサービスで「りんごとセロリのポタージュスープ」から提供された。
りんごのホンノリした甘み、セロリのちょっとしたクセのある風味が美味しいポタージュだった。
○自家製フォカッチャ
甘みがホンノリとしていて、オリーブオイルを付けずに、そのまま口にした。
柔らかな食感で、料理を選ばずに口に出来る。
○松島産生牡蠣
松島産の生牡蠣は、身の大きさにまず感動した。
クリーミィーな牡蠣ではなく、むしろスッキリした味わいで、いくつでも飽きずに食べ進められる。
魚、肉、パスタと、バランスよく注文した。
そのどれもが、外れはなく、美味しく食べ進められた。
○カジキマグロのスモークとルッコラ
スモークされたスモークだが、それほど燻製独特の強いクセはない。
見た目、食感はきしめんのようで、とても美味しく口に出来た。
○甲イカのベネッツィア風
コレは、特に美味しかった。
柔らかな甲イカに、イカ墨がまとわり付いて、深みのある味に仕上がった。
残ったイカ墨に、フォカッチャをなすり付けて、口にした。
○トリッパのトマト煮込み
トマトの酸味と柔らかいトリッパの食感が楽しめる。
イタリアンでは、楽しみな料理だ。
○オーストラリア産仔羊のグリル
臭みもほとんどなく、ジューシーかつ旨い。
メインとしても、安心して楽しめた。
〆にはパスタを、それぞれに頼んだ。
○貝類いっぱいのペスカトーレ
貝が、おしげもなく、ゴロンゴロンだ。
貝の旨味が、平うちのパスタに絡み、とても美味しい。
○ペンネアラビアータ
ちょっとばかり、辛味があって硬めに茹であげられている。
これは、ペンネが好きなボクが頼んだ。
トマトベースなのだろうか…
酔っていたから、旨い旨いと食べてしまった。
気が付けば、閉店時間まで居座ってしまった。
その間、お客さんが何人も来ては、それぞれに楽しんで帰っていった。
認知されていなかったと、来た時は思ったが訂正しよう。
帰るまでに、初訪問とは思えない、お客さんが来ては帰った。
今日は口の肥えたツワモノとの食事だった。
満足したようで、一安心した。
さて、口直しのイチゴタルトを口にして、お店を後にした。
店を出るときに、自家製のフォカッチャをいただいた
そこには、若きオーナーシェフがいた。
大好きだったあの店の跡地だから、来るたびに思い出すことになるだろう。
いつかは、その店を超えるかも知れない、36の若きオーナーシェフがそこにはいた。
ボクは冷たい12月の空気に触れながら、目黒駅へと向かった。
(2015年9月初訪問)
ソムリエから急な閉店を聞かされ、店舗(http://tabelog.com/tokyo/A1317/A131701/13093159/)はいつの間にか取り壊されていたから、寂しい想いは払拭(ふっしょく)できなかった。
腹を満たすだけではなく、何時しか心を満たす
そんなボクの、生活の一部となっていた。
家の用事で、ボクは郵便局に寄った。
ボクはノスタルジーカの方を見ると、そこには既に新店があった。
建物は今までとは変わってはいなかったが、店舗をオープンにしたレストランがそこにはあった。
店の外にあったメニューを見たり、外観を眺めたりしていると中から男性が顔を出した。
若いがキリッとした端正な顔立ちで、ボクは今日、今、土曜の昼を楽しみたい…瞬時に、そう思った。
11時半の開店時間と同時に入り、ボクはオープンキッチンと対面するカウンターの一つへと腰を沈める。
午後から急に暑くなってきたが、オープンの店内は心地よく、そして店内からオープンになった外の景色を存分に楽しんだ。
先ずは、前菜からの提供だ。
そして、自家製のフォカッチャが、テーブルに乗った。
フォカッチャをちぎって、そのまま口に入れた。
しっとりとしていて、甘くも塩加減も程良い。
どんな料理にも合う、そんな味わいがする。
自家製のパン、フォカッチャの美味しいイタリアンレストランは、先ずハズレがない。
それが、ボクの持論だ。
前菜の説明を受けた。
ボクは料理には詳しくないから、うんうんと聞くだけだ。
皿に盛りつけられた料理が、美しいのだけは分かった。
先ずは茄子からいただこう。
シッカリと煮詰められ、甘みと酸味がある。
これは、美味しい。
フリットした…何だろう?
揚げパン…ではないな。
青海苔が入って、香ばしく、モッチリとしている。
これは、とても美味しい。グラスワインが無くなったが、今日はこれでガマンしよう。
ハムは自家製ではないだろうけど、美味しい。
三角状にカットされたオムレツは、アッサリしているが秀逸。
そして何の魚だったかな…
パテのような、ひと品だった。
説明を受けたけど、分からない。
フォカッチャに付けてと言われたが、そのまま楽しんだ。
濃厚で、豊潤だ。
パスタはクリームがパスタにシッカリと纏わりつく、クリームタイプのソース。
そして、スズキの味わい、食感を楽しめるひと品となっている。
これは、美味しい♪
感動の連続だった。
何より、美味しく食事を楽しませてくれる雰囲気を、この新店に感じた。
店は先の、オーナーシェフ、気さくな女性、そして若いアシスタントの3人だった。
話を聞くと東山(中目黒)で、2年、その前は六本木でシェフの
経験があるという。
JR目黒駅、そして東急東横線中目黒駅の中間と、決して立地は良くはない。
しかし、その距離を気にしなければ、オススメしたい一店となった。
5位
1回
2015/10訪問 2015/10/25
穏やかで、肌に時折そよぐ風がココちのよい、そんな秋晴れの土曜だった。
…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…
重苦しい空気から、ちょっとばかり開放されたくてボクは外に出た。
そのまま山手通りを,中目黒駅方面へと歩みを進めた
11時をちょっとばかり廻った時間だったから、ゆっくりと散歩を楽しんでいればランチタイムには調度良い時間だろう。
目黒警察を通り越しに見ながら、さらにボクは歩いた。
しばらく歩くと駒沢通りが横に走るから、そのまま横断した。
ここから見える中目黒駅の高架が、ボクは好きな風景なのだった。
蔦やを目印に左に入り、目黒銀座手前の路地を左手に入ろう。
路地へと入ると、さっきまでの空気と一変して、別世界の空気が広がった。
それは静寂とはまた違った、落ち着いた雰囲気がそこにはある。
そしてその空間にあっても、さらに異質な一軒家レストランがあった。
ロッジというにはそれほど洒落た感じではないが、窓から異国情緒豊かな置物がこちらを向いていた。
ボクは半開きになったドアから店内に入り、そのまま空いているテーブルへと腰を下ろした。
30半ばほどの女性店員が、メニューを置きまた奥へと引っ込んだ。
ここはスリランカ料理を扱う、都内でも数少ないレストランのひとつだった。
そして、ランチは夜とは違って、昼はカレーのセット料理を提供する老舗の一店でもある。
2人用テーブルのみの店内は、19人も入れば満席となる・・・
そんなこじんまりとした空間が、落ち着いて料理を楽しめそうだった。
先客は5人、すべておひとり様の客で、みなゆったりとテーブルを占有している。
ボクはランチメニューからマトンカレーセットを注文し、しばし店内の空気を楽しんてみよう。
ランチセットにはサラダ、デザート、そしてその日のカレーがさらにひと品付くお得な料理だった。
店内は壁一面に落ち着いたタペストリーに覆われていて、店舗の雰囲気を醸し出している。
窓一面には現地の置物が、びっしりと並んだ。
まずはサラダが、すぐにカレーとライスが提供された。
米粉を使ったふんわりとしたクレープが、サラダを巻いたひと品。
これに別添えのソースに、付けていただく。
ふんわりとしたクレープの食感、サラダのシャキシャキ感とを楽しめた。
ソースを付けると、味が引き締まった。
マトンカレーは思った以上に、肉がたくさん入っていた。
卓上のスプーンとフォークを取り出し、まずはスプーンでひと口運んだ。
辛さはそれ程には感じない。
反面スパイスがふんだんに効いていて、ふくよかな味わいだった。
マトンは骨は付いていないから、食べやすかった。
肉は柔らかく、スパイスがしっかりと染み込んでいる。
見た目同様、濃厚で豊潤な味わいのある料理だった。
大盛りとしたライスを、スプーンで運んだ。
ちょっとばかり硬めではあるが、ふっくら加減を残した炊き上がりでカレールーには良い塩梅だった。
日替わりカレーは、野菜カレーだった。
小さくカットされた野菜が沢山入ったルーは甘目で、タイのグリーンカレーを思わせた。
甘目ではあったが味が濃厚なので、ライスとの相性はよかった。
その味わいは、マトンカレーと全く対照的なものだった。
最後のデザートは椰子の蜜のヨーグルトで、料理の口直しをした。
ヨーグルトの酸味はそれ程感じないが、むしろ濃厚な椰子の蜜が重なり濃厚なデザートとなった。
…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…
食事を終えても、ボクは暫くその場を離れなかった。
少しでも、この空間に浸っていたかったから。
料理については全く知らなかったが、その外観からいずれ使ってみたいと思っていた。
ランチではあったが、このお店をボクの区切りの店に使わせていただこう。
時計を見ると、すでに1時を廻っていた。
『けだるい日差しの午後』だが、ちょっとばかり気持ちは軽やかになっていた。
6位
1回
2016/06訪問 2016/06/04
(2016年6月再訪)
前回から少しばかり間を置いて、ここの扉を開けた。
店内を扉を通して見ると、30代ほどの男女が券売機で料理を選んでいる。
ボクは店のルールに従い、券売機を使っている客がいるので、店内に入らず外で待った。
ボクが券売機の前に立つと、店外には店のベンチに待ちの客が座った。
そしてベンチに座りきれないものは、ベンチ脇に並んだ。
ボクは特製中華そばのボタンを押し、さらにライスのボタンも押した。
暑い日で喉を潤したかったから、生ビールも追加した。
10人ほどのL字カウンターの中程を促され、12時前の店内は満席となった。
客は男性、女性ひとり客の他、30代位の男女ペアの客が2組料理をすでに楽しんでいる。
頼んだ料理はライスに合わせて、具材の多い特製中華そばにした。
後で気づいたが、前回と変り映えなく同じ注文だった。
10分ほどで、ボクの料理がカウンターに並んだ。
まずはレンゲでスープをひと口、さらにひと口と啜った。
ライスをレンゲで掬(すく)い、頬張った。
滋味深いスープと、ライスの甘みが、口いっぱいに広がった。
生ビールをひと口、グビッと喉の奥へと流しこんだ。
今日は梅雨入り前の、暑い土曜だった。
琥珀色の液体は充分に冷やされていて、生き返る心地よさだ。
12時をちょっとばかり回ったころだったが、ドア越しに外の様子を見た。
店外には、待ち客が10人ほどに膨らんでいた。
特製のトッピングには、とろとろの味玉、ジューシーなチャーシューが2枚、もっちりしたワンタン、メンマが乗った。
どれもが、ライスにはピッタリのつまみだ。
肝心の羽田製麺特製の細ストレート麺は、スープとの絡みは良く、もっちりした食感を楽しめた。
並び客を待たせては悪いので、ジョッキのビールを一気に流し込んで外へ出た。
梅雨入り前の、貴重な太陽が眩(まぶ)しい。
(2015年10月初訪)
久しぶりに、美味しい一杯に出会えた。
大鳥神社から、中目黒方面へと5分ほど山手通りを歩いた。
今日は秋晴れと言うのに、ピッタリの陽気だ。
日射しは暖かく、ボクの全身を包み込んだ。
目黒警察を過ぎて直ぐのところに、和を感じる落ち着いた感じの外観が見えてきた。
扉を滑らせ開けると、カウンターのみの店内では、11時半を廻った時間で、4人の客が料理を楽しんでいる。
入口脇の券売機から左上のメニューに決め、さらにビールを追加した。
ボクは奥から3つ目の空いているカウンターに腰を下ろし、先程購入した食券をカウンター上に置いた。
カウンターは調理場に対面するL字型で、その中では店主と思われる店員が一人、調理に専念していた。
先ず生ビールが、そして5分ちょっとで、料理が提供された。
スープの色濃い、盛り付けの美しい丼だ。
スープには細めのストレート麺が入り、半分にカットされた味玉、チャーシュー2枚、メンマ、海苔が4枚、ワンタンが2つ、それにナルトが彩りを添えた。
先ずは卓上にあるレンゲを取り、スープを啜ってみる。
昔ながらの中華麺にある、鶏ガラ、煮干しスープを、更に一手間懸けた味わいを感じた。
五臓六腑に滲み入る、まさに味わい深いスープだった。
麺を箸で取り、一気に啜った。
サラッとしたスープとの絡みは良く、小麦粉の風味を残した麺との相性と、この上なく良好だ。
半分にカットされた味玉の黄身は、トロトロでオレンジ色だ。
先ず黄身を口にしてみると、出汁の味だろうか、黄身のコクとの按配はほど良く旨い。
チャーシューは、大振りのものが2枚乗っている。
噛むとサッと切れる煮豚で、スープ、麺の脇役として旨味を楽しめる。
ビールとの相性は良く、あればご飯が進みそうだ。
ワンタンは期待していなかったが、印象的なひと品だ。
大振りのものが、2枚入っている。
噛み締めると、肉の旨味、ホノカに感じる調味料が、口いっぱいに料理の旨味を感じた。
メンマは柔らかく、これも皿で追加したらビールが進みそうだ。
単に見た目の良い、トッピングではなかった。
海苔をスープに浸し、磯の風味を楽しんでみよう。
スープ、麺、具、そして店の雰囲気といい、久しぶりに出会った秀逸な一店だった。
中目黒駅からは10分程のロケーションだったが、わざわざこの一杯を目指して来る価値は充分にある。
ボクは店主に、旨い料理を頂けたことへの感謝を伝え、店の外に出た。
目映い程の日射しは、相変わらずボクの体を包んでくれた。
ボクはさっき来た道を、足速に戻った。
山手通りの景色を楽しみながら…
7位
1回
2015/04訪問 2015/04/30
相模原で赤城は、2つの点で有名だ。
料理の盛りが多く、所謂デカ盛りであること。
豚カツなどの揚げ料理が、有名店に負けないくらいの味を楽しませてくれることだ。
残念なことに駅からは遠く、車が無ければ余程の健脚の持ち主でなければ行くのは難しい。
加えて駐車場はあるにはあったが、2,3台分しか完備していないのだった。
たまたま近くで用事があったので、その後に寄った。
駐車場に車を入れて、昭和の匂いがぷんぷんする店内に入った。
店内は狭く、オイリーな匂いが鼻をついた。
11時開店にほぼ間に合ったが、それでもカウンター10人の席には既に6人が腰を落ち着けている。
ボクら2人はL字カウンターの角に座り、メニューから「ロースかつ」を定食で、同行者は「かつカレー」を頼んだ。
時間がかかることを、予め女将さんに告げられた。
ご飯、味噌汁、キャベツのお代わりサービスがある。
皿に富士山盛りにされたキャベツを見て、ボクも同様にお願いした。
20分は待っただろうか、2人の料理が同時に提供された。
その間に外待ちの椅子には、10人程になっていた。
駐車場がなくて、確認しにくる客もいた。
年齢幅は広く、20代位から、上は70近い女性2人も待っていた。
ボクは料理に自家製のソースを回し、口に運んだ。
甘い肉汁が口いっぱいに広がる。
噛むたびに広がる肉汁だったが、フィレ肉の食感をも感じた。
これに甘めのソースが、肉の旨味を引き出すのだった。
肉は厚みがあって、食べ応えがあった。
付け合せのマカロニサラダは、甘めで、濃厚、ねっとりしたもの。
呑みの場にあれば、間違いなく頼むだろう。
汁ものは、ワカメ、葱、豆腐の味噌汁。
ボクは豚カツには、豚汁派だ。
それでも、この味噌汁は旨いと思う。
食事をしているお客さんが、口々に味噌汁が美味しいと言っていたのは事実だ。
驚いたのは、同行者のかつカレーだった。
カレーライスと豚カツは分かれて乗っている。
カレーライスは優に3人前の量があって、女性には到底食べ切れそうにはなかった。
ボクのロース肉よりも厚みはなく、小振りではあった。
カツを味わってみると、ボクのロースよりもジューシー、そして肉の旨味、甘みがあった。
同行者は、ボクのロースカツより好みだと言う。
カレーライスは、昔ながらの洋食屋さんの味わい。
豚のスライス肉、ジャガイモ、人参、玉ねぎが彩りを添えた。
素直に美味かった。
美食家、グルメ派には薦められないが、美味しいものを食べるガッツリ系グルメさんには、是非来てもらいたい。
ボクは、自他ともに認める旨いもの好き、大食いグルメだからね♪
8位
1回
2015/02訪問 2015/02/21
ボクの通った小学校からは、かなり近いところにある。
今日は久しぶりに暖かったが、夕暮れ時になると急に冷えた。
ボクは山手線目黒駅で改札を出ると、すぐさまネックウォーマーを着けた。
権之助坂を左手の歩道から暫く歩いて、大鳥神社交差点で信号が青に変わるのを待つ。
さらに歩き、多摩大学付属の中高の脇を歩いた。
この辺りには目黒通りを挟んで、家具、小物を置く落ち着いた店舗がある。
さらに歩いて、油面の交差点を左手に折れた。
住宅地の色合いが、一気に広がった。
6時を既に廻った時刻の景色を、ボクは目を右、左へと動かし記憶の隅に留めていた。
さらに5分位歩くと、道路の幅員が狭くなった。
そして、仄かに「蕎麦」の文字が浮かんでいた。
紫仙庵
5年前に使えなかったからの、リベンジかな…
入り口から、薄暗がりの素敵な店内までへの、短い間の雰囲気を楽しんだ。
扉を開ける前に奥の庭を眺めたが、残念ながらよくは見えなかった。
扉を開けると、身体が引き締まった、筋肉質のご主人がいた。
名前を告げると店内への入店を促され、花番さんへと客であるボクを受け継がれた。
ご高齢の花番さんがひとり…
最後まで、優しく、そして、付かず離れず接客した。
店内は、4人テーブルが2つ、そして小上がりのテーブルは8人だ。
ボクの前に、小上がりでは女性が2人料理を楽しんでいたが、ボクの入店直後、中年2人の男女が来て席は埋まった。
先ずは瓶ビールと蕎麦がき、出汁巻き玉子をお願いした。
時間がかかる料理だとのことだったので、こちらオリジナルで限定の「クリームチーズ大吟醸粕漬け」を追加した。
先ずは、チーズが届いた。
小振りで4切れのチーズは、ねっとりして粕漬けの味わいが漂う。
小さいから、大切に大切に、ビールで流し込んだ。
15分ほどで、待望の蕎麦がきは到着した。
その頃には、チーズは全て無くなっていた。
海苔と綺麗に擦り下ろされた山葵が付く。
醤油を、刺しチョコに注ぐ。
蕎麦がきには、超辛口の日本酒を合わせた。
プラスプーンで、蕎麦がきをこそげ落として醤油に付け口に運ぶ。
コレを繰り返した。
もっちりしていて、ちょっとばかり甘みをじんわりと感じた。
山葵醤油に付けることで、甘みと醤油、そして山葵のツンとくる芳醇さを感じた。
超大辛口の日本酒らいふく(茨城県)は、うってつけの組み合わせだった。
暫くして大振りの、出汁巻き玉子が提供された。
黄金色の料理には、大根おろしと楽しめる。
おろしに醤油を垂らし、大き目の料理に付けて口にした。
既に日本酒は大辛口のあき開き水神(岩手県)にスイッチしていた。
料理はホンノリした甘さで、出汁の旨味がじんわりとくる。
おろし醤油に付けることで、味は引き締まり、料理本来の旨味は際立った。
これに水神との相性は、すこぶる良かった。
このあと、板わさ、カタクチいわしを楽しんだ。
残っている水神と、楽しめた。
〆の蕎麦は「鴨汁せいろ」で、蕎麦は3枚にした。
気を利かせたご主人は、蕎麦を変えてくれた。
旨味、鴨からのコクが存分に伝わる。
蕎麦は違うのがわかったが、何がどうなのかはわからない。
8時半終了だったが、次から次へとお客さまが来ては、断られていた。
一回に、3組だけしか利用できない空間。
至近の武蔵小山、不動前といった駅からは離れている。
しかし使えた時には、気持ちが豊かになった。
会計を済ませると、ご主人は表情を変えずにボクに話しかけた。
「よく、召し上がりましたね。昨日テレビに出て今日の昼は大変だったんですよ。」
料理、雰囲気、接客と、充分に楽しむことができた。
店を出て、さっき来た道を戻る。
空を見ると、淡く星が瞬(またた)いている。
ちっぽけな自分でも、頑張れば楽しい時間を過ごせるんだよな。
そんな気持ちで、歩みを進めた。
9位
1回
2015/05訪問 2015/05/11
その日ボクは楽みにしている食事会があった。
仕事上の接点は、全くない。
ただ共通して言えたのは、皆、「旨いもの」が好き…だった。
6時45分に東急東横線中目黒駅を山手通り側改札での待ち合わせだ。
ボクは中目黒へは、JR山手線目黒駅から歩いた。
時間は6時10分
権之助坂を降り、目黒新橋を渡って川沿いにゆっくりと歩いた。
桜の木々は今では、新緑の季節となっていた。
待ち合わせ場所へと近づくにつれ、陽は暮れていった。
「すでに着いてます。」の連絡が入り、先ずは紅一点のIK−ママと会う。
満面の笑顔の彼女は、太陽のように明るい。
そして、T酒氏は2年ぶりの再会だった。
穏やかであり、常に紳士然とした方だ。
最後にムスッと来たのが、S大氏。
彼とはボクがここに関わって、最初に会った。
ケンカばかりだが、お互い会わないわけにはいかない仲だった。
久しぶりでも、会ってしまえば旧知の仲だ。
さて、役者は揃った。
本日の一店へと、向かうとしよう。
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目黒銀座をほぼ最後まで歩いた左てに、赤茶色したビストロがあった。
店内に入ると、まずテーブルがあり、段差があってカウンター、調理場へと続いた。
店内はかなり狭く、段差際のテーブルだったせいもあり、座り心地は芳しくない。
あれこれ迷いそうだったが料理はコースにせず、アラカルトとした。
ワインに詳しいT酒氏に、飲み物の流れを任せた。
本日のオススメ、定番料理とあって迷うが、こちらは料理に詳しいS大氏に注文を委ねた。
先ずはスパークリングワインとジンジャエールとで、乾杯❣
前菜に合わせ、先ずは甘口のスパークリングワインにした。
甘口ではあったが、飲み進めてもくどさは感じなかった。
前菜に辿り着く前に、2本目のワインをミディアムボディーで注文♪
○本日の前菜盛り合わせ
アバジュレ、ラタティーユ、チキンの胸肉、しめじのソテー
○水タコとフルーツトマトのマリネ
蛍いかが、宝物みたいに隠れていた。
大きな皿に、2人分の盛り付けとなった。
見事な盛り付けで、さながら花壇のような華やかさがあった。
○フランス産ホワイトアスパラのボイル
ホワイトアスパラの味を損なうことなくソースでまとめられ、ホワイトアスパラの旬を楽しめた。
○鎌倉野菜のサラダ
キュウリ、トマト、水茄子、ルッコラ、グリーンアスパラ
圧巻は生の水茄子の提供だった。
この瑞々しさと、癖のない味には驚いた。
3本目の赤ワインはフルボディーにスィッチした。
○牛のトリッパとレンズ豆のトマトソース煮
弾力ある臭みのないモツ肉が、トマトソースに絡まり、豊かな味わいとなった。
ハチの巣だろうか?
想像通りの旨味を、感じた。
最後はスイーツで、締め括ろう。
○ブリュレ
焦げたカラメルが、非常に後を引く。
○イチゴのマリネのアイスクリーム添え
ハチミツで味を整え、バルサミコで見た目、風味を添えた。
○ガトーショコラのアイスクリーム添え
モサっとした食感だが、苦味があってよい。
とても楽しい会食だった。
狭い店内ではあったが、それだけ密着度が増すというものだ。
若いホール担当者の接客も、良かった。
季節柄、ジビエ料理はなかったが、それでも充分に料理を堪能できた。
ご馳走さま♪
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10位
1回
2015/12訪問 2015/12/13
今宵は日頃仲良くさせていただいている、洋食屋(http://tabelog.com/tokyo/A1316/A131601/13013942/)さんご夫婦との忘年会だ。
ボクは大鳥神社交差点から、歩いて駅へと向かった。
「そろそろクリスマスのシーズンだな。」
・・・なんて思いながら、待ち合わせ時間の7時に遅れないよう足早に歩いた。
時間丁度に山手通り側の改札に着いたが、2人の姿は見えない。
ボクはスマフォでラインを打って、到着したことを知らせた。
2人は横断歩道の向こうで、大きく手を振っているの分かった。
目黒川を渡り、大衆居酒屋として有名な大衆割烹 藤八を右手に見ながら、なだらかな坂道を代官山方面へとちょっとばかり歩いた。
ちょっとばかり洒落た建物を、外階段から上った2階に本日の1店があった。
同じフロアーには以前使って印象的なタイ料理店、クルン・サイアム 中目黒店がある。
店の入り口には、予約により本日満席との札が掛かっていた。
入り口で洒落たグラスの男性スタッフに、名前を告げて店内へと入った。
店内はこじんまりとした良い雰囲気で、30代前後女性グループ客が多かった。
ボクらが座って、テーブルの全てが塞がった。
こじんまりとしてはいるが賑やかな雰囲気ではなく、かと云って静かな雰囲気でもない。
隣通しの会話がBGMのように、適度に耳に入ってきた。
促されるがままに奥のテーブル席に腰を下ろし、先ずは生ビールを注文して今年1年の労(ねぎら)いの言葉を交わした。
メニューをじっくり眺めて、ボトルワインを赤白、同時に頼み、次々と料理を注文した。
テーブルに乗り切るかだけが、心配なほど注文してしまった。
会話は料理のこと、家族のこと、仕事のことなどと、お店では普段なかなか話せないことが話せた。
ところで、このご夫婦は、とても仲が良いと思う。
元フレンチシェフの奥さんが、一見夫婦の主導を取っているかのようだ。
奥さんに従う年下のご主人が、実は舵取りをしているのが分かる。
夫婦としての理想形が、この夫婦にはあると感じていた。
注文した料理が、適度な間を置いてテーブルに並んだ。
アラカルトで頼んだ料理の提供の順番、間合いを考慮してくれた店側の配慮だった。
あらためてワインで、乾杯♪
ボクは赤、ご夫婦は白だった。
先ずはポテトサラダからの提供だ。
今日の料理はどれもが美味しく、会話の潤滑油となった。
○登別産本ズワイガニとメークインのポテトサラダ
クリームのようで、口に入れると溶けてしまう。
濃厚なクリームとズワイガニの旨みが、口いっぱいに広がった。
○鹿児島県産天然ぶりのカルパッチョ(柚子胡椒風味のヴィネグレットソース)
脂がしっかりと乗って、ぶりの味を楽しめる。
柚子胡椒風味なので、さっぱりとした味わいに仕上がっている。
○北海道産鮭白子のフリット
ふわっと揚げられた鮭の白子は、噛みしめるごとに濃厚な旨みが楽しめた。
この食感、旨みは舌に残る味わいの深みを感じる。
○グラタン・トー・フィノワ(ポテトグラタン)
よくあるポテトグラタンだが、こうしたよくある普通の料理に、店の特徴が出ると思う。
ポテト、ソース、チーズにこだわりがあるようだ。
濃厚な味には違いないが、くどさは感じない。
むしろポテトの食感、反面なめらかなチーズとの舌触りを楽しめる。
○柔らかく煮込んだ和牛すね肉のグリル
ワインソースで溶けるほどに、柔らかく煮込まれた牛すね肉。
ワインの苦味、牛の旨みが存分に楽しめた。
バゲットがあれば、ソースに付けて楽しみたいところだった。
○サービスのパン
イカスミだろうか。。。
ふっくら柔らか、バゲットのように硬い・・・この中間の食感だ。
ボールのようにまん丸で、苦味が口直しに良かった。
最後にパスタ2種を食べ比べて楽しもう。
対照的なパスタの注文となった。
○スルメイカと明太子と生のりほうれん草のパスタ
スルメイカのこりこりとした弾力、明太子のちょっとした苦味と辛さ、磯の香り漂う生のり、これにほうれん草が添えられていた。
オイリーでありながら、意外とさっぱりと食べ進められた。
○大粒アサリのトマトソース~ボンゴレロッソ
濃厚なトマトソースが、パスタにまとわりつく。
大粒のアサリの旨みとボンゴレのパスタが美味しくコラボした。
お店の雰囲気、料理、スタッフのサービスの全て、満足いく楽しい時間を作ってくれた。
10時をすでに廻っていたが、店内はまだ客で活気に満ちていた。
会計を済ませ外に出ると、先のスタッフがボクらを見送ってくれた。
二言、三言会話を交わし、階段を下りた。
12月ではあったが、まだそれ程寒くはなかった。
むしろ冷たい夜風が、ちょっとばかり酔った顔を引き締めてくれた。
中目黒はこの時間でも、人がいっぱいいて活気に満ちている。
自分にとって、良いお店の条件とは一体なんだろう?
そんなことを振り返りながら、2015年訪問したレストランから選択してみた。
日頃使っている、例えば『目黒三ツ星食堂』、『牛すじカレー 小さなカレー屋』、『ラーメン 学』は外して新規訪問店に絞ってみた。
この3店に共通して言えることは、必ず『①安くて、②量もそこそこあって、なおかつ③おいしいもの』を気取らず提供してくれたことだろう。
これに価格以上のサービスを提供し、寛いで食事をさせてくれる雰囲気を大切にするレストランこそが、ボクは一流だと思う。
最高の店は、偶然にできるわけではない。
それは日々の努力、すなわち、料理はもちろん、接客、雰囲気といった細やかなサービスを日々研究しているからこそ一流なのだ。
今回選んだレストランは少なからず、そんなボクの食事を少なからず満足させてくれた。
今後もベストレストランは、増え続けることになるだろう。