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夜の点数:4.7
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¥50,000~¥59,999 / 1人
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料理・味 4.5
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.5
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|CP 4.3
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|酒・ドリンク 4.1
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なぜ祇園『前田』がミシュラン三ツ星なのか?/その理由
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2023/10/10 更新
こんにちはー、皆様の食の下僕、『孤高のグルメ⭐︎』です♬
さて、今日は京都『前田』に関してです。
日本には素晴らしい和食店がたくさんある中でなぜこのお店がミシュラン三つ星なのか?
ただ「おいしい」「旨い」「美味しい」なら誰でもいえるのですが、正確な比較となりますと、おそらく普通のフードライターや自称グルメの方々ではこちらのお店の評価はとても難しいと思います。
といいますのが、色々な和食料理店を意識して味わって食べていないとこのレベルの差異に気づいて比較するのはとても難しいからです。
これはヨーロッパや日本でクラシックフレンチやクラシックイタリアンをしっかり意識的に食べてきていないと、最先端のモダン/イノヴェーティブフュージョンの本質的な良さを理解できないのに近いです。
そうでないと、京都『菊乃井』『和久傳』『瓢亭』『さゝ木』『緒方』『吉兆』『未在』『丸山』『浜作』『なかひがし』などに加えて、新進気鋭の若手の勢いのお店が沢山ある京都の中で、なぜ『前田』が三ツ星なのか?を自分の言葉で表現することは難しいでしょう。
そのため、このお店の食べログレビューだけ異様に少ないというわけです。
僕は京都『前田』の特異な点は、店内カウンターの1枚板に集約されているように思います。
元は白木に近いチェリー材は経年と共に色合いが濃くなっていく高級木材。
コンクリートのビルの暖簾をくぐれば、千住博の滝のリトグラフがお出迎えしてくれ、内装も一流店らしく柾目の木材をふんだんに使った贅沢なあしらい。店内は8-10人のカウンター席のみで個室はありません。
店内に入りまずパッと目を引くのはカウンターの一枚板でしょう。私は京都にくるとパークハイアット京都に宿泊してBar『琥珀』で夕焼けを眺めて夕食の時間帯までだらだらすることが多いので、最初こちらのカウンターを見たときには琥珀と同じく最高級ウオールナット?と思いましたが、さにあらず、ブラックチェリー((Black cherry))でした。
なぜ他のお店同様にヒノキ/イチョウ/センなどの白木のカウンターでないのか?
その詳細は定かではありません。近年の白木の尋常ではない価格高騰ぶりを受けてしょうがなくなのか、それとも「あえて」なのか?
いずれにせよ結果として、この木材がファッションでいえば絶妙な「外し」となっていて、照明の加減もあり、店内に少しモダンな印象を与えていて、御主人から提供される伝統的でときにはモダンな各お皿の器との親和性を高めていました。
スタートはカウンター内に前田氏ご本人と包丁と下ごしらえされた料理が入っている藍色の染付の器のみ。
この藍色の染付陶器だけにしているのは意図的なのか?
だとしたらその戦略は極めて効果的。
なぜなら、その後、その色彩が極めて限定された空間が、徐々にお料理と美しい器で華やかに色付いて彩られていくからです。
真鯛/すっぽん/鯖/鮑(あわび)/雲丹(うに)/子持ち鮎/蟹(どうまん蟹)/天然松茸(東北地方)/天然鱧(はも)/天然鰻/天然舞茸etc。
といったその時期の日本全国の旬の極上食材を適切な調理と量でとことん満喫するスタイル。
この料理はあの有名店○○のと同じ、あの料理は○○のと同じといったように、ロシア人形マトリョーシカのようなメニューでないのもオリジナリティと捉えられて良いなと思います。
そして、お味もそうですが、生モノ・焼き物・揚げ物・蒸し物などの量やバランスが美しい。
御主人自身が、世の中にはお料理を自分の舌や眼で判断せず、耳(産地や修行先など)で判断される方が多いのに辟易している点もあるのでしょう、京都産にこだわらず、今の時代を生きる日本料理人が自分自身がこの食材を食べるのならこれが本当に美味しいと思う料理を肩肘張らず、卑屈にも傲慢にもならず、自然体で提供。
そのように表現すると「なんだ、ただの旨いもん屋か?」と思われがちですが、決してそういうわけではありません。それらのお料理が見事にモダンとクラシックを融合させた日本料理へと昇華しているからです。
名店の1つである京都『櫻川』ご出身とのことですが、鱧切り1つとっても、あんなに太い鱧でも微塵も骨を感じさせない見事な日本料理の技術に裏打ちされているので、どのお料理もできるだけシンプルに、ただ、極上食材の良さに頼り過ぎることもなく、提供者はただただ深い満足度を得ることとなります。
二番手の方も前田氏の要求と裏方の管理もあってかもう少しゆったりしたら良いのにとは思いましたが、とはいえ肝心の揚げや焼きの技術も素晴らしかったです。
とてもお金のかかった伝統的な日本料理店の内装や日本庭園のようなお庭に素晴らしい盛り付けや高水準なServeといった総合力で充分な調和と満足度を与える店は多々ありますが、カウンターの上の料理だけでここまでの調和や満足度を食べ手に与えれる日本食料理店は極めて稀有。
正当な日本料理を今を生きる日本料理人がその時期の極上食材をもっとも美味しいと思う食べ方で提供し、それを世界が称賛する。
料理人の理想形です。
ただ、ここが肝心なのですが、このスタイルが日本でできるのは日本料理人や鮨職人だけであるということです。
決して他分野の料理人のトップレベルの方々が前田氏より劣っているというわけではないです。
できることなら、できることなら皆このスタイルを貫きたいはず。
ただ、イタリア・フランス・スペイン・ペルー・メキシコなど総ての国のその国由来の料理を作る料理人しかこの特権(≒アドバンテージ)は使えません。ミシュランスタッフはどうしても自分達の国の料理を作る海外フレンチシェフには特別厳しくなります。他国の料理を作る料理人達は、そのディスアドバンテージを抱えて自分の世界を築こうと世界に挑まれている、だからこそ気高く素晴らしいのです。
そして、前田氏が評価されるのは、その前田氏の対極にある日本料理を進化させようと試みて切磋琢磨している表参道『傳』日比谷『龍吟』『伯雲』などといったお店があることによってという側面も多分にあるわけです。
タイプの異なる高い実力者同士が、自分のスタイルを追求することによって、結果としてお互いをより高みへ引き上げるという意味です。
そう考えますと、京都『前田』は同業者から見たら「ズルいお店」「ズルいスタイル」と思われる可能性も多分にあるでしょう。
「日本料理人としてのアドバンテージ」×「技術」×「センス」×「極上食材」×「内装」
食べ手の胃袋や食べる欲求をグラム単位で見透かしているような、あのブラックチェリーを一枚板に選ぶ絶妙なセンス/バランス感覚と素晴らしい技術に裏打ちされた料理の数々。
コース全体の中に「美味しい」「旨い」を巧みに織り交ぜ満足度させる構成。
良い意味で前田氏はミシュラン星もそこまで意識せず、これからも自然体で自らのスタイルを特に変えようともしないでしょう。
これらが京都『前田』が三ツ星レストランを獲得し続ける所以だと思います。
料理人と極上食材達が五分に渡り合っているので、食後は何を食べた!ではなく、ただ×2美味しい食べ物を頂いたという満足感に満ち溢れるお店。
お料理だけでしたら4.9-5.0ptというところ。
20代30代でしっかり「良い」苦労をしてきた現在壮年期の才ある料理人がさてここからどうなるか?
誘惑の多いトップの世界で、こちらのお店に限ってはどうか「今のまま」をキープして、足元を見失わずにいて欲しいなと思います。
「あなた、料理人しょう?私はね、手を見ればその方の職業が大体わかるんです。うちには職業隠されていらっしゃる方多いのでそろそろ白状なさって良いですよ(笑)。」
と伺う度に、最後の最後まで私を疑い続けた、2019年末に閉店し、かつては世界トップ1000レストランで3位にまで昇りつめた新橋『京味』の西さんの壮年期はこんな感じだったのか?と、『前田』に伺った翌日にふと思いました。『京味』の系譜のお店ではないのに不思議です。
店内は8人から10人のカウンターのみ。個室はありません。最高の食材をふんだんに楽しみたい方と会食やデート利用にお勧めです。
※来店者達が御手洗いのたびにカウンターの引き戸から前田氏がトイレの場所を伝えるあのアクションが無くなればより良いです。
※二番手の方も実力あるのですから威圧感を与えてはいけませんがもう少し堂々とされて良いです。
※常連ぶる来店者達と同じカウンターになったら泰然と耐えましょう。御主人もにこやかなに耐えてます(笑)。