「渡り蟹の酔蟹」と「鮟鱇のどぶ汁」をリクエストしての訪問。
どぶ汁のベースとなるアンキモはキロ28,000円の北海道余市産。
渡り蟹もサイズの大きさに比例する高価なものだったようで、
支払額は大台の2万円にまた届いてしまいましたが値段を超える満足感。
おまかせでこの日食べた料理は以下の通り。
持ち込んだ日本酒の実費を含めると散財した金額は22,000円超。
01 北海道ズワイガニ 干し柿 切り干し大根
02 松江渡り蟹 酔蟹
03 能登アンキモ刺し
04 徳島ヒラメ 肝 胃袋 卵
05 能登アオナマコ刺し
06 能登アオナマコ このこ このわた
07 釧路ししゃも一夜干し
08 山口仙崎マテ貝 炭火焼き
09 青森長芋 羅臼スケコ
10 明石煮蛸
11 羅臼雲子 菜の花 お椀
12 銚子ミンク鯨 さえずり(茹でタン)
13 青森ヒラメ
14 徳島ヒラメ
15 伊勢カンパチ
16 琵琶湖氷魚
17 野付青柳
18 昆布森生牡蠣
19 大和芋きんとん 愛媛中山栗渋皮煮
20 愛媛トラフグ白子 炭火焼き
21 京都海老芋唐揚げ
22 下関マナガツオ西京焼き
23 網走キンキ 頭と肝
24 能登アンコウ 余市アンキモ どぶ汁
25 どぶ汁の〆雑炊(奥久慈軍鶏の卵とじ)
26 大間本鮪大トロ(握り)
27 青森ヒラメ(握り)
28 明石の鯛(握り)
29 伊勢カンパチ(握り)
30 東京湾スミイカ(握り)
31 愛知ミル貝(握り)
32 舞鶴ブリ藁焼き(握り)
33 有明小肌(握り)
34 東京湾サヨリ(握り)
35 大間本鮪中トロ(握り)
36 ヒラメ潮汁
37 ややこし丼(ブリ藁焼き 牡蠣 このこ)
38 唐津せとか
1品目からズワイガニの身にあんぽ柿と切り干し大根を合わせる変わり種。
大将の引き出しの多さのおかげで毎月訪問しても飽きません。
ネットリ甘い干し柿やシャッキリ食感の大根が蟹と意外に合います。
2品目がいきなり本日の主役でしょうか。
巨大な雌の渡り蟹を「酔蟹」にしています。
紹興酒、佐藤(焼酎)、ネギ、生姜、実山椒、花山椒(冷凍)で漬け込んだそう。
うを徳では渡り蟹、セイコガニ、車海老の酔蟹・酔蝦を経験していますが、
今回の酔蟹が酔っ払い系では過去最高の傑作ではないでしょうか。
薬味やアルコールが効いた鮮烈な漬け汁の美味しさはもちろん、
生に近い食感の内子、蟹味噌、身が官能的で旨味の強さも凄まじいです。
蟹のサイズが巨大なので食べ応えもあって完璧。
ここからナマ尽くしモツ尽くしな料理のオンパレード。
余市のアンキモだけでなく能登の鮟鱇も仕入れたそうですが、
捌いたばかりの能登のアンキモは生のまま刺身で味わいます。
加熱したほうが旨味は増すのでしょうが、まるで牛のレバ刺しのような食感。
鮟鱇なので牛レバーのようなクセや臭みは無くて、
脂がノッているので「牛の白レバ刺し」のようにも思ってしまいました。
アンキモ刺しに続いてはヒラメの肝刺しに胃袋、卵。
何度も通ってこちらがモツ好きと把握されているからこその提供でしょうか。
一見客の頃は流石にコースにモツは入らなかったです。
能登のアオナマコはこの日は生のまま土佐酢に浸してナマコ酢で。
シコシコと歯応えのあるナマコを噛み締めると鮮烈な磯の香り。
茶ぶりにしてやわらかくなったナマコも勿論美味しいのですが、
生ならではの香りの素晴らしさも捨てがたいところ。
ナマコの内臓であるコノコ、コノワタも生で。
チュルルンとした食感でモツならではの独特な味わいが堪りません。
磯の香りも先ほどのナマコ酢に負けず劣らず素晴らしいです。
つぐみ庵(駒込)でも鰻重の前の酒肴として出てきた本ししゃも。
カペリン(カラフトシシャモ)に比べると非常に希少な食材とのことですが、
うを徳では卵入りの雌を出してきて流石の仕入れ力。
「一夜干し」ということで1週間~10日ほど干したつぐみ庵よりやわらかく、
総合力の高さは流石の本職といったところでしょうか。
うを徳が鮨屋なのか何屋なのかは未だによく分かりません。
マテ貝は肝のような部分に少し砂のジャリジャリ感があったのですが、
十分に食べられてしまうレベルで先っぽから端まで全て美味しい。
貝も食感としてはモツに近いものがあるので、
モツが嫌いな人は貝も嫌いなことが多くモツが好きな人は大抵貝も好きです。
煮蛸は西の名産地明石産。
東の名産地佐島(横須賀)に比べると皮がプルプルなのが特徴だそう。
酒と調味料で煮ただけで素材自体の美味しさに左右される面が大きいとのことですが、
この日の煮蛸は同席者が5.0と評するほど上出来でした。
雲子と菜の花のお椀はカツオ節とマグロ節、雲子の美味しさが光っていました。
「グラタン」とトラフグの白子の炭火焼きも出して貰ったのですが、
この日は雲子(鱈の白子)も負けていません。
珍しい食材としてはミンク鯨のさえずり(舌)も登場。
タンの半分ぐらいが脂で哺乳類の舌では脂肪率が一番高いかも知れません。
豚、羊→牛→馬→鯨とタンの脂肪率は上昇していくような印象。
食べた感想としては
宇ち多゛のアブラ生を思い出しました。
かなり脂が強いので苦手な人は苦手かも知れません。
関西ではおでんダネとして珍重されるというサエズリ。
もっと煮込んで脂を落としたほうが良いのでしょうか。
お造りはヒラメの食べ比べ。
前座の青森産(2.2キロ)ですら美味しいのに徳島産(2.0キロ)は更に凄い。
白身魚にこだわって最高級品を仕入れるうを徳だけあります。
伊勢のカンパチは24キロもので5日熟成。
熟成のクセが少し出てしまっているのですが代償として旨味は抜群。
琵琶湖の氷魚は鮎の稚魚、イワシのしらすとは存在感が違います。
どぶ汁は余市のアンキモ(前述の通りキロ28,000円)、賀茂鶴(日本酒)、
白菜、能登産の鮟鱇の身を土鍋でグツグツと煮込みます。
アンキモペーストを纏った鮟鱇の身も美味しいのですが、
奥久慈軍鶏の卵でとじた〆雑炊の渾然一体となった美味しさも堪りません。
握りでは本鮪、ブリ藁焼き、サヨリの美味しさが印象に残りました。
今季最後の大間産という本鮪はキロ19,000円の高級品。
マグロやウニは悲しいぐらいに値段と美味しさが比例してしまいます。
ヒラメの潮汁の出汁は本日は利尻昆布ではなく日高昆布。
何か丼を食べたいとのリクエストで出てきたのが「ややこし丼」。
ドッサリと盛られた酢飯の上にブリ藁焼き、茹でた牡蠣、このこ。
このこのヌメッとした食感と猛烈な旨味が酢飯に何ともマリアージュ。
ニンニク醤油で味付けされた藁焼きのブリもおかずに最高ですし、
プリッとした牡蠣まで楽しめて非常に贅沢な丼。
最後のデザートは唐津産の「せとか」を丸ごと1個。
仕入れ値で1個600円という高級みかん。
薄皮が本当に薄くて糖度も高くてこれもまた感動級の美味しさ。