レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2018/03訪問 2018/03/27
すでに評価の定まったお店に、あらためて評価できるほどの力量は、あいにくボクは持ち合わせてはいない。
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その日3時まで、職場がらみでの飲食をしていた。
飲食が好きなボクは、その日、10年来行きたいと思った店に行こうと思った。店の前まで来ると、店舗そばに、かなりの並びがあるのが視界に入ってしまった。ボクは店の看板を確認した上で、その日の夕飯を急きょ変えた。
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開店時間は5時30分…
時計はまだ、4時40分ほどだ。
すでに20人近くの並びだったが、ボクはそれに従った。
列の最後尾について、ボクはしばらくボっとして並んだ。
背中に感じる駅舎からの電車の音を聞いたり、前後の客の会話を聞くでなしに聞いた。
列について30分ほど経った頃、店内から女性店員が出て来た。女性はプラ製のブックレットを数冊、適当な間隔で並ぶ客へと貸与した。
ブックレットが前に並ぶ年配の夫婦から回され、それを食い入るように見入った。
開くと中はファイルになっていて、使用している肉について事細かに解説されている。
並んでいる際に、料理を決め注文した。
ひとり並ぶ時間は退屈だったが、幸いなことにその夫婦が話し掛けてきた。高知から観光で来た初老の夫婦は、知人の勧めでこの列に並んだようだった。
開店時間になり、一巡で店内へと入った。店内へと伸びる階段は、その先に楽園に繋がっているようで、何か神聖なキモチになった。
店内に入ると左側はテーブル席、右手のカウンターは調理場のすぐ前だった。
一人客のボクは必然、カウンター奥から二つ目の席を促された。
カウンター席は調理場の様子がよく見えた。
店内にいる客は一斉に入ったので、まだ誰も料理は提供されていない。しかし、調理の様子を見ていると長い待ち時間も退屈しないで済んだ。
調理場には、男性3人、女性3人が、それぞれの持ち場で仕事をこなしている。
男性は調理、調理補助、そして女性は配膳、会計をと役割分担されていた。
フライヤーで揚げをしている端正な顔立ちの男性が、どうやら店主のようだ。
幸いにも、ボクは店主の目の前で、調理するパフォーマンスを見る機会に恵まれた。
揚げ上がる料理を見ると、キャベツの色に近く、皿に置くと料理として同化した。
料理を提供するとき、客が食事を終えたとき、帰る時、客と何かしら関わるときは、必ず店員全員が感謝の言葉を口にした。
その言葉を耳にする度、ボクは子どもの頃親から褒められたときの記憶が甦った。
席に腰を下ろしてから30分ほどして、料理はカウンターへと配膳された。
トレーに乗った主役の"雪室熟成豚特ロースカツ"は、250gというボリュームを感じさせない。
料理の衣は白色に近く、馬に例えるなら、白馬をイメージした。
低温で時間を掛けて肉に熱を加える、特徴ある調理方法の成果が窺える。
ひと切れ、まずテーブルの岩塩を振り口にした。
衣はまるで粉雪のような舌触りで、豚カツの衣とは一線を引く印象だった。
ロース肉は噛みしめる度に、肉汁が口いっぱいに広がった。脂に重さはなく、むしろ軽さを感じる。
厚切りにカットされた肉そのものは、ダイナミックなほどに食べごたえがあり楽しめる。
料理は途中、やはり卓上のオリジナルのソースに変えた。適度に甘めなソースで、料理の印象は変わった。
豚カツに合わせる汁ものは、成蔵では"豚汁"だった。
ひと口啜ると、アッサリ目で意表を突かれた。実は濃厚で肉片の存在を感じる豚汁が好きだった。
とは言え、この豚汁こそが、このロースカツに相応しい印象を受けた。
トレーには他に"香の物"、"ゴボウと人参のきんぴら"、"ワカメの酢の物"が乗った。
いずれも、箸休めにはちょうど良いひと品だ。
ボクは料理を食べ終え、カウンター越しに感謝のキモチを込めて店主にお礼の言葉を告げた。
優良店と言われるお店に共通する条件は、幾つかあると常々あると感じる。
成蔵に言えるひとつとして、食に強い"ホスピタリティー"を感じた。
従業員同士の協力体制、そして従業員同士の仕事を通じた仲の良さが充分に伝わった。
美味しい料理を、美味しく食べさせてくれる雰囲気は抜群だった。
2位
1回
2018/10訪問 2018/11/04
キラーカンの店 居酒屋カンちゃんを出る頃には、雨は本格的に降りだしていた。大久保通りを渡り、駅とは反対の、明治通り方面へと暫(しばら)く歩いた。
最近は陽が沈むのが早くなったが、雲がべったり空を覆(おお)っていたこともあり、辺りは灯(あか)りの届かない路地裏はさらに真っ暗だった。
新大久保駅から離れると、次第に人混みはなくなって歩きやすいのが傘をさす身には助かる。
大久保通り添いの雑居ビルの地下を階段で下りると、今日の目的地があった。通路側からガラス越しに店内を見ると、狭い店内は既に満席だった。テーブルとテーブルの間隔が狭いこともあって、外から見る店内の雰囲気は息苦しさすら感じた。
それでも店内の客は、むしろ"それ"を楽しんでいるかのように、それぞれに会話を楽しんでいた。
金曜の夜は、予約なしでは利用できないほどの盛況だった。
予約名を告げ店内へと入ると、本日の仲間ふたりが既に待っていてくれた。
そして、5人での食事会がスタートした。
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タイレストラン"バーンタム"を統括するシェフ、タム氏はタイ料理に興味がある方ならこの名前を一度は聞いたことがあるかも知れない。
フレンチシェフの父を持つ、恵まれた家庭に育ち、若くしてホテルのレストランで飲食業に関わった。
来日はまだ浅かったが、何店舗かのタイレストランにシェフとして迎え入れられた。タム氏が関わったレストランは、次々と人気店となった。そのいずれも長くは続かず、タム氏は店舗を転々とした。
タイ料理好事家はタム氏の動向を追い、今どのタイレストランに居るかが話題となった。
ゆえに"伝説のシェフ"、さらには"さすらいのシェフ"と呼ばれるようになっていた。
そして2016年8月、ついに"タムの家"と名付けた自分の店を構えることとなった。
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テーブルに備えられた厚みあるメニューは写真入りで、飲物、料理と、それぞれに分かれている。
料理は 壁にもあって、100種類はあるのではないかと思うほどの品数に圧倒された。
コースは無いので、アットランダムに皆が好きそうな料理から選んでいこう。
料理を選ぶのはこの品数で迷ったが、それも楽しいひとときだった。
◯ソムタム
まずはサラダからのスタート。パパイアが千切りされたサラダは甘酸っぱく、このあとの料理につなげてくれるアイドリングだった。
◯味つきローストチキンタイ風 ガイヤーン
タイ風の味付けが、鶏肉にはしっくりと馴染んだ。かなり迫力ある見た目が、楽しくなる。
◯ワタリカニの卵和え炒め (プーパッポンカリー)のを"ソフトシェル"での注文。
柔らかな食感、そしてカレー風味の味わいが料理をまとめあげる。理屈抜きの美味しさだった。
◯牡蛎のオイスター炒め
パクチーが乗ることで、牡蠣はエスニック寄りの味になった。ソースと牡蠣との美味しさが見事に伝わる。牡蠣の柔らかな食感が、さらに味わいを豊かにしてくれた。
◯エビの揚げ物
大きな海老が、見た目華やかだった。
噛みしめると、せんべいのように頭から尻尾まで余すところなく楽しめた。
◯トムヤムクン
タイ料理の代表的料理。この味で、その店の実力が計れると思っている。特徴ある鍋での提供で、タイ料理の醍醐味が一気に伝わった。
ほんのりと辛みが立ち、甘酸っぱい味わいでタイ気分を楽しめた。
魚介系の旨味がたっぷりで、最後まで飽きさせることはなかった。
◯カオソーイ 揚げ麺のせ中華麺
ふたつの麺を、ひとつにまとめあげて仕上げている画期的な麺料理だった。
味つきの麺に、パリっとした揚げ麺は、食感の良さを比較できる。旨みベースがあるからこその、麺の食べ比べだろう。
◯炒飯カニ入り
ふんわりとした食感のご飯が楽しめた。日本で言う副菜ありきでは良いが、単品としては凡庸(ぼんよう)かもしれない。それでもあっさりとした炒飯は、他の料理の味をジャマすることはなかった。
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今となっては、死語になったルールがある…
"70メートルの法則"を、ご存知だろうか。
人との付き合い、恋愛は"行動範囲の半径70メートル"に限られ発展する理屈だ。
今は幸いにしてコンピューター技術の進歩で、このルールは無くなってしまった。
今日の5人は、このルールには少なくとも当てはまらないだろう。そんな中で出会えた縁を、ボクは大切に育んでいきたい。
東北の震災では、一度は止めようと思ったレビューだった。人が不幸でありながら、幸せな"自慢"は相応しくない。そう思い、レビューは紆余曲折したこともあった。
1200切り番レビューは、この"伝説のシェフ"に捧げよう♪
ボクも含め、皆に幸あれ!
3位
1回
2018/06訪問 2018/08/31
今にも泣き出しそうな空だった。風が強く、雨が降ったら傘はさせないかも知れない。
今日は久しぶりに会う友人と、前々から行ってみたいと思っていた店を予約していた。
目抜通りを抜け、路地に入ると、不思議なくらい人は歩いていない。しばらく歩くと、見覚えのある店舗が視界に入った。
そう、そこは『ビストロ間』の生まれ変わりだった。今日のふたりの会話の演出は、ここで楽しませて貰おう。
予約名を告げ、ボクらはあらかじめ用意されていたカウンター隅へと腰を沈めた。
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ディナーは1種類のコースのみ。料理により料金をプラスして2、3種類からプリフィクスで選んでいく。
まずは、料理に合わせて飲物を決めよう。
飲み物はピノノワール100%の赤ワイン、"フランツ・ケラー"をグラスにした。
○アミューズ
"フォアグラのエクレア"
ムース状のフォアグラをシュー皮でつつんだ。ひと口でなくなるほどのエクレアは、フルーツの淡い酸味を感じた。
アミューズから、流水が流れるかのように料理は提供さる、さざ波が引くように皿は下げられていった。
○スペシャリテ
"野菜のパフェ"
スイーツと料理を兼ね備えたスペシャルテ。品数をたっぷりと浅利のジュレは、ゼリー状の食感が舌にまとわりついた。新玉ねぎのムースでは、ちょっとした玉ねぎの食感が楽しめた。味わいに個性的なアクセントを付けたのが、川魚の鱒だ。個性ある魚だが、不思議とパフェにしっくりとした。アイスはグリーンピースで、甘味とほんのりとした塩気を感じる。
○パン
"全粒粉のパン・ブリオッシュ"を、 "レモンバタ ー"で楽しんだ。
○前菜
"フォアグラのポワレ"
ねっとりとしたフォアグラにはキャラメルソースが、脇を固めた。
"豚のラグー"
泡をまとった"豚のラグーが見た目が印象的だった。泡にはほのかな香りのマジックを感じる。 レンズ豆のスープ"
○メインディッシュ
"鴨のロティ"
弾力ある胸肉で、噛みしめるごとに肉汁が口にひろがる。ソースが良い脇役だった。
○お米料理
"枝豆のご飯"
桜海老・あおさ海苔・ホンビノス貝を使用し、海の香りが楽しめた。和でありながら、洋の味わいすら感じた。洋風の酒蒸しスープをかけると、全く違った味を楽しめる。
○デザート またはチーズ盛合せ
"チーズ盛合せ"
各種チーズの食べ比べ。あらためて、飲物が欲しくなった。
"野菜パフェ"は、『ビストロ間』のトレードマークとだったことを思い出した。"ここ"との違いは、カジュアリティの"差"かも知れない。
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外に出ると、相変わらず風は強かった。でもなんとか、雨は降らずに持ちこたえている。
お腹の隙間は満たされたが、心のそれはまだまだ充分には満たされていない。
せっかく会ったのだから、もう少し話をしよう。
"そう"目で話ながら、ボクらは駅へと歩いた。
4位
1回
2018/11訪問 2018/11/25
客が店を育て、店が客を育てる… 大衆酒場の理想的あり方を感じた♪
京浜急行終着駅の三崎口でバスを降り、電車に乗って発車を待った。
京急久里浜駅で降り、改札口を出て5分ほど歩く。京急とJRとは構内ではつながっていないから、一旦改札口を出なければならない。
JR横須賀線の改札口に入ると、電車が来たところで、ボクは慌てて階段を駆け上り、そして階段を踏み外さないよう注意して下りた。間一髪、電車へ飛び乗ったところで、扉は閉まった。
1時間ほど電車に揺られ、目的地ふた駅手前の鎌倉からは乗客が一気に乗り込んだ。空(す)いていた電車は一気に寿司詰めのような状況になった。昨年もそうだったが、この時季の鎌倉は紅葉を楽しむ行楽客で賑わった。
そして、目的地の大船駅では、一斉に乗客が降りた。ここでは、多くの乗客が乗り降りした。乗降客が多い、JR東海道本線の接続駅だったからだ。
陽が少しばかり下がり、辺りはさっきより暗くなった。改札口を出て急ぎ足で入り口まで来ると、残念ながら拝観は16時20分に終了とあった。
幼少の頃、父親に何も分からずに連れてきて貰った大船観音…
ボクは亡き父との思い出を、一瞬ながらに思い出した。おそらく50年ぶりの大船だった。遠目に見る観音さまの顔立ちは、優しく、そして凛々(りり)しかった。そして今見る観音さまも、昔と変わらずに目を瞑(つぶ)り、ボクを見ている…ような気がした。
ボクは見知らぬ街を、少しばかり散策することにした。最近は知らない街に来たときは飲食店を通して、その街のことを楽しむことにしている。
同じ道を何度も行ったり来たりして、ちょっとした路地へと入った。気になる看板が視界に入ったので、引き返し店内を覗いた。
小さな店舗の小さなカウンターに、ぎっしりと客が立っているのが見て取れた。
入口の処で入店を躊躇(ためら)っていると、歳かさの行った女性が奥のカウンターへと促してくれた。店の関係者のようだが、その女性は会計を済ませるまでに1度顔を出したきりで、その間は店にいることはなかった。
飲み物はメニューから"ホッピーセット(黒)"に、料理は"プレーンおむれつ"、"牛すじの旨煮"にした。
料理を頼んだ後に、壁にあるメニューをあらためて眺めた。料理、飲み物のいずれも、驚くほどに値付けが安価だった。
ホッピー、瓶ビールは入口脇の冷蔵庫から自分で取り出し、自己申告して注文する。ちなみに"白"は右、"黒"は左に並べてあると告げられた。焼酎は選べたので"金宮"にした。
L字カウンター前は小ぢんまりとした調理場で、中には60代後半、50代半ばの女性がふたり、調理をこなしている。
ボクの注文を受けると、すぐに"オムレツ"を作り始めた。そして、熱々の鍋のひとつから、"牛すじの旨煮"を掬った。
"プレーンオムレツ"はほんのりとした塩加減なので、卓上にある醤油を回して味を整えた。本来ならマヨネーズが欲しいところだったが、一見客なので諦めた。
"牛すじの旨煮"は甘辛くて、飲み物が進む味わい。値段から小さい器で提供されると思っていたが、ちゃんと一人前の量だった。
おでんがあるから、注文した。"牛すじ"、"ちくわぶ"、"しらたき"にしよう。薄味の出汁が具に染み込み、家庭的な味と感じた。
結局ホッピーは進み、追加として中は"金宮焼酎"で3回お代わりした。
8人立ち、すでに満卓のカウンター隅には、常連客らしい男性3人が楽しんでいる。会話は穏やかで、他のひとり客の楽しみのジャマをすることはない。
ひとりの客は、店内に流れるテレビの相撲を見たり、スマートフォンを眺めたりと、自分だけの世界を楽しんでいるようだ。
ひとりの老人が入り、その空気は一瞬にして崩れた。すでに飲んで酩酊(めいてい)しているにも関わらず、飲み物を"無言で"頼んだ。
おそらく、飲みものは"いつも"決まっているのだろう。
調理場の女性…女将と思われる女性…が飲まないよう指南したが、結局はアルコールを楽しんだ。
ボクが帰るまで、ご老人は一言もしゃべらなかった。ただ、何故か手を叩いている。
常連さんは、優しく老人を柔らかく嗜(たしな)め、店の雰囲気を変えないよう努めているようだった。
ホッピーが空になっていた。
ボクは、帰りはどの経路で帰るか考えた。
勘定を済ませ、トートバックの中を外の喫煙スペースで直した。
常連の3人がボクのことを、話題にしているのが聞こえた。概(おおむ)ね、常連さんにとってのボクは"合格"の一見だったようだ。
ボクが調理場女性ふたりへの会話を、聞いていたからなのだろう。
一度も会話をしていなかったのに、帰り際に常連さんが挨拶してくれたのを電車の中で思い出した。
5位
1回
2018/08訪問 2018/09/08
肉汁に特化する、腰の強いうどんを特徴とした。 武蔵野うどんほどの剛麺ではないが、歯を押し返すほどの弾力がありダイナミックなうどん、それに肉汁が絡まり、個性ある料理へと昇華した。
今日は休暇を取り、家族を病院へと連れて行った。診察が終わる頃には、ちょうど昼どきの時間だ。車でしか行けない、相模原で気になっていた店に、ふたりで昼を楽しむことにした。
国道16号から入り、宮下(みやしも)を橋本方面へ行けばいいんだったな。カーナビはないから、いつも車は地図に頼るアナログ走行だった。
暫く車を走らせると、左手に"それ"と分かる看板が目に入った。駐車場は店舗前にあることをあらかじめ確認していたから、残り3台分のひとつに停められた。店舗脇の壁面にある写真入りメニューを見て、それぞれに口にしたい料理を決めた。
店内に入ると、にこやかに若い女性店員が迎え入れてくれた。券売機メニューが多いので悩んでいると、気付いてくれたようで丁寧に説明してくれたのが印象的だった。
そのまま食券を渡し、壁に対面する形のカウンター隅の席に促され座った。足元には、ちょっとした荷物が置ける籠が用意されていた。
あらためて振り返り店内を眺めてみよう。10人ほど座れるカウンターの他に、テーブル席が余裕を持って配置されている。入口右手がオープンになった調理場があり、店主であろう男性、そして女性が仕事をこなしていた。ホールでは先の若い女性ひとりがあたっている。
夏休みとあって家族連れが多いが、昼の休憩時間であろう作業着の男性客もチラホラいた。
○肉汁うどん中盛り、温玉、ねぎ増し、ノンアル・ビール(five)
○"冷肉うどん小盛り"、"かき揚げ"(連れ)
提供されたうどんを見ると、違いはボリューム、そしてトッピングだけだった。つまりボクの料理は肉汁うどんではなく、冷肉うどんが提供されてしまった。
料理が提供された時点で、先の若い女性店員に注文した料理の確認してもらった。彼女は調理場に戻り確認して、料理の提供に間違いはなかったことを伝えた。
しかし、彼女自身解(げ)せないと思ったのか、ボクの撮った"食券の写真"を見せて欲しいと提案した。
冷肉うどん(中盛り)
"うどん"は歯を押し返すほどの弾力、腰の強さを感じる。麺は武蔵野うどんほどには際立ってはいないが、それでも讃岐うどんより太い。腰の強さを硬茹でに頼る店もあるが、麺は芯を残さず硬く締まった食感で、絶妙な"茹でのスキル"を感じた。
"出汁"はねぎの甘味、豚バラ肉からの旨味が楽しめる。旨味、コク、醤油の返し、そして出汁のバランスは絶妙だった。自家製うどんには、ぴったりと計算された出汁だと分かる。
豚バラ肉は、予想を上回る味わいではない。しかし肉の食感はもちろん、"うどん"と"出汁"をつなぐ役割は充分に生きている。出汁に"ねぎ"とは違った甘味、旨味で料理を支えた。
"温玉"を合わせたことで、出汁に玉子の円やかさが加わった。
"ねぎ増し"にしたことで、見た目はさらに華やかになった。ねぎの食感、薬味としての名脇役だ。
店主の奥さまだろうか…
若い女性店員とともに、わざわざ調理場を出てカウンターまで来た。
額に汗を吹き出しているさまは、今まで調理場で奮闘していたであろうことが一目だった。
"料理を取り替える"からと、深々と頭を下げ丁寧に詫びた。ボクは既に料理に手をつけていたこともあり、丁重にそれを辞退した。
久しぶりの旨いうどんに、満足して店を出た。
振り向くと、店主、調理場の女性、そしてホールの若い女性と、3人が出入口まで来て深々と頭を下げていた。
"うどん"て、本当に美味しい…そう思った瞬間だった。どうやら、連れも同様のようだった。
6位
1回
2018/06訪問 2018/06/05
土曜の昼どきを迎える時間だったから、多少の待ち時間を覚悟した。ドアを開けると、以前のラーメン店"朧月"とほとんど変わらない店内には、客は誰もいない。
調理場には若い男性が3人、それぞれの持ち場で待機していた。
好きな席へ座って良いとのことだったので、調理場が良く見えるカウンター中央へと腰を下ろした。
カウンターメニューを見ると、ランチタイムは3種類のみ。お薦め表記のある、"林SPFロースかつ定食"に決めよう。合わせて料理の提供と同時に、瓶ビールを出してくれるように注文した。
上着をハンガーに掛け、トートバッグは他に客がいなかったので、隣の空いた席へと置いた。
接客をしてくれた男性は、どうやら東南アジア系のようだ。日本語は堪能で、日本人以上に丁寧な接客に感心する。
中央で主に板場を扱うマスクを付けた男性は、キャベツ、汁ものなどを扱っている。
揚場では優しそうな顔立ちの男性が、ボクの料理を作り始めた。
その間に、おひとり様の男性が2人、ドアを開け、ボクを挟(はさ)む格好で、カウンター左右へと座った。
調理の合間を見計らってマスクを付けた男性に話掛けてみた。揚場の優しそうな顔立ちの青年がどうやら店主のようで、とんかつ 大宝では、半年ほど腕を磨いたと言う。
料理が提供される頃には、13席あるカウンターは全て埋まった。ほとんどの客はひとり、あるいは2人客だった。
椅子に置いたトートバッグは、小さな荷物置き場へと置き直そう。荷物置き場は壁際、ハンガーの上で、背が高くないと置くのに難儀するかも知れない。
まずは恵比寿ビールが、そして料理が次々とカウンターへと乗った。
嬉しいことにビールお通しには、"豚のしぐれ煮"が付いた。
汁ものの"豚汁"は一回まで、ご飯、キャベツはお代わり自由だった。
小皿に卓上のソースを入れ、皿に付随のとうがらしを溶いた。そして豚カツを小皿のソースに付けて、ひと口…
歯を立てた瞬間、口いっぱい豚のエキスが広がった。肉は柔らかく、そして甘味すら感じる。
ボクはキリの良いところで、ビールで喉の奥へと流し込んだ。
お通しの"豚のしぐれ煮"に、箸を移そう。
弾力ある肉は甘めに煮締められ、ビールのアテにはもちろん、ご飯が進む小鉢だった。
汁ものの"豚汁"は、あっさりとしたタイプだった。実はボクは新宿西口、豚珍館の豚汁をが大好きだった。濃厚な味わいで、脂が表面に浮く椀には、必ず白飯と一味唐辛子を入れて楽しんだものだ。
2杯目のお代わりでは、ご飯と一味唐辛子入れ楽しんでみた。上品であっさりした味わいで、豚珍館のような豪快な味わいは残念ながら楽しめなかった。
とは言え、美味しく楽しめたことには違いなかった。
キャベツはドレッシングではなく、やはり卓上の自家製ソースで楽しもう。シャキシャキとした食感をが心地良く、何より瑞々しさが楽しめた。
結局、キャベツは2回もお代わりをしてしまった。
目黒には三大とんかつと言われる名店がある。
とんき、かつ壱、大宝と比べ、サッパリとした後味、肉本来の旨味を、存分に引き出しているように感じた。目黒の名店と肩を並べる日はそう遠くはない。ボクは、そう確信した。
帰り際ボクは若い店主に、最近成蔵へ行ったと伝えた。店主は、ただニコニコしていた。どうやら成蔵を知らないようだった。
7位
51回
2024/03訪問 2024/05/09
サラバ大久保、さよなら“麺屋 悠”…また逢う日まで、会えるときまで…♪
3月29日(金)
山内店主には、前々から退職当日のランチは“悠”で〆る…“そう”伝えていた。店主は“緊張する”…“そう”返した。
退職日は普段着ないジャケットを来て、最終日に臨んだ。終業時間に諮(はか)らずも、最後の挨拶を職員全員の前ですることになったからだった。
実は最終日のランチは、隣の席のS藤くんと予定していた。カレは自分の子どもくらいの年齢で、仕事から世間話まで普段よく話した。もちろん、“悠”でのランチを楽しみにしていてくれた。
退職の際には、お菓子を職員ひとりひとりに手渡しで配って回るのが、うちの職場の慣わしだ。それを負担に思う職員はいるはずだから、執務室のある3階、4階給湯室に人数分のお菓子を置いた。もちろん、菓子の脇にお礼の一言を忘れず書いた。
午前中は普段関わりのない、同じ建物にある本部でお世話になった人たちへ、挨拶をして回った。
電話表示された時計が12時ジャストになったと同時に、執務室のある4階から一気に階段を掛け下りた。
S藤くんもその後を付いて、裏口玄関口を駐車場を抜け外に出た。
コロナで制限が始まった頃から、“悠”の人気は半端なかった。他の飲食店が集客に苦しんだ時期に、地道に集客人数を伸ばした。
ボクらは小走りに小滝橋通り沿いの舗道を新宿西口方面に進み、途中信号が青の横断歩道を渡った。
ちょっとでも遅れると、並んで座れないどころか外待ちになるかも知れないからだ。
小滝橋通りからの路地を入り店内を覗くと、残念ながら既に満席だった。店内に入り、券売機で料理を選び、食券を買って、結局、外で待つことにした。
その際、山内店主に挨拶して、外待ちを伝えた。
幸いにも入口のふたり組の男性が、すぐに外に出て来た。
山内店主に促され、入口そばのカウンター席に並んで座った。
先客の料理が提供され、店主からのアナウンスで食券を渡した。
その際、サービスライスを聞かれ、S藤くん共々お願いした。
食券を渡すと同時に、調理はスタートだ。
今日は満席で、ワンオペの山内店主に話すキッカケが摑(つか)めないでいた。
チャーシューをバーナーで炙り、盛付けて料理が提供された。ワンオペながら手際が良いので、提供までに10分とは経っていなかった。
悠での最後の料理は、オーソドックスに“味玉そば”を“大盛”にした。悠は味噌が人気だが、醤油ダレのスープが好きだった。
S藤くんは、ワンタンそばを大盛にしていた。
提供されたタイミングで、山内店主に今までのお礼を告げた。さらに店主とラーメン屋巡りの約束が、コロナの制限で出来なかった心残りを告げた。
店主は、こちらを見ずに頷(うなづ)いた。
レンゲを取り、先ずはスープを口に含んだ。
滋味深い旨みが、いつものように一気に広がっていった。
箸に持ち換えて、麺を啜った。
大栄食品の、ぱっつんとした加水低めの細麺が、スープによく絡んだ。
半熟の黄身がトロりとした味玉は、プルんとした白身の食感との違いを楽しんだ。実はこれが、ライスとの相性が抜群だった。
2種の炙りチャーシューは、いつものようにライスに合わせ楽しんだ。
隣のS藤くんを見ると、満足そうな顔で、スープ、麺を代わる代わる口にしていた。
席を立つと同時に、“麺屋 悠とボクとは一緒に成長した”…そう、店主に伝えた。一瞬、仕事をする手を止め、山内店主は深々とお辞儀をした。
…これが、ボクと“麺屋 悠”との最後になった。
店舗のSNSを見ずに行くと、どうやら2月限定があった。
今日は味玉そばの気分だったので、限定は次回に回すことにしよう。
そして土日を挟んで、次の週に同僚と3人で利用した。
外待ちこそなかったが、店内は満席だ。仕方ないので、外で待つことにしよう。
すぐにひとり出たので、ふたりのススメで先ずはボクが入った。券売機で料理を選んでいるときに、さらに空いた隣が空いた。先客を挟み、さらに席が空いた。まだ料理が提供されていない先客は、好意で空いたばかりの席へ移動してくれた。…感謝…
幸いにも、ボクらは並んで座ることが出来た。
2月の限定は、悠お得意の“雲呑”、それも2種使った料理だった。
ひとつは、海老ワンタン2個、肉ワンタン3個を使う“ミックスワンタンメン”、もうひとつは、“ミックスワンタンつけそば”で、これは海老ワンタン2個、肉ワンタン1個が付いた。
券売機では、限定の“ミックスワンタンつけそば”を探した。
小銭がジャマだったので、100円玉と500円玉を券売機に入れた。残念ながら、500円玉は戻ってきた。券売機が故障していて、500円玉は利用出来なかった。そう云えば、店主が以前、“お金が変わるまで券売機は替えない”と言っていたのを思い出した。
いつもなら、食券は先客の料理が提供されるまで渡すのを待った。入口すぐのカウンター席に座ると同時に、食券を促された。すぐに、調理に取り掛かる証拠だった。ワンオペながら、仕事はいつもながらスムーズなのに感心する。
つけそばは“醤油”、“塩”とあるので、“醤油”つけそばにした。
同僚3人と会話もしていたこともあって、提供までの時間は全く苦にはならなかった。
料理は葱がたっぷりのつけ汁の入った丼、麺の入った丼には、メンマ、2種の炙りチャーシュー、さらに海苔がトッピングされている。肝心のワンタンは、別皿に3個優雅に乗っている。
先ずは麺を取り、つけ汁に潜らせて一気に啜ってみよう。
麺は悠の特徴ある、大栄食品の細麺ストレートがつけ汁によく馴染む。加水が低いのが、むしろこのつけ汁には合った。
つけ麺は太麺でなければ、ダメ…
以前はそう思ったが、悠のつけそばに出会い、そんな自分の常識はだいぶ変わった。
サラっとしたつけ汁なら、加水が低めな細麺が馴染むと思う。
つけ汁はサラっとして、酸味と甘みが、出しゃばらない程度に主張している。醤油ベースだが、全くカドが立たず円やかな味わいだ。
大栄食品の麺に馴染み、見事な調和を醸し出した。
ワンタンに箸を移した。
肉ワンタンは餡たっぷりで、食べごたえがある。海老ワンタンには、丸々一匹海老が包まれ、プリプリの食感が心地よい。
ワンタンを口にしたところで、何かもの足りなさを感じた。サービスライスを、貰い忘れていたのだ。山内店主にお願いした。
いつもながら、満足度高い料理が楽しめた。卒業の最終日には、悠で〆ると店主に告げると恐縮していた。
2024年1月…悠の思い出…
前回来たとき、いきなり数年前に提供した限定が復活していた。普段は店のSNSを確認するが、不覚にもその時は知らずに利用した。
本来なら山内店主の得意なワンタンの入ったものにすれば良かったが、“カレーつけそば”にしてしまった。 今回は贅沢に、“カレーワンタンつけそば”で楽しんでみよう。
小滝橋通りから大久保駅に向かう路地に入り、そのまま真っすぐ歩くと幟(のぼり)が棚引いていた。
今日は外には、並びがない。
店内に入ると、7人座ると満席のカウンターは全て塞がっていた。券売機前に立つと、運良く一番奥の客が席を立った。
券売機上のポップを確認し、“限定1100”とあるボタンを押した。奥のカウンターでは、店主が先客の丼を片付けていた。
狭い通路を客の背に当たらないようにして、カウンター奥へと移動した。
食券を渡すと、店主は“1.5玉ですね…”、と聞いた。お願いするのと合わせ、サービスライスも付けて欲しいと伝えた。
先客の料理が3人分提供され、いよいよ自分の料理の番となった。
定休までの間、店主の調理を見たり、スマートフォンで情報を確認して時間を潰した。
それでも、食券を渡してから10分と掛からず料理は提供された。
店主ひとりのワンオペながら、いつもながら手際が良いから感心する。
つけ汁丼には、たっぷりの葱と2種のワンタンが入っている。
一方、麺丼には、2種炙りチャーシュー、メンマ、海苔が確認出来た。ライスを付けたので、麺量1.5玉でも充分だ。
見るだけで、テンションが上がって来たぞ。
まず始めに、レンゲを取って出汁を啜ってみた。
スパイス、香辛料、ほんのりさた甘み…そんなつけ汁が分かる。旨いスープ、つけ汁は、麺がたとえ凡庸でも楽しめる。
もちろん、安心安定で楽しめる大栄食品の細麺なら、口にしなくても楽しめるはずだ。
先ずは麺をつけ汁に潜らせ、一気に啜った。
スパイスがしっかり来て、いきなりガツンと辛さが追い打ちを掛ける。多少甘さを感じる、サラっとしたつけ汁だ。
このつけ汁に、大栄食品の細麺がシックりと馴染んだ。加水低めで、多少ボソッとした食感がよく合う。
加水低い細麺は、食べ進めると腹で膨張した。
これはエスニックカレーに合わせる、“ナン”と似ている。
食べ終わった後に、腹が張るのが特徴だった。
肝心のワンタンは、肉ワンタン、海老ワンタンがひとつづつ入った。
肉がびっしりと詰まり、食べごたえある“肉ワンタン”
プリプリの海老が丸ごと入って、その食感が楽しめる“海老ワンタン”がカレーのつけ汁と交わり、良い味わいを引き出した。
トッピングの2種の炙りチャーシュー、メンマ、葱は、いつもながら、脇役として良い仕事を固めた。
外を見ると、待ち客は数人いる。
今日は満席を常にキープし、山内店主とは世間話は出来なかった。
店内BGMは、Dylanの武道館ライブが流れた。
ボクは、以前山内店主が言ったことを、思い出した。
この武道館ライブは、発売当時の評価は散々だった。
…そう、地道にやることが、今の評価につながる。
まるで、“麺屋 悠”と同じではないか…
年明けに店主のSNSを見ると、メニューの値上げについて書かれていた。
客への値上げへの詫び、日頃の利用の感謝が、見ているこちらに実直に伝わった。
成人の日が過ぎ、新年の業務が本格的に始まった或日、同僚が早々に“悠”を利用した。
どうやら1月限定料理として、“カレーつけそば”を提供しているようだった。
早速、利用してみることにした。
平日の昼時店舗前に行くと、ちょうど若い男女が店内に入るところだ。
ちょっとイヤな予感がしたが、扉を開けると7席あるカウンターは全部埋まった。
今日は悠でカレーつけそばモードなので、他の店へ浮気なとあり得ない。
まず券売機で食券を購入して、席が空くまで外待ちしよう。
券売機の上には、限定の“カレーつけそば”“カレーワンタンつけそば”の写真入りポップが目に入った。
券売機のボタンから、カレーつけそばを探しボタンを押し、さらに味玉のボタンを押した。
一旦外に出て外待ちしていると、何人か来て外に並んだ。最近の悠は、特に人気で待ち客が出るほどだった。人気になるのは嬉しいが、昼時に待たなければならないのは辛い。まさに痛し痒しと言った感じだ。
扉に貼られた張り紙を見ると、限定料理の他に値上げについて言及されていた。
内容を読むと、値上げは料理全てではなく、一部を残した値上げだった。値上げ幅は、50円と最小限に抑えられた印象を受けた。
客が出たので、店内へと入った。時計を見ると、外に並んでから10分経っていた。
ちょうど奥の席が空き、店主が片付けている最中だ。
すぐに食券を渡し、料理の提供を待つ間、スマートフォンを眺めていよう。
食券を渡す際、山内店主から、中盛、小ライスを付けますね…そう確認してくれていた。
いつものように、7分ほどで料理が提供された。
ワンオペにも関わらず、相変わらず、山内店主の店主の手際の良さが光る。
赤黒いつけ汁丼には、葱、モヤシが大量に入っている。
一方の麺丼には、炙りチャーシュー、メンマ、海苔、追加した味玉が乗った。
店主に確認していないが、麺はいつもの大栄食品特注の、加水低めの、ストレートな細麺だった。
早速、麺を手繰り、つけ汁に潜らせ一気に啜ってみよう。
つけ汁はスープカレーのようだが、多少粘りを感じる。かなり辛口で、味の奥にはスパイスの香辛料の香りが漂ってきた。辛いカレーが苦手なら辛いが、普通にいってパンチが効いたスープだろう。
ほんのりとした甘い味わいが、後を追うように感じた。
合わせる麺は、加水低めな細麺のストレートだ。
つけ汁がよく絡み、相性はぴったりはまっている。2種の炙りチャーシュー、メンマが箸休めには上等なアクセントになった。
追加した味玉は、黄身がトロんとして申し分ない。
今日の悠は…最近は特にそうだが…客が来て、出ては入る。常に満席を維持した。
そんな忙しい合間に、山内店主がボクに話掛けてきた。
仕事ヤメたら、食べ歩き増えますね。そんな内容だった。
無職になるから、レビューアーは卒業ですよ。ボクは、店主にそう返した。
店主はボクが、食べログレビューアーであることを知っている…だけでなく、悠レビューも読んでくれていた。
今日は、新年5日で金曜だ。今日を休めば、本来なら11連休になった。実際、そうする、仲間の同僚は多かった。
いつにも増して、新年最初の出勤日はイヤなものだ。体が朝5時に起きて、家を出るところからキツかった。
そんな今日でも、気分はローダウンはない。
大好きな“あの”店で、新春の限定料理を楽しむ予定だったから…
実は常に店主のSNSは、チェックしていた。最近何かあったか、見ることが出来ないでいた。だから、今日の利用は、店を開けているかを含め、ちょっとした冒険だった。
小滝橋通りから、大久保駅に向かう、いつもの路地へと入った。遠目に見て、幟(のぼり)が見えたから、先ずはひと安心だ。
店主のSNSを見ないで来たが、入口扉にポップがあり、いつも通り、今日、明日は新春限定料理のみの提供だった。
並びこそなかったが、店内に入ると7席あるカウンターは満席だ。券売機の前に立つと、幸いにも一番奥の客がちょうど食べ終え、席を立った。
券売機から“新春特製そば”のボタンを押し、続けて“大盛”のボタンを押した。
券売機で料理を決めているうちに、いつの間にか奥のテーブルにあった丼は片付いていた。
席に座ると同時に、店主からの声がけがあり食券を渡した。ちょうど先客の料理を提供したタイミングだった。
山内店主からは、いつものように聞かれサービスの“半ライス”をお願いした。
グラスに水を注ぎ、上着を壁のハンガーに掛け、しばらくはスマートフォンを開いて見ていた。
BGMは最近出たばかりの、ディランの武道館ライブの完全版だ。聴くでなしに、しゃがれた独特の歌声が耳に入った。
7分ほどで、料理は提供された。いつもながら手際が良く、見事な仕事ぶりだ。
“特製そば”は縁起の良いナルト、チャーシュー3種、ワンタン2種、ハーフカットの味玉、葱、メンマ、葱といったトッピングで豪華な内容だ。
いつも注文する“味玉そば”の新春限定料理だった。
先ずはレンゲを取り、スープをひと口…
醤油ダレに煮干し、さらに豚骨の甘味が、得も言えぬ旨味のハーモニーを奏でる。
スープに絡む細麺は、悠の特徴ある大栄食品の細麺だ。加水低めの麺がスープを吸い、モチモチとした食感が楽しめる。
3種の炙りチャーシューは、バラ、肩、腕だろうか…部位に寄って、それぞれに違った味わいがある。
ワンタンは肉ワンタン、生姜ワンタンの2種だった。餡がしっかりとして、ダイナミックな食べごたえがあった。
山内店主に、正月何処か出たか聞いてみた。
どこも混んでるから、結局出なかったそうだ。
“ディランの武道館ライブは、発売当時は評価が低かった”、“そう”店主は話題を振ってきた。評価は良くも悪くも、時が経つにつれ変わるもの…“そう”思った。
このところランチで行くところを決めていないときは、決まってロックオンを利用していた。日替り定食で、ハズレは皆無だからだった。
寒くなったので、すぐそばの麺屋 悠で熱々のラーメンが恋しくなった。
いつものように小滝橋通りを新宿西口方面へと歩き、壱蔵家の角を、大久保駅方面へ向かう路地へと入った。
ロックオン、入口脇の日替りメニューをチラっと眺め、すぐそばの幟(のぼり)が立った店舗の扉を押し開けた。
こちらを見るなり、“まいど~っ”、と山内店主が威勢よく声を掛けてくれた。
店内には先客は4人、3席分空いている。幸いにも、お気に入りの、一番奥のカウンター席は空いていた。
券売機を見ると、写真入りで料理のポップがある。限定メニューは、久しぶりの“揚げねぎ醤油そば”だ。“味玉醤油そば大盛”と決めていたが、今日は限定料理にキモチが動いた。
味玉を付けようかと思ったが、1000円を超えるので諦めた。券売機に乗る料理は、相変わらず値上げしていない。コロナが流行る前から値段には、一切手をつけていない。小麦、光熱費、特に煮干しが値上げしたから、ゴールデンウイークを契機に値上げする。“そう”山内店主は言っていたはずだが、頑張って値上げしていなかった。
店主に食券を渡す頃には、7席あるカウンター席は全て埋まった。後客3人の中に、職場で仲の良い同僚もいた。どうやら気付かないようなので、席は離れていたが声を掛けた。
10分と掛からず、“丼が熱いですから…”と、料理、すぐにサービスライスをカウンターに置いてくれた。
丼を見ると、たっぷりの焦がし葱、ねぎ、メンマ、もやし、2種の炙りチャーシュー、海苔が入っている。麺はいつもの細麺でないのは、一目分かる。
まずはレンゲを取って、スープをひと口…
さらに、ひと口と啜った。
通常の中華そばの醤油ダレに、香ばしさと甘みが付加されていた。たっぷりだったが、果たして、この揚げ葱だけでこの旨味が表現出来るのだろうか…
次に麺を、一気に啜った。
いつもの特徴ある加水低めな細麺ではなく、中太で加水高めでモッチリとした麺だ。
スープとの絡みが、非常に良いと思う。
店主と、以前話した行きたいと言った、最近出来た店について話した。
BGMは店主が最近買った、最近発売したコンプリートの“ディラン武道館ライブ”が流れていた。
悠ノSNS見ると、“限定”を開始しているとのこと、、、
これは、行って楽しまなくてはならないぞ。
いつものように、小滝橋通りをトボトボ歩き、過度が家系人気店の路地を、高架へ向かって入った。
今日は使わないにも関わらず、最近利用する間借り定食屋の外メニューをチラっと眺め、すぐそばに幟の見える店舗へと向きを変えた。
店内に入ると12時を少し回った時間にも関わらず、結構な客入りだった。しかも既に、料理を楽しんでいる客もいた。もっとも7人座れば満席となるカウンターのみの席なので、早い時間に満席になることはよくあることだった。
幸いにも一番奥の席が空いていることを確認し、券売機の前に立った。券売機の上には、SNSで見た限定料理のホップがあった。券売機では、“限定”のボタンを探し押した。限定は、“野菜つけそば”で、わんたんを合わせた“野菜わんたんつけそば”もあった。
カウンター奥へと移動し、食券は店主に声がけされるまで渡さずにいた。
先客の料理が全て提供されたところで、いよいよボクの限定の調理がスタートした。麺量は、サービスの中盛とした。
店主が調理しているときは、スマートフォンでSNSなどをチェックして時間を潰した。
いつもはインターネットラジオが掛かっていたが、今日は違った。なんと18年ぶりの新作アルバム『ハックニー・ダイアモンズ』を出したばかりのストーンズを、フルに流していた。
まずは2種の焼豚、メンマ、海苔が乗った麺丼が手渡された。すぐに“熱いから気をつけて下さい”と言って、つけ汁の丼が提供された。
さらにサービスライスが、カウンターへと乗った。
つけ汁の丼には、たっぷりの野菜、さらに見るからに餡がびっしり詰まったわんたんが、丼を埋め尽している。
悠オリジナルの大栄食品の細麺をつけ汁に潜らせ、先ずはひと口…
醤油ベースのつけ汁は、ほんのり酸味があり多少甘みがある。これに水分少なめの細麺が、しっかりと馴染んだ。
野菜は、キャベツ、もやし、人参がたっぷり入った。
シャキシャキとして、瑞々しく食べごたえがある。野菜はそれ自体は、炒めてないようだった。
餡がたっぷりのわんたんは、旨味がしっかりしていた。スープを吸った餡が、なんとも言えないほどに楽しめた。
さらにサービスライスに合わせ、口にする至福を楽しんだ。
炙り焼豚は、いつも口にする“味玉そば”より多めに入った。いつものことだが、噛みごたえはしっかりして、噛むごとに旨味が口いっぱいに広がっていった。
メンマは、コリコリとした食感が心地良かった。
ミック・ジャガーは、御年80でツアーまでこなした。山内店主は、来年還暦になるそうだ。良い感じで年齢を重ねるのも、悪くはない…そんなことを山内店主と話した。
店主のTwitterで、すでに夏の限定を開始したことを知ることになった。ついこの間店を利用した際に、夏の限定について聞いたばかりだった。梅雨が開けた頃だと、言ったばかりだ。限定が前倒しに早まったのは、嬉しい誤算だった。
店内に入ると、珍しく客はふたりしかいない。券売機の前に立ち、上に立てかけられた限定、“冷やしつけそば”のポップが目に入った。
券売機から、冷やしワンタンつけそばの“限定”ボタンを押し、さらにワンタンを肉、海老ワンタンにしたいので100円追加した。
空いているL字型カウンターの奥に座り、上着を脱ぎ、マイエプロンを着た。最近はラーメンなど汁ものを口にするときに限って、エプロンを持ち歩いていた。
買ったばかりの食券をカウンター上に乗せると、山内店主は”醤油“か”塩“かを確認した。“塩”つけそばを、砂糖控えめでお願いした。
さあ、ボクの料理の調理がスタートした。
結局、この日は1時過ぎに利用したとは言え、後客は3人しか来なかった。まあ、人気店でも、そんな日もあるだろう。
“冷やしつけそば”は、手の掛かる料理だ。
茹であげた麺をざるに移し、水で締める。水切りをし、麺を麺丼に移すとトッピングで飾り付けをした。トッピングには細切りのキュウリ、メンマ、クラゲ、ミニトマト、海苔、2種焼豚、ワンタンの皮だった。
つけ汁の丼に、具材がたっぷりと入った。
肉ワンタン、海老ワンタン、たっぷりの刻み葱、揚げ葱、細切りのナルト、最後に冷凍庫からタッパを出して、出汁氷を入れた。
ふたつの丼を手渡しされカウンターに置くと、サービスライスを手渡しされた。
注文から料理の提供までには、10分とは掛からなかった。
先ずはレンゲを取り、出汁を一口啜った。
注文どおり甘さは控えめで、キリっとした塩に仕上がった。山内店主は、東池袋大勝軒のつけ麺が好きだった。そんなこともあって、つけそばは甘めの仕上がりとなった。さらにラーメンは細麺が好きなので、たんたん亭系の出身元、支那ソバ かづ屋同様、大栄食品の極細麺を使った。
つけ汁をキンキンに冷やすので、固まるラードは不使用…としていた。
店主に言わせると、つけ汁をキンキに冷やすと、ガツンとか来るラードの旨味に頼れないのは厳しいそうだ。
食べごたえある、冷やしラーメン料理に仕上がったと思う。ラードの油性の旨味に頼らずに、魚介系で勝負すり旨味はしっかりと感じ取った。
帰り際、山内店主は、喜多方ラーメン坂内の“冷やしラーメン”が好き…そう、笑いながら言った。返さなかったが、ボクも好きだ。
6月に入ると、すでにじめじめとした暑い日が続いた。
梅雨明けはまだ先だが、今日は中休みと言った感じでよく晴れた。それでも日差しは暑く、蒸し蒸しとした昼どきだった。
今日の口は麺気分だったが、熱いラーメンは避けたい。そんな気分のときは、悠で“つけそば”が良さそうだ。
コロナウイルスの指定が、インフルエンザ同様、区分が5類に移行したが、それでもマスク着用を求める飲食店は多かった。
時計が12時ジャストになると、4階にある執務室の階段を一気に駆け下りた。
裏口玄関から路地を抜け、小滝橋通り添いに急ぎ足で歩いた。
最近の悠は、外待ちが出来るほどに並ぶことがあった。
汗が吹き出ない程度に急いで来たが、それでも外待ちに若い男性がひとりいた。
日差しがあって暑いが、今日は並ぶことにしよう。
店内で料理を決め食券を購入してから、外待ちするのが“悠”の流儀だった。
店内に入り、山内店主に挨拶して券売機の前に立った。
券売機にはポップがあり、ミックスワンタンメン、ミックスワンタンつけそばがある。限定ボタンを探し、合わせて味玉のボタンを押した。
幸いにも外待ちしてから、5分程度で店内に入ることが出来た。
空いたカウンター席に座り、食券を渡した。食券を渡す際、山内店主から、塩、醤油の出汁の確認、さらに麺量は…中盛かどうか…そう確認してくれた。麺量中盛までは、無料だった。
店主ひとりのワンオペながら、いつも手際が良いから待たされる感じはない。
丼を手渡しで受け取り、カウンターに並べた。
麺の丼には、追加した味玉を含め、トッピングが華やかだった。
一方の汁の入る丼には、たっぷりの刻み葱、もやしが浮いている。
まずは麺を取り、つけ汁の入った丼に潜らせ一気に啜った。
仄かにだが…甘く、酸味が多少ある。
つけ汁はサラッとして、加水低めの細めの麺に馴染む。
ワンタンを食べてみようか…
出身の支那ソバ かづ屋譲り、支那そば たんたん亭系譲りのワンタンは、間違いなく楽しめる。肉ワンタン、海老ワンタンの2種だ。
肉はびっしり、海老はプリっプリだった。
つけ汁の刻み葱がツボだ。
麺を潜らせるたびに、葱がまとわりつく。
この葱こそが、悠の料理の重要な脇役となっていると思う。
ライスは、隙間、隙間で、口にした。
麺屋 悠の美味しい料理でも、“ラーメンはライスの脇役”でしかない。
麺大栄食品、加水低めの細ストレート麺だ。
以前店主は、細麺が好きで、しかも修行先のかづ屋は大栄食品…そう話してくれた。
そんなことを思いながら、きれいに平らげてしまった。
今日は帰るまで、客足は途切れず満席だった。
おかげで、店主とは世間話は出来なかった。
仕切り直して、次回の楽しみに取って置こうか…
1週間に一度は、麺屋悠を利用していた。
ここの料理を基準にして、他店の料理ご口に合う合わないを決めている。それだけでなく、ほぼ同世代の山内店主と、ラーメンを初め、世間話をするのが楽しいからに他ならない。
天気の良いある昼、小滝橋通りから駅に向かう路地へと入った。正直に謂うと、今日は別の店へ行くつもりだった。歩いているうちに、キモチが変わっていた。
遠目に見える幟(のぼり)の脇に、明らかに外待ちの客が数人見えた。一瞬どうしたものかと思いながらも、結局は待ち客の後ろで待つことにした。
結局外では、10分弱ほど待った。
券売機の前になり立つと、限定メニューのポップがある。揚げ葱を使った料理だったので、迷わず“限定”に決めた。
空いたばかりの席に座り、食券は店主に声掛けされるまで渡さずに待った。
食券を手渡すと、ボクの料理を含む、何人かの料理に取り掛かった。
いつものように、10分と掛けずに料理は提供された。“揚げネギ醤油そば”と“味玉”、サービスの“ライス”が今日のご馳走だった。
ワンオペながら、いつも鮮やかで無駄のない動きに感心する。
丼の中はたっぷりの揚げ葱で、スープは真っ黒に見える。よく見ると、揚げていない葱が、これもたっぷりと入っているのが分かる。
トッピングは他に、メンマ、2種チャーシュー、海苔、さらに追加した味玉が乗った。
まずはスープをひと口啜ってみよう。
揚げて焦がした葱の甘みが、口いっぱいに広がり染み入っていく。
レンゲに焦がし葱、生の葱が乗り、食感、味のコントラストが楽しめた。
麺は悠の特徴となる、大栄食品の麺だ。限定には加水低めの、細麺ストレートではなく、特注の中太ストレート麺に変えていた。
早速口にすると、細麺より多少水分を多く含むのか、モッチリ感があった。
スルスルっと口におさまり、そのまま喉の奥を通っていった。
メンマ、味玉は、いつものように良い箸休めとなった。海苔があることで、多少ながら磯の香りが漂った。
混んでいたので、今日は二言三言しか挨拶程度の会話しか出来なかった。
小滝橋通りの“あのラーメン店”は、休業して一年になる。。。
そんな内容の話をしたような気がする。
寒くも暑くもなく…
今では考えられない、4月の爽やかな昼どきだった。
今は終了してしまったが、満足いく料理を楽しんだ備忘録として記録しておこう。
悠のSNSを確認すると、3月の限定に“野菜ワンタンつけそば”とあった。近いうちに利用することにした。
小滝橋通りを北新宿百人町交差点方面へ歩き、途中、壱蔵家脇の角を曲がった。
店舗前を遠目で見ると、外待ちの客はいない。店内に入るとカウンター7席は、全て埋まっていた。券売機から限定料理を探し、食券を求め、一旦外で待つことにしよう。
回転が良いので、5分と待たずに席へと腰を下ろした。そして食券を、店主の差出す掌(てのひら)に乗せた。
山内店主は先客の料理を次々と提供し、ボクの限定料理の仕事に取り掛かった。
10分と掛からずに、料理はカウンターの上に乗った。ワンオペながら、手際が良いので仕事が早い。客の回転が良いのは、店主の調理、片付け、接客といった手際の良さからきていると思う。
提供された“野菜ワンタンつけそば”の丼はふたつ…
つけ汁丼は、つけ汁が隠れるほどに具だくさんだった。もやし、にんじん、葱、焦がし葱、刻みナルト、肉ワンタン、海老ワンタンなどで、ヒシメき合っている。
一方、麺の丼にもトッピングが乗っている。たっぷりのメンマ、炙りチャーシュー2種、海苔といった布陣だ。
なんと、贅沢なトッピングだろう。
麺を摘み、つけ汁に潜らせて、一気に啜った。
多少の酸味が甘みがあって、出汁の旨味が引き立つ。悠のトレードマーク、大栄食品の加水低めのストレート麺が、サラっとしたつけ汁に絡み、安心して楽しめる。
途中、ワンタンへと、箸を移してみよう。
肉ワンタンは、豚のひき肉が皮に詰まり、口にすると旨味が広がった。
海老ワンタンには、ゴロんと丸ごと小エビが入り、食べごたえがある。海老とワンタンの、相性の良いコラボだ。
野菜は、もやし、にんじん、キャベツ、葱がたっぷりだ。スープと一緒に、レンゲで掬(すく)って楽しんだが、結構なボリュームで満足度が上がった。
ワンタン、炙りチャーシューの合間に、サービスライスを口にして、さらに満足度が上げた。
悠はコロナやエネルギー、卵の物価高騰でも、値上げをせずに、頑張っていた。
山内店主は、ゴールデンウィーク後に、値上げするかも知れない…ポツリと、そう漏らした。“煮干し”の高騰が理由のようだった。
ツイッターを見ると1月限定に、“カレーつけそば”を用意したようだった。新春の限定料理を楽しんだばかりだったが、都合をつけて早々利用することにしよう。
ツイッターには…
“スープにカレー粉投入のカレーうどん式でなくて、玉ねぎからカレーを作って つけスープで伸ばしてます。仕込みがメチャクチャ大変なので年一回しかやりません(笑)。
一日数量限定です。売り切れの際はご了承ください。”
…とあった。
店内から中を覗くと、先客が今まさに券売機で料理を決めている。カウンターを見ると、7席あるカウンターは、ちょうど自分で満席になる。どうやら、今日は運が良かったようだ。
券売機を見ると、店のツイッターどおり“カレーつけそば”がある。
空いている席に座り、食券を渡すのは、いつものように店主の声掛けを待った。
先客の料理が提供されるタイミングで、食券を手渡した。
カウンターを見ると、限定を楽しむ客もいるが、レギュラーメニューを口にする客とそれぞれだ。限定メニューに釣られて来る客ばかりでないのが、安定した人気の裏付けと思う。
しばらくの間、目の前でテキパキと動く、山内店主の仕事ぶりを見ながらスマートフォンの情報を確認して時間を潰した。
提供された料理は、味噌つけ麺のような見た目だ。
つけ汁にはたっぷりの葱が浮き、短冊に切られたナルトも確認出来た。赤い粉が島のように浮いているが、どうやら唐辛子粉のようだ。
料理の提供の際、麺にドレッシングのようなものを掛けていた。店主に確認すると、辣油と分かった。
麺丼のトッピングには、バーナーで炙った2種の焼豚、メンマ、海苔、追加の味玉だった。
麺はいつもの、大栄食品の細ストレートメンマだ。加水が低い麺なので、伸びづらいのが特徴がある。反面、のんびりしてると、麺同士がくっつく弱点があった。
早速、麺を取り、つけ汁に潜らせて、一気に啜った。
まずはしっかりとしたスパイスの風味が、ほんわりと鼻腔をくすぐる。そしていきなり唐辛子の辛さが、舌を刺激した。
その後、ほど良い甘さが、口の中で徐々に広がっていった。山内店主はつけそば(麺)、味噌そばは、自分の嗜好から甘めに仕上げた。
店主に味噌を使っているかを確認すると、あくまで醤油ベースと返ってきた。
“旨かったです”と、告げ店を後にした。
新春早々、満足度高い料理を楽しめた。
今日は正月休み明け、仕事始めの日だった。
楽しみのランチには、お気に入りの店でスタートしよう。例年通りなら、今日は新春限定の料理を振る舞ってくれるはずだった。
12時になると電話が鳴るのも気にせず、一目散に階段を駆け下りた。後は早番の職員に任せよう。
小滝橋通りを渡り、新宿西口方面へと歩いた。しばらく歩き、新大久保駅高架に向かう路地へと入っていった。
遠目からも店の幟が出ているのが見えたので、ひと安心だった。
店舗外に並びこそないが、中を覗くと既に5人ほど座っていた。今券売機前にひとり立っているので、自分でちょうど満席となる。
券売機に立つとポップが貼ってあり、今日は思ったとおり限定料理のみの販売だった。
醤油気分だったので、“新春特製そば”を“大盛”にした。
空いているひと席に座り、7人席の全てが埋まった。山内店主の声掛けで、食券を渡した。後は料理の提供を、静かに待とう。目を外に向けると、ふたりほどの並びが出来ている。
いつものよう店主ひとり、ワンオペだ。相変わらず手際が良いから、先客4人分の料理が次々と提供された。
さあ、次は自分の料理の番だ…
流れるようにリズミカルな動きには、一切のムダはない。
仕上げはチャーシューをバーナーで炙り、トッピングをして3人分の料理がカウンターへと置かれた。
時計を見ると、食券を渡して提供までには7分だった。
“新春特製そば”の丼には、肉ワンタン、海老ワンタン2種、焼豚3枚、“寿”のナルト、半分にカットされた味玉、海苔、刻み葱と言った布陣だ。これにランチタイムサービスのライスを付け大盛にしたので、結構なボリュームとなった。
まずはスープを蓮華で掬(すく)い、ひと口…
悠いつもの安定した醤油スープが、口いっぱいに広がった。麺はたんたん亭系の特徴となる、ストレートな大栄食品の細麺がしなやかに絡んだ。
料理を楽しむ間、調理の手際も良いこともあって、食事を終えた客が、外待ちの客と入れ替わりを繰返した。
“悠”は地道な仕事ぶりで、徐々に認知された飲食店の代表格だろう。今年も午後から、幸先良いスタートを切ることが出来た。
11月限定メニューは.海老ワンタン2個と肉ワンタン3個入りの“ミックスワンタンメン”とツィッターで知った。“各ワンタンメンの券とミックス変更券(100円)をお買い求めください”…シンプルなアナウンスだった。
店内に入ると、7人あるカウンター席は既に埋まっていた。券売機で料理を選び、取り敢えず外で待つことにしょう。席数は少ないとは言え、最近は常に満席状態を維持していた。
5分程で、カウンター奥の席が空いた。食券を店主に渡し、いつものようにサービスライスを付けた。
すぐに調理に入り、10分足らずで料理は提供された。
11月の限定料理の“ミックスワンタンメン(醤油)”、それに“味玉”を追加していた。
まずは蓮華で、スープを一口頂いてみよう。
いつもながらの、安定した味わいのスープだ。ラーメン店で醤油ラーメンを注文するときは、悠の料理を基準にしている。悠の料理の“味との違い、好みか、そうでないか”、さらに麺とスープとの相性などを自然に比べていた。
麺は悠の特徴とも言える大栄食品の細麺で、最後まで伸びずに楽しめる。スープとの相性は、いつもながら抜群に良い。
ワンタンは、山内店主出身の支那ソバ かづ屋譲りの味わいだ。今回は海老ワンタンと肉ワンタンの2種ミックスとなった。見た目からワンタンの皮を変えているようで、薄く透けた皮が肉ワンタン、厚みあり白っぽい皮が海老ワンタンだった。
まずは“肉ワンタン”から、楽しんでみよう。
肉の餡がびっしり詰まり、さながらつくねを口にしているようだ。スープを吸って、肉の旨味がさらにアップしていた。
“海老ワンタン”には、海老が丸ごと一匹入っていた。餡の間に割り込むように埋まって、味わいながら食べごたえを楽しんだ。
たんたん亭系を汲むワンタンを、山内店主なりにブラッシュアップさせたワンタンメン…
兄弟子にあたる“かづ屋”をも凌駕する、価値ある料理に仕上がった。
“TRY(トライ)”は、Tokyo Ramen of the Yearの略称から由来している。そもそも「東京で一番旨いラーメンを決めようじゃないか」を合言葉に、講談社の情報誌“TOKYO★1週間(休刊)” で、2000年から掲載された連載記事から続いている、それがTRYだった。
ラーメン界では権威ある8人を審査員にして、その年活躍したラーメン店を、各ジャンル別に選び順位付けをした。
審査員には、かつてラーメンデータバンク創業者で取締役会長の大崎 裕史氏も、審査員として名を連ねた。
各ジャンルから選ばれた店舗を総合して、大賞となる店舗を決定した。
ラーメンファンからは、店選びのひとつの指標となった。
TRYはスタートしてから、今年で23年を迎えている。
体が冷える程に、寒くなってきた。どうやらいきなり、秋を飛び越して、一気に冬に近づいている。今日はラーメン、それも味噌ラーメンで冷えた体を温めよう。
職場のある北新宿1丁目から、小滝橋通りに沿って北新宿百人町交差点方面をトボトボと歩いた。途中、横断歩道の信号が青なのを確認し反対側の舗道へと移った。駅方面へ伸びる路地に入ると、まだ12時を回ったばかりにも関わらず数人が外で待っているのが分かった。
今年も“TRY味噌部門”で8位入賞が、人気に拍車を掛けたのかも知れない。外待ちの並びの最後尾につき、順番を待つことにしよう。
回転は早く、5分ほどで店内へと入った。
券売機で“味噌そば”、さらに“大盛”のボタンを押し、“味玉”を追加した。
カウンターのみの店内7席は、相変わらずパーティションが立てられている。以前店主は、パーティションを外し、卓上の漬物を以前のように置きたいと言ったの思い出した。
カウンター一番奥の席に座り、食券を店主に手渡した。
ワンオペながら、相変わらず山内店主の仕事は手際が良い。自分を含め、一度に入った4人分の料理を一気に仕上げた。料理の提供には、その間、10分とは経っていないはずだ。
後から後から客が入って来たが、入店を断られていた。諦めて帰る客はいたが、それでも外待ちをする客も何人かいた。飲食店を営業する場所としては不利な立地にも関わらず、集客では安定した人気が窺えた。
まずはスープを掬(すく)って、スープを味わってみよう。
“悠”の味噌そばのスープは、多少甘めで円やかな味を楽しめる。スッキリとした優しい味でなく、流行りのオイリーで重たいスープとは違った。
例えるなら、悠式旨味を楽しめる味噌ラーメンだろう。
合わせる麺は、遠くはたんたん亭系の流れを汲む、“大栄食品”の加水低めの細麺だ。細麺でも伸びることなく、提供されたままの麺を最後まで楽しめた。
箸休めには、2種の焼豚、味玉が良い脇を張った。途中、焼豚、味玉を、サービスライスに退避して楽しんでみた。
山内店主がこちらに来たとき、“TRY味噌部門、8位入賞おめでとうございます”、と話し掛けた。店主は、“野球で言えば一番でも3番でもなく、7番打者ですから…”と、笑顔で返した。
どこまでも、謙虚な店主だ。
今年の夏も、限定の“冷しつけそば”を楽しんだ。今年の夏は昨年同様、猛暑が続き、それに比例するかのように来ては、“限定”のボタンを押していた気がする。
そんな冷しつけそばなら、ワンタンをつけてみたい。この夏はいつも、“冷しワンタンつけそば”を楽しんだ。
総括をして、限定レビューの〆としよう。
“冷しワンタンつけそば”の特徴は…
①出汁氷
氷が溶けることで、凝縮された出汁がスープに回り、旨みが増した。
②ワンタン
冷めても美味しいワンタン…
ではなく、冷たいからこそ、楽しめるワンタン
③涼を楽しむトッピング
クラゲを初め、夏らしいトッピングで見て、口にして楽しめる。
夏日楽しませてくれた限定は、8月31日で終了だ。また来年、楽しみに夏を待つことにしよう。
大久保にいれば、の話だが…
年中利用しているから、正直店主のツイッターは利用することはない。実際に店舗に行き、店主の生の声を聞いているからだった。
たまたまツイッターを開くと、悠の夏の風物詩、“冷しつけそば”がスタートしたことを告げている。早速、今日利用してみよう。
店舗前には、限定メニューの写真入りの看板が立っている。どうやら、今日は間違いなく限定を提供しているようだ。狭い店内に入ると、カウンター7人の席は塞がっている。食券を買って、外待ちをしよう。そう思っていたところ、幸いにも一番奥の席が空いた。
券売機から夏季限定メニューを探すと、下の方にあった。せっかくなので今日は、悠の名物、ワンタンの付く料理にした。そして、さらに味玉を付けた。
調理の合間に店主は、カウンターをサっと片付け、次の調理に取り掛かった。
料理を次々に提供し終えると、店主から声が掛かり食券を渡す。
その際、つけそばは“塩”で、甘さは砂糖半分、さらにサービスライスの提供を伝えた。
ここからが、夏季限定料理の調理がスタートだ。
いつものように店主のみのワンオペだが、惚れ惚れするほどに手際が良い。
麺茹での合間につけ汁の味を整え、バーナーでチャーシューを炙り、トッピングを麺、つけ汁の丼に振り分けた。
いつものように5分少々の時間で、料理は提供された。
麺、次につけ汁の丼が、それからライスの順に手渡しされた。
先ずは麺をつけ汁に潜らせ、汁が跳ねるのを気にせず一気に啜った。
甘さは控えめだが、多少甘さを残すことで円みがある。砂糖が多少でも入ることで、塩分の角が出しゃばらず、食べ心地を残す。正直、デフォの甘さだと、自分にはくどく感じたことだろう。
合わせる麺は悠の特徴のひとつ、大栄食品の細麺だ。パッつんとした食感を残し、反面モッチリした歯ごたえがある。
今回のつけそばにはデフォで、麺にワンタンの皮を乗せてある。つけ汁に潜らせると、ヌルっとした心地良い喉越しを楽しめた。ワンタンの皮は山内店主の修行先のひとつ、麺屋はやしまるへの、ある“オマージュ”のようだった。
つけ汁には大量の葱、それに焦がし葱が浮いている。葱は薬味の役割を、焦がし葱は甘くて香ばしさを伝えてくれる。さらにこのワンタンが、悠の18番(おはこ)だ。冷たくても…むしろ冷たいからこそ、肉がギッシリ詰まったワンタンが、更に美味しく楽しめた。
冷しつけそばの最大の特徴は…“出汁氷が”だ。氷が溶けることで、出汁の旨味がさらに増していった。
1年ぶりの限定に、ボクは至福のひとときを味わった。
店を出る際、店主にそのキモチを伝えた。店主も、満足げな顔をした…ように見えた。
最近は普段利用しない職場近隣のラーメン店巡りをしている。しばらく行ってないうちに、味を調整しているはずだ。麺屋 悠へは1週間に一度利用している。ラーメン店としては口に合うからには違いないが、それ以上に何よりも、“居心地の良さ”があった。そんな意味から、一本向こうの路地にある牛すじカレー店も同様だった。
まだ5月ながら、蒸し暑く日差しが強い日だった。今日は“悠”を利用しようと思っていたが、暑いので“つけそば”にしよう。隣の席に座る同僚に、話すとカレも同行したいと言った。
小滝橋通り途中から駅に向かう途中の路地に入ると、遠目から幟(のぼり)が風に靡(なび)いているのが分かる。今日も、元気に営業しているようだ。
店内に入ると、カウンター席は全て塞がっている。同僚の待つと言う言葉に安心して、先ずは券売機で料理を決めることにした。
今日はつけ麺気分なので、“味玉つけそば”のボタンを押し、食券を取って外待ちした。“悠”が初めての同僚も、同じ料理にしたようだ。
7人で満席とは言え、奥まった立地にも関わらず常に満席を維持している。それだけ、認知されリピする客が増えた証だろう。
5分ほど外待ちをして、並びの席が2つ空き店内に入った。
山内店主に食券を渡す際、麺を“大盛”、さらにランチサービスの“ライス”の提供をお願いした。“つけそば”は、中盛、大盛は同料金となった。
合わせて、“砂糖少なめ”と告げた。味の調整は仕上げの際にするので、食券を渡す際に言うことにしている。
甘いつけ汁は苦手だ。ただ甘さが全くないと、どうしても塩分の角が立ってしまい味に円やかさがなくなってしまう。
そう言うこともあり、悠で“つけそば”を注文するときは砂糖を調整して貰った。
以下に山内店主が甘いつけ麺に拘(こだわ)る理由はツイッターにある。その1文を、そのまま引用しよう。
“目白丸長さんや東池袋系でも特に甘いとされる滝野川大勝軒さんが大好きで影響を受けてますので、つけは甘くなければという信念の持ち主です(笑)。もちろん「砂糖抜き」や「砂糖少なめ」も受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 ”
店主のワンオペだが、5分ほどで料理は提供された。
麺は冷たく、つけ汁は熱々で、温冷の温度差を楽しめた。細麺だが、パツんとした食感、腰が熱々スープに馴染み、麺とつけ汁との一体感を楽しめた。
甘さの加減を適度に調整しているので、円やかな味わいは損なわれていなかった。
つけ汁に浮いた大量の葱が、脇で良い仕事をしていた。
同僚も、充分に満足しているのが窺えた。
翌週、ひとりで来たときは、“つけそば”は醤油にして楽しんだ。
山内店主に夏限定、“冷し中華そば”の提供は、6月の予定を少し遅らせているようだ。気温が上がらないのが、その理由らしい。
寒の戻りで、かなり寒い日となった。昼時になると雨はみぞれになったようで、一段と寒さは増した。
このところ、昼時は電車に乗って遠征していたが、寒いことも手伝って久しぶりに“あの店”熱々の一杯を楽しむことにしよう。
店内に入ると天候が悪いこともあって、間引きされた7人掛けカウンターには先客は4人と少ない。傘立てに傘を置き、券売機の前に立つと、限定として“3種のミックスワンタンメン”のポップがある。今日は、久しぶりに悠が得意とするワンタンメンを限定で楽しんでみようと思った。
券売機上のポップに従い、“ワンタンメン”と“ミックス変更”のボタンを押し、いつものように“大盛”とトッピングの“味玉”を追加した。
カウンター一番奥の席に座り、山内店主に購入した食券を手渡した。その際、ランチサービスのライスを付けて貰うことを忘れなかった。
今日は客が少ないので、すぐにボクの調理がスタートした。
寒さも手伝って、昼時にも関わらず人通りは少ない。
ワンオペでも手際が良いので常に提供は早いが、今日は客入りが少ないこともあって特に提供は早かった。
まずは蓮華を取って、スープをひと口…
動物系と魚の出汁、これに醤油ダレのフックが効いて、いつもながらに楽しめる。何よりスープが熱々なのが、寒いには何よりも有り難みを感じる。
加水低めの細麺が、しっかりとスープを持ち上げ一体感がある。パッツんパッツんとなる手前の食感が、特にお気に入りの細麺だった。
山内店主に聞くと、大栄食品の麺を利用しているのは、兄弟子である修行先のかづ屋、その師匠にあたる支那そば たんたん亭が使っているからだそうだ。
主役の3種ワンタンへと、箸を移そう。
それぞれ、海老、豚、鶏の個性あるワンタンが楽しめる。もっちりとした皮、たっぷりとした餡は、食べごたえある、豪快なワンタンだった。
味玉、2種の焼豚と、いつもながらに安定した味を楽しんだ。
客が履けたところで、店主とラーメン店の話題で話が弾んだ。
窓ガラス越しに外を見ると、みぞれはさらに強くなっていた。
同僚が“悠”で、限定を提供していると言った。限定はカレーつけ麺で、かなり楽しめたようだ。悠(https://twitter.com/menyayu_okubo)のツイッターをチェックし、早速利用することにした。
寒い日のつけ麺になるが、悠のつけ汁は温かいから大丈夫のはずだ。
外から店内を覗くと、7席あるカウンターは残念ながら満席だった。券売機で食券を購入して、外で待つことにしよう。
券売機から、“カレーワンタンつけそば”のボタンを見つけ、紙幣とコインを投入した。中盛1.5玉は無料なので、食券を渡すときに店主に伝えれば良い。“チーズ”トッピングもあるが、止めて代りに“味玉”のボタンを押した。
幸いにも食券を購入しているときに、先客が食べ終わって席を立った。
簡易なアクリル板で仕切られたカウンター角の席を、調理の傍ら素早く片付け席を促した。店主ひとりのワンオペだが、いつもながら手際の良さを感じる。
着席をすると、食券を渡すのは待つように告げられた。調理の途中では、食券の受け渡ししないのはいつも通りだ。
先客の料理を提供し食券を渡すと、早速カレーワンタンつけそばに取り掛かった。しばし店主の仕事ぶりを眺めながら、料理の提供を待つことにしょう。
手際が良いので、ストレスなく料理が提供された。さらにランチサービスのライスが手渡しされた。
麺の丼を見ると、海苔、メンマ、2種の豚チャーシュー、鶏チャーシュー、そして味玉が乗っている。
一方つけ汁の丼には、玉ねぎ、長ねぎ、焦がし葱、鳴門巻き、そしてワンタンが3つ入った。
悠の特徴ある大栄食品の細麺をスープに浸し、まずは一気に啜った。ほんのり甘く、ピリっとした刺激が、口いっぱいに広がった。しかもスパイシーさが舌先に伝わり、本格的なカレーの一杯を楽しめる。
さらに焦がし葱がアクセントとなって、香ばしい仕上がりとなった。
スープのベースは醤油タレで、ほんのりと魚介、豚骨出汁の風味を感じる。細麺と言うこともあり、スープとの絡みは抜群に良い。
今回はチャーシューが3種となった。いつもの2種の豚チャーシューに鶏チャーシューが加わった。豚とは違う食感、旨味を楽しんだ。
ワンタンはつけ汁の丼に、3つ入っている。モチモチの皮、それにたっぷり詰まった餡が堪らなく旨い。さすがワンタンを得意とするだけはあると改めて感じる。
正直もう少し甘さは控えめの方が好みだが、これは最初に店主に伝えれば調整が効きそうだ。
店主にかなり旨かったことを伝えると、口の肥えたお客さんには物足りないかもと謙虚な言葉が返ってきた。
新春のランチ初めは“悠”でと思っていた。
残念ながら5日は都合で利用できなかったが、6日は利用が出来そうだ。厄介なのは、首都圏に正午前から降り始めた雪だった。
新春の“特製”は、運良く今日6日まで販売していた。
さすがの人気で、狭い店内はすでに満席状態で、この雪の中外待ちするしかなかった。
満席なら店内で食券を買い、一旦外で待つ。店主から入店のアナウンスがあって初めて店内に入る。申し訳なかったが、あまりに雪の降りが強くなったので券売機前の狭いスペースで待たせて貰った。
先客が食べ終わり、片付けが済んでようやくカウンターに座ることが出来た。と同時に購入した食券を、店主に渡した。
今日はラーメンの情報誌、TRYで評価の良い“味噌”で楽しんでみよう。
店主が話し掛けて来たタイミングを見計らって、新年の挨拶をした。他に客がいて調理をしていると、店主になかなか話しがし辛い。
店主ひとりのワンオペだが、調理、片付け、両替にと、いつものように手際よく仕事をこなしている。
外を見ると、次第に雪の降り方は激しさを増した。
いつの間にか、ふたりほど外待ちの客がいた。イレギュラーに店内で待っていたことに、ふたりには申し訳なく思った。
すぐに正月の特別仕様の“特製味噌そば”の大盛り、さらにランチサービスのライスが提供された。
新春の特別仕様の料理のトッピングは、暮れに楽しんだ年越しの“特製醤油そば”のものと同様だ。ただ“焦がし葱”がさらに追加されていた。
卓上から箸と蓮華を取り、まずはスープからひと口啜ってみよう。
ほんのりと甘いスープでコーティングされたスープは、味噌の味がガツンと来る。ストレートな味噌味と言うよりは、円やかな旨みを感じた。そした香ばしい旨みが舌先に感じる。これは焦がし葱の特徴で、スープとの調和が楽しめる。
麺にシフトして、一気に啜り上げた。
悠おなじみとなる、大栄食品の細ストレート麺が、スーブに絡み馴染んでいた。心持ち今日の麺は柔めだが、なんら問題はない。麺の硬さは、いつも特に指定しない。デフォの麺の茹で上がりの状態、スープの仕上がりで、その日の店主のコンディションを感じたいからだ。
特製ね2個あるワンタンはモチモチ、そして餡がしっかりと詰まり、噛み締める度に旨みな口に広がった。
3枚入る香ばしい焼豚で、ライスを口にした。2種の焼豚の食感、旨みの違いを楽しみながらライスを楽しんだ。
最後にハーフカットの味玉を口にし、“寿の鳴門巻き”で料理を〆た。
今年一年の外食は、ここ悠の“寿”からスタートとなった。
山内店主にあらためて挨拶を交わし、店を後にした。雪が舞う店舗外観は、なんとも味わい深い。
仕事納めのその日に、店主の山内氏に挨拶方々利用した。
店内に入ると、外の並びこそなかったが、カウンターのみの7人席は全て塞がっていた。食事を終えた客が席を立つと、今まさに券売機を利用したばかりの客が座った。
券売機で料理を決めようと前に立つと、今日は限定メニューのみでの営業と分かった。
限定メニューは3品で、年越し“特製そば(醤油)”、“特製味噌そば”、それに“特製辛味噌そば”だった。迷わず“特製そば(醤油)”と“ラーメン麺大盛”のボタンを押した。“味玉”はないか店主に確認すると、料理に半分付いているようだった。
寒空の中、外待ちしようかと思ったところ、幸いにも並びふた席が空いた。自分の後には、やはり常連の同僚が後に続き、入口すぐのカウンターで並んだ。
食券を店主に渡し、料理の提供までの間、しばしふたり歓談した。
入口脇に高級そうな、大小の漆喰塗りのラーメン丼がそれぞれに重ねられ、さらに蓮華が箱に置かれている。箱に書かれた文字を見ると、“ご自由にお持ち帰りください”とある。ラーメン丼、蓮華はともに店で使うものとは違うので、仕事をこなしている店主に聞いてみた。
実は、ここ悠が営業するごく短期間、味噌ラーメン専門店が営業していた。そこを居抜きで入ったのたが、その際、未使用の丼などがあったそうだ。利用することもないので、お客さんに持って帰って貰おうということだった。
魅力的な丼、蓮華だったが、持ち帰るには重すぎた。
店主と新規開店のラーメン店、同僚とは職場の話と代わる代わる話しているうちに、料理がカウンターに提供された。
ちなみに、同僚は大盛こそしなかったが、同じ料理だった。
食券を渡す際店主に言い漏らしたが、ランチサービスのライスはいつものように提供された。
年越し“特製そば(醤油)”には、普段乗らないナルトがつき、年末のお祝い気分をもり立てる。それに店主オハコ(十八番)の自家製ワンタン、増量の2種チャーシュー、海苔、ハーフの味玉、シナチク、葱となかなか華やかだ。
いつものように、蓮華でスープをひと口…
染み入る醤油の味わいが、口いっぱい広がる。素材由来の甘みすら感じる。
悠は味噌ラーメンでTRY(東京ラーメンオブ・ザ・イヤー)に6回連続入賞を果たしている。
個人の嗜好だが、ボクはむしろ、醤油ラーメンにこそ店の持ち味を感じた。
ライスを蓮華に乗せ、スープに潜(くぐ)らせ楽しんだ。納得のいく一杯に、今回も感謝だ。
最後にご主人に、年内の感謝を込め挨拶をしいて“悠”との一年を〆た。また来年、新春からよろしくお願い致します…
10月も終わりに近づいたある日、時間調整で乗換え駅の本屋に寄り、MOOKコーナーを見ると“TRY”が並んでいた。
年一回発刊されるその雑誌を見ると、すでに年末が近づいたキモチになる。
各部門ごとに分かれたページを捲(めく)ると、“味噌部門”にいつもの見慣れた店名が載っていた。
雨後の竹の子のように生まれては消える、浮き沈みの多いラーメン店にあって、“3年連続味噌部門”に入賞を果たしていた。
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東京で一番旨いラーメンを決める 、TRYこと“東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー”で、今年も味噌ラーメン部門で入賞していた。
今年で22回目となるラーメン最高権威のアワード本、それが“TRY(トライ)”だった。Tokyo Ramen of the Yearの頭文字から取ったネーミングは、その年の“東京で一番旨いラーメン”を格付けしようと、業界の権威者が集まり投票形式で決めた。
始まりは、講談社の“TOKYO★1週間”という雑誌の1コーナーに載ったことからだった。
その年度に活躍した新店には、“TRY新人大賞”の他に、“新人部門賞”を、実力店で特に優れた店舗へ贈られる“TRY大賞”、ジャンル別の“名店部門賞”などが並んだ。
数多いラーメン店の中からどの店が選ばれたか、その年のラーメン業界のひとつのトレンドとなった。しかし、受賞を果たした店舗も、いつの間にか消えることも多い。
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悠の料理では、実は味噌より醤油ラーメンが好きだ。深い意味はなく、単に嗜好の問題だった。今日も醤油モードで店内に入った。そもそもコロナ禍にあって客席を間引きしたとは言え、最近は常に満席をキープしていた。
店内に入ると幸いにも、カウンター真ん中の角の席が開いている。券売機から“味玉そば”にしようと見ると、ポップに限定として“揚げネギ醤油そば”があるのに気づいた、早速“限定”のボタンを探し、“大盛”、さらにトッピングとして“味付玉子”のボタンを押した。
カウンターに座ると、“食券はお待ち下さい”と店主からアナウスがあった。いまだ提供されていない先客の料理を、店主ワンオペで奮闘している。料理が提供されていない客は、ほぼ全員だ。いつものようにリズミカルな動きで、次々と料理は提供された。その間に食券を渡し、いつの間にか自分の料理に取り掛かっていた。相変わらず、山内店主の手際の良さには感心する。
料理を提供する際、店主から“大盛にし忘れた”とアナウンスがあった。どうやら、別盛りにしてくれるようだった。
焦がし葱の香ばしい香りが、ボクの鼻腔をくすぐった。
先ずはスープを蓮華に掬(すく)い、ひと口…
焦がし葱の香ばしさと素材の甘みがスープに染入り、得も言われぬ旨味となって口いっぱいに広がった。
揚げネギを使うことで、どうやらいつものスープの顔が変わったようだ。
忘れた頃に、別皿に追加の麺としてではなく、和え麺として提供してくれた。和え麺はメニューにはないが、あっさりした深みある味でこのままで楽しめる。
麺はいつもの、大栄食品の極細ストレートが合わさった。スープとの相性は、抜群だろう。山内店主は細麺好きで、つけ麺にも太麺でなく、この細麺に拘(こだわ)りがあった。
客が出ると、次に入れ代わりの客が来てと、満席状態を常に維持した。後客の料理の提供が全て終了したところで、TRY入賞の労(ねぎら)いの言葉を伝えた。店主は照れ隠しか、“今は濃厚な味噌ラーメンが主流で、ウチのは主流ではない”と返した。おそらくは謙遜なのだろう、真摯な謙虚さが伝わって来た。
そろそろ、季節限定の“つけそば”が終わってしまう。ここに来れば、必ず満足出来るはずだった。8月のランチは敢えて“悠”をランチ候補からハズし、新宿西口界わいでランチを開拓していた。ほぼ2週間ぶりに、店の扉を開けた。
券売機から、まず今日の料理を決めよう。今日は冷やしつけそば狙い、それも贅沢をして“冷やしワンタンつけそば”にしよう。券売機に千円札を入れ、ボタンを押して食券を購入した。券売機そばのカウンターが空いていたので、迷わずに腰を下ろした。
先客は5人ほど、7人で満席なので客入りはまずまずだろう。並びこそなかったが、ひっきりなしに客が来た。
ご主人に久しぶりの挨拶を交わし、近況を二言三言話をした。食券を渡すと、醤油か塩か聞かれ、塩つけそばを大盛でお願いした。砂糖の加減を聞かれたので、今日は心持ち少なめでと告げた。砂糖の加減については、注文することもあり最近は確認してくれた。
先客5人はまだ料理の提供はなかったが、次々に料理はカウンターへと提供された。店主ひとりのワンオペにも関わらず、相変わらず手際が良い。
先客全員の料理が提供された時点で、“冷やしワンタンつけそば”の調理がスタートだ。
つけ汁にはたっぷりの刻み葱、焦がし葱、“出汁氷”、そして主役のワンタンが入った。麺の丼にはクラゲ、キュウリ、メンマ、海苔、チャーシュー2種、そしてプチトマトの布陣となる。
早速、細麺をつけ汁に潜らせ、一気に楽しんでみよう。
つけ汁の酸味、甘みは程よく、引き締まった味わいだ。コシの強い細麺につけ汁がしっかり絡んで、申し分ない塩つけそばに仕上がった。
ワンタンの皮は、ぷるぷるツルツルな食感が良い。皮の中からたっぷりのひき肉が、旨味成分とともに顔を出した。
さらにキュウリ、クラゲを麺に合わせ、つけ汁に潜らせて楽しんでみた。それぞれの違った食感が心地よい。
直ぐに無くならないよう、慈(いつく)しむようにゆっくり、大切に口にしていった。悲しかな、最後のときは来る。
山内店主は、街の人出について聞いてきた。“いつまで、この状況が続くんでしょうねぇ。”いつしか、この2つが店主の口癖になってしまった。
限定が終わる前に、また楽しみに来てみよう。
この時季になると、楽しみにしている限定料理があった。限定の登場は、夏の到来を意味した。
“冷しつけそば”には、醤油と塩がある。先週は“醤油”大盛、そして“砂糖抜き”でお願いした。
デフォルトでも出汁、酸味、砂糖のバランスが良く、充分に楽しめる。実は前回砂糖を抜いたことで、醤油出汁がとがってしまい、円やかさに乏しい料理だったことを思い出した。
店舗まで来ると、待ち客が一組ふたりいた。親切にも、券売機で食券を買って並んでいることを言ってくれた。
食券を買って外で待っていると、すぐに店内から3人出て山内店主の声がけで店内へと入った。
入口すぐの空いたばかりの席に座り、食券を渡し大盛にしてくれるよう告げた。そして砂糖はそのまま、デフォでお願いした。ライスはもちろん、付けてくれるようお願いした。
先のふたりに先に料理が提供され、少し間をおいて自分の料理が提供された。ワンオペだが、手際が良いので待たされた感じは一切なかった。
スープを見ると、たっぷりの葱の他に、何か浮いているのが分かった。
大盛にした麺の入った丼には、プチトマト、クラゲ、メンマ、2種のチャーシュー、胡瓜が麺に乗って涼を誘った。
麺を出汁に潜らせ、一気に啜った。醤油出汁は規定通りに砂糖を入れたことで、醤油の角が取れ円やかになった。実は甘くて酸味な効いたつけ麺は、あと口が好きではなかった。だがここでは砂糖で醤油出汁を調整した方が良いだろう。
焦がし葱を入れたことで、さっぱり感の中に香ばしさが加わった。料理をジャマせず、程よく脇を締めた印象だ。
トッピングは見た目同様、食感が楽しめる
山内店主は、焦がし葱を加えた感想を聞いてきた。感じたままの、率直印象を返した。
“いつまで、この状況が続くんですかねぇ。”笑いながら、しみじみと話す最近の店主の口癖だった。
60℃を超える調理場でのマスクは辛い。帰り際、そう言っていたのが、妙に印象に残った。
この時季になると、楽しみにしている限定料理があった。限定の登場は、夏の到来を意味した。
職場の同僚から、悠で“冷しつけそば”が提供されていると聞いた。早速、翌日店へと向かった。
券売機上の限定メニューのポップで料理を確認し、紙幣を投入した。大盛は無料なので、食券を渡すときに告げればよい。ボタンから“冷しつけそば”を探して押し、合わせて“味玉”を追加した。
約束してはいなかったが、すぐに同僚が店内に入り券売機の後ろに付いた。
店舗は小滝橋通りから路地に入った場所にあり、他に飲食店は極めて少ない。ロケーションとしては、恵まれているとは決して言えない場所に店舗を構えた。今日は同僚が席に並んで座る頃には次々と客が入り、席は全て埋まった。狭い店内に入りきれない数人は、日差しの照りつく中、外待ちで並んだ。時節柄、集客出来ない飲食店が多い中、なかなか認知されているようだ。
ワンオペながら、店主の手際は鮮やかだ。食券を手渡してから5分ちょっとで、水で〆る行程を済ませ、トッピングの飾りつけをして提供された。
“冷しつけそば”には、醤油と塩がある。今日は“塩”大盛、そして“砂糖抜き”でお願いしている。
デフォルトでも出汁、酸味、砂糖のバランスが良く、充分に楽しめる。だが、砂糖を抜いた方が、出汁、塩(または醤油)、そして酸味の旨味が締まってさらに楽しめる気がした。
麺は有料で“特盛”があるが、サービスの小ライスを付けているので、“大盛”で充分に満足出来るはずだ。
麺の丼を見ると、さながら銀河に並ぶ小惑星のようだった。トッピングには2種類の焼豚、クラゲ、キュウリ、メンマ、海苔、色つけのミニトマト、追加した味玉だ。
つけ汁には、たっぷりの葱、そして氷が2個浮かんだ。
この氷こそが、悠の冷しつけそばの特徴だった。出汁を凍らせ、氷が溶ければ薄くなるはずのつけ汁は溶け始めると、次第に出汁の旨味が増幅した。
早速、麺を手繰(たぐ)り、つけ汁に潜(くぐ)らせ、一気に啜り上げた。
大栄食品の細麺が、塩のつけ汁をしっかりと持ち上げ楽しませてくれた。
つけ麺を敢えて太麺にしないのは、山内店主のこだわりがある。店主は、ラーメンは細麺の持論があるようだ。
細麺で大盛にすると、かなり腹に溜まる。食べ応えは、たっぷりあった。
クラゲが入ると、さらに涼が増し、食感に特徴が出て楽しめた。
今日は客で賑わっていたので、店主と世間話が出来なかった。次回来たときの楽しみに、持ち越すことにしよう。
この日はカレー気分で、いつも利用する牛すじカレーに行った。外の並びは10人ほどあり、待っていたら午後の執務に支障が出る。今来た道に踵(きびす)を返し、ボクはカレー気分を方向転換させた。
最近は特に並びがあって、利用できないことが多かった。
緊急事態宣言下でも個人店が多いから、休業する店舗は少ない。それを考えると、人気の程が窺える。
一本手前の路地に入ると、遠目に幟(のぼり)がたなびいているのが分かる。店内に入ると、席を間引きしたカウンターはほぼ客で埋まっていた。運良くひとつだけ席が空いているのを確認し、券売機で本日の限定に目が留まった。
早速、限定の“担々そば”のボタンを押し、さらに“大盛”にした。
アクリル板に仕切られた席に座ると、店主から“いつもの?”と聞かれた。“いつもの”とは、味玉そばを大盛にして、サービスのライスを付けて貰う注文だった。
今日は“限定”でと伝え、食券を渡して、料理の提供を待った。
“悠”は飲食店に乏しい路地にあり、飲食店としてはかなり不利なロケーションに店舗を構えている。路地に多くの飲食店が並び人の流れが多い、牛すじカレー店とは状況は違った。
店主ひとりのワンオペにも関わらず、相変わらず手際が良い。麺をスープに泳がせ、叉焼をバーナーで炙り、盛り付けをしたら完成だ。
卓上の箸と蓮華を取って、先ずはスープから一口楽しんでみよう。辛さは特に指定しなかった。円やかであり、スッキリした味わいがある。日式担々麺は得てして辛さを抑えるため、ラー油、芝麻醤を合わせ、胡麻ペーストとかコクを出すスープが多い。実は日式担々麺が、あまり好みではなかった。
悠の“担々そば”は、日式担々麺のマナーとは違って、スッキリしてしかも柚子を使ったことで担々風ラーメンに仕上がっていた。ラーメンファンでもある山内店主があちこちで食べ歩き、行き着いた担々麺はオリジナリティがあった。
客が捌(は)けたところで、店主が聞いてきた。“担々麺は、お嫌いではありませんでしたっけ?”
お客さんがいると、暗黙のルールで店主とは会話をしないことにしている。
緊急事態宣言中のランチから、東中野遠征をしていた。歌舞伎町の裏にある大久保、新大久保でランチの雑踏を避けた。…と言うよりは、エスニック、コリアン料理以外の料理が恋しくなっていた、と言った方が正確だろう。
遠征中に宣言は解除されたが、引き続き東中野ランチは継続していた。
その間馴染みのカレー店へは、気づくと1か月近くご無沙汰していた。ここ悠も、同様に暫く利用しないでいた。
今日は仲良くさせて頂いている、若いトップと一緒の利用だった。常々飲食店の話題をする中で、自分のよく利用する店へ一緒に行くことになった。
先客は4人ほどで、奥の席が全て埋まっていた。まずは、券売機では、いつものように“味玉そば”と“大盛”のボタンを押した。同行者は一瞬迷っていたようなので、“ワンタン麺”を勧めた。ワンタンに自信のあるかづ屋出身なので、最初なら間違いなく楽しめるはずだ。
悠を利用して長いが、初めて入口そばの席に並んで座った。
食券を渡す前に、山内店主から“いつもの!”と聞かれ、“お願いします”と返した。“いつもの”とは、味玉そば大盛にサービスライスを付けることだった。
同行者はサービスライスを合わせ、どうやら満足してくれたようだった。
いつも話し掛けてくる店主は、この日は同伴していたせいか会話はなかった。
間を一日開け、今日はひとりで利用した。
今日は贅沢に“チャーシュー麺”、“大盛”と決めた。先客にたまたま同僚がいた。隣の席が空いていたので、席に座った。店主から“いつもの”と聞かれたが、“珍しくチャーシュー麺”と笑いながら返した。同僚は会話に乗ることはなかったが、ただ笑っていた。
店主に東中野に、ランチ遠征していることを話した。
ならば、代々木やこの際、御苑まで遠征してはどうかと、無理なことを言われ笑い合った。到底、1時までに行って帰ってこれる距離ではないことを知っての、店主一流のギャグだった。
山内店主はボクの波と雲レビューを読んでいるようで、是非利用したいと言った。もちろん、昼のみの営業時間を、知ってのことだった。
チャーシュー麺に乗るチャーシューは2種類の部位を5枚使い、味玉そばに使うチャーシューより倍の厚みがあった。仕上げにバーナーで炙り、香ばしさが増している。ボクは2枚は残し、サービスライスに合わせるのが好きだった。
帰り際、店主は、職場の同僚を連れて来ることのお礼を言った。ボクは良い店は、紹介したいと返した。
山内店主とラーメン屋巡りを出来るのは、いつのことになるのだろう。そんなことを思いながら、職場へと急いだ。
今年で21年目となるラーメン最高権威のアワード本、それが“TRY(トライ)”となる。Tokyo Ramen of the Yearの頭文字から取ったネーミングは、その年の“東京で一番旨いラーメン”を格付けしようと、業界の権威者が集まり投票形式で決めていった。そもそも講談社の“TOKYO★1週間”という雑誌の1コーナーに載ったのがことの始まりだ。
その年度に活躍した新店には、“TRY新人大賞”、各“新人部門賞”を、実力店で優れた店舗へ贈られる“TRY大賞”、ジャンル別の“名店部門賞”などを選んだ。
数多いラーメン店の中からどの店を選ぶか、そんなひとつの道しるべとなった。
ある日、時間調整で本屋に寄り、MOOKコーナーを見ると、TRYが並んでいた。年一回発刊されるその雑誌に、季節の移り変わりの早さを感じた。
ページをパラパラと捲(めく)ると、“味噌部門”の最終ページに見慣れた店名が載っていた。
ラーメン店の浮き沈みの多い中、2年連続味噌部門に選ばれるのは末席と言えども偉業と感じる。
早速翌週に行ってみた。
久しぶりに外観写真を撮り、店内の券売機から“味噌そば”、“大盛”のボタンを選んだ。TRYに掲載されたにもかかわらず、今日は珍しく客は他にはいない。
奥のカウンター席に移動し、食券を渡して席に座った。その際、ランチサービスのライスを忘れずにお願いした。
まず店主に2年連続、TRY味噌部門入賞を労った。山内店主は、最下位だと、昨年同様の返事を返したが、顔を見ると満更でもないようだ。数あるラーメン店で2年連続の入賞は、地道な仕事がなし得た偉業と思う。
店主が調理の際、他に客もいないことからTRYに載ったラーメン店の話題で盛り上がった。店主はラーメンマニアなので、会話は実りある情報源だった。
まずはスープを一口楽しんでみよう。粘度のあるスープは、味噌自体のもののようだ。甘め寄りのスープは、クドさはなくむしろ上品な味わいだ。今はなき代々木の名店、“めじろ”にインスパイアされたようだ。
焦がし葱がアクセントになって、スープに香ばしさが生まれた。このスープには、悠おなじみとなる、大栄食品の細ストレート麺が、よく馴染んでいた。
店主とラーメン屋巡りを約束していた。果たしていつなるかは、今は分からない。
週に最低一度は、利用している。客が入っていないと、山内店主とふたりだけの会話を楽しめるからよい。最近は満席のときがあったりして、店主と会話をせずに退店することも度々あった。
店内に入ると、先客はふたりだけだ。ここ最近では珍しいほど少なかった。
券売機の前に立つと、予定していた夏限定メニューの“冷やしつけそば”は、すでに終了していた。代わりに、限定の“つけ野菜”が登場している。
L字カウンターの角近くに座り、券売機で買ったばかりの“限定”の食券を店主に渡した。
カウンターは2席間引きで、アクリル板を仕切りしているのは変わりない。消毒用エタノールも、利用しやすいように置かれていた。
ワンオペながら、いつもの手際の良さで料理はすぐに提供された。
麺は大栄食品の、いつもの細麺だった。
つけ汁には野菜が思った以上に、たっぷり入っていた。
早速、麺をつけ汁に潜らせ、一気に啜ってみよう。
ほんのりと甘酸っぱいつけ汁が、細麺にしっかり絡んだ。そのつけ汁に浸った野菜は、シャキシャキとして食べごたえがある。
店主は笑いながら、細麺だと結構お腹溜まると話した。その通りで、中盛りでも細麺だと、ずっしりと胃にのし掛かかる。
今回も出来栄えに手応えを感じる、限定つけ麺だろう。
いつも店主とは、ビートルズか、ラーメン店の会話をよくする。前回来たときINGS系ラーメンの話題が出ていた。自分もすぐに利用し、店主同様にコッテリラーメンにしたと話した。感想を聞かれ、ホープ軒モチーフとかえした。
山内店主はその並び、以前路面蕎麦だったところに、新たにラーメン店が出来たと情報をくれた。感想を聞くと、喜多方ラーメンみたいだと言うことだ。
近々利用し、店主に感想を報告しよう。
楽しい時間は、そろそろタイムアップだ。
この時間こそが、キモチをリセット出来るひと時だった。
お盆に入った猛暑の金曜日、昼どき行ってみると残念ながら休業だった。冷たい麺類の気分だったので、結局その日は牛すじカレー 小さなカレー家で、つけうどんを、冷しで楽しんだ。
翌週月曜日に行くと、いつものように幟(のぼり)が立ち、元気に営業していた。どうやら、お盆の時季は集客できないからと店を閉めたようだ。
メニューを見るまでもなく、“冷しつけそば”と決めていた。券売機に掲げられた限定メニューの冷しつけそばに、あたらしく“坦々”が追加されていた。スグ前に入った女性が、券売機前でもたついている。どうやら限定の“冷しつけそば”のボタンが分からないようで、店主にアレコレと聞いている。ボクが店主に代わって、女性客に教えた。
券売機で“限定”のボタンを押し、購入した食券を山内店主に手渡した。その際、“坦々”を大盛り、サービスライスと伝えた。
その後女性客がふたり入り、食事が終わるまで店主と客4人の静かな時間が流れた。
新しく追加された限定メニューの“坦々”は、そもそも店主の賄(まかな)いだったそうだ。出来が思いのほか良かったので、限定メニューに追加したようだった。
まずは先に来た女性とボクの料理が、同時にカウンターに乗った。女性も同様に、冷しつけそばを坦々にしていた。
トッピングはいつもの“冷しつけそば”と同じで、坦々スープに代わっただけだ。早速、いつもの大栄食品の細麺をスープに浸し、一気に啜った。ほんのり甘く、ピリっとした刺激が口いっぱいに広がった。スープの奥には、魚介出汁の風味を感じた。細麺と言うこともあり、スープとの絡みは抜群に良い。
途中、スープ丼に麺にトッピングされた具材、キュウリ、クラゲ、メンマを少しづつ入れ、その食感を楽しんだ。
調理の区切りがついたところで、店主に話しかけた。
会話の内容は、店主に教えて貰った、ラーメン店に行ったことを話してみた。店主からは、老舗の古武士が閉店して、あらたにラーメン店がオープンしたことを教えてくれた。
ここに来ると好きなビートルズやラーメンの話が出来て、キモチはリセットされる。
評判が良かったようで、“冷やしつけそば”、“冷やしワンタンつけそば”の醤油、塩、辛醤油の3種類が復活していた。煮干しの出汁氷が入って、氷が溶けることで煮干し風味が増す逸品だった。
結構雨が降っていて梅雨寒の日だったが、今日を逃すと次いつ出会えるか分からない。迷わず、“限定”と“味玉”のボタンを押した。8月まではつけ麺の“大盛”は、無料だった。
店内は席を間引きしてはいるが、そこそこ人が入っている。カウンター奥の席に座り、限定の“冷やしつけそば”の“塩”を大盛で、さらにサービスライスをお願いした。
甘いつけ麺が苦手なので、山内店主には前回同様、甘味調味料を抜いてくれるよう伝えた。
ワンオペながら手際が良いのは、いつもながら見事な職人芸だろう。
注文を受け、料理がテーブルへと提供されるまでに、待たされるキモチにはならない。
今日のBGMは、ビートルズのアンソロジーからで、店主録音したものをシャッフルで流していた。
麺の乗った皿には、前回の辛醤油同様、焼豚(豚バラ、豚肩ロース)クラゲ、メンマ、プチトマト、キュウリ、海苔そして味玉が華やかに乗っている。スープにはたっぷりの葱、そして煮干し出汁の氷が浮いている。
つけ麺に太麺を採用しないのが、麺屋悠の特徴だ。
大栄食品の細麺が、塩のつけ汁をしっかりと持ち上げ楽しませてくれた。ほのかな酸味、そして豚骨、魚介の味わいは、塩でも充分に合っている。ただこの塩に限っては、甘みを抜かない方が良さそうだ。塩のつけ汁の優しいまったり感には、甘みが必要だったかも知れない。
以前つけ麺に塩があるのに、塩ラーメンを提供しないことを聞いたことがある。試行錯誤したが、結局デキの良い料理にはならなかったようだ。
今日は店主と、世間話をする時間はなかった。日をあらため、ビートルズの話に行ってみよう。
非常事態宣言は解除されてはいたが、営業時間を一時的に短縮して、11:30から15:00 までの営業となっている。
梅雨入り前だったが、急に暑さが増してきた。時節柄、限定メニューとして、煮干しの出汁氷が入って冷やし中華より冷たい“冷やしつけそば”、“冷やしワンタンつけそば”を醤油、塩、辛醤油の3種類の味で繰り出してきた。
今日は梅雨入り前だったが、すでにかなり暑さになっている。店内に入ると、客は珍しく誰ひとりといない。券売機から“冷やしつけそば”を大盛にし、味玉を付けた。店主から味の種類を聞かれたので、迷わず“辛醤油”にした。
もちろん、サービスライスを、いつものようにお願いした。
甘いつけ麺が苦手だと山内店主に言うと、甘味の調味料を抜いてくれるとのことだった。
カウンター奥の席に、腰を下ろした。
店主に客入りについて菊と、昨日は客が入ったが、今日は全くとのことだった。
ボクの料理を作り始めしばらくすると、客が次々と入り満席になった。
ワンオペながら手際が良いので、提供にストレスを感じない。
麺の乗った皿は、見るからに冷やし中華のようで涼を誘う。焼豚(豚バラ、豚肩ロース)クラゲ、メンマ、プチトマト、キュウリ、海苔そして味玉が華やかに乗った。
スープにはたっぷりの葱、そして煮干し出汁の氷がが浮いた。
悠の店主は、細麺を好んで使う。大栄食品の細麺が、つけ汁との相性はとても良い。ほのかや酸味、そして豚骨、魚介、さらに唐辛子で引き締まったスープは、むしろこの細麺にはぴったりだった。
豪華なトッピングで、色々な食材の味、食感が豊かなハーモニーとなって口いっぱいに広がった。
真夏にはぴったりの限定の一杯は、夏の始まりをイメージした。
よく練られた料理だと思う。日頃使っていつも満足していること、ブレない料理の味、そして質の高い限定メニューを勘案してポイントを上げた。
ボクは悠の料理を標準として、他のラーメン店の料理の良し悪しを決める。しかし、比較される店は、ハードルが高いかも知れない。
5月7日の連休開けに行ってみたが、残念ながら店は閉まっていた。やはりこの時期だからなのだろうか…
翌週、在宅勤務が開けた火曜日馴染みのカレー店に行く水曜日、路地を見ると、看板が立てかけられているのが遠目から分かった。
よし、明日行くぞ…!
店内に入ると先客は2名で、山内店主はひとりの客と何やら話している。どうやら、馴染みのお客さんのようだ。
この時期、席が間引きされているのは当然として、席と席との間にプラスチック製のつい立てで間仕切りがされていた。
山内店主なりの、しっかりとした3密対策ということだろう。カウンター席での隣客との温もりはなくなるが、今のこの時期にはいた仕方がないことだろう。
券売機から以前も提供されたことがある、限定の“揚げネギ醤油そば”を“大盛”にして“味玉”を追加した。
L字カウンターの角の席を貰い、仕事着にしている自前のウインドブレーカーをハンガーに掛けマスクは外した。
食券を山内店主に渡し、休業しているのかと思ったことを告げた。ゴールデンウイークの週は人の流れは少ないから、その週いっぱいは休みにしたようだった。
コロナ禍の影響が、最小限で良かったと思う。
しばらくすると、職場の若い仲間がふたり入ってきた。彼らも“悠”の料理のファンで、定期的に訪れている。
残念ながらつい立てがあるので会話は出来ないが、どうやらスマートフォンでふたりテニスゲームを始めたようだ。
いつもながらの手際の良い調理で、すぐに料理とサービスライスが提供された。
醤油そばより黒っぽいスープが印象的な一杯には、追加した味玉の他、焼豚、メンマ、もやし、ネギ、それに香ばしい焦がしネギが生前と乗っている。
卓上の蓮華を取り、先ずはスープを楽しんでみよう。
素揚げして、葱を焦がしているのだろうか…葱の甘み、香ばしさがスープに移り、普段の醤油そばとは印象が変わった。
次に麺を一気に啜った。
麺はいつもとは違い、腰を感じさせつつ、モッチリした食感となっていた。
店主に麺を変えたか確認すると、大栄食品のストレート麺は変えず、茹で加減を変えたようだった。
“うちらしくないでしょう”と、笑いながら話す山内店主の顔が印象的だった。
ラーメンファンである店主と、食べ歩きの約束をしていた。いつ行けるのか、いまだ果たせない楽しみだった。
コロナ禍で“不要不急”と言う、それまでには聞き慣れない言葉で外出の自粛を要請されている昼どきに利用した。職場に出て出勤していれば、どうしても腹は空く。
3月末のある平日、馴染みのラーメン店へと向かった。
全く根拠がないことなのだが、普段利用している店で、対面でなければ少しは安全だろうと言う、そんな“安易”な思いがあった。
店内に入ると、全ての席が埋まっていた。間隔を開けてすわる…そんなことは、まだ言われてはいなかった時期だったように思う。
店主に挨拶をし、券売機で本日の料理を決め、いつものように“大盛”ボタンを押した。外に一旦出て、先客が食べ終わって出るのを待った。5分と掛からずに店内に入り、仕事着にしているウインドブレーカーを壁際のハンガーに掛けて着席した。
幸いボクの好きなカウンター奥の隅に、席を貰うことが出来たのが嬉しかった。
本日決めた料理の、“チャーシューメン”と“大盛”の食券を渡した。このときご主人に“いつもの(=味玉そば)”と聞かれたが、今日は違った。
チャーシューメンは支那そば、味玉そば同様、醤油系の一杯だ。鶏ガラ、煮干しの他、豚骨で出汁を整えているのでスープは優しい味わいながら引き締まっているのが特徴だ。
“てぼ”に麺を入れ、調理がスタートした。店主ひとりだが、全てをこなす手際はすこぶる良い。ラーメンが茹で上がる前にタレを丼に入れ、チャーシューの塊(かたまり)を厚めに6枚カットしてバーナーで炙る。寸胴からの出汁を丼に注いで、麺をスープに馴染むように入れた。仕上げに、綺麗に炙りチャーシューを乗せて完成だ。
悠のチャーシューは、茹で豚ではなく、焼豚タイプだ。硬く噛み心地があって、香ばしい。ラーメンにはもちろん、ライスにも合う。
チャーシューは、デフォのトッピングより枚数が2枚から6枚になり、さらに厚みがあった。
麺は料理によって変えず、大栄食品の細ストレート麺一本勝負なのが潔い。安心安定の味わいで、“悠”の料理にはピッタリだと思う。
今日も美味しく、楽しめた。
いつも安定して客が入っているのは、自分のことのように嬉しい。
いつこの状態が収束するのだろう。
そう話す山内店主は、マスクをしながらボクに話し掛けた。
先週あたりから、限定を提供し始めた。目新しさは、特に感じない。この店の既存の料理に、海老、豚肉のワンタンを、組合せただけの代物だ。
しかし、残念な限定ではなく、“悠”らしい素晴らしい仕上がりとなった。
今日はラーメン気分だったので、いつものように扉を引いて店内に入った。狭い店内は並びこそなかったが、カウンターのみの席は一つしか空いていない。
ラーメン誌に掲載されても影響は少ないが、一般誌となると客の入りは俄然違うと前回来たとき店主が話していたことを思い出した。
券売機には限定メニューがあったので、“その”ボタンを押して“大盛”にした。カウンターに座り、食券を置いて、提供までしばし待った。
ミックスワンタンメンは、海老ワンタンが2個、肉ワンタンが3個入った。スープは支那そば同様の、醤油ベースの魚介に豚骨を絶妙にブレンドしていた。麺は安定の大栄食品の極細ストレートを合わせた。これが、合わない訳はない。
淡々と調理する店主の姿を見て、料理の提供を待った。
まずはスープをひと口…
ブレのないスープが、体に染み入る。
そして麺を一気に啜った。
ワンタンは2種類、海老と肉ワンタンで味わいの違いを楽しめた。ワンタンはかづ屋譲りの仕上がりだが、既に“悠”オリジナルの味わいと言って間違いなさそうだ。
今日は混んでいるから、店主とは一言も話を交わすことは出来なかった。帰りは挨拶を交わし、ボクは店を出た。
雑誌"おとなの週末"のラーメン特集で、味噌部門に悠の"味噌そば"が掲載されたのを目にした。早速その味を確かめに、昼どきに利用した。昨日来たにも関わらず…だ。
店内に入ると、先客はふたり…。うちひとりは、すぐに帰った。
入口すぐの券売機で、"味玉味噌そば"、それに"大盛"のボタンを押した。カウンター奥の隅の席が空いていたので、そこを確保した。
店主に食券を渡したところで、客が次々と店内へと入って来た。そしてカウンターのみの席は、アッと言う間に全てが埋まった。結局店内に入れず、数名が店内に席が空くのを窺う形となった。
おそらく、今刊行している雑誌の効果だろうことは、容易に想像が出来た。
しばらくして、ボクの料理が提供された。味噌そばにも、悠オハコの焦がし葱がスープに浮いている。
先ずはスープをひと口啜ってみよう。円やかながら、引き締まった味わいだ。心持ち舌先にスープのトロミを感じる。
麺は料理によって変えず、大栄食品の細ストレート麺だが、これがこの料理にはぴったりはまった。
この日は混んでいて、店主と雑談を楽しむことは出来なかった。雑誌によると、八丁味噌など数種の味噌をブレンドして味を福よかにしている。味にフックのようにピリッとした締まりがあるのは、豆板醤によるものだ。
店主に挨拶をして、店を出た。今日は昼どきにも関わらず、かなり寒い日だった。それでも寒さが苦にならなかったのは、味噌ラーメンで体がポカポカになっていたからだ。
ヘビーユースで、"悠"は週一回は利用している。料理の味わいは、出身のかづ屋を既にに越えた印象すら感じる。
昼どきに行ったら、先客は一名しかいない。券売機で、限定の"つけ野菜"をサービスの中盛りにした。トッピングの"味玉"はいつものように付けよう。
いつもの"味玉醤油そば"にしないでつけ麺にしたのは、単に野菜気分だったからにすぎない。
食券を店主に渡し、空いているカウンター一番奥の席に腰を下ろした。先客が帰ったので、店主とはラーメン店の話をした。料理が提供される頃には、狭い店内は近隣のサラリーマンで全てが埋まった。
お気に入りの店が人気になるのは嬉しいが、これ以上人気になると利用出来なくなる。人気も程度問題で、痛し痒しと言ったところだろう。
いつも思うが店主一人のワンオペにも関わらず、手際よく料理が提供された。もっとも、カウンター席数は、ワンオペにはちょうど良い人数なのだろう。
"つけ野菜"は、つけ汁に野菜がたっぷりと入った。麺はラーメンと同じ太さで、敢えて変えてはいない。"つけ麺は、相変わらず魚介豚骨で、太麺が人気"と店主は言っているにも関わらず、全くスタイルを変えようとしない。
"その"細麺をつけ汁に潜らせ、一気に啜った。適度に酸味が効いて、ホンノリとした甘味を感じる。パッつんとした麺が、このつけ汁にぴったり合う。食べ進めると、粒胡椒の辛さを感じた。
中盛だったが、細麺だから結構満腹になった。
客がいなければ、もう少し店主と世間話をしたかった。今日はこれで帰るとしよう。
調理をする店主の背中に向かって挨拶をし、ドアを開けて店を出た。店の外には、特に並びはなかった。本来ならロケーションさえ良ければ、さらに繁盛するはずだ。
術後、しばらく仕事を休んでいた。久し振りにあの味を思いだしたくなり、いそいそと小滝橋通りを歩いた。
外にあるポップを見ると、どうやら限定の一杯があるようだ。券売機から限定のボタンを探し、味玉を付けて、いつものように大盛することを忘れなかった。
並びこそないが、昼どき直ぐに来ても、最近は常に客入りがよい。
空いている席に座り、食券を渡してサービスライスをお願いした。
合わせてTRYでの、味噌部門入賞を労(ねぎら)った。
TRYはラーメンオブザイヤーと言って、その年に活躍したラーメン店を部門ごとに選出して順位付を行う。今や業界では、権威ある賞となっていてた(講談社 刊)。以前ラーメンデータバンク取締役会長で、TRYの評論家でもある大崎 裕史が悠でラーメンを楽しんでいる姿に遭遇したことがある。
先客の料理の提供が完了すると、ボクの料理に取りかかった。
揚げネギ醤油そば(大盛)に、味玉を付けていた。店主ひとりだが、手際が良いからすぐに料理がカウンターへと乗った。
先ずはスープから、ひと口…
甘めの味わいで、ネギを揚げた香ばしさがある。限定のスープは"支那そば"と変えたか店主に確認してみた。揚げネギを使うことで、どうやらスープの顔が変わったようだ。
麺はいつもと変わらず大栄食品の極細ストレートが合わさる。
シンプルながら、見事な一杯なのがよく分かる。
味噌部門入賞を称えると、8位のビリですからと店主が笑った。
選ばれたラーメン店のビリは、価値あるビリに違いない。
前回来たとき、券売機に"冷やしつけそば"を提供しているのを確認していた。
今年の夏は、梅雨らしい時季となった。梅雨寒の日が続いたが、そろそろ梅雨が終わるのだろう。最近はめっきりと、蒸し暑くなってきた。
券売機で目的の"冷やしつけそば"、それを"特盛"にした。"味玉"はいつものように付けよう。
先客は3人で、既に料理を楽しんでいる。
その後ろの狭い通路を通り、空いているL字カウンターの奥の席へと腰を下ろした。
店主の調理が一段落したところで、今買ったばかりの食券を手渡した。
店主はおもむろに、つけ汁を"醤油"、"塩"、"辛味醤油"のいずれにするか聞いてきた。"辛味醤油"は以前はなかったので、"それ"にした。辛さは調整すると言うことなので、さらに辛くして貰った。
そしていつものように、サービスライスをお願いした。
ボクの調理を開始する頃、先客帰ったが、直ぐに8人分用意された席の全ては埋まった。
手際の良い調理なので、いつものようにストレスを感じることなく料理は提供された。
特盛だから当たり前だが、かなりのボリュームなのが嬉しい。
よく見ると丼には涼を誘う"きゅうり"、"ミニトマト"、"穂先めんま"、"クラゲ"、"チャーシュー"、"海苔"がデフォで入ったいる。
つけ汁の丼には大きめにカットされた葱が、大量に浮いていた。そして"その"つけ汁は、マグマのように赤い。よく見ると、粉末の赤唐辛子が"こんもり"と乗っていた。
つけ汁に潜んだ氷は、この唐辛子で役に立たないかも知れない。
麺をつけ汁に浸し、一気に啜(すす)った。
いつもの甘さが際立ったつけ麺とは違って、唐辛子の刺激で消されているようだった。何よりガッツンと舌を刺す、直線的な辛さが一気にきた。それ以上に旨みが勝っているから、麺がどんどん進んだ。そして辛い…また啜る。それを繰り返した。
涼を誘う食材が色々と入り、夏の味覚を楽しめた。
今日も満足いく一杯に、感謝…
今日は調理に切れ目がなかったので、ご主人とはあまり話せなかった。
閉店する飲食店の営業年数は、半数を超える60%以上が2年以内と言われる。
ここに信頼出来る統計がある。
営業年数別の閉店割合
1年未満: 34%
1~2年: 15%
3~5年: 21%
6~10年:17%
11~15年: 5%
16年以上: 6%
開業3年後の生存率は30%と言われていることから、納得いくだろう。
さらに、駅から5分以内での店舗の割合で閉店の占める割合が73.3%とかなり高い。これは駅近くは地価が高いため、賃料に跳ね返るからだ。必ずしも、駅に近いから良いという訳ではなさそうだ。
本日いつものように券売機に向かうと、つけ麺の提供はない。今日はラーメン気分だったから、問題はない。券売機から"味玉醤油そば"と"大盛"のボタンを押し、カウンター中央の角の席へと腰を下ろした。
今日は、いつも以上に客が多い気がする。
店主は食券を取り、ボクを含む3人の客の料理を一気に作り始めた。店主ひとりだが、手際が良いからストレスなく料理は提供された。
丼を見ると、大振りのワンタンが5つ乗っている。あわてて、店主にワンタン麺ではないことを告げた。
店主は笑いながら、奥の壁に貼られたポップを指指した。
今週の土曜まで、開店3周年記念として醤油そばはワンタン麺となる。
ワンタンは皮はプリプリして、餡肉厚で、ほんのりと生姜の風味を感じた。
開店3周年の祝いの言葉を伝えると、店主は満面の笑みを浮かべた。
これからも、ボクの舌と胃袋を存分に満たして頂きたい。
週1はランチで行く、ヘビーユースな牛すじカレー 屋を目指して歩いていた。この日は5月だというのに、この時間でも既に真夏の暑さだった。湿気がない分、爽やかな暑さなのが、まだ救われた。
カレー気分から、急につけ麺を口にしたくなり、カレー屋より一本手前の路地を曲がった。
次第に店舗に近づくにつれ、幟(のぼり)がたなびいているのが分かる。昨日も来たのに
また来てしまった。
入口を入りすぐの券売機で今日の料理を決め、空いている一番奥のカウンターに腰を下ろした。1時を回った時刻にもかかわらず、今日は客が多かった。
店主ひとりで店を回しているので、手がすくまで食券を持っていることにしよう。
直ぐに、買ったばかりの"味噌つけ麺"と"特盛り"の食券を渡した。
客が一気に引け、店内では店主とふたりだけになった。いつものようにお互いにラーメン店の新規訪問を確認した。店主から教えて貰った、小滝橋通りに出来た大井町の人気店の新店舗へ行ったことと、その寸評を話した。
特盛は結構、ボリュームある。さらに多めに盛ったサービスライスを付けていた。
トッピングの焼豚、メンマ、海苔は麺の丼に乗っている。
麺は細麺だからか、特盛にすると太麺よりづっしりときた。
スープは酸味ある、甘めの出し汁だ。味噌が前面に出て主張する感じはない。
ボクにはラーメン、つけ麺は、あくまでも"ご飯のおかず"にしかすぎない。正直このつけ麺は、ご飯とは合わない気がする。それはまずいのではなく、むしろこの一杯で完結した料理だからだった。
ボクはご主人に、"食べログのポイントが上がった"ことへの謝辞を伝えた。店主は食べログ情報など見ていないと思っていた。たまに見て参考にしているようだった。
店主はポイントが上がったことを、素直に喜んでいるようだった。ボクが店のレビューを載せていることも、実は知っていた。
"和え玉の試食"をしたのは、"ボク"しかいないからに他ならない。
いつものように、"味玉醤油そば"を大盛にしてカウンターで料理の提供を待った。
小滝橋通りから駅へ向かう路地は、ロケーションとしては決して良いとは言えない。
それでも天気が良く、暖かくて心地よい天候もあってか席数の少ないカウンターは8割ほどの"入り"だった。
しばらくして、店主はうっかりして大盛にしなかったことを詫(わ)びた。
代わりに、"和え玉"を提供するからと提案した。
料理は通常ラーメンを"大盛"以上にすると、"替え玉"にして麺の伸びを防いだ。今回は替え玉を油そばのようにして、試作品を提供してくれるようだった。
ラーメンを食べ終わる適当な頃合いで、替え玉のコールをして貰いたいと告げた。
コールをして"和え玉"が提供された。
刻み焼豚、葱がトッピングされた麺を、先ずはひと口…
油っこさは最小限、そして出汁がしっかりとして"そのままで"充分楽しめた。結局、丼には入れず最後まで和え麺として楽しんだ。
食べ終わった後に、店主は印象を聞いてきた。
次に来たとき、"和え玉"を試食品として提供した。
この"替え玉"には塩つけ麺の出汁から酸味を抜いて、タレを絡(から)めていた。
細麺だから、麺がくっつく弱点を、ボクは店主に指摘した。
いまだ"和え玉"は、メニューには追加されてはいない。
店に着くと、外の看板メニューに"限定"があった。"揚げネギワンタン麺"と"揚げネギ醤油そば"の2つ。麺は"特注中太麺"とあった。
店内に入りすぐの券売機から、"揚げネギ醤油そば"を探した。
空いている一番奥のカウンター席に座り、店主に食券を渡した。
悠の麺は、大栄食品の極細ストレートを使っている。今回は麺を変えているから楽しみだ。
先客の料理が提供され、店主はすぐにボクの料理に取り掛かった。ワンオペながら、相変わらず調理の手際が良い。
待たされることなく、すぐに料理がカウンターへと乗った。
チャーシュー2枚、細切りメンマ、海苔、そしてたっぷりの揚げネギが丼に乗っている。
まずはレンゲでスープをひと口…
いつも口にする醤油そばのスープだ。ただ揚げネギが入ることで、香ばしくなった。
スープを持ち上げ、麺を一気に啜ってみよう。いつも細麺に馴れてしまっているから、特注の中太麺はちょっと不思議な感じがする。
麺はサイズが変わっただけで、味わいに変わりはない。店主に聞くと、違いは太さだけで材料はかえてないそうだ。
シンプルな味わいだからこそ、いつまでも楽しめる一杯だった。
店主から、最近開拓した店があるかを聞かれた。
ボクは飲み屋の店名を2店あげた。
飲まない店主は、苦笑いした。
日常的に使っている。気に入った店は、何回でもレビューしてしまう。だからレビューの口込み件数は増えない。レビュアーとしては、リピーターは失格かも知れない。
今日は初めて、"チャーシューメン"を試したくなった。朝起きてから、今日の昼は、チャーシュー気分だった。
来た時はよく口にしている"中華そば"の叉焼増量だから、安心して楽しめる。もちろん、初めての感動はないのは分かっている。これに白飯が合わないはずはない。
悠のチャーシューは、純然たる焼豚だ。塊りをカットしたら、トッピング前にバーナーで炙り手間を掛ける。
おおぜき中華そば店同様、麺は大栄食品の極細ストレートを使っている。サラっとした魚介系スープとの相性は、抜群の麺だ。
肝心のチャーシューは柔らかさはなく、硬めの食感だ。脂身はほとんどなく、むしろこの肉には相応しい。たまに脂身にあたると、これが得も言えぬ旨味を引き出した。
今日はあるラーメン店の話題になった。食べログでは既に人気の一店だったが、店主は行ったことがあるようだった。どうやらその一杯は、店主の口には合わなかったようだ。
スープをいつものように、ひと雫(しずく)も残さず完飲した。
今日も美味しい料理、安らぎの一時を楽しめた。
店主にご馳走さまを言って、ボクは店を後にした。
今までの納得できる仕事ぶりから、各ポイント、総合ポイントを上げさせていただいた。
【限定カレーつけそば】
東池袋大勝軒をモチーフした酸味ある甘めのつけ汁には、インパクトある辛子スパイスが存分に効いていた。
加水率低めの大栄食品の細麺との相性は良く、サラっとしたスープがしっかりとまとわりついた。
実は既に年明け8日に、正月限定メニューを楽しんでいた。正月らしい内容の料理で、低廉な価格で豪華で楽しめる一杯だった。
昼どきいつものように狭い店内へ入ると、並びこそないがひと席を除いて全て塞がっていた。
いつもは客入りがそれほどでもなく、緩(ゆる)い雰囲気の店内だが、今日は満席だからか雰囲気はいつもと違った。
券売機で"限定"のボタンを押し、併(あわ)せて"特盛"、"味玉"のボタンを続けて押した。
空いている"その"席に座り、店主に買ったばかりの食券を渡した。店主は食券の料理名を読み上げ、サービスの小ライスの提供を確認した。
麺茹でを開始し、その間に叉焼をバーナーで焙(あぶ)りと、手際よく調理をこなし、料理はカウンターへと乗った。
麺の入った丼は、特盛にしてボリュームたっぷりの麺に、綺麗に盛りつけられたトッピングの食材が並んだ。
一方つけ汁はカレーと言われなければ分からない色合いだが、スパイシーな香りが鼻腔の辺りを漂った。
麺をつけ汁に潜(くぐ)らせ、一気に啜(すす)った。スパイシーな味わい、そしてピリッと辛さはかなりある。そして悠の特徴となる焦がし葱で、香ばしさが加わる。
ザラっとした舌触りは、つけ汁にしずんだ挽肉だった。
焙りチャーシュー、細めにカットされたメンマ、そして味玉のトッピングが、料理の味にバランスよく並んだ。
並びこそなかったが、今日は次から次へと客席が来店した。
帰り際に、ボクは調理する店主の背中に向かって話かけた。
『T R Y、味噌部門受賞おめでとうございます。』
店主は振り返り、お辞儀を返した。
普段はあまり考えるとことなく、券売機では"志那そば"を大盛りにする。今日は"担々そば"が目に入ったので、それを大盛りにしてみた。
先客は一人いたが、席に着く頃には食べ終えて帰っていった。
L字カウンターの、入口から一番遠い席に腰を下ろし食券を店主に渡した。いつものように、サービスのライスを付けたのは言うまでもない。
辛さを聞かれたので、マックスが3辛なのでそうした。
客が誰もいないときは、店主と話すようになっていた。
他のラーメン店の話題はもちろんだが、インターネットラジオから掛かるビートルズの曲といったところにまで及んだ。
今の時季は学校が休みだから客足が少ない、と店主はボヤいた。
味は間違いないが、旨いからと言って必ずしも集客できるかは別のことだと思った。店舗は一本路地に入っているから、尚更だろう。
店主ひとりの作業だが、待たされることなく本日の一杯がカウンターへと乗った。先ずは蓮華を取って、スープをひと口…
スープはサラッとしていて、後からピリッとした辛さがきた。ベースは煮干しと鶏ガラだろうか…
あっさりとしていて、ドロっとして胡麻を感じる中華の担々麺とは明らかに違った。
和を感じさせる担々麺、と言って良さそうだ。
辛くないでしょう…
そう笑いながら言う店主は、少しばかり強面の顔から優しさが伝わる。
麺は"志那そば"同様、細麺ストレート。スープとの絡みは、ぴったりだった。
トッピングは水菜、海苔、ひき肉、チャーシューで、主役のスープ、麺を謙虚に引き立てていた。
客がひとり入り、ふたり入りして、いつの間にか狭い店内は満席となった。必然、店主との楽しい会話は終了した。
ボクは店主に"ご馳走さま"を言い、会釈して店を出た。
担々麺で温まった体は、外に出ると熱を一気に奪われる気がした。急に寒くなったクリスマス直前のランチタイムだった。
オープン当初、つけ麺が提供されたときに試したことがあった。そのときは、想像していた味とは違って残念だった思いがあった。
そしていつしか"悠"とは、疎遠になってしまっていた。
前回久し振りに"支那そば"を楽しみ、そしてブラッシュアップされたと風の噂で聞いていたつけ麺を久し振りに試してみる気になっていた。
つけ麺は、醤油と塩があり、別枠で味噌があった。
今回ははまず醤油と塩を食べ比べてみよう。いっぺんに頼んだのではなく、日を変えての食べ比べとした。
前回のレビューでは書かなかったが、麺は大栄食品で、加水率は低い細めのストレートを使っている。なので口にした時の食感は、心持ちモサっとしていてモチモチ感はない。小麦の風味が漂い、麺の主張が強い弾力を感じる。
○つけ麺(醤油)
ほんのりとした甘い酸味を感じる。醤油の味は見た目ほどには主張していない。
麺との一体感を感じる味わいだった。
初めからつけ汁に酢が入るのは好きではないが、これはこれで楽しめる。大盛りにしたが、飽きずに楽しめた。
○つけ麺(塩)
ほんのりとした甘い酸味は、醤油と変わりはない。さっぱりとした味わいの中に、ほのかな柑橘系の香りを感じた。麺をつけ汁に浸けていくうちに、つけ汁が薄くなるのが分かった。これは醤油では感じなかった。つけ汁が薄くなったときには、別にスープを足すための、"足しスープ"が用意されている。
正直つけ汁に最初から酢が入っているのは、あまり好みではない。
途中からの味変の道具に、酢を回すのが好きだった。
どちらも、想像以上に楽しめるつけ麺だった。好みだろうが、"塩"の方が気に入った。
ただしどちらかと言うと、"支那そば"などラーメンの方が、より楽しめたと思う。
過日ボクは"味玉そば"を食べに、店へと向かった。店内に入ると、見覚えある顔の紳士が料理を楽しんでいる。
紳士は食べ終わり際に、麺はどこの製麺所を使っているか店主に聞いた。ラーメンデータバンクを運営するラーメンの神様、大崎氏だった。
店主に聞くと、"緊張しました。"
そう言って、苦笑いした。
前回来てから、すでに1年以上も間が開(あ)いてしまった。実は悠が始めたばかりのつけ麺に、ひどくがっかりしてしまったからだった。
…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…
朝起きてテレビをつけると、アナウンサーは連日の猛暑に悲鳴とも取れる声をあげている。またかと思いながら、朝食のバナナとカップに4杯入れたインスタントコーヒーに、並々と牛乳を入れスプーンでかき回していた。まだ働いていない胃袋へと、ボクは無理やりバナナを押し込んだ。時計を見ると、時間は5時23分だった。そして今日も1日が始まった。
…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…☆…★…
電話の時計を見ると11時59分。ランチタイムの準備は、全て順調だ。今日は朝起きてから、すでにランチタイムで楽しむ店は決めていた。
職場を出て横断歩道を渡り、たかだか5分程度の道のりだったが、早足で来たからか一気に汗が吹き出してしまった。
店舗前に来たがすぐには入らず、外観、そして看板に載ったメニューをしっかりと見た。先に若い男女が入り、ボクはその後についた。
ふたりは券売機でモタついていて先に使ってくれるよう言われたが、彼らの負担にならないようボクは待った。
ふたりはカウンターのみの席の入口そばに座ったが、ボクはL字型カウンターの調度角の席へと回った。
前回来た一年前はふたり体制だったが、今日は店主ひとりだ。年配の男性は辞めたのだろうか…
そんなことを思いながら、本日の一杯を待った。
今来た若い男女を含め、客は5人…
一気に作る店主の調理を、カウンター越しに眺めた。まるで芝居のひとり舞台。その手際の良い調理に、久しぶりに見入ってしまった。
先ずは大盛りにした"支那そば"がカウンターに乗った。そして店主はおもむろにバーナーを取り出し、煮豚を炙(あぶ)り始めた。そして、"ミニあぶりチャーシュー丼"が提供された。
卓上のレンゲを取り、まずはスープを一口…
そして、また一口…
旨味が体に染み入るほどに優しく、そして深みある味わいだ。昔ながらの味わいながら、料理にひと捻(ひね)りある手間を感じた。
合わせる麺は中細ストレート、麺は"パッつん"としていて加水率は低めだ。スープとの馴染みは、いたって良好だろう。
2枚乗った煮豚は柔らかく、ホロっとして旨味がある。スープ、麺の脇役としては主張はあるが、味をジャマせず引き立てた。
一方セットにした 、ミニあぶりチャーシュー丼はバーナーで炙ったチャーシューは楽しめたが、無くても良かったかも知れない。
気がつくと、つけ麺が4種類に増えていた。味も変わったことを、アナウンスしている。
ならば、次回はつけ麺をチャレンジしよう。
久し振りに来ると、券売機には「つけそば」のボタンがあった。味玉が付いたつけそばのボタンを押した。
昼どきをちょっとばかり回った時間だが、10人ほど入るカウンターには先客が2人とちょっとばかり寂しい。
L字型カウンターの奥に座り、2人いる店主ではない店員のひとりに食券を渡した。塩か醤油を聞かれたので、醤油でお願いした。券売機に貼ってあるポップで分かっていたので、ランチサービスの麺中盛り、半ライスをお願いした。
料理が提供されるまで、カウンター越しに2人の調理を眺めていた。麺の茹で上げなどの調理は店主が、トッピングの盛りつけ、チャーシューの炙りはサポートの年嵩(としかさ)のいった店員、というように分担している。
手際が良いから、ストレスなく料理はカウンターへと提供された。トッピングは麺の丼に盛付けられている。
まずはレンゲで、スープを口に含んだ。
麺を丼のスープに浸し、一気に啜った。
麺は細ストレート麺で、以前の記憶に間違いなければ、ラーメンとの麺は変えていない。細麺ながらしっかりとしたコシがあり、つけ麺にも合いそうだ。
スープは最初から酢が使われていて、しかもかなり甘い。
甘くてスッパいスープだかは、及第点は取れていない。
食べ進めるうちに、甘い、スッパい…この味わいのバランスのなさが、最後まで拭(ぬぐ)えなかった。
メンマ、チャーシュー、味玉のトッピングは、見た目、味ともに見事だった。
つけそばについては…あくまで主観だが…ラーメンの到達点には遥かに及ばない。
今回はつけ麺としての料理として、評価を変更した。
実力派だから、さらに良い一杯を提供してくれると思う。
(2016年6月再訪)
小雨が降る中に行ってみた。
初訪問の印象が良かったので、別の料理を試してみたい。
カウンター7人の席はひと席だけ空いてあいる。
今回は味噌ラーメン大盛りに、味玉を追加した。
提供された料理のスープは、ミルキーな色合いだ。
スープを啜(すす)ると、かなり甘めでマイルドだった。
そして甘みが、口いっぱいに広がっていく。
反面、味噌の味わいが一気に来た。
麺と味噌ベースのスープとの絡みは、すこぶる良かった。
ただ、このスープには、細麺より太いほうが合う気がした。
チャーシューは焼豚で、豚肩ロースを使っていた。
そしてスープには、大量の蜂蜜を投入した。
シンプルな味わいながら、ひと手間かけた一杯だ。
そんなことを思って、ボクは店を後にした。
…美味いじゃあないか!
(2016年6月初訪)
小滝橋通りから一本路地に入った、分かり辛い立地にある。
味噌ラーメン専門の店が開店し、すぐに閉店してしまったようだ。
ちょっとばかり、店内を手直ししての新規開店だった。
L字型カウンターのみ7人の店舗は、かなり手狭だ。
入り口そばの券売機では、どれを選ぶかちょっとばかり迷ったので、厨房内の店員に確認した。
ワンタンメンとの回答が、即座に返ってきた。
券売機を見ると、支那そば、味噌ラーメン、辛味噌ラーメンとあり、それぞれにワンタンメンがある。
悩んだ末、シンプルに、券売機左上の「支那そば」にした。
券売機には白飯がないので、店員に確認した。
どうやらご飯ものはまだ提供していないようで、仕方がないので、麺は大盛り、味玉はダブルにした。
客はボクが最初だったが、その後2組3人がすぐに入った。
L字カウンターの奥に坐ろうとしたところ、男性のひとりから空調が効いてないからとアナウンスされた。
ボクは角の席へと腰を下し、券売機からの食券をカウンター上に並べた。
入り口上部に「かづ屋」、そして製麺業者、大榮食品からの祝いの色紙を見つけた。
調理場では、50代ほどの男性、そして40代半ばほどの男性が仕事にあたっている。
店主と思(おぼ)しき若い方の店員に確認したところ、「かづ屋」で働いていたと返した。
ならば、ワンタンメンにすべきだった。
かづ屋はたんたん亭 本店の流れを汲(く)む派生店だった。
注文から提供までにストレスなく提供された料理は…非常に美しい。
例えるなら、乱れ髪を纏(まと)める、そんな完成される遥か以前の、荒削りな美しさを感じた。
先ずはレンゲからスープをひと口啜(すす)ってみた。
なんとも滋味深い…優しくも口いっぱいに広がる鶏がら煮干し出汁の味が、じんわりと沁み込んでいった。
麺は細麺ストレートで、スープを楽しませてくれる。
もっちりと言うより、むしろコシのある麺だった。
時間が経てばダレそうな細麺だったが、伸びることは殆ど無かった。
味玉は黄身はトロっとして、味わいはほんのりとしている。
滋味深いこのスープに、出しゃばらない味だった。
チャーシューはしっかりして、脂は乗っていない。
提供する前、丁寧にバーナーで炙っていたから、適度な香ばしさがあった。
久しぶりにスープを1滴残さず、飲み干してしまった。
エスニックタウン大久保には似つかわしくない良店が、今まさに産声(うぶごえ)をあげた。
8位
1回
2018/05訪問 2018/05/29
町屋駅でボクらは待ち合わせた。京成町屋駅と千代田線町屋駅とは、ホームこそ別々だが駅を出てあらためて眺めると、すぐそばに並んでいるのが分かった。
東京生まれにもかかわらず、ボクは町屋駅を使うのは初めてだった。
10時45分、ボクら10人はコンビニ前で集結した。
職場の人間とは極力飲食は避けていたが、今日はそんな職場の若い仲間との楽しい食事会だった。
時間になっても、ひとりだけ遅い仲間がいた。小さい子を連れてくるから、仕方がない。ボクらは、2便に分かれて店舗へと向かった。駅からは直線で、6,7分の道のりなので迷うことはなかった。
開店直後に店に到着すると、次から次と客が店内へと吸い込まれていく。ちょっと焦って外から見えた厨房の女性に、"10人ほどになるから"と声をかけてみた。今日は土曜日だから座れなくなるからと、促され先発隊として入ることにした。
店内は調理場に向かう形でカウンター席、小上がりのテーブルは4卓あるがテーブルひとつの幅が極めて狭い。
後発隊が合流し、テーブルふたつ、カウンター席に3つバラバラに腰を下ろした。
開店の11時を過ぎた頃だったが、ボクら10人が入ることで外待ちが出来た。
デカ盛りで有名な店は、各ジャンルでそれぞれにある。この光栄軒は街中華のデカ盛り店で、ファンの間では根強い人気の一店だった。チャーハンが特盛り3キロと聞くと、恐れをなす大食漢もいた。普通盛りでも、優に3人前のボリュームだった。一人前を大量に作るが故に、デカ盛り店の多くは味が大味になる。しかし、この店に限って言えば、美味しく楽しめるので人気があった。
実は20年以上も前から光栄軒は知っていて、この日が来るのをボクは楽しみにしていた。
せっかく来たからには、料理が被らないように注文し、皆でシェアすることにしよう。大盛り、特盛りにはせず、盛りはデフォで完食しよう。
炒飯、オムライス、レバニラ炒め定食、カレー、焼きそばなど頼んでいった。ビールの大瓶はキリン、サッポロ、アサヒから選べたのでサッポロラガーにした。驚くことにお通しには、"チャーシュー付き目玉焼き"が提供された。ビールはボク以外には頼まなかったが、さながらちょっとした宴会となった。注文した料理はテーブルが狭いこともあって、全て乗りきらないほどの品数となった。見ているだけで、嬉しくなるほどだ。
小皿で料理を取り、それぞれに楽しんだ。ご飯ものは味が薄いから、飽きずに口に出来る。レバニラ炒めは味が濃いから、むしろビールが楽しめた。
なんと、素敵な宴会ではないか!
ゆっくり楽しんだこともあって、1時間と、長居をしてしまった。食べ終わったものから、それぞれに会計を済ませ外に出た。
さあ、これから都電荒川線に乗って、ボーリングに行こう!
風情ある、この路面電車に乗るのも、初めての経験だった。
9位
1回
2018/07訪問 2018/09/14
門前仲町は全くの、未知の街だった。東京に生まれ、東京で育ったにも関わらず、この日が来るまで一度もこの街に足を踏み入れたことはない。
年齢を重ね酒が旨いと感じ始めた頃、少しづつではあったが雑誌の情報から東京の"名酒場"を知るようになった。
そんなひとつに、この名酒場があった。残念ながら、気になる店でも、当時はそこを目指してまで遠出することもなかった。
まだ外は明るいが、ドア越しに見える店内は既に客で賑わっている。店内に入るとカウンターに囲まれた調理場内の女性が気づいてくれ、カウンター隅の席を促され、それに従った。カウンター奥には、他にテーブル席もあった。
まずは飲み物から注文しよう。
壁に掛かった短冊メニューに目を凝らすと、いずれも大衆酒場としては、値段が全体として高めなのが分かる。その中でも際立って高めに値づけされているホッピーセットを頼んだ。
乾杯で、ホッピー、チューハイのグラスを重ね合わせた。
あらためて短冊メニューを見ると、焼酎系はチューハイしかなく潔い。ただカウンターにはレモンとライムのコンクがあり、自由に使えるようになっていた。友人は目の前の女性店員に、自由に使えるかを確認し、レモンを入れていた。
調理場すぐ目の前には名物となる肉豆腐ともつ煮の入った鍋が湯気をたてている。
まずは、"肉豆腐"を注文しよう。
注文と同時に、すぐ料理を皿に入れてくれた。
口にするとそれほどに甘めの味付けではなく、ほどよく濃いめに味付けられ飲物が進む味わいだった。途中、山椒と唐辛子薬味を入れると、印象が変わりさらに楽しめた。
中(焼酎)が空になったから、追加しよう。
合わせて、"ベーコンエッグ"と"サラダの盛り合わせ"も頼んだ。
"ベーコンエッグ"は家で簡単に作れるが、酒場で頼むエッグものは何故か雰囲気があるから好きだ。何故だか酒場のエッグものは値段がそこそこするが、ここは特に高めの値段設定と感じる。
"サラダの盛り合わせ"は、生野菜の盛り合わせではなく、ポテトサラダとマカロニサラダを盛り合わせたものだった。
生野菜が欲しかった友人の注文だったが、あれば必ず頼むので嬉しくなった。かなりのボリュームなので、ふたりでも多いくらいだ。
短冊メニューを眺めると、"ニラ玉炒め"があるので頼もう。
玉子はそれほど使っていないようで、きっちりニラが主役となっている。カウンターに乗ると、パッとニンニクの香りが鼻腔をくすぐった。
味付けも少し濃いだが、飲物が進むのは間違いないだろう。
名物の"美人姉妹"が居ることで有名な人気の大衆酒場だった。
雑誌の写真は十数年の歳月が経ちすでに黄ばんでしまったが、実物のふたりはその分輝いて見えた。
笑顔と接客は素晴らしかった。
人気の理由が分かる…
そんなひとときだった。
10位
1回
2018/07訪問 2018/09/16
だるまを出て、駅へと向かった。ひと品ひと品ボリュームたっぷりの料理だったので、お腹は満たされている。
時計を見ると帰るにはまだ早いから、軽く〆る店を探した。
駅を越し少しばかり歩くと、和でありながら小洒落た外観の店舗が目に留まった。和モダンといった感じが印象的だ。
扉を押し店内に入ると、店主、数人いる客が一斉に此方(こちら)を見た。
カウンターは立ち飲み、テーブル席は2卓…
店内はこじんまりとして、少しばかり照明が落とされていて落ち着いた雰囲気を感じた。
基本、立ち飲みのようだが、椅子のあるテーブル席へと座った。
テーブルの飲物メニューを見ながら、店内の雰囲気を感じ取った。
客は男女ひと組、男性ひとりの3人がすでに楽しんでいる。女性客を伴った男性客は、店主と馴染みのようで笑いながら歓談を楽しんでいた。
"ジムビームハイボール"と"緑茶割り"にしよう。
粉茶を使った焼酎は濃いめに割られて、緑茶割りは飲みごたえがある。
定番のジムビームを使ったハイボールは、口あたり良く楽しめた。
飲物を楽しむとき、"グラス"が重要な意味を持つ。いかにグラスが飲物を引き立ててくれるか…そんな些細なことだが、大切に感じた。
緑茶割りの入ったグラスは、昔、おばあちゃんの家にあるコップのようだった。
ジムビームを使ったハイボールには、まさにこのグラスが相応しいオリジナル仕様だ。
板書に書かれたメニューを見ると、本格的料理は少なく、ちょっとしたつまみ程度の料理くらいしかない。そこからも長居するのではなく、チョイ飲みスタイルで軽く楽しむ酒場という店側のスタンスが伝わる。
お通しは"ホタルイカ"
日本酒が合いそうだが、ジムビームハイボールでも充分楽しめそうだ。
テーブル並びにある冷蔵庫には、日本酒やビール瓶の多くが収納されている。注文してセルフで冷蔵庫から出し、会計時自己申告するようだ。
軽くエイヒレを、摘まむとしよう。
良質のエイヒレを仕入れてるようで、食感、味わいは確かに違いが分かるほどに楽しめた。
当日はたまたま店主の幼なじみが来ていて、店主を中心に全員で話に花が咲いた。
一見、常連の垣根もなく、門前仲町での楽しく充実した思い出となった。
名残惜しかったが、会計を済ませ店を後にした。
辺りは既に暗く、人通りもかなり少なくなっていた。
今回選んだ10店には、今思い返すと楽しい情景が浮かんでくる。食事が、思出に紐づけされた瞬間だ。
お店のサービスは、料理の味と同様に評価したい。
たとえ美味しくない料理を提供されたとしても、美味しく楽しませてくれる雰囲気(=サービス)がある店は、一定の評価をされて良いはずだろう。
サービスは、値段に応じたサービスで良い。しかし値段以上のサービスの提供ができてこそ、その店はそのジャンルでは一流だと言える。
一定の評価の定まった店舗は、安心して使える。反面、評価を信じて行列に並んだことがある。結果、自分の口には合わなかったことがあった。並んでみなければ結果は分からなないことだが、残念と言うより、むしろ楽しいことだった。
ボクは食の評価には、ひとつの基準がある。
食の評価は算数とは違い、絶対評価ではない。
一番は"ボクやキミ"の、生まれ育った生活に由来していると思う。不味いものは絶対に不味い。反面、旨いものは、絶対はあり得ないと思っている。
これからも外れを恐れずに、食の遠足を地道に楽しんでいきたいと思っている。