3回
2017/03 訪問
白子×黒トリュフ、伊勢海老、春を告げる蕗の薹、冬の味覚白子まで幅広くいただけます
<2017/03>
今回は伊勢海老や白子、春の味覚蕗の薹、自家製桜塩でいただく白魚など季節が交差する贅沢な内容。
笠本さんが伊勢海老を捌く姿を拝見しているとここが天ぷら店であることを忘れてしまいます。
白子や蛤、白魚ももちろん美味。
ですが今回感じたのはシンプルに見える食材こそ、たきやの他にはない拘りと手間を惜しまない姿勢が眠っているということ。
写真映えはしませんが、丁寧な仕込みをした筍は大変美味。
豪華で華やかさに目がいきがちですが、素材に囚われ過ぎず1つずつ丁寧に仕込み、蒸し揚げる強度を変える仕上げる姿が心に残りました。
毎回1人で訪問していますが、いつも楽しいお話と忙しい中お見送りまでして頂き今夜も良い時が過ごせ、構成もとても満足なものでした。
◆前菜 山菜とうるい、浜ぼうふう、車海老、鮑 からすみをかけて/山芋と海鼠子/あん肝/毛蟹と筍、ジュレがけ
<山菜とうるい、浜ぼうふう、車海老、鮑 からすみをかけて>
鮑の出汁で山菜などをおひたしにした旨味が凝縮した一皿
車海老のレア加減が絶妙、素材に出汁が染み渡っていてその良さをベースにいただきます
出汁はすっきりしながらも深みがあり、塩気はからすみが補っていました
<山芋と海鼠子>
癖はなく塩気も丁度いいです
<あん肝>
滑らかで濃厚な味わい
たきやの素材の旨みや強さに対する拘りが細部までに出ています
<毛蟹と筍、ジュレがけ>
甘酸っぱいジュレに筍のフレッシュな歯応え、毛蟹との相性はとても良いです
◆車海老
ふんわり柔らか、エビの甘みが生きています
◆車海老脚
紅花油の良さで素材の軽さと芳ばしさが際立ちます
◆筍
産地はまだ京都はシーズンではないので鹿児島のもの
何も付けずにいただきます
写真で見ると華やかではありませんが大変美味
とても甘く、柔らか過ぎず歯応えの小気味よさを残しています
アクは全くなく瑞々しく、今までいただいた筍の天ぷらの中で断トツの出来
お聞きすると糠とお湯でアク抜きをした後に更に湯で糠抜きを行い、カツオ出汁を入れるという手間のかかったものでした
天ぷらとしての水分も残し、丁度いい歯応えを残すところに業が見えてきます
◆白魚
5匹程串に刺し、衣を付けて油の中で落とし1匹ずつ泳がせるように蒸し揚げていきます
最後に白魚同士を絡ませるので、個々が独立していて衣同士のべちゃっとしたくっつきはありません
添えられるのは桜の葉型の小皿に盛られた自家製のピンク色の桜塩
八重桜の桜の葉を1枚ずつ千切り色が混じらない様に花弁以外を避けお塩と合わせたもの
細かい作業を繰り返すことにより、美しい明清色を再現
もちろん香料等添加物は一切ないピュアな桜塩です
白魚は甘く、ふわふわでふっくら
そこに合わせる桜塩は丸く広がる桜の香り、きつくありません
桜の人工的なテイストとは全く異なり、奥ゆかしく広がる可憐な香り
上品な春を思わせるお味で雰囲気からも美味しさが溢れます
◆鱚
立派な鱚の中はとても熱々
ふわふわなのは白魚と同じですが、どこか身が締まったようなふわふわ感
白魚とは違い、お味はかなり濃厚
つゆにつけていただくようにアドバイスされますが、そのままでも旨みが強いので美味しくいただけます
◆蕗の薹
春の香り漂う旬な一品
蕾を開き、華を咲かせたように蒸し揚げていきます
供された蕗の薹の開いた部分は蒸し揚げられていて中心部は油を吸わせレアな状態
通常の蕗の薹の天ぷらは苦味のみで終わってしまったり、食感も水っぽかったり逆に抜けてしまっているものが多いもの
この蕗の薹の外側はサクッと甘く、中心部は火を通してないことにより蕗の薹のフレッシュな苦味がありコントラストがはっきりしているのでどちらかに傾いてしまうことはありません
柔らかな口当たりで他の揚げ方とは異なる食感を残してくれました
◆蛤
九十九里の蛤、蒸し揚げた中心部はレアで蛤の水分が断面から溢れて光を反射していました
潰した山椒の実につけていただきます
蛤はぷっくり膨らんだ様な食感で、見た目通りジューシーで広がると自然な旨み
山椒の香りでスッキリした後口です
◆伊勢海老
笠本さんが豪快に捌いた伊勢海老、中心を見るからにくっきりとレアに仕上げたもの
1つはフランス産の生キャビアでいただきます
賞味期限が短い生キャビア
「生」と聞くと塩辛いイメージが湧いてしまいますが、実際はフレッシュで塩気も丁度良く、初音鮨や天本でも使用されています
因みにこちらの生キャビアと初音鮨と同じもの
プリプリの跳ねる弾力と程よい生感
一方はお塩、もう一方の塩気はキャビアで補います
キャビア×伊勢海老はより海を近く感じるお味、間違えのない美味しさ、たきやらしい揚げが味わえました
◆桜海老のかき揚げサラダ
お皿いっぱいに盛られたボリューミーなサラダ
サラダ自体は定番でベースは温泉卵、大根やレタス等、核となるフレーバーはトリュフだったり鴨肉だったり季節によって異なります
今回は揚げたての桜海老
サクサクで甘い桜海老と温泉卵との相性は抜群
大根のシャキシャキした食感でもフレッシュさを出していて良いです
温かい桜海老と冷たいサラダ、温度差でも楽しめました
◆シャトーブリアン
リッツカールトン時代から続く、トリュフ塩でいただくヒレ肉の天ぷら
一部の本当に良い箇所を使用し紫蘇で巻いた大変贅沢な一品です
赤身には胡椒で味付けされていて、中はレアで溢れるのは肉汁と肉の旨みでコクはありますが重くない綺麗なお味
今回は柔らかさとお肉の甘さが引き立っていました
合わせるのはトリュフ塩、トリュフの香りが予想以上に強いのですがくどくないお肉とは素晴らしい相性
因みに「このお塩だけでもお酒がすすむ」と仰る方もいるとか、香りが強いので合うのタネは限られていますがこのためにあると言っても良いほどの相性を発揮
通常では考えられないですが納得させる力をもった一品、定番のお味です
◆舞茸
芳香だけでいただいた気分になる香り高い舞茸の天ぷら
こちらはカラッと揚げてあり、衣のサクサクさが味わえます
天つゆにたっぷりの大根おろしを落としさっぱりといただきました
◆白子×黒トリュフ
バター醤油ソースの上に蒸し揚げた白子、ペリゴール産の黒トリュフをたっぷり削って供された華やかな一皿
旬としては終わりに近いですが、今年は長く旬が続き3月になっても出していただけました
ただ、これ以上時期が進むと液化が強くなり水っぽくなってしまうそう
白子はクリーミー、とろんと口の中で濃厚さを出しつつ液状になっていき香りも後まで続きます
立派な白子ですがヘビー過ぎず、合わせるとろりとしたバター醤油も美味
バター醤油のベースは天出汁、そこに無塩バターと醤油、葛を落としたもの
そこに良質な黒トリュフの香りが交わります
他にはないお味、また冬に是非いただきたいです
◆小柱の天茶
天丼と天茶があり、今回は天茶を選択
小柱と玉ねぎのかき揚げに一番出汁をかけていただきます
出汁は醤油を入れず塩のみ、コクがありながら晴れ渡ったお味
万能な出汁でこちらを基礎として季節に応じて様々なお味へと変化していきます
小柱の風味と玉ねぎの甘さ、キリッとした出汁が纏め上げてくれ満足の天茶
◆苺のゼリー寄せ、アングレーズソース
アングレーズソースはバニラのお味が強く、甘みがはっきりしたソース
ゼリーはコアントローを効かせたきりっとしたお味、苺は少し酸味もあり
そこに甘めのソースとなるのでバランスが良くデザートらしい美味しさがありました
◆わらびもちと煎茶
定番をいただいてお料理は終了となりました
今回もお腹いっぱいです。
次回は6月、鮎のシーズンに伺います。
<全文はこちらです↓>
http://food-garden.net/foodpost/%E3%81%9F%E3%81%8D%E3%82%84/
2017/06/18 更新
2016/12 訪問
香箱蟹を殻ごと蒸し揚げる。たきやの世界が色濃く楽しめます
<2016/12>
◆前菜
裏白の上に4枚の小皿で供された今回の前菜
<奥のゴールドの中皿には柴山港松葉蟹のキャビア乗せ、手前に島根のあん肝、菊の葉のおひたしとほうれん草のおひたし>
蟹は割と塩気がはっきりしていてキャビアで塩分をもたせてはいませんでした
あん肝は滑らかでいつもながら前菜でも手抜きがありません
ほうれん草のおひたしは味わいが強くお味はしっかりめ
<左の小鉢は汲み上げ真如寺湯葉の餡かけ>
こちらは優しく仕上げてありました
<中央は鮪赤身、とろろ>
漬けにはなっていますがにおいもなく、とろろは粘りが強く大和芋かもしれません
<右の小皿には帆立のカラスミ和え、木の芽>
柔かな帆立にカラスミの塩分が程よくマッチしていて不自然さはありません
◆才巻海老脚と新銀杏
出世海老の車海老、才巻海老は10㎝以下の小さな海老
胡麻油ではないので海老の香ばしさと甘さがよく伝わり、サクサク食感でスナックの様に軽くいくらでもいただけそう
銀杏の衣は極限に薄く、食感は柔らか過ぎずお味を残し銀杏の良い香りが抜けていきます
◆才巻海老
レモン×塩でいただきます
レアまではいきませんがふっくらしていてピュアさも残す味わい
◆アオリイカ
徳島県産の鹿の子包丁を適度に入れたアオリイカ
たきやはいつもダイナミックなタネを使用しますがこちらもかなり厚め
レモンでいただきます
墨烏賊とも剣先烏賊とも違う独特のもちっとさが蒸し揚げることにより顕著にでるそう
最初は緩やかですが徐々に強くなる甘さと濃さ
レモンに負けないフレッシュな旨みが広がります
◆ハゼ
青森県産の大ぶり
11月と12月は天ぷらタネの旬として重宝されるハゼ、シーズン的には落ちハゼの時期でもあります
最初はそのままでその後はお好みで天つゆでとのこと
月並みですが、サクサクふわふわということこれ以上合う表現はないと思える程
細やかなサクサク音と中は熱々、しっとりさと柔らかさでほぼ噛む必要がありません
甘みと旨みがとても強くつゆなしで十分、ハゼの質と蒸しの技術がよく表れています
ハゼがこんなに美味しいと思えたのは初めて、とても美味
できることならもう1回いただきたいと思えるお味でした
◆蟹の湯葉包み
蟹の身と味噌等をぎっしり詰めて湯葉で包み揚げたもの
味噌の色が目立ちますが身もいっぱい入っていて余計な味付けはしていません
味噌は揚げすぎるとどろどろになってしまい風味を損ね、かと言って冷たいと天ぷらではありません
いただくと、とろっと温かく僅かな揚げ時間をコントロールしているのがわかります
お味は蒸すことにより素材の濃さが増して凝縮され、贅沢なことに濃厚さでやや重ささえ覚えます
そこに笠本さんから澤屋まつもと 守破離が供され、一緒にいただいて欲しいとのこと
爽快感のある香りが抜けて、まったりしていた後味がすっきり
綺麗に次の天ぷらに繋がりました
◆蓮根
茨城の蓮根、蓮根と言ってもこちらもかなり質が良く歯応えと甘さが印象的
サクッと歯切れよく内部は瑞々しさがあり、今回は天つゆでさっぱりいただきました
◆白子松蔭蕪酢橘餡かけ
河豚の白子にたっぷりの餡かけ、とろっとしているのでスプーンでいただきます
餡は裏漉しされた蕪風味、酢橘は強め
くど過ぎない程度の白子を使用していました
甘くて濃さはあっても重くはなく、とろっとしていて綺麗に溶けますが液状でもありません
とろとろになり過ぎると崩れてしまいますし、かと言って口溶けも重要
こういった絶妙な口当たりを操ることにたきやはとても秀でています
右の小皿にあるのはゆずきち皮に七味を合わせたもの
実家のご祖母様が作られたとのこと
かなり辛いので苦手でなければ美味しくいただけるとご紹介いただきました
まずそのままでいただくと確かに辛め
ですが香りの突き抜けが素晴らしく、夏に味わったゆずきちの旬の香りをそのまま閉じ込めた様
単純に辛いのではなくセンスが良い辛さ、とても美味
白子と合わせるとあれだけ辛かったものがあまり感じず、それだけ白子の甘みもあったと再確認
香り良くややさっぱりして相性はとても良かったです
◆鴨の生ハムときのこのサラダ
京都鴨の生ハム、きのこ、温泉卵、大根やレタス等が入っています
トリュフがないのでいつもより瑞々しくシャキッとしたお味
きのこは味付けがされていて程よい酸味がありました
◆鹿児島産黒毛和牛のシャトーブリアン
◆紅はるか
蒸してから1日寝かし蒸し揚げたもの
紅はるかは安納芋に似ていると言われる糖度の高い芋
ですが一方で筋が多く処理が大変とも言われています
いただくと驚くほどの糖度で筋っぽくはなく滑らかで塊がありません
香りは後まで続きました
前回は鳴門金時でしたがこちらもとても美味
天ぷらの伝統的手法は生揚げ
どうしても中心部にパサつきがでてしまい滑らかさは今一つ
それを美味しさの為に破って供するのがたきや
こちらで芋の天ぷらをいただいたら他ではいただけません
◆才巻海老
こちらが供されるとお食事になるのですが、今回はこの後に1品あるとのこと
◆香箱蟹の天ぷら
なんと殻ごと蒸し揚げた香箱蟹の天ぷら
殻は甲羅酒があるように風味がよく出るもの
蟹のお味を最大に引き出す為にもダイナミックにばらしたりせずそのまま蒸し揚げます
普通の香箱蟹と違って隙間があると上手く蒸し揚がらないらしく1.5杯程度詰め込んでいるそう
上からかけるのは生姜甘酢餡
見た目から驚きで迎えられる香箱蟹の天ぷらは、中身はぎゅうぎゅうに詰まっていてお味はともかく濃い
凝縮した内子と外子の旨みが強く、殻からの風味が合わさりお味自体がガツンときます
塩分も強く、確かにこれは次に天ぷらがあっても霞んでしまいます
お塩の有無をお聞きするとボイル時の3%のみで、塩分は外子からでているそう
少し甘く、生姜で締める餡が合っていました
普段いただいていると分かりにくいですが、本来の姿と強さが引き出された新しい発見がある1品
このフォルムもこのお味もたきやならではでしっかりお店の色が伝わります
◆穴子丼
定番のお食事
殻と味噌を集めて揚げた後クラッシュし、そこに天ぷらの出汁を入れて煮詰めたタレを豪快に穴子にかけていただきます
旨みが凝縮されたタレはとても主張が強く、穴子をいただいているはずですがお味は濃厚な海老の頭
殻の香ばしさやエキスがこれ以上もない位にぐいぐい押してきて、海老の食感はないのに不思議な感じに
甘みが際立ち、振り切った濃厚さと豪快さを併せ持つ穴子丼
お味はしっかりしていますが旨みが前面に押し出てきます
癖になるお味で思い返すとまたいただきたいと思えるお食事
◆甘味 マスクメロン、ポルト酒のゼリー寄せ
ゼリーにはポルト酒、レモン、生姜、メロンが加えられたもの
ゼリーは使用素材もありやや固形感あり
生姜は隠し味ポジション、少しピリッとした感覚はありますが言われないと分からなそう
マスクメロンは前回よりもジューシーで甘みがあり美味
ポルト酒と柑橘系と生姜が上手く交じり合い、全体的に甘さはありますがレモンと生姜が生きていてさっぱりいただけました
中々考えられている甘味、ここまで拘るのがたきやらしいです
◆わらびもち
前回同様にわらび餅、煎茶で終了となりました
次回は食材がかなり変わる春に訪問します。
<2016/10>
◆前菜
◆才巻海老脚と新銀杏
◆才巻海老
◆鱚と松茸
◆帆立
◆無花果と鴨の生ハム
◆ローストビーフのサラダ
◆甘鯛と雲丹といくら
◆白オクラ
◆鹿児島産黒毛和牛のシャトーブリアン
◆徳島鳴門金時
◆才巻海老
◆松茸土瓶蒸し茶漬け
◆甘味 メロン、ポルト酒のゼリー寄せ
◆わらびもち
<2016/08>
◆前菜
◆車海老
◆車海老脚
◆新銀杏
◆鱚と松茸
◆黒鮑
◆鱧
◆ローストビーフのサラダ
◆雲丹塩水海苔の包み
◆蓮根
◆鹿児島産黒毛和牛のシャトーブリアン
◆煮合わせ
◆車海老
◆穴子丼
◆グレープフルーツゼリー
◆わらびもち
<全文はこちらです↓>
http://food-garden.net/foodpost/%E3%81%9F%E3%81%8D%E3%82%84/
香箱蟹の天ぷら
蟹の湯葉包み
ハゼ
紅はるか
前菜
白子松蔭蕪酢橘餡かけ
鴨の生ハムときのこのサラダ
無花果と鴨の生ハム
松茸土瓶蒸し茶漬け
帆立
黒毛和牛のシャトーブリアン
鱚と松茸
雲丹塩水海苔の包み
ローストビーフのサラダ
穴子丼
2017/03/11 更新
2015年オープン、麻布十番駅7番出口を出て5分程度。日本で最も予約の取れない天ぷらと言われたしみずの笠本氏がオープンした胡麻油は使わず紅花油一本で揚げるたきや。
店主笠本辰明氏は大阪吉兆→リッツ大阪花筐→リッツ赤坂しみず→リッツ赤坂ひのきざか(2014年寿司「ありた」、天麩羅「しみず」、鉄板焼「くたに」統合リニューアル)で総料理長を務められた方です。
お店の場所は少し分かりにくく回りには更科堀井、ジェラテリア マルゲラ 麻布十番店のストリートを一本入った所の麻布かどわきのすぐ近く、ほぼ斜め前のビル2Fにあります。
店内は明るく清潔感があり、カウンターのセンターに笠本氏、数人のお弟子さんが脇を固めています。
知られていることではありますが、最大の特徴は胡麻油を使用していない点。
紅花油なので胡麻の香りはしない分素材がダイレクトに伝わる天ぷらです。
よって素材の質が仕上がりに大きく左右されるため仕入れは三ツ星級の日本料理店と同じ一角、失礼ながら天ぷらでこの質を使用することに驚きを隠せません。
揚げた方は天ぷら内部を優しく蒸し揚げるスタイル。
多くはスロベニア産の海水の塩でいただきますが、デフォルトで梅、抹茶、カレーの個性的なパウダーもついてきて品により酢橘やトリュフ塩に変えることもあります。
お味は素材に頼るのではなく、素材本来の奥に秘めた強さとポテンシャルを前面に押し出します。
よってガツンとくる旨みを濃いと表現する方もいるかもしれません。
最近は薄味=善の傾向がありますが、たきやは臆せず蒸し揚げることにより増す甘みや素材のもつ塩分、そして強力な旨みを引き出すのに重点を置いています。
シャトーブリアンをスペシャリテの1つにし、松葉蟹を殻ごと蒸し揚げたり、丸十は生で揚げず蒸してから揚げたりと美味しさの為に守破離の精神で道を切り拓いていく新しい天ぷら。
また天ぷらのお店の多くは突き出しや甘味が置き去りになる傾向にありますがたきやはここでも拘りを見せ、お食事全てを通して満足感を与えお客のテンションを下げさせません。
特に突き出しはたきやでは前菜に姿を変え、見た目は八寸な様な美しさ。
吉兆出身ということもあっては細かい仕事と盛付、特に出汁の取り方はミドルクラスの日本料理店は敵いません。
ポジティブにそして大胆に攻める、方向性がはっきりしたお店。
ですが荒々しさはなくこれは笠本さん自身の明るさと真っすぐな情熱と溢れる魅力がお味に出ているからかもしれません。
【2017/06】
今回は拘りを強く感じた日でした。
何がたきやの色に合うのか、雲丹でしたら唐津やダイセン等がありますがブランドではなく当店に合う素材を納得するまで探し求める。
直送経験のなかった現地とは直接交渉、白オクラに至っては質を安定させるために現地にハウスを設置する等益々たきやでしか出会えないお味が増えてきています。
前菜の食材のバランスの良さ、サラダの独創性、ここは天ぷら店ですよね?と誰もが思えるお皿が並びます。
高級食材を魅せることも長けていますが、私的には蒸し上げ業が素晴らしいのを通り越してどうやっているのでしょう?と思えることも多々。
魅力も増していきますが、最近は予約難度も増してきました。
笠本さんは1人で訪問しても、頻繁に私の所までお話に来て下さるので毎回勉強にもなりますし、何よりとても楽しく過ごせます。
笠本さんの明るい前向きな姿を見ているとこちらまでも明るくなれる、そんな魅力を持った方です。
天ぷらだけでなく全てのお皿で魅せる当店。
蒸し揚げの業で昇華される食材の強さ、今日も華やかで驚きのあるたきやの夜が幕を開けます。
◆前菜 赤雲丹と白胡麻豆腐、モズク酢とトリ貝、空豆と針生姜、白海老の昆布締めキャビア乗せ、ばちこを添えて
赤雲丹と白胡麻豆腐
赤雲丹は山口北浦
函館や青森等色々な県を試されたそうですが、こちらの雲丹以外はどれもたきやの形には合わなかったそう
ただ、北浦の赤雲丹は東京までの直送をやっていなかったので直接ルートで交渉して送って頂くようにしました
合わせるのは白胡麻豆腐、ちょっとこってりし過ぎてしまうかな?と思っていたのですが好相性で驚き
雲丹は水っぽい感じはなくお味が濃く、それをほんのり甘い胡麻豆腐が包みまったりした良い口当たりに
山葵が辛すぎないのがまた良く、美味です
いつも天ぷら店ということを忘れてしまいます、笠本さんの努力や才能に驚きです
モズク酢とトリ貝
トリ貝は炙ってあり、ほんのり温か
これも良く合いなかなか美味、食材とのバランスを取るのが本当に素晴らしいです
白海老の昆布締めキャビア乗せ
甘い富山の白海老とキャビアの塩気、時々柔らかなばちこと共にいただきます
◆車海老
いつも通り甘い車海老からスタート
◆車海老脚、とうもろこし
軽い車海老脚
とうもろこしがとても糖度高く、天ぷららしい熱々さがあるものの中がピュア
そのままの瑞々しさと綺麗な風味で、“揚げ”独特のお味がしません
伺うと水分が上がってくるタイミングを見計らうのが重要とのこと、業の美味しさです
◆鱚
こちらの鱚は大好きです
ほわほわした身で甘くて風味も残っていて、最初は少しのお塩で時々つゆで
大きいので途中から変えて楽しめるのも良いです
◆アオリイカ
皮を抜き寝かして、繰り返すこと3日
風味が残り、天ぷらでもねっとりした食感があります
1つを塩でもう1つをつゆでいただきました
◆新蓮根
皮ごと蒸し揚げたもの
いただくと断面から滲んでくる水分、食感も良好
新蓮根の場合は水分を残し9割揚げ、1割余熱で仕上げた旬の美味しさを表現しています
◆稚鮎
まずは生きた状態の稚鮎を見せてくれます
氷で冷やすことにより眠らせ、一気に蒸し上げます
ついに初訪時から気になっていた(私が大将に毎回言っていた)抹茶塩の出番です
いつも抹茶塩自体はつけることはできるのですが、こちらの天ぷらはそのままで十分美味しいので私は大体お塩のみでした
稚鮎はお味は濃く、苦味も旨みもあるワイルドさがあるお味
飲めなくてもビールがとても合いそう
抹茶塩も好相性、適度な苦味で抹茶の風味が強すぎないのでよく引き立ててくれました
旬な大人のお味を堪能させていただきました
◆白オクラ
山口のみで栽培される、白オクラ
品質を安定させるためにたきや用のハウスを作ったという拘りのお野菜
こちらも素晴らしかったです
断面ではあまり分かりませんが、粘りがすごく揚げても一切失わない本来のポテンシャル
青い香りと甘みがあり、種が少ないので取らず自然のままの美味しさが伝わります
美味しさももちろんなのですが、どうすればここまで活かせたまま蒸し揚げされるのか不思議でした
◆アカザエビ、赤雲丹キャビア乗せ
相模湾のアカザエビ、お造りとして先程の赤雲丹、キャビアを乗せていただきます
ぷりっとした食感、赤雲丹とキャビアが良く合います
◆アカザエビ
バター醤油ソース、柚子のお花を添えて
前回いただいた白子と黒トリュフで使われていたソースと同じもの
バター醤油のベースは天出汁、そこに無塩バターと醤油、葛を落としたものでこれが万能的な美味しさ
ですが、たきやで登場するのはこの2回だけです
柚子の香りに包まれ、レア感と風味の余韻が良いアカザエビはソースのコクに負けません
美味しいソースもスプーンをいただき全ていただきました
◆トマトと新玉ねぎ、真如寺湯葉、毛蟹を添えて
熊本の塩トマトをオリーブオイルで焼いて新玉ねぎと京都の真如寺湯葉、噴火湾の毛蟹
今回の箸休めのサラダは見た目も涼やかな一皿
酢を使用しているのですが、甘みと仄かな酸味で特色があります
お聞きしているとホワイトバルサミコと醤油、鰹を合わせてた後再び出して昆布を合わせて3日寝かせて・・・・工程が大変過ぎて途中で分からなくなってしまいました・・・
洋食の雰囲気がありながらも和食に落ち着かせている独創性があります
トマトの自然の濃さが光り、酢の立ち位置が奥深いサラダです
◆シャトーブリアン
リッツカールトン時代から続く、トリュフ塩でいただくヒレ肉の天ぷら
一部の本当に良い箇所を使用し紫蘇で巻いた大変贅沢な一品です
赤身には胡椒で味付けされていて、中はレアで溢れるのは肉汁と肉の旨みでコクはありますが重くない綺麗なお味
今回は甘くジューシーでした
合わせるのはトリュフ塩、トリュフの香りが予想以上に強いのですがくどくないお肉とは素晴らしい相性
通常では考えられないですが納得させる力をもった一品、定番のお味です
◆茄子と万願寺唐辛子の煮浸し
大きな熊本の赤茄子と大きな万願寺唐辛子
茄子は煮浸しと言っても油を吸わせていないので、あっさりしていて溢れる水分も綺麗
勿体ない位に零れる水分のジューシーな茄子、唐辛子と共にさらりといただきます
対して干し海老の出汁は骨太なお味でしっかりベースを支えます
◆穴子丼
定番のお食事
濃厚さを残しながらも、今回は高知の煮山椒を添えてさっぱりといただきます
◆甘味 グレープフルーツゼリー
風味がしっかりしたゼリーですっきりしていて、お腹いっぱいでもいただけるお味
甘味までぬかりがありません
◆わらびもち
前回同様にわらび餅、煎茶で終了となりました
かなり予約難となっていますが、1人利用の私にお気遣いをして下さる大将に本当に感謝です。
次回は以前から体験したいと思っていた食材が揃う10月、今からとても楽しみです。
<全文はこちらです↓>
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